2006-01-17
『被差別部落のわが半生』
著者は60代も半ばになる部落解放運動の活動家。そういう方の半生っていったい……とそれこそ偏見まじりに読み始めたら、これがホント面白い。とりたてて特別な活動家の履歴書ではないのだけど、読ませる。それはきっと、山下力さんの人生のこくによるのだろう。
これまで部落関係の本も読まないこともなかったのだけど、「切なく」なったのはこの本が初めてかもしれない。痛みも矛盾も過ちも理想も抱え込んで走ってきた、ひとりの人間の「一生懸命さ」が心を打つ。反差別の問題に関わるものとして、こうした先輩がいてくれたことは、どこかほっと安心する。
● 山下力『被差別部落のわが半生』(平凡社新書) 740円+税