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真実・篠田博之の部屋[番外2] [2000年09月02日]
真実・篠田博之の部屋[番外2]  今回のテキストは、出たばっかりの「ダークサイドJAPAN」(以下DSJ)第2号の拙稿です。
 2号の編集後記に、篠田氏からの文書が送られてきた旨が述べられていて、このHPを[参照すればよいのではないかと思う]とかわしております。篠田氏はもっといろんなところに文書を送り付けて、いろんなところにURLが紹介されるようにして欲しいもんです。
 2号も大変評判がよく、編集長の久田君によると、我が佐野眞一批判に対しても、複数のライターから共感する意見があったとのこと。ノンフィクションではなく、オカルト本として出されるべき呆れた本なのですが、いろんな人に聞いてみても、批判的にあの本を取り上げていた書評は、これまでたったのひとつしかなかった模様。私は読んでないのですが、その書評では、そもそも被告のネパール人が犯人ではないとの佐野氏の予断を疑っていたそうで、実は私も相当疑わしいと感じてます。警察、検察が正しいというのでなく、佐野氏が無罪と思い込んでいるために、判断が狂ってしまっている箇所が目立つのです。この書評を書いたのが誰なのかもよくわからないのですが、この人以外のすべての批評はベタ褒めの体たらく。読解力も批判精神も失ったこの国のメディアの惨憺たる有り様がよくわかります。
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 でも、今回のテキストはこちらではなく、DSJ2号に書いたのもうひとつの「元アイドルと風俗嬢と報道された本人の反論」の方です。簡単に説明しておきますと、昨年、元東京パーフォーマンスドールの元メンバーと報じられた風俗嬢がおります。これに対する彼女側の言い分をこの号でインタビューしたのですけど、ここにもいろんなテーマが見え隠れております。
 風俗嬢取材をする時に、本人の望む通りにウソを書くことがあります。スリーサイズ、年齢、出身地、前職などがその典型です。「今まで何軒かの風俗店で働いている」「キャリアが数年ある」「結婚していて子供がいる」というのもしばしば隠します。例えばどこかの企業の内部告発をする人を出す場合、会社をクビになりかねないような事実はテレビだって雑誌だって隠し、時には部署、年齢などについてウソをつきます。当然やるべき処置であり、これができないのでは、マスコミの信頼はがた落ちとなり、内部告発するバカはいなくなるでしょう。
 しかし、スリーサイズについてのウソは、ほとんどの場合、本人の見栄だったり、営業上の対策だったりするわけです。こういうウソに協力することについては若干のためらいはありますが、その場でサイズを計らない限り、本当のスリーサイズなんてわかるはずがなく(本人が教えてくれることもありますが)、裏の取りようがないので、ウソに協力するしかない。また、物書きでも、年齢を偽っている人がいるのですから、ことさらこのことで非難されるべきではないでしょう。
 協力しないウソもありまして、取材対象が雑誌で顔を出せない場合に、「体験はサービスのいいコで、写真は別のコにしてくれ」と店から頼まれることもありますが、これは原則としてお断りします。はっきりウソだとわかっているのですから。ただし、この場合も、プライバシーの保護のために、別の人の写真を使う場合がありますが、私がこれをやったのは、顔を出せないコの代用で、別のコに顔を伏せて出てもらったことが二度あるだけです。
 といったように、許されるウソ、やむを得ないウソ、あえてやるべきウソ、やってはならないウソというのが私の中にはあるわけです。風俗取材においては、それぞれの事情というものもありますから、本人にこれらを確認しつつ行うわけです。そのために、突っ込んだ取材をする場合にこそ、本人の確認をとった方がいいこともあるわけです。つまり、「この部分とこの部分さえ隠してくれれば、あとは全部話してもいいよ」ということがあり、また、宣伝にはならなくなるにもかかわらず、「どこの店の誰かわからない形でなら、この話を書いていいよ」ということもよくあります。客にしている話にはしばしばウソが入ってますから、だったら、あちらの意向を汲んで本当の話を聞いた方がいいってわけです。
 その一方で潜入取材というものがあります。店の承諾を得ない方がいい場合、承諾を得られない場合は、取材ということを隠して客として入るわけです。普段客にやっているサービスのままを体験するためには、この方がいいわけですが、このような潜入取材の時にも、プライバシー保護は当然なされるべきで、私が潜入取材をする場合は、店名さえ明示しません。
 ただし、たとえばボッタクリではないかと疑われる店の場合は、とりあえず入ってみて確認することがあり、この時に悪質なボッタクリ店だった場合、この店の存在自体を否定する人であるなら、店名を書いてもいいかもしれません。
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 といったルールに対して、BUBKAにおいて、堀越日出夫氏がやった記事はあまりに配慮のないものでありました。第一に、「東京顔射倶楽部」のたまきちゃんが東京パフォーマンスドールのメンバーだったという根拠は「似ている」ということだけである点。この場合は、まずもって本人に確認するのがスジではないか。なお、本人はこれを否定していて、私は彼女の言い分をそのまま掲載してますが、これが本当なのかどうか知ったこっちゃありません。仮に、ウソを言っているのだとしたって、現に「似ているだけ」という根拠であのような記事を出すことは非難されてしかるべきであり、プライバシーを既に侵害されている以上、彼女がウソを言っていたとしても、そのことで非難されるべきではない。私自身、実際にどうなのかを論じる必要はないため、念のために店に確認するだけで済ませています。第二に、彼女が容易にどこの店の誰なのかわかるようになっている点。本当に彼女が東京パフォーマンスドールのメンバーだったとして、また、その事実を報道する公的な意義があるのだとしても、それが誰なのかを特定できるようにする必要はありません。「アサヒ芸能」がそうしていたように、事実の報道に留め、個人が特定できない処置をすればいいだけのことです。第三に、堀越氏が客としてついた時の会話を無断で掲載し、ここにプライバシーに関わる事項が含まれていた点。第四に、写真と本人が描いたイラストについて著作権侵害が濃厚である点。
 これらの問題点は、風俗産業特有の事情をも加味して考えなければならないでしょう。「風俗誌なら写真を出してもいいが、一般誌は困る」「若向けの雑誌はいいが、オヤジ雑誌は困る」といった雑誌の選択をするように、個々人に特有の事情があって、場合によっては雑誌名を指定してくることもあります。「『週刊大衆』はいいが、『アサヒ芸能』は困る」といった具合。つまり、夫や彼氏が毎号買っている雑誌はまずいという判断があるわけです。
 したがって、風俗誌の写真を、いくら目線を入れたとしても、BUBKAが転載することはあまりに配慮がなさすぎ、事実、彼女は、これによって、今まで知らなかった人たちに風俗嬢をやっていたことがバレてしまっているのです。こういった仕事を否定する人達が世の中にはたくさんいてデメリットを現に受けるのですから、ここに配慮があってしかるべきです。
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 BUBKAで風俗店の隠し撮りをやっている四谷新ことアリカワというカメラマンもそうなのですが、仮に法的に問題がないとしても、風俗店に警察を介入させるような行為は断じて許されるべきではありません。なぜか。私ら、風俗産業そのものを否定しているわけではないからです。例えば四谷氏のように、サービス内容や料金までを書くなど、自分の行為によって店が摘発されることにも無頓着な野郎は、売防法を肯定し、警察の手先になっているに等しい。ゼニのために、警察に風俗店や風俗嬢らを売り渡すことに対しては怒りを感じないではいられません。
 そのことで店やそこで働く者たちがさらなるデメリットを受けるかもしれないのですから、法的措置はとりにくく、抗議さえできにくいのです。つまり、買春側は捕まらない売防法の現実に乗った上で、彼らは隠し撮りをやり、店や個人を特定できることを書くわけです。
 次の「問題小説」の連載で紹介している、売春生活30年の雪さん(これは本名でも源氏名でもない)がこう言ってました。

[悔しくて泣きながら仕事したことだってありますよ。自分が納得いかなかったらさ、「警察呼んでこい」とか、そういうことを言う客が最低だと思うんだよね]

 いるんですよ、警察を呼べないことを知っていて、こういうことを言う客が。さらには、客に殴られて、「警察呼べよ」と言われた街娼もいます。四谷氏は、こういった客と同じであります。
 汚職の現場を隠し撮りして告発するジャーナリスト同様に、四谷氏や堀越氏が、風俗産業をこの世からなくすべく、このようなことをやっているというのなら整合性はありましょう。それならそれで、この点につき、こちらは彼らと徹底対決するだけであり、いつでも私はやりましょう。
 仮に、こういったやり方が許されることがあるとするなら、その記事によって摘発された時に警察と全面対峙する覚悟があり、現行の法規制や社会の視線に対する異議申し立てをやっている場合だけかもしれません。それなしで、ああいうことを平気でやるヤツらって、ゼニのために単なる弱いものイジメをやってるだけだろ。法規制や社会の視線に対しては既に対決姿勢を明らかにしている私ですけど、個々具体的な摘発に対して、警察と闘う暇も力もないんで、ここまで私はできんです(やる必要がないしな)
 わかりやすい例を出すなら、反体制活動が禁止されている環境において、それが如何に事実であっても、個人を特定できるような形で非合法活動を報道するのは、国家権力に迎合することです。そういった活動があることを広く知らしめることに意義があると感じるのだとしても、個人の特定ができるような表現は避けてしかるべきです。してみれば、潜入取材で、警察の摘発を先導するような記事を書くヤツらは、反体制グループに仲間であるかのように近づいて、そのことを記事にするゲスなヤツらと同じであり、国家権力のスパイに他なるまい。さらには、マスメディア総体に対する警戒を強め、信頼を失わせるという意味では、他の取材者をも売り渡しているのです。
 DSJに書いたけど、私自身、こういうことをやるヤツらのせいで現実に迷惑被っているんですよ。彼らがこういったことを平然とやってのける以上、当然自分らのプライバシーが暴かれ、自分らの写真が全国の風俗店にばらまかれることも覚悟しているんでしょう。実際、私は風俗店に注意を呼びかけるために、彼らの写真をばらまこうとも考えてます。
 不思議なんであります。堀越氏はアイドルストーカーと名乗り、アイドルのプライバシー暴きをよくやっているわけです。芸能人は準公人であって、ある程度プライバシーを暴かれていいという考えがあります。この論理からするなら、マスメディアに関わる人達も同様に暴かれてもいい。芸能人のプライバシー暴きをよしとしない雑誌や個人は別として、そういったゴシップをネタに商売しているメディアの編集者や書き手も、同様にプライバシー暴きをされてもやむを得ない。宅八郎が「噂の真相」編集長の自宅を暴いたところで、文句を言える筋合いではありませんし、宅八郎もまたそのようなことをされることを覚悟していることでしょう(事実「覚悟している」と言ってました)。とするなら、当然、堀越氏もこれを覚悟すべきです。
 世の中には、アイドルファン、アイドルおたくと呼ばれる人達がたくさんいますよね。例えば、モー娘。のメンバーのお姉さんのプライバシー暴きをやるようなメディアやライターに対して、どうして彼らは腹を立てないのでしょう。アイドルの家族のプライバシーが暴かれていいとするのなら、そういった雑誌の編集長や書き手のプライバシーはもちろんのこと、家族のプライバシーも暴かれていいわけです。どんな家に住み、どんなふうに仕事をし、家族はどんな仕事をしているのか、どうして誰も暴かないのでしょうか。これだけインターネットが普及しているのですから、誰かやっていてもよさそうなのに、人に聞いてみても、そういうことをやっているアイドルファンはいないらしい。自分の好きなアイドルがそういう目に遭って、どうして腹が立たないのかなあ。てめえら、ホントにファンなんか。
 私はアイドルに興味がないのでどうでもいいと言えばどうでもいいし、そもそも家族のプライバシーまで暴き立てることをよしとはしませんけど、本人の写真をばらまくくらいはやっていいと思ってます。もちろん、私自身、そうされることを覚悟の上です。
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 今回の記事に関し、DSJの久田君は、私がBUBKAの連載を失うのではないかと心配してくれ、匿名で書いた方がいいのではないかとも言ってくれたのですが、このところ、いろんな名前を使っているとはいえ、私がここで別の名前を使うのはいやらしい。だいたい『東電OL殺人事件』も、文庫を出してくれる新潮社から出ているのですし、先日、原稿を書かせてもらって、また今度何かやりましょうと言ってくれている「新潮45」に連載されたものです。こんだけ長い間ライター仕事をやっていれば、何かを批判しようと思ったら、どっかでしがらみがあったりするわけで、そんなことを気にしていたら、なんもできんでしょ。実際、「新潮45」の編集者にはこの原稿を書くことを前に話していて、「どんどんやってください」と言っておりました。さすが新潮社。
 BUBKAも、まさか「創」のような低レベルの雑誌ではないと思ってますが、BUBKAの編集長はDSJを快く思っていないという話もあるので、どう出るかわからんですね。まっ、DSJがあれば、BUBKAの連載打ち切りでもかまわんしな。どっちを取るかと言われたら、DSJに決まってますもん。そうなったら、とことんやるまでよ。
 四谷氏に対しても堀越氏に対しても、怒っている出版関係者はけっこういて、四谷氏に対しては、複数のライターからその言葉を聞いてます。また、つい先頃、ライターたちの集まりで、堀越氏への批判が噴出していたことを、その場にいた人物から聞きました。
 なんですけど、皆さん、ケンカをしたがらない温厚な人達なんで、私がやるしかないですな。でも、このあと、私の原稿を引き継ぐ内容の原稿を書く決意をした人がいます。彼は私の原稿に大いに触発されたようで、DSJ2号の発売日に電話してきて、その熱意を語っておりました。
 私は直接関わっておらず、意見を述べているだけですけど、3号では、あっと驚く企画も進行中。実現したら、「なんでDSJはこんなことができるんだ!」と話題騒然必至。DSJは爆弾雑誌になってきました。
 2号の編集後記で初めて知ったのですが、宝島社だけじゃなく、創刊号が出る前に早くも訴訟を起こされていたんですね。今回もバーニングとジャニーズの記事など、危ないネタ満載。諏訪署の警察官が「暴走族」に拳銃を抜いてクビになり、その後、一転して「週刊文春」やワイドショーが警察官擁護に回った事件についての記事や、警察とテレビの癒着についての記事も読みごたえありますよ(どっちも、ツメが甘いのがもったいないんですけど)
 断定しにくいので、曖昧な書き方になってしまってますが、ストリップ劇場の摘発云々という記事は、要するに、テレ朝の「大都会列島警察激録24時」のプロデューサーでストリップのファンがいて、この男が番組用の撮影をするために、警察との癒着の中で、いつも通っていたストリップ劇場を摘発させたと推測できるという話であります。前々からこの話は聞いていたのですが、ひでえよなあ。名刺も入手しているそうなので、こんなん、実名で書くべきですよ。そりゃあ、まな板は公然猥褻ですよ。しかし、あんたも楽しんだんだろうが。こいつのせいで、ストリッパーや客は逮捕され、ストリップ劇場は閉鎖に追い込まれたのです。まな板は、外国人ストリッパーも多いので、ことによると、国外退去になっているかもしれません。
 そもそもいつでも摘発できる状態にして黙認するというのが警察の常套手段であり、だからこそ、警察との癒着も進み、警察のヤツらはおいしい思いもできるわけです。そういう状態に晒されているのが風俗産業であり、その状態に疑問を抱くこともなく、ここで生活する者たちの事情を考慮することもない原稿を書いているのが四谷氏や堀越氏ということです。こう書けば、彼らのヒドさがわかるかな。
 2号では、宅八郎もいよいよ、年齢詐称でおなじみの中森明夫の批判を開始。私は全然知らなかったんですけど、堀越氏ってSPA!の「中森文化新聞」によく登場しているんですってね。これも何かの因縁でしょうか。
 今回の表紙も抜群にいいですよね。やる気と売る気が感じられます。対して、「創」ってさ、新しい号が出ても、新しいことに気づかない表紙じゃないですか。さすがに、出してさえいれば、黙っていても金が入ってくる総会屋雑誌としてスタートしただけのことはあります。
 私が好きな同世代のライター(出版界では非常に評価の高い人です)が、ここまで書くに書けなかったテーマをDSJで執筆するとの話もあり、出版界のはみ出し者が集結の様相を呈してきます。
 久田君はどことでもやり合う覚悟をしてます。執筆者の間でも、あの雑誌をバックアップする気運がどんどん高まっていて、篠田氏に、編集者と執筆者の二人三脚というのは、こういうことなのだと久田君は教えてやるといいですよ。こういう熱を感じる雑誌は久しぶりで、ついさっきもレギュラーページのアイデアを久田君に話していたところです(私がやりたいというのじゃなくて、編集部ページとして)。あとは、誌上論争が勃発すると面白いんだけどな。もちろん私はいつでも堀越氏、四谷氏と公開論争しますよ。
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 なお、間もなく、一カ月の期限が来ますが、その前後の一週間ほど、私はまたまた東京にいないため、「真実・篠田博之の部屋」はしばらく新しい原稿は出ません。そのあと、ドガーンといきます。

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