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真実・篠田博之の部屋8 [2000年09月30日]
真実・篠田博之の部屋8  番外編では、このあと、もう一度、篠田氏のやったこと、書いたことの検討をするつもりですが、10月7日までには回答が届くらしいので、混乱しないように、それまで話を進めないでおくとして、今回は、前々から告知していたように、トラブル前史について説明しておきます。ここまで論じてきたことと切り離して論じられる内容ですので、出したところで問題はないでしょう。
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 我が連載「魔境の迷路」は、編集部ノータッチで進んでいたことを前に説明しました。この連載は、先々まで原稿を書き過ぎてボツにし、ミニコミ「ショートカット松沢呉一」(以下「ショー松」)で「風俗バンザイ」としてまとめたことは創版『風俗バンザイ』および徳間文庫『風俗就職読本』で説明した通り。そのため、連載では、それまでの路線をあっさりやめて、第二部に入ったわけです。
 それに対しても編集部からは特にコメントはありませんでした。私にとっては、こういう関係だったからこそよかったとも言えます。おかげで暴走しまくれたんですから。
 誤解しないでいただきたいので、間もなく「番外」で詳しく説明しますが、編集者と書き手の関係は、さまざまあっていいのです。篠田氏のように「二人三脚」としながら実践できていないことは問題ですが、二人三脚と表現するほど密である必要は必ずしもありません。
 ですから、連載する上で「創」のやり方がまずいと思ったことは特にはなかったのですが、それ以外のところでの問題はいくつかありました。私から見ると、とにかくいい加減で、やる気のない編集部であることは間違いありません。[書き手が気持ちよく仕事ができる環境を作るというのが編集者の役目]という篠田氏言葉は、実態を知る者にとっては空疎なものとしか感じられません。
 人数が少なく、忙しいのだろうと、私は半ば諦めて対処することにしましたが、ルーズさだけでは説明しきれない篠田氏の無神経さ、不快さには度々キレそうになっています。篠田氏の人となりを非常によく表すエピソードを挙げておきましょう。
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 一昨年1998年のことです。2月27日、私は「ショー松」版「風俗バンザイ」を篠田氏に渡しています。「どうせくれるだろう」と思っていたのかもしれませんけど、篠田氏からの要請があったわけではなく、礼儀として渡しておいただけです。
 そして、3月9日に、篠田氏が「うちで単行本を出さないか」とFAXをしてきます。しかし、篠田氏は内容を積極的に評価して、こんなことを言ってきたのではない可能性があります。後に知ったのですが、「創」誌面において、「ショー松」で「風俗バンザイ」を出す旨を告知したところ、当時はまだ面識のなかったポット出版の沢辺社長はわざわざ予約をしてくれたそうです。それを読んだ沢辺氏は篠田氏に電話をして、「本にしたい」と申し出たのですが、篠田氏は「うちで出そうと思っている」と沢辺氏に伝えます。
 正確な日付まではわからないのですが、どうも篠田氏は、沢辺氏が出したいと言ったがために、他社に渡したくなくなっただけなのではないかとも疑えます。というのも、これ以降、何ら具体的な話が篠田氏からはありませんでした。他社が動き出すと急に惜しくなるというのはあまりによくある話です。積極的な自分の判断ではないので、惜しくなったはいいが、よく考えたら、やっぱり出したくないということになって、後に一方的に出版社が反故にしてくることもあります。このために、結局どっちからも本が出ないことになる。ひでえ話ですが、本当のことです。
 4月下旬、青弓社からも本を出さないかとの話をもらい、「『風俗バンザイ』を創出版が出すかどうかよくわからないので、もしこのまま話が進まないのなら、青弓社から出したい」旨を青弓社に伝え、青弓社は創出版の意思を確認して欲しいとのことでしたので、このことを篠田氏にも伝えました。出すなら出す、出さないなら出さないで、はっきりしてくれないと、青弓社との話を進められないのですから、篠田氏のルーズさは本当に迷惑です。
 しかも、篠田氏は、ポット出版から話があったとのことを全然教えてくれてませんでした。ポット出版からの話は、創出版から出すと最終的に決定する前のことですから、ポット出版からの話を私に伝えなかったのは、はっきりルール違反です。
 一般に、雑誌掲載原稿を単行本にする第一交渉権は、その雑誌の発行元にあるとされるわけですけど、これは雑誌を出している出版社に有利な慣例でしかありません。その旨の取り決めが契約書にない限り、雑誌に出した原稿は当該号で複製頒布することしかできないのですから、単行本に関して、雑誌の出版元は著作権上何の権利もなく、どこで単行本を出すかは著作権者たる著者の意思が最優先されます。
 拙著『鬼と蠅叩き』がそうであるように、雑誌の発行元で出したくなければ、何の承諾をとることもなく別の出版社と話を進めてよく、それに対して文句を言われる筋合いはないのです。もちろん、担当編集者には「うちの金を使って、ともに苦労した連載を本にするのなら、一言あって欲しかった」という感情が生じましょうから、礼儀としては雑誌を出している出版社に出す意思があるか否かを確認するのが好ましく、私も、翔泳社から出すことを決めてから、扶桑社に「翔泳社から出しますけど、問題ないですよね」と申し出て、扶桑社には出す意思のないことを確認しています。
 あの連載は、単行本を何冊も出せるだけの量が溜まっていながら、扶桑社からそのような話は一切なかったのですから、このような通告さえしておけば、信義上の問題も特にないでしょう(あとになって、「扶桑社から出すべきだった」と言う「SPA!」の編集者がいましたが、だったらさっさとやれよ、と言うしかない)
 したがって、篠田氏がポット出版の話を断る権利はこれっぽっちもなく、これは著者の権利を軽視する行為です。さすが著作権知らずの出版社です。
 もし私が疑っているように、ポット出版が出したいと言い出したことを契機にして初めて篠田氏が出したいと言い出したのなら、「自分の出版社で出す本を他社に決めてもらうなよ、みっともねえ」という話ですし、仮に、創出版が出すことを決めて以降、ポット出版からの話があったとしても、最終合意に達していない以上、「ポット出版から出したいという話があるのだが、やはりうちで出させて欲しい」と私に申し入れるべきでした。既に篠田氏が「うちから出しませんか」というFAXを私に送っていたとしても、私としては、青弓社なりポット出版なりも選択肢に入れていいのです。
 『風俗バンザイ』の原稿のほとんどは「創」ではなく、「ショー松」が初出です。したがって、出版界の慣例からしても、「ショートカット」の発行元が改めて単行本にする第一交渉権をもっていると言えるのですから、「創」とポット出版や青弓社は、ほぼ対等の関係でしかありません。にもかかわらず、これを私に教えなかった篠田氏は、私の出版の妨害をしたと非難されてもしょうがない。実際、今になって考えると、ポット出版から私は出したかった。いや、創出版じゃなければ、どこでもよかった。
 当時は、創出版が本にしてくれるというので感謝もしていましたが、著者の権利を踏みにじることをやっていたのですから、感謝する理由など一切ありません。
            *
 そんなことがあったとは露知らず、3月から4月にかけて、私は「早く結論を出して欲しい」と幾度も催促しながら無視され、最初に「うちから出さないか」と言ってきた3月9日から一カ月が過ぎた4月10日にようやく初のミーティングが開かれ、ここで創出版から出すことを確認しています。
 このミーティングも篠田氏からの提案で実現したのではありません。この日に青弓社との打合せがあったために、その前に篠田氏との話を決めておきたく、その旨を伝えて催促して、ようやく話し合うことが実現したのです。篠田氏が「うちで単行本を出さないか」とFAXしてきた3月9日以降にポット出版が問い合わせたのだとしても、篠田氏の態度からすると、ポット出版や青弓社の話があったから、篠田氏は積極的興味などないまま、『風俗バンザイ』を出す最終判断をしただけなのだろうと私は感じているわけです。
 このミーティングの話が決まったのは4日前の4月6日のことです。この際に、篠田氏は「『ショー松』をもうワンセット送って欲しい」と言ってきます。あれは限定で出したもので、タコシェにも発行元にも在庫は既になかったため、私はフロッピーを送りました(結局、四谷文鳥堂に残っていたものをあちらは購入することができたらしいのですが)。担当の久保田氏用ということなのですが、元がコピーなんですから(あの号は簡易印刷だったかな)、あちらでコピーしてくれれば済む話です。コピーする手間も省きたいということなのでしょうが、だったら篠田氏のものを久保田氏に渡せばいいだけです。どうも篠田氏はこの時点でまだ読んでいなかった、あるいは読んでいる途中だったのではないでしょうか。また、「うちで出さないか」と最初に言ってきた段階ならともかく、それから一カ月近く経ってこんなことを言ってきたというのもヘンな話です。つまり、本気で出そうと初めて思ったのは、この時だったのでしょうし、そうとしか思えないのです。
 出す気もなく、読んでもいないのに、他社が動きだしたたため、とりあえずツバだけをつけておき、本人には他社からの申し入れを伝えることなく潰し、そのくせギリギリまで出すかどうかも決めていなかったということになりましょうか。
 事実、ミーティングにおいて、篠田氏は内容についてほとんど何も話しませんでした。「1万部売る」みたいな話はしてましたけど、その前に、一緒に本を作る以上は、どういう本にすべきかをもっと語って欲しく、さもなければ「ショー松」以上のものにはなりません。「この人、読んでないな」と気づきましたが、本を出してくれるなら文句は言うまいと諦めました。
 さしたる興味がなくても、本を出してくれることはありがたく、このこと自体を取り上げて強く批判しようとは思いませんし、事実、これまで私はこのことを公に非難したことはなかったと思います。それが単なる行きがかりであっても、ゼニのためであっても、いいんじゃないでしょうか。しかし、篠田氏が、実態とは掛け離れた書き手と編集者の理想を語るとなれば話は別です。
            *
 篠田氏が『風俗バンザイ』にさして興味がなく、ことによると、読んでさえいないことは、これ以降の態度からも窺えます。原稿をゴールデンウィーク明けに渡すことになったのですが、原文は長すぎ、大幅に削らざるを得ないということになりました。当然、何枚くらいに削ったらいいのかは編集部が指定すべきことです。さもなければこちらは作業に入れないのですから、[書き手が気持ちよく仕事ができる環境を作るというのが編集者の役目です]などと言う遥か手前の仕事です。
 そこで、私は早く指定して欲しいとお願いしていたのですが、4月下旬に入っても連絡がなく、4月24日、私はいらついて、以下のFAXを送ります。

(文章は)どの程度削ればいいんでしょう。ざっと数えてみたところ、現段階でやはり700枚くらいあります。/私としては特に希望はないのですが、売れない本になってもいいのなら、永沢さんの『AV女優』や『風俗の人々』あるいは『魔羅の肖像』くらいの厚さの本にしたいとも思ってます。あの厚さなら、ちょうど入ります。それだと作業が楽というだけですが。/あと、削る場合、どういったところを削った方がいいのかのアドバイスもいただけると助かります。読みやすいので松竹対談はできるだけ残した方がいいとか、竹子ちゃんに限らず生の声は残した方がいいとか、「講習」の部分が長すぎるとか、冒頭の「積極派風俗嬢、消極派風俗嬢」の話がど頭としてはまどろっこしいので全部削ってもいいとか(自分でそう思ったんですけど)(前後は省略しました)

 このFAXも無視されてしまい、ゴールデンーウィークに入った4月30日、再度、催促のFAXを送ります。

[連絡をいただけなかったので、『風俗バンザイ』の削る作業にさっさと入っていて、章ごと削ったり、エピソードごと削ったりして、現在、550枚です(あとがきを除く)。「風俗嬢の性欲処理」「男子従業員と風俗嬢」「風俗嬢の支出」「本番できる店」「ヒモ」などの章を9章分すべて削り、風俗店の利益、風俗嬢に対する偏見、明治時代の妾の話なども丸ごと削ってしまいました。話としてはそれぞれ最も面白い部分のような気もするのですが、今回は、風俗嬢の「仕事」という部分のみに絞り、かつ例外的な話を除外することにし、また、偏見云々といった現在の「創」とダブる部分は、今後もっと詳しく連載でやっていくことにしました。/流れの悪いところ、話が幾分重複しているところなども直し済みで、あとはひたすら枚数に合わせて削るだけです。ここまでは比較的簡単に削れたのですが、このあとは難航しそう。/で、先日もFAXしたように、どのくらいに削ればいいんでしょうか。次の単行本の作業に入りたいので早く済ませてしまいたいのですが。いったんそちらに入ると、頭を戻すのが面倒です。ここ2日、3日のうちにやってしまいたいと思っておりますので、早めに指定していただけますでしょうか。とりあえずは500枚をメドに削っておきます]

 これらは篠田氏と担当編集者の久保田氏の連名で送っていますが、またまた無視されて、私は約束どおりゴールデンウィーク明けに、自分の判断で500枚程度に削って、フロッピーで郵送しました。
 その次の打合せで、篠田氏はこう言いました。
 「こんなに削らなくてよかったのに。あと、歴史的な話も残した方がよかったのに」
 死ね、と心の中で呟きました。だから、あれだけ頼んでいたではないか。削るという合意だけがなされていて、それを私は守っただけなのに、どうしてこんなことを言われなければならないのか。「こんなに削らなくていい」というのであれば、どうしてその一言を先に言ってくれなかったのか。どうして何もしなかった篠田氏がこんなことを言えるのか。
 「たぶん」という話ですけど、この時点でも、篠田氏は「ショー松」を読んでおらず、どこをどうすべきかの判断もつかなかったに違いありません。さもなければ、篠田氏の言動は解釈しようがないではないですか。ここで言う「歴史的な話」というのは、私が送ったFAXで削った旨を伝えていて、それを篠田氏は繰り返しているだけですから、読んでなくても言える話なのです。もし私がFAXを送った段階で即答してくれていたなら、その部分を残すことも考慮できたでしょうが、既に原稿ができてから、私が書いたことをおうむ返しに言ってのける神経がわかりません。
 さすがに私は「だから、早く指定してくれと言ったじゃないですか」と文句をつけたところ、正確な言葉の再現ではありませんけど、「まあ、それはいいんだけど」みたいなことを篠田氏は言ったと記憶しています。「やるべきことをやらず、こちらの要求をも無視する怠け者で失礼で、書き手のやる気をなくすサイテー編集者」→「やむなく自分で作業を進めて、とにもかくにも期限内の入稿をやって約束を守ったライター」→「にもかかわらず、その内容に文句をつける腐れ編集者」→「だったら先に言えよと当然のことを主張するライター」という流れですね。「まあ、それはいいんだけど」などと言って済ませる問題ではないでしょう。
 単行本においても、篠田氏がノータッチであろうとすることもいいかと私は思います。だったら、「長すぎるので削って欲しいが、枚数は君に任せる。どこを削るかも任せる。それについて、こちらは口出ししない。だって読んでないんだもん。人が出すっていうから出す意義があるのかなあって思っているだけだもん」と明言してくれればいい。それだけのことです。
 篠田氏がこの本の内容にまで関与したいというのであれば、事前にその要求をこちらに示すべきです。それやらなかった以上、こちらはこちらの判断でやるしかない。何も指定してこなかったことで、既にこっちには不信感があるわけですから、それを元に戻して内容に介入するには、まずは謝罪しかないじゃないですか。それなら、私は「今後は先に先にやってください。しょうがないので、今回はもう一回直します」と言うでしょう。しかし、篠田氏にとっては、「まあ、それはいいんだけど」といったような程度の話であるがために、何の指摘も事前にはしてこなかったわけで、「だったら、あとになってから言うな、このボケが」って話です。本当に失礼で無神経な人だなあと私は改めて思いました。
 その部分を削った事情もFAXで説明しているのですから、ここでこのようなことを私に言う意味は何ひとつありません。にもかかわらず、こういうことを言ってのけるところに、この人の特異なクセが表れています。これと同類の篠田氏の失礼な態度については、今後繰り返し紹介し、分析していきますけど、自分に責がある時にこそ、それをごまかすように他者を貶めるという極めて不快で傲慢なクセです。
 あの人は、どうやら常に私の上に立っていることを主張しておきたいらしい。ところが、何ひとつしなかったことで、それが揺らいでしまう。そこで、「ほら見たことか、おまえに任せたら、こんなことになってしまった。ああ、オレが指摘していたのなら」ということを言って、こちらを貶めようとするのですが、普通なら、こんなことを言えば言うほど、立場がなくなってしまうことくらい理解できそうなものです。それができないところが「特異」なのです。
 本当に自分の非を認めたくない人らしい。「ヒロちゃん、あなたは何も悪くないのよ」ってカアちゃんにさんざん甘やかされて育ったんじゃないかと想像を働かせてみたくもなります。何かここには篠田博之という人物を理解するキーがありそうです。
 繰り返しますが、編集者ノータッチで本を作る方法もあっていいんですよ。しかし、枚数を削ることだけ決めておきながら、指定もせず、あとになって文句をつけるって、最低最悪の編集者でしょ。
 それはさておき、『風俗バンザイ』はのちに文庫になりますが、それ以前に私は増刷しない旨を伝えております。絶版ということですね。契約書はないのですが、慣例からして、創出版は、残った在庫だけを売ることになります。まだ若干の在庫があるようですが、初版5千部を9割方売っているはずですから、利益は十分出ています。さらには、文庫によって、徳間書店から創出版にも数十万円という金が入ってきています。契約書はなく、絶版を通告しているわけですし、在庫は数百しか残ってからず、その在庫が文庫によって売り切れないということは考えにくいため、払わなくても問題はなかったでしょうが、現に支払われております。したがって、金銭面での貢献は十分したことでしょうが、私は連載の写真使用料のみならず、この本で支払ってもらうべきモデル料の立て替え金さえも踏み倒されたわけです。。
 こちらのやる気を失せさせ、金も払ってくれないのに、[書き手が気持ちよく仕事ができる環境を作るというのが編集者の役目]などとホザくことに、私は心の底からの怒りを感じないではいられないのです。死ね! こんな編集長に加担している編集部員どもも全員死ね!

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