山中学さんの思い出
2009-08-26 大田 洋輔
山中学さんの写真集『羯諦』、来週の金曜日に刷り上がりが届く予定です。
ポット出版がお送りしている「新刊案内メール」のための「担当編集者より」という文を書いたので、
こちらにも載せておきます。
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山中さんの作品に関しては、何よりもまず実物を見ていただくのが良いのですが、
山中さんの写真に関する自分の体験をひとつ…。
具体的にいつのことだったかは忘れてしまいましたが、
数年前、インターネット上で山中学さんの写真に遭遇しました。
6つのシリーズの中で、一番上に表示されていたのは最新作の「無空 茫々然」。
24体の堕胎児でした。
説明的な文章は一切なく、詩的な短文だけが添えられた写真群が持つ、
得体の知れない強さに打ちのめされたことを覚えています。
同じようにほとんど説明もなく羅列された6つのシリーズのどれを見ても、
画面の中の世界が自分の生活している空間と地続きだとは、とても思えず、畏怖の念を抱きもしました。
人が撮ったとは思えない写真のインパクトに、ブックマークなぞする余裕はなく、
全てを見終わった後も、ただフラフラとページを閉じるのみ。
その後2,3度、思い出したように山中さんのサイトを探したのですが、
「山中学」という名前を覚えていなかったため、見つけることができず、
忘れかけていた2008年の11月。
中野ブロードウェイにある書店「タコシェ」の中山亜弓さんから、
「今、とても好きな写真があって、山中学さんという写真家の作品なのですが、
その方の写真集を出すことを考えています」
というメールがポット出版に送られてきました。
自費出版という方法もありだけれども、流通や質のことを考え、
沢辺(ポットの社長です)に相談してみたい、という内容でした。
そのメールの中の、山中学という写真家のサイトです、
と書かれたリンクをクリックしたときの衝撃といったらありません。
それから実際に山中さんとお会いして、
その人柄に良い意味で大きく裏切られるなど紆余曲折ありましたが、
この9月、ようやく『羯諦』として完成します。
準備期間を含めて、1つのシリーズ制作に3,4年。
6シリーズで約25年間の集大成です。
山中さんは完成とほぼ同時にニューヨークに発ち、現地にある所属ギャラリーでの展覧会へ。
本当に、弾丸ミサイルのような人で、本人の魅力もどこかでお伝えしたいのですが…。
山中さんは、作品以外の部分を明らかにするのを避ける人なのです。
残念。
その分、その作品を多くの人に見てもらいたいです。
●山中学の写真
※リンク先で公開されている6シリーズの被写体は「ホームレス(阿羅漢)」「動物の死骸(不浄観)」「老婆(羯諦)」「アジアの子ども(童子)」「奇形者(浄土)」「堕胎児(無空 茫々然)」です。
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