2006-04-29

オカマお遍路

ただ今、お遍路やってます。といっても、これは今回のQJrにおける個人的な制作コンセプト。前回は10万円弱くらいがなんとか自分のギャラになったのだけど、vol.2ではそれすらも見込めないので、ならば中途半端にビジネス行為と受け止めず、すべて制作費につぎ込んで、ある種の「宗教行為」と位置づけて(笑)遂行しようと決心したわけです。

で、いつものように対談、座談のたぐいを自分でやってるのは当然のことながら、特集のインタビューも全部担当している次第です。最低15人の「普通」のゲイにお話しを伺おうと考えていて、すでに8人への取材を終了。お一人一人、けっこう詳細に語ってもらっています。いつもアンケートをやっても、痒いところに手が届かない感じになるので、小倉康嗣さんの博士論文の真似にもならないのだけど、質的調査っぽいものにしよう、と。

にしても、社会人として真面目に生きている人たちの話しを訊くのは、本当に勉強になります。人生破綻者(←パチンコ依存症)でリブ狂い(←人非人)の自分にできるのは、そういう生活者に参考にしてもらえるような情報提供をすることしかないのだ、と実感します。ぜひとも誌面をご期待ください。

そして今日も、テレコ片手に巡礼の旅に出るのです……

2006-04-28

日本という国の嬲り者

genngorou.jpg二日連続でほぼ同い年の高名な表現者にお目にかかった。一人はゲイ&SM漫画の大御所、『嬲(なぶ)り者』『銀の華』などの作品で知られる田亀源五郎さん(ゲイ・エロティック・アーティスト)。もう一人は、『〈民主〉と〈愛国〉』で学会、出版界で大きな成功を収め、先頃パン!セに書き下ろされた『日本という国』もヒット中の小熊英二さん(慶応大学教員)。

田亀さんとはお互いギョーカイが長いのに、これまで一度も公での場でお話しすることがなかった(よく考えてみたら不思議)。それが、近くポット出版から上梓される彼の『日本のゲイ・エロティック・アート vol.2』に序文を頼まれたことがきっかけで、QJrで対談させてもらったのだ。これがなんとも面白いものになった。乞うご期待!といった感じだ。

oguma.jpg小熊さんとは、パン!セ関係の会食でお目にかかった。その席にはデザイナーの祖父江慎さん、冒険家の石川直樹さん、イラストレーターの100% ORANGEさんという超個性的な方々がおられたのだが、小熊さんも彼らに勝るとも劣らない独特の魅力があった。伏見も、これが『〈民主〉と〈愛国〉』かあー!と感動&光栄に浸ってしまった。

とても有意義で楽しい二日間だったのだが、食べ合わせが悪かったのか、いま、伏見の胃袋の中は「日本という国の嬲り者」みたいな状態になっている(笑)。

2006-04-25

危うく

bear.jpeg前にこの日記でご紹介した『いま生きているという冒険』(理論社/よりみちパン!セ)を上梓された冒険家の石川直樹さんが、伏見の本の感想をサイトで書いてくださった。感動のあまり危うく破水しかける(←尿漏れ?)。

http://www.straightree.com/

今度生まれ変わったら北極熊になって、石川さんのテントをノシノシ尋ねて行きたい……。

2006-04-24

尊敬するゲイ

islands.jpg「尊敬しているゲイは?」と問われたら、今なら間違いなくゲイバー、アイランドのラクちゃんの名前を挙げるだろう。どうしてかと言えば、ラクちゃんほど等身大の自分を十全に生きている人はいないからだ。伏見をはじめとして自分のことをsomebodyだと錯覚しているオカマは山ほどいて、自分のsomethingを承認させようと躍起になっている。そういう「スケベ心」は我ながら痛い。

一方、ラクちゃんは単調な毎日が何より楽しいと言うほど、生活者、消費者に徹している。自分のテリトリーを決めて、日々の何気ない発見を好物にして生きている様はお見事。ちょっとした街の変化や、普通の人々の欲望に触れる情報は何でもキャッチしている。それって当たり前のことのようで、意外と当たり前ではない。昨晩も、絶対にもう試しているだろうと思って話を振ってみたら、やっぱり秋葉原のおでん缶も食べていた! もう日常をカルト的に生きている、というべきか(笑)。

たぶん、そういうところに足場を置いているから、アベレージを維持した接客業を十年以上続けていられるのだろう。とりあえずどこかゲイバーに行ってみたいと思う初心者には、アイランドはいちばん安心してご紹介できる店だ。すっごく個性的なわけでもないし、カリスマママがいるタイプではないけれど、後味のいいバーであることは間違いない。べつに伏見は常連でもなければ(←年に数度伺う程度)、宣伝費をもらっているわけでもないんですが。

2006-04-22

くっせぇ、くっせぇ

kentei.jpg意味もなく新刊『男子のための恋愛検定』の写真を置いてみる。(宣伝→)

それとは関係なく、今日の話題は臭い。最近、伏見がやたら「更年期」を口にしているのには理由がある。鼻が明らかにこれまでとは違うのだ。前は臭いなどさして気になるほうではなかったのだが、このところ自分のオヤジ臭にゲンナリするばかりでなく、周囲のにおいに過敏になっている。家の中で納豆を食べれば窓を開けずにはいられないし、電車の中で人の体臭にやられてしまうこともしばしば。母にまで「あんた、この頃、猫みたいに鼻がきくね」と言われてしまう始末。

さまざま本を読んでみた感じでは、これ、たぶん更年期障害の一種ですな。ホルモンのバランスが変調をきたしているのだ。おかげでパチンコ店に赴いても、CR冬のソナタに群がるババアたちのマン汁臭さにクラクラするほど。っていうのはウソ。でも「おしろい」としか言いようがない安いファンデーションにノックアウト!

『男子のための恋愛検定』は嗅覚とはまったく関係ありません。いや、恋愛の嗅覚はきくようになるかな(笑)。

2006-04-21

エンスト

tea.jpgう”ーう”ー。

先週はイケイケで仕事をしていたのですが、週明けから気持ちが塞いできて、取材するどころか、取材申し込みのメールが出せない。人に依頼する、というのは結構パワーが必要な行為で、テンションが上がっていないと連絡さえできなくなる。しなければならない、とわかっているのにからだが動かないのだ。こういうのをエンスト状態と呼んでいるのだけど、立ち直るきっかけが難しい。はたから見れば何でもないことなのだが、気持ちを反転させるとっかかりがないとどうにもならない。エンジンがかかれば一ヶ月で一冊作ることだってできるのに……。

2006-04-19

博士論文

QJ5.jpg「クィア・ジャパン vol.5—夢見る老後!」でお世話になった社会学者の小倉康嗣さんに、博士論文(「高齢化社会と人間生成ー現代中年のライフストーリー調査にみるエイジング」)を製本したものをいただいた。電話帳くらいの厚さがある労作で、研究者にとって博士論文がいかに重要な仕事なのかがその重みからも伝わってきた。むろん、素人の伏見にはそこで展開されている議論について論評することなどできないのだが、研究者が人生を賭けて記したものであることは、行間からひしひしと感じ取れた。

よく、ある事象を誰かの理論を持ってきて記述し、「ほーら、俺ってすごいだろ?」と言いたげな論文を目にすることがある。あるいは、他人が作った議論の枝葉末節をけなすことで自分の論を成り立たせているような類いのもの。そういう仕事はちょっと小利口な人間なら簡単にできるのだが、小利口なやつにかぎって自分にオリジナルがないことを恥じていない。自分自身を投入していないことのみっともなさがわかっていない。

それに比べて小倉さんの博論は、身を削って、といった表現がぴったりの印象で、研究者としての覚悟を見せつけられた気がした。その気迫に、この人の言葉は信じられるなあ、と思った。

2006-04-16

デブは死ぬこともできない

hana.jpg先週からQJrの取材で毎日でいろんなところへ出向いているのだが、会う人ごとに体型について指摘される。待ち合わせ場所に立っていると、近づいて来るなり、「そんなにでかかったっけ?」と目を丸くした人もいれば、並んで歩いていて「2割増しになりましたね」とため息をもらした人もいる。振り向きざまに「山が動いた」と絶句した編集者もいる。あるゲイバーのママには腹部を10秒間だまって見つめられ(←同情)、別のゲイバーのママには「置物みたいですね!」とキラキラした目で言われた(←マニア)。

その上、福祉施設で働いている人に、「お願い、将来介護して」と頼んだら、「入所したらまず過激なダイエットをやってもらうよ。そんなデブをケアしたら、スタッフがからだを悪くするから」と吐き捨てるように忠告された(←鬼)。

みんなにいじめられて、よっぽど死んでしまおうかと……。でも、そんなふうに思った瞬間いつも目に浮かぶのは、葬式で伏見の遺体が入った棺桶を担ぎながら、エスムラルダはじめ若いオカマたちが、「クソ重たいよな」「ったく死んでまで嫌がらせしやがって」「この棺桶、特注かよ」と口々に悪口を言っている光景だ。

ううっ、痩せないと死ぬことも許されない。

2006-04-12

いただいたご本『いま生きているという冒険』

naoki.jpg伏見が近年出会った人物の中でピカイチに印象深かったのが、この本の著者の石川直樹さんである。

編集者のお宅での食事会で言葉を交わすまでは、寡聞にして彼のことを知らなかったのだが、なんというか、その青年は、言葉少なに目の前に座っているだけで異様な、幻惑的なオーラを出しまくっていた。一見ただの線の細い若者なのだけど(中村俊輔をイケメンにした感じ?)、伏見の妖怪アンテナにビンビンくるものがあるのだ! 「どーせタイプだったんでしょ?」とあなたは思うかもしれないが、股間どころか全身の細胞がざわめくような何かを感じさせた。そんじょそこらの有名人ならフーンてな感じの伏見が、こんなに動揺するなんていったい何奴……

後で編集者に聞いてみると、彼は、まだ二十代半ばにも関わらず冒険家として写真家として著名で、文化人のファンも山ほどいる注目の方ということであった。なるほどねえ…と感心したのだが、この本を読んだら、そりゃ妖怪光線だって出るわな(竹下登)とまさに納得。だって北極から南極からチョモランマから洋上からお空の上まで、地球上のありとあらゆるところを探検して、ギリギリの自然に挑戦して生きている男だったのだから。北極では数メートルの距離でシロクマと見つめ合ったこともあるという彼は、もはや人間でない何者かなのかもしれない。

そして、表現者としての彼がとらえる写真が、これまたスゴイ。観ているだけで、そんじょそこらの脱法ドラッグよりも飛んじゃいます(←比喩が悪すぎ)。

●石川直樹『いま生きているという冒険』(理論社/よりみちパン!セ) 1400円+税

2006-04-07

「ゲイ補完計画」投稿2

すっかり忘れ去られていた「ゲイ補完計画」。これも、当事者の中で被差別感や不満はあるにしろ、「まあ、こんなもんかなあ」という空気が強いことの表れだろうか? こういうときもっといろいろな意見が出て盛り上がると、日本でも社会運動への欲求が高まっている、と実感できるのだけど(まあ、熱い人は伏見サイトなんて読んでいない、ということもあるが……)。

でも久しぶりに一件、投稿がありました!

●米子さん企画
■企画名
「一斉アンケート そちらにゲイはいる?いない?」
■企画内容
諸団体に対し、「貴社にゲイはいると思いますか?」というアンケートを実施。アンケートは、団体名公表が前提。硬派な所では官公庁、企業(“就職したい企業ランキング”に入るような)、新聞社、大学、病院、……等々。軟派?な所ではクラブ等のお遊びスポット、ゲイ向け産業・ショップ……等々。

※アンケート送付にあたっては、以下の2点を同封する。
・アンケート回答のために、無理なゲイ発掘をしないようにという願書
・ゲイを含む性的マイノリティに関するガイドライン(QJでもOK?)

Q1.総職員数は何人ですか?(契約・派遣・バイト・パート含め)
A1.男○人/女○人/合計○人

Q2.ゲイの職員はいると思いますか?
A2.いる・いない・わからない

Q3.コメント等をどうぞ

この3点を質問し、集計、結果発表。

「社員6千人、自由な社風を謳う大企業A社のゲイはゼロ人らしい(本当?)」
「我がB社はゲイしか採用いたしません!」
「男女平等や人権擁護に声高らかなC新聞社は返事ナシだった」 ……等々。
集計の結果、「外資系はオープン」とか「○○産業はオープン」といった
傾向が出る!かもしれません。

「いくら大企業でも、ゲイ人数ゼロなんて言い切る会社にはやだなー」とか、
「これだけゲイウェルカムなコメントを寄せる所ならちょっとはマシかも」等、就活にも大役立ち!かもしれません。

また、「無回答」の数もチェックポイントです。「職員のプライベートにはお答えできません」と白票を投じるのならともかく、「音沙汰ナシの黙殺」とした所がどれだけあるか……ゲイ問題云々の前に、こういうアンケートに非協力的なツレナイ人たちとして実名公表しちゃいます。

■企画発案の経緯……私的なことも含めて
私が以前勤めていた某大企業・甲社(男女比は男7対女3程度?)には堂々たるオープン・ゲイがいました。いまは社員の大半が男性という中小企業・乙社に勤めていますが、ここにはそういう空気がないようです。「ホモくさくねー?」というヒソヒソ話はありますが、ゲイを含む性的少数者に対しては「気持ち悪い」とか「ありえない」という発言すらあります。甲社はパイが大きく、人権にも敏感な社風だったためかもしれません。乙社はパイが小さい分、閉鎖的なのかもしれません。本人の資質もあるでしょうし、ほかにも様々な要素はあると思いますが、この差はどこからくるのか……と考え、発案しました。(因みに私自身は♀・バイ・クローゼットでございます)

■企画内容を鑑みて……
自分で考えていても、正直、穴(またの名をデメリット)の多い企画案です。
アンケート自体が、とてもプライベートな部分に触れています。
職場等で自らの性志向をオープンにする妥当性があるのかどうか、
それが第三者に公表される必要性がどこにあるのか……。
何よりお堅い職場でクローゼットにしている人に迷惑がかかりかねません。

……あと、マジメすぎるかも!?

「企画者の実践は不問に伏す」、「無責任な企画でけっこう」という伏見さんのお言葉に依拠しての投稿ですので、平にご容赦を……。

2006-04-05

メイキング・ラブ

making_love.jpg映画『ブロークバック・マウンテン』に関しては、多くは語らず、いらだつので他人の批評は極力読まないようにしている。自分の心の聖域に確保しておきたい気分の作品なのだ。

昨日はロードショー公開で二度目の鑑賞。平日にしてはまあまあの入りの、新宿武蔵野館の前から3番目に座った瞬間、いまから二十数年前、浪人生をしているときに、ゲイ映画『メイキング・ラブ』を独り観ていた光景がフラッシュバックした。

帰ってきて大塚隆史さんにメールで問い合わせてみたところ、あの映画の公開も武蔵野館だった。やっぱり……。『メイキング・ラブ』のときは、場内はもっと閑散としていた気がするし、ドキドキしながら周囲を見回しても(←まだ二丁目デビュー前でどこか性的な出会いを期待していた)、ゲイらしき人は前のほうに座っていた怪しげなおじさんだけだった。今回は観客にゲイらしき若者、カップルがふつうにいた。

『メイキング・ラブ』も、女性と結婚していた男性が同性への欲望に目覚めて、自身に忠実に生きて行くことを選択するという物語で、まだ十代だったぼくに何か非常に大きなものを与えてくれた。当時、人気だったテレビドラマ『チャーリーズ・エンジェル』のサブリナ役、ケイト・ジャクソンが主演ということもあり、それなりに話題にはなっていたように思う。しかしヒットにはならなかったはずだ。出演者たちのその後もパッとしなかった。

あの日、19歳のぼくは、作品に深く打たれながらも映画館の暗闇でひどく孤独感に苛まれていた。その頃はまだ、恋人はおろかゲイの友達さえいなかったのだから、一筋の光は見えても、どこか途方に暮れるしかなかった。

あれから四半世紀近く経って、『ブロークバック・マウンテン』はアカデミー賞を(作品賞は逃したにせよ)受賞し、日本でもそれなりにヒットしている。ゲイ映画に出た俳優は干されると言われたハリウッドで、ヒース・レジャーの評価は逆に大いに高まった。

二度目にもかかわらず、ぼくはまたしても涙が止まらなかったので、イニスが「I swear…」とシャツに語りかけエンドロールになるとすぐ、明かりを避けて席を立った。ふと、うしろで鑑賞していた若いゲイカップルの姿が目にとまった。彼らの手はしっかりと結ばれていた。それは四半世紀前には考えられない光景だった。

2006-04-04

斎藤綾子・新刊記念!

ff.jpg斎藤綾子さんが新刊『ハッスル、ハッスル、大フィーバー!!』を発表した。その名の通り、パチンコ小説である。もうパチンコ依存症にはたまらない作品だ。帯の言葉を借りると、「セックスも男遊びもテキトーにこなし、執筆もパチンコほど熱中できない独身小説家が、ある日突然にとり憑かれた”死後の不安”。負け犬ポルノ作家(37)、ついに自分の墓を買う」。

綾子先生とは毎晩のようにパチンコについて長電話する仲間で、というか綾子先生のパチンコ道は、オチンコ道同様、プロ以上のものがあるので、とにかく勉強させてもらっている。伏見も現在、同じくパチンコ小説を書き上げつつあって、友情の証で同時期に出版したかったのだけど、生活費捻出のために他の書き下ろしを優先させて、それは叶わなかった。自分もパチンコ店を舞台に描いていて思うのは、やっぱ綾子さん、描写が抜群に上手い! こんなふうに表現できたらなあと、うらやましかった。

綾子ファンならずとも、パチンコファンには必読の欲望小説、乞うご期待!

●斎藤綾子『ハッスル、ハッスル、大フィーバー!!』(幻冬舎) 1400円+税

★さて、今回は、仲良しの綾子先生の新刊発表を記念して、綾子先生と伏見がレディースコミック誌「ease」で連載していたお悩み相談の第2回を、ここにアップロードさせてもらうことにした。単行本にしようという企画ではじまったものだったが、残念なことに雑誌の休刊にともなって3回で終わってしまったものだ(どこかの編集部で続きを引き取ってもらえないですかね?)。
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2006-04-03

ニクヨに感謝!

clubhouse.jpg
ここ数年オカマの日にちなんで開催されている、歌舞伎町の巨大キャバレー「クラブハイツ」を借り切ってのゲイイベント「せれぶれいしょん」。ドラァグクィーンショーあり、ダンスパフォーマンスあり、歌謡ショーありの豪華なパーティで、中でも人気ゴーゴーボーイたちを贅沢に使った下着のファッションショーは生唾もの!(笑) 近年、伏見はこれを見るのを人生の生き甲斐にしていた(←大袈裟じゃない)。

ところが、今年はチケットを入手することができず、あぁ、これじゃあ2006年は命の洗濯をすることができない、と悔しがっていた。しかし、前夜になって、「せれぶれいしょん」の出演者、スタッフである肉乃小路ニクヨちゃんから招待枠に入れてくれるという電話をもらったのだ(なんて心がけのよい後輩!)。もうホント、飛び上がるほと嬉しかった。それで、これほどのイベントは滅多に見れないと、仲良しの斎藤綾子さんを誘うことにし、伊勢丹の地下で花見用の弁当まで買って、二人いそいそと出かけていった。

そして、今年も本当に満喫した。ニクヨちゃんの目配りの効いた女主人っぷりやショーもすばらしかったし、注目のダンスチーム、nonochicの荘厳な男性舞踊も見事だった。そして、Underwear of fashion showにはなんというか感動さえあった。去年までのからだ自慢、股間に目が釘付けのパフォーマンスもそれだけで十分眼福だったが、今回は途中、ゴーゴーボーイたちがカップルに扮して登場し、海辺に遊びに来たふうのカジュアルな服装を脱がせ合って水着になる、という演出がなされていた。それがただモッコリを誇示するだけでない、とても幸福な気分に会場を酔わせるものだった。

考えてみたら、あんなにハッピィにゲイカップルを表現したものをライブで見たことはなかった。これまでクラブでも他のイベントでもなかったパフォーマンスではないか?

恒例の浦安ダンシングチームのディズニーばりの(笑)のショーも大盛り上がりだったし、ラストの会場を巻き込んでのダンスタイムも見ているだけで鳥肌が立った。みんな場の作法をよく心得ているし、いっしょに楽しもうという共感に溢れていた。このところ、ゲイコミュニティは元気がなかったり、悲しいニュースが多くて、伏見もやる気をなくしていたのだが、とてもいい氣をもらった。エンパワーメントされる、とはまさにこのこと。あの空間には愛の波動があった。

心からニクヨちゃんに感謝! そしてあれだけの舞台の裏を支えたスタッフの方々に惜しみない拍手! このイベントがどれだけ志の高いものかは、今回のNoblesse Obligeというテーマにもよく表れている(この宣言文がとてつもなく美しいので、ぜひ読んでみてください)。願わくば、来年もまた開催してもらいたい。

2006-04-02

いただいたご本『オバサン論』

o.jpg他人ごととは思えないタイトルの本である。

以前、二丁目で背後から「オバサン!」の呼び声を耳にして瞬時に振り返ってしまった自分は、オバサン・アイデンティティを持っているに違いない(あぁ、アルチュセール……)。昨今では「オカマ!」よりも「オバサン!」のほうにドキッとする四十二歳さ。ここのところ足をくじいて散歩をさぼっていたら、体臭がすぐにオジサンになって、自分でもウンザリしているのだが、気持ちのほうはやっぱオバサンそのもの。

著者の大塚ひかりさんは、源氏物語などを独自の解釈を紹介している古典エッセイストである。伏見はQJ vol.3「魅惑のブス」で、「ブス論」の第一人者としてお招きしたことがあって、そのインタビューも実にコクのあるものだった(『性という[饗宴]』収録)。古典的な知識と、ご本人のこだわりとが絶妙にミックスされた文体は、彼女にしかないもので、本作も最初から怨念全開でとばしている(笑)。

副題の「オバの復権をめざして」に共感する全国のオバサン諸君、この本に結集せよ!

●大塚ひかり著『オバサン論』(筑摩書房) 1400円+税

2006-03-31

DKNY

DKNY.jpgパチンコで数時間にン万円すってもまったく平気なくせに、他のものにはほとんどお金を使わない伏見である。パチンコに印税丸ごと持っていかれて余裕がないのもあるが、そもそも消費という行為に興味がわかない。物欲はほとんどなし。その上、服飾品を買いに行くのが何より嫌い、ときてる。だって、なかなか合うサイズがないし、似合う(と思える)ものを見つけるのがとにかく至難の業。試着室は恐怖の空間で、あそこの鏡を見ることくらいつらい瞬間はない。それで服は必要最小限しか持っていない。

息子のやることにめったに口を出さない老母にまで、
「あんた、人前に出る仕事してるんだから、もう少し着るものを買ったら?」
と言われるてしまうくらいだ。
「うっせんだよ、こちとら文士でモデルじゃないんだから、着てるもので見栄張る必要ないんだよ!」
と言い返すのだが、いつも同じ服を着てるのは、実は、洋品店で絶望の淵に立たされたくないからだ。世界中の鏡よ、全部割れておしまい!

しかし本日、いつも着回しているラガーシャツ(オカマの戦闘服)がクリーニングに出してあって一枚もないということが判明。外に着ていく服がまったくない。もう清水の舞台から飛び降りる覚悟(本当にそんな気分なの)で、電車で少し離れたところにあるエディーバウアー(サイズの大きいものがある)に出向いた。次にショッピングする勇気が出るのはいつになるのかわからないので、まとめ買い。でも結局買ったのは、ラガーシャツ(オカマの戦闘服)とチェックのシャツ(デブの戦闘服)などなど。

そんなんで帰ってきてクローゼットの整理をしていたら、老母が、
「このダウンはまだ着るの? 捨てるんだったらクリーニングには出さないけど」
と毎年着ているDNKYのダウンを指差した。以前フライトアテンダントをしていた相棒がシドニーで買って一冬着たものを、譲り受け、気づいたら十年も愛用していた。その間、寒くなるとどんなときでもぼくの傍らにいてくれたものだ。捨てるのは忍びなくて来年も、と思うのだが、もうさすがにいろんなところにほころびがあって、羽毛が出てきてしまうようになっていた。

なんだか寂しいけれど、お別れすることにした。十年も温かく寄り添ってくれて本当にありがとう。

2006-03-29

sakura.jpg先週は人の生死について考えさせられる一週間だった。知人が相次いで亡くなったり、大病をしている恩人をお見舞いしたり、海外で働いていた親友が、あわや半身不随かといった大けがで成田に搬送されてきたり、なんだか慌ただしかった。

単調な日常にときとしてポッカリ現れる向こう側の世界。満開になった桜がやけに切なくて、来年はどんな気持ちでその花びらを見上げているのだろうかと、思わずにはいられなかった。

「ゲイ補完計画」はまだ投稿が少ないので、もう少し応募を待ってみます。やっぱりみんな、状況に満足してるってことなのかな? 投稿はこちらのフォームから。

2006-03-22

ご冥福をお祈りします

aeraq.jpgフォトグラファーの早坂ヒロイチ氏(他のお名前でもお仕事なさっていたのですが、伏見とはこのお名前だったので)が急逝されました。早坂氏には、もう十年近く前、ぼくがAERAの「現代の肖像」に取り上げられたときに、数ヶ月にわたって取材していただきました。(若き日の)エスムラルダや肉乃小路ニクヨとの二丁目での撮影、唐十郎氏などとのシンポジウム、名古屋でのゲイたちとの会議などに同行してくださった姿が、いまでも目に浮かびます。

個人的なお付き合いはなかったのですが、その後はどこかですれ違ってご挨拶する度に、ニコニコと応えてくださいました。右の写真は、うちの近所の河原で相棒と二人で撮影をしてもらったときの、ポラロイドの一枚です。なにかあの頃のぼくらが写し込まれているようなショットで、ぼくはこれがとても気に入って大切に手元に置いていました。

心よりご冥福をお祈りします。

2006-03-20

週末は新潟

niigata.jpg週末は新潟へ行ってまいりました。新潟女性財団主催の講演会で、聴衆はおもに中年のおばさまたち。用意していった講演原稿が少々難しすぎることに途中で気づき、「ジェンダーフリーはなぜ駄目なのか」というテーマから、「なぜ「同性愛者」はいるのに「潮吹き者」がいないのか」といった古いネタに方向転換(笑)。みなさんと楽しい一時を過ごすことができました。講演の後は、しばし新潟日報のインタビューを受けて、ホテルへ。

新潟県は、幼少の頃、家族で鯨波海岸に海水浴へ行ったことはあるけど、新潟市は初めてだったので、一泊して夜は現地のゲイバーに繰り出すことに。「視察」というのは言い訳で、こしひかりな男子との出会いを股間に期待していたわけっス。夜まで時間があったので、講演のモードを転換するために駅前のパチンコ店でエヴァを打ち(←病気)、部屋で「女王の教室」を見ていたら(←夢中)、いつのまにか深夜に。「弐号機出撃!」。プロ臭カットで臨んだナイトライフは、テニスサークルのイケメンくんたちの輪にまんまと潜入することができ、眼福、眼福。

翌朝は、某新聞の新潟支局に転勤した旧知の記者とブランチ。竃家というおむすび屋さんで(写真)名物の焼きおにぎりや、味噌のブレンドされたソフトクリーム(美味!)をご馳走になりながら、近況を語り合う。記者の運転で信濃川沿いをドライブし、越後を満喫。遊び過ぎで帰りの新幹線ではすぐに眠りに落ちたのだけど、熊谷を越えた辺りで目覚めると、関東平野一面が砂塵に覆われていた。そんな光景は生まれて初めてで、愕然とした。

2006-03-15

ヨン様に愛されました

doll.jpg単行本3冊一挙書き下ろしの反動で、このところパチンコに走っています。っていうか、書き下ろしの最中もストレス解消を言い訳にやっていたわけですが、先週あたりから病的に打っています。おもにエヴァだけど、新宿のエスパスでは水戸黄門で大フィーバー! やっぱオカマの聖地ではコウモン様でしょ(ベタ)。渡辺恒三はごめんだけど。

で、近所のパチンコ店にCR冬のソナタが入って、二日目狙いで(最近プロは初日よりも二日目のほうが台が熱くなっていると読む傾向)朝から台に向かったわけです。冬ソナは観たこともなく、ヨン様に興味を抱いたこともなったのですが、どうも相性抜群の模様。2千円を突っ込んだあたりで、5連ちゃんが来たので、ん?好調台? それから1箱呑まれて、また3連ちゃん。さらに1箱呑まれて、今度はなんと17連ちゃん!と笑いが止まらないとはこのことでした。

朝からヨン様に「愛してる」だの「きみを離さない」だの「ごめんね」だの言われ続けて、すっかりメロメロ。おばさまたちのお気持ちがちょっとわかりました。あんなまっすぐな目で見つめられたら、そりゃ、黒柳徹子じゃなくても錯覚します!(笑)

*写真は、ホールに飾られた本日の成果の一部!←自慢

2006-03-08

自分の問題?

deni.jpg続けざまに、古くからつき合いのある親友たちにこんなことを言われた。

「あんたって周りにちょっと頭がヘンな人を招いちゃうところない? あんたから離れて生活していると、ホント、ああいう人たちに遭わないんだよね」(←海外で暮らしているR子嬢)

「伏見は、心に不安やら不全感を持っている連中を引き寄せちゃうんだよ。それって本を出してるからとかじゃなくて。だって学生時代からそうだったから(笑)」(←地方で暮らす同窓生)

う−ん、そうなんでしょうか? 自分から抜け出て生きたことがないので、よくわからないのだけど……。でも、たしかに、ネガティブな氣を向けてくる連中はあとを断たない。講演とかでも、「なんか文句つけたろ!」みたいな人はよくやって来る。自分の頭の中で勝手に伏見を仮想敵に仕立てて、怒りをぶつけてくる人もいる。でも、それは、多少なりとも目につくところで発言していれば仕方ないだろう、と思っていた。とくにゲイ関係では、とりあえず伏見につっかかれば、何かを言った気になれる人たちもいるみたいだし。

でも振り返ってみると、たしかにそれだけでなく、少し壊れた人たちが寄ってくる傾向がないとは言えない。なんでこんな非常識なことが……とか、どうしていい大人がこんなことするの!? というケースはこれまで珍しくなかった。最近も、これってある種のストーカーだよなあ、と思える件があった。でもそれは自分に問題があったってこと? 「いらっしゃいませオーラ」を出してるってこと?!

いやん、もう、お願いだから、僕につきまとわないで! 伏見なんかをターゲットにするのはやめて、もっと大物に挑んだり、根本的に自分の人生を充実させることに専心してくれよ。……と祈りながら、深夜のファミレスでまた過食をしてしまった。結局、食いじの言い訳なんだけど(笑)。