2009-08-12

「本の現場」の本屋の感想に共感した

こうみえて(ってどう見えてるんだ、オレは)、結構「センサイ」なんですよ。

仕事も仕事なんで、本をそれなりによく買います。
(会社の経費にもしてるのも多いし)
直接の資料だったり、一応ハヤリを理解しておこうとか、自分の興味/趣味だったり。
本屋で眺めて選ぶのより、書評やブログで見つけたり、で、選ぶことのほうが多い。
というか、それだけで、読む本が埋まっちゃう。

すると、ついついAを使っちゃうことになる。
でも、こう見えて(ってどう見えてるんだ、オレは)、いわゆる街の小さな本屋に「も」
頑張ってほしいって、左翼みたいな、人民応援気分、があって、
特急で必要なモノ以外は、メールで/近くの本屋に注文だして/とどいたらメールもらって/ついでのときに買って来る
ってことをやっていて、ついでにポットとして社員にも強制してる(もちろん、ポットで買い本に関してだけですよ)。
特急で必要なものはもちろんAを検索して、あればそのばで買う。

ちょうど便利なことに(たぶん)3〜4年前に、すぐ近くに J STYLE BOOKSという本屋ができて、そこの大久保さんという店長=社長=経営者(ただし店員は見かけたことはない)に、「メールで注文していい?」ってきいたらOKだったので、この方式にした。
ちなみに、そのとき注文はすべてトーハンブックライナーで取り寄せてくれるという。
早く届くのではあるけど、本屋の負担が多い(つまりマージンが減る)ので、
急ぎのときは急ぎだと伝えるので、それ以外は普通の取り寄せでいいですよ、ってことにしてる。

本の現場」の著者=永江朗さんも、何度が取材に来てるらしい。
そんなことや、そんな付き合いの本屋なので、大久保さんに「本の現場」を一冊プレゼントした。
そしたら、↓のメールをくれた。

・むしろミクロな部分にこそ問題
・現状のシステムの中でも努力して頑張れるノリシロはあるのではないか

というところに激しく共感!

ポット出版一社だけで、「非再販」にしたり、
サイトを独自に位置づけて活用してみたり、
版元ドットコム140数社で、書誌情報をつくり、発信しても
そく、何かが変わる訳じゃないけど、
そうしたそうしたのミクロの積み重ねをしながら、ノリシロをちゃんと使うことにこそ、
大切なものがある、という感覚が、オレにもあるんだな。

左翼だった時には、革命しなければ、すべての改善の条件はないんだ。
へたに、改良しちゃうと、権力の延命に手をかすことになってしまう。
だから、社会はどんどん悲惨さをあらわにしたほうがいいんだ。
みたいな考え方をしていて、目の前のミクロの問題は、ただ革命の正当性を証明するために使うけど、
本質的な解決ができない以上、すべては革命の先に対処すればいい(しかできない)。
って思ってて、それを考え直したことも関係する気がする。

→目の前の具体的な問題に対処する積み重ねの結果、良くなることが増える。

うまく理由をことばにできないのが、もどかしいけど、。
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沢辺様
いつもお世話になります。
先日は『本の現場』頂戴し、ありがとうございました。
早速拝見いたしました。
「どこに問題があるのか」という視点で読ませて頂きましたが、
マクロで把握できるところよりもむしろミクロな部分にこそ問題があるように感じます。
(当店が小さいからこそ実感できる部分ですが)
出版業界を巡る諸問題が語られる中で違和感を感じるのは、
従来の制度だけを単独で問題にしているところです。
硬直化しているのはむしろ制度を運用する側だということも多々あるように感じます。
そこまでを含めて論じないと問題の所在を見誤る危険性があると思います。
本文中で書かれている小書店がパターン配本を外して出版社に個別注文をする場合の弊害のようなことも、
私の場合、あまり実感はありません。
『ミシュラン東京』も『1Q84』も希望通り、
オンタイムで入荷しました(事前の関係作りや個別交渉はみっちりやりましたが)。
勿論、配本に関して何も問題がなく、
100%ハッピーですといって言うのではなく、
現状のシステムの中でも努力して頑張れるノリシロはあるのではないかと個人的には思います。
そこを自覚しなかったら、
制度を変えても負のスパイラルに引っ張られるだけのような不安があります。
などなど、つらつら考えた次第です。
さて、お待たせしておりました『紙の知識100』が入荷しましたのでご連絡させて頂きます。
よろしくお願い致します。
J STYLE BOOKS
大久保

このエントリへの反応

  1. マクロとミクロ、ということぼに反応して。マス販売・マス物流という根元を触ることなく対症療法的対策では、たとえば責任販売制も然りで、返品減少とかの諸問題の解決とは見当違いに向いている気がしてならない。従来の配送を単品個別配送管理に切り替えた宅急便のような物の流通のあり方の根本的なところが変われば全体への影響は大きいはず。

  2. [...] 沢辺 でも、やる気のある書店は本当に足を引っ張られてるのかな? たとえば神宮前にあるJ−STYLE BOOKの大久保さんという書店員が『本の現場』を読んで思ったことを書いてくれたんだけど「現状のシステムの中でも努力して頑張れるノリシロはある」と彼がいうのは、今の永江さんの言葉で言えば、「僕は足引っ張られてるって感じはしませんよ」っていうことですよ。  大久保さんみたいな人が増えていくことが、「チェーン店ばかりになってしまう」という危惧に対する、ひとつの対抗になるんじゃないかな。大久保さんの売りたい本とポットの出す本って微妙に違うので直接には役には立たないんだけど、大久保さんとか、そういう固有名詞をめがけて、その人に「沢辺さん、それグッドだよ」って言ってもらえるようなことをしたいな、と思うんだけど。 [...]

  3. [...] 大久保 あと僕から『本の現場』で唯一不満なのは、出版不況の正体が分からない、ということ。明らかにされてないと僕は思うんですよ。 感想メールでマクロだのミクロだのって話をしたと思うんですけど、本では、出版統計の数字が語られていたり、あとはまあアナログ的な話はされてるんですけど。 でも、例えばの話をすると、「SWEET」っていうファッション誌が最近売れています、と。マクロ統計的にはいままで下火だったのが伸びてます。評論家とかが何年後かにその数字を見て分析する時に、ああ、あの時は原宿にH&Mやフォーエバー21が出来て、ファストファッションが流行って、それがファッションの意識に火をつけて、それで「SWEET」は伸びたんだ。そんなふうに分析するかもしれないですよね。統計の上辺の数字だけを見て語る人は。 だけど、実はあれはおまけが売れたんだよというのが現場レベルでの実際だったりする。そういうミクロの分析がたぶん必要なんですよね。 そのうえで、出版不況ってホントに不況なの?って、ほんとは僕は疑ってるんですよ。ホントにみんなが言ってるほど不況なの?って。たぶん沢辺さんもそういうところおありだと思うんですけど。 [...]