懺悔録 我は如何にしてマゾヒストとなりし乎

発行:ポット出版
沼 正三 著
定価:2,800円 + 税
ISBN978-4-7808-0125-5 C0095
四六判 / 280ページ /上製
[2009年05月刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
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内容紹介

戦後最大の奇書『家畜人ヤプー』の著者・沼正三、ついに逝く─

●沼正三がその死の直前までSM専門誌「S&Mスナイパー」(ワイレア出版、現在は休刊)に書き続けた実体験エッセイ、「ある異常者の体当たり随想録」から選集。

●未完の短編小説「化粧台の秘密」、2006年に受けた生前のインタビューを特別収録!!

目次

はじめに●マゾヒズムの星 志賀信夫

●沼正三、マゾヒズムを語る
イントロダクション◎沼正三の歩んだ道
インタビュー◎「私は、女性のマゾヒズムは信じられない」

●懺悔録
◎ただ、いちずにMのために
◎燃えたぎる奉仕精神
◎〝まごころあんま〟顚末
◎谷崎潤一郎の足崇拝について
◎屑屋商売のころ
◎私は、もう四十一歳にもなっていた
◎醒めるために飲む酒
◎五時からマゾヒスト
◎バア『幸』にて
◎ママと私だけの秘密
◎マゾヒストの異常な恋
◎森本佳子の秘めたサジズム
◎兄へ宛てられた手紙
◎真理は常に光栄ある孤立の側にある
◎垢と埃と汗の混じったビール
◎マゾヒストに自信と勇気を
◎私を深く埋めてもらいたい
◎「ツバちょうだい」
◎回想・汲み取り式便所
◎マゾヒスト仲間を求めて
◎百万人もの女性のエキス
◎死を命じるマゾヒズム
◎使用人であることの至福
◎コプロ趣味について
◎やりばのない自問自答
◎異常性欲者の孤独
◎箕輪祥子という女性
◎兄としての私、弟としての私

●未完小説「化粧台の秘密」

担当から一言

 「S&Mスナイパー」というSM雑誌の編集をやっていました。昨年で同誌は休刊してしまったのですが、最終号が発行された翌々日、沼正三さんが亡くなったことを知りました。
 「ある異常者の体当たり随想録」というエッセイを、20年間連載(本名の天野哲夫名義で)していただいていました。毎月、A4サイズの素っ気ない茶封筒が編集長宛に送られてきます。新潮社の原稿用紙に、線の細い、綺麗な文字がいっぱいに書かれていました。
 内容は、女の足を舐めたい、とか、女性の吐いたツバを味わいたい、とか、お尻の下で窒息したい、とかです。伝説の奇書「家畜人ヤプー」がマゾヒスティックな妄想世界を描いているのに対し、このエッセイでは徹底的に自らの実体験を描いています。
 連載は06年に終了しました。その間、沼さんは己の恥部をさらけ出し続けました。印象的な一文を引用します。

 「吸ってあげるね」
 そういって、唇を当てた。佳子は後ろ手に手をついたまま両足を持ち上げていた。私はしたたるビールの雫をハンケチの代わりに唇と舌で吸い取った。足の裏の皮膚は堅くて頑丈で、足指にタコができていた。そこを噛むとビールの雫の味がした。その味に、垢と埃と汗の臭いがまじっていた。
 上目遣いに見上げると、彼女は無表情だった。しかし、注意を一点に凝らすように、このさもしい動物のような一人の男の行為を、好奇心を交えて熟視していることがよく分かった。
(「垢と埃と汗の混じったビール」より)

 マゾヒストって、きついなあ、寂しいなあ、と思います。好きな人にも、軽蔑されなくてはならないのです。それが悦びだから。
 このエッセイ集は、そんな矛盾に、沼さんが最後まで、もがき、苦しみながら書き続けた、マゾヒストの執念がこもっています。
 軽い気持ちで「私Mだから」とか言ってるうら若き女性に、是非とも読んでいただきたく存じます。
(担当編集者●高橋大輔)

著者プロフィール

沼 正三(ヌマ ショウゾウ)

1926(大正15)年、福岡市生まれ。本名、天野哲夫。
旧制福岡商業を卒業後、満州特殊鋼鉄株式会社に就職、帰国して海軍に入隊。復員後は、風俗誌にマゾヒズムをテーマにした原稿を投稿する傍ら、数々の職業を遍歴し、1967(昭和42)年、新潮社に入社。同社校閲部に勤務しながら、小説・エッセイを書き続ける。風俗誌「奇譚クラブ」の連載をまとめた『家畜人ヤプー』が戦後最大の奇書として話題となる。
2008年11月30日死去。享年82歳。


この本への反応

  1. [...] 連休中に新刊『懺悔録』の書店からの事前注文がけっこう入っていたのが、 うれしいニュース。5月はさいさきいいぞー。 [...]

  2. [...] [ポット出版] 近刊『懺悔録 我は如何にしてマゾヒストとなりし乎』(著●沼正三)の予約受付を開始しました。 [...]

  3. [...] 新刊『懺悔録』、本日発売です。全国の書店、オンライン書店でお買い求めください。版元ドットコム、直接のご連絡による直販も承っております。 [...]

  4. [...] さてさて、沼正三『懺悔録』が先週より発売中です。現代書館さんからも今月、沼正三『異嗜食的作家論』が復刊されています。沼正三再読の機運が高まるといいのですが。気になりましたらぜひ読んでみて下さいね。内容の良さはもちろん、どちらの本も装丁がとてもかっこいいので、本棚が映えますよ! [...]

  5. [...] 『懺悔録』が『京都新聞』、 [...]

  6. [...] ポット出版から、『懺悔録』が絶賛発売中です。 [...]

  7. [...] もうとっくに遅いのですが、『懺悔録』ができるまでの工程を、少しずつ日記にアップしていきます。 [...]

  8. [...] 『懺悔録』ができるまでの工程を、少しずつ日記にアップしていきます。 [...]

  9. [...] 『懺悔録』が『週刊文春』7月2日号[6月25日(木)発売]で紹介されました。 [...]

  10. [...] そんな自縛系編集者の高橋さんがよだれを垂らしながら担当した『懺悔録』(著/沼正三)。 先週の『週刊文春』でもエッセイストの酒井順子さんに取りあげられ、じわじわと動いております。 どうぞよろしく。 [...]

  11. [...] 『懺悔録』ができるまでの日々を振り返っていきます。 [...]

  12. [...] ◎この日も友人がほかの友達を連れて来てくれた。『懺悔録』を買ってくれた。ありがとう。 [...]

  13. [...] 『懺悔録』ができるまでの日々を振り返っていきます。 [...]

  14. [...] 『トーキングヘッズ叢書No.39』(アトリエサード)の「TH特選品レビュー」のコーナーで、『懺悔録』と『エロスの原風景』を紹介していただきました。 [...]

  15. [...] 週刊文春の書評に取り上げられたり、WEBで取り上げられたりで、順調に動いています、『懺悔録』。 [...]

  16. [...] ブログ「本屋のほんね」で『デジタルコンテンツをめぐる現状報告』を、雑誌『スーパー写真塾』(2009年9月号/コアマガジン刊)で『懺悔録』を、ブログ「赤尾晃一の知的排泄物処理場(わかば日記)」で『エロスの原風景』を紹介していただきました。 [...]

  17. [...] 『懺悔録』ができるまでの日々を振り返っていきます。 [...]

  18. [...] 今回、『本の現場』が新たにランクイン。『エロスの原風景』や『懺悔録』など、もっと知ってもらってランクインしていけるはずの本はまだまだありますし、新刊も今後出てきます。営業としてどんどんランキングを更新していけるように、書店さんにうまく売って利益を得てもらえるように、少ない脳漿を振り絞って、身体を動かしていきたい思っています。 [...]

  19. [...] ちなみに高橋とワタシのホントの「初めての共同作業」は コレなのです。 [...]

  20. [...] 書誌データ ●懺悔録 我は如何にしてマゾヒストとなりし乎(ポット出版での紹介はこちら) ●発行=2009年05月21日[第一版第一刷] ●発行所=ポット出版 ●著=沼 正三 ●定価=280 [...]