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お部屋109/篠田博之の部屋3 [2000年07月24日]
お部屋109
篠田博之の部屋3
 いやー、実に素晴らしい文章を篠田氏は発表してくれました。
 篠田氏の都合だけを「創」では掲載しておき、その反論には場を提供せず、別の場で行った私の批判に対しては名誉棄損だのと難癖つけてくる。これが「創」という雑誌の姿勢であることを自ら明示してくれたのですから、論敵にするとホントに心強い人です。
 さあて、篠田さんは、いつから裁判官におなりになったのでしょうね。篠田氏のやったことが著作権侵害に該当する旨を私は書きました。これについては篠田氏も[重大な問題]と認識はしているらしいので(本当にわかっているとは思えませんけど)、既に合意がなされてる事項かと思われます。
 しかし、篠田氏が今回の文書に書いてきた「事実」、あるいはこれまで述べてきた「事実」とやらに私は納得しておらず、その多くに合意が成立してません。互いに納得できていないのですから、さらに論ずべく、私は文書の公開と投稿の掲載を求めたわけです。合意ができないからこそ、噛み合わないながらもかつて論じようとしてきたんじゃなかったんですか。これらの齟齬がはっきり存在するにもかかわらず、ここまで2カ月半もの間、私の申し入れを無視し、投稿も掲載せず、そして今回の文書では真実性がないとして[名誉毀損に該当します]と断定する。つまり、真実が何であるかを論ずるつもりなどなく、読者に自分の「真実」を真実だと思わせるために、このような文書を送ってきたとしか解釈しようがない。だったら、さっさと裁判でもやって白黒つけりゃあいいんでねえの、ああまで断定する自信があるならさ。
 しかしながら、ようやっと同じ土俵で議論し、かつ第三者が検証し、判断を下せる環境が整いつつあるのは歓迎すべきであり、これを徹底するために、篠田氏には改めて要求をいたしましょう。この一件は、そもそも「創」という雑誌を舞台にして始まったものであり、読者にも議論の内容を広く知らしめるべきと考えます。となれば、ポット出版のウェブだけでなく、「創」のウェブでも展開することが望ましい。インターネットなら私の原稿をこのまま移植することも簡単、リンクを張るのも簡単、雑誌のような文字数の制限もありませんから、どういう方法にせよ、「創」のウェブ利用者の多くがこのやりとりを読めるようにしてください(○)。また、「創」誌面にも、そのことを告知してください(○)。なにしろ、篠田氏が私の投稿を掲載してくれないものですから、多くの読者は一体何が起きているのかわからないままなのです。それどころか、松沢は、篠田氏の善意を踏みにじり、曲解を書き続けているいるとさえ誤解している読者もいることでしょう。
 そんなスペースはないというかもしれませんが、人の連載にあれほどの分量の文章を入れ込んだ輝かしい実績があるのですから、100字程度の文章なんて、どこにでも入れられるでしょう。編集後記でもいいし、編集長権限で、誰かの連載に無断で入れるのもいいんじゃないかな。
 私はそれが望ましいやり方だとは思いませんが、それぞれのメディアで意見を表明することで議論をする方法もありましょう。この場合は、互いが相手の場にしゃしゃり出ないことがルールであり、仮に相手の場に踏み込むのであれば、自分の場も提供するのがスジです。
 現に篠田氏は私の投稿を封殺しているわけで、その人がどんな神経で、わざわざポット出版に、あのような文書を公開するよう求め、かつ、その文書を他者に送り付ける行為をしているのかまるで理解できないのですが(こういうこともやっているのです)、現にそれをやってきた以上、私の要求を拒絶する理由などありますまい。「創」誌面およびウェブで篠田氏が思う存分書いているように、「創」においても、編集部のノーチェックで思う存分私が書くことによってようやく対等ということになりましょうから、これはこれで今後要求するかもしれませんが、まずはこういった議論が行われていることを知らしめるための告知を入れていただきたい。
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 今後、予定通り篠田氏とのトラブルを古い話に溯ってひとつひとつ説明していきます。これによって、今回篠田氏が書いてきたことのかなりの部分がデタラメであることがおわかりになるかと思いますが、「お部屋112」以降、それをやる前に、全体の整理のため、篠田氏の今回の文書から、今後も引き続き論点となるであろう問題点と、今回新たに提出された問題的を列挙して、批判できる部分は批判しておきます。5月4日付の文書も、公開されたことによって、引用ができるようになりましたが、長くなってしまいますので、こちらはおいおいやっていくことにします。
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 今回は、トラブルの始まり(「お部屋112」以降の数回は、このさらに前史を取り上げます)である「売買春はもういい」という発言について説明します。
 次回「お部屋110」では、議論を進めるために障害となってきた篠田氏の欠陥を指摘し、今後このようなことを繰り返さないように申し入れをします。
 「お部屋111」では、それ以外について述べます。
 「お部屋112」は、とっくに書き上がっていたものですが、今回の篠田氏の最も滑稽かつ愚劣な部分に対する反論になっているため、これに手を加えて発表します。
 続いて読んだ方がいいので、以上を2日あるいは3日ごとにUPしていきます。
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 これまでのやりとりを見ていると、篠田氏は、何が問題なのか把握していないことが多々あります。これ以上、同じことを繰り返されるのはイヤなので、こちらの質問や要望箇所がわかるように、○をつけました。無視することなく、すべてについて回答するなり、実行するなりしてくださいな。
 ダラダラやってもしょうがないので、今後、相手の質問や要求があった場合は一カ月以内に回答することを提案します。もちろん私もそうします。時間がなくてできないというような場合はその旨申し出ればよいのではないでしょうか。
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●「売買春はもういい」発言について
 これは全文を公開してからやった方がいいのですが、篠田氏は、またまたウソをこきやがっていますし、何がどう論点になっているのか理解できないようですので、もう一回整理します(以前も同じような文書を送っていることを、すっかりお忘れになっているようです)
 1999年6月29日、別件で篠田編集長に電話したところ、「売買春はもういいよ」と私は言われました。私はその意味がよくわからず、最初は連載の打ち切りの意味だと受け取り、愕然としました。私がそうとらえたのには事情があります。この半月ほど前、私は担当編集者に次号から風俗嬢のインタビューをしばらく掲載し、そののちに内容をリニューアルする旨を伝えていたのです。にもかかわらず、このようなことをわざわざ編集長が言うのですから、私が伝えていた方向転換自体を否定している、あるいは、方向転換しようとも連載自体を否定しているととらえるしかない。
 私は「はっ?」といった反応しかしなかったと思うのですが、「反論がないことをやり続けても、読者が飽きるだろう」といったニュアンスのことを続けて篠田氏は言い、どうも連載の打ち切りではなく、路線変更を求めてきたものだとわかってきます。また、当時、私が書いたものを見直すと、篠田氏は「込み入った内容になると、読者がわかりにくい」というような内容のことも言ってますが、どのタイミングでの発言だったかまでは覚えてません。
 私は「でも、リニューアルすると久保田さん(担当編集者)に伝えてあったのに」と言ったのですが、篠田氏の反応がヘンでして、どうやら担当編集者から何も話を聞いていないらしきことに薄々気づきだします。もし私がもう少し意地の悪い人間であれば、ここで「あんた、もしかしたら、このことを知らなかったんじゃないだろうな」と追求するところですが、「次号からインタビューを出すと久保田さんに伝えてあるんですよ」と言い、さりげなく私はその内容までを篠田氏に教えました。ところが、篠田氏は、「前々からインタビューを出すと言っていたじゃないか」と、つっかかるような言い方をしました。
 どうやら担当編集者に確認をしないでこんなことを言ってきたこと自体腹立たしかったのですが、頓珍漢なことに、ここで篠田氏が言う「前々からインタビューを出すと言っていた」という話は、既に誌面で実践していることです。その際に出し切らなかったインタビューをこのあと数回にわたって出すと久保田氏に伝えていたのですから、篠田氏は間違いなく、久保田氏からの報告を受けていないのです。
 そこで私は、以前、南智子など、何人かのインタビューを掲載したことを篠田氏に言います。これに対して篠田氏は「ああ、ああいうのか」と小ばかにした口調で言いました。篠田氏をご存じの方ならすぐに思い浮かぶと思いますが、人を小ばかにした口調はいつものことではあります。しかし、この流れでのこの言葉には思いきり腹が立ち、「てめえ、なんだよ、その失礼な言い方は。てめえはそんなことを執筆者に言える資格があるんか。やることもやらねえで」(この意味は「お部屋113」で説明します)と今までの鬱憤を晴らしたくもあったのですが、温厚で気弱な私は黙ってました。
 後に、私の原稿に対して歯の浮くような言葉を平気で書くようになる篠田氏ですが、「ああ、ああいうのか」ですよ。
 ここからは私の推測です。篠田氏は私の連載に何か一言言っておきたいとの思いがあったらしい。それまでは感想らしい感想も述べたこともなく編集部と私は原稿を送るだけの事務的な関係であったにもかかわらず、その思いがあったために、私がかけた電話のついでに深く考えないまま、「売買春はもういい」といったことを口にしてしまったようです。しかし、私が連載内容をこのあと変えると編集者に告げていたことを知って立場がなくなります。
 さすがに「マズい」と気づいたんだと思いますよ。しかし、それを素直に認める人ではありません。都合が悪くなると、それをごまかすために相手を貶めて、高みに立とうとする癖が「前々からインタビューを出すと言っていたじゃないか」といった難詰めいた口調と「ああ、ああいうのか」という小ばかにした口調になったに違いありません。
 私はそう感じましたし、それを裏付けるように、電話での会話は、なんだかよくわからないうちに尻つぼみになってしまい、「まあ、そういうことで」といったところで終わります。ここに書いた以外にも篠田氏は何か言ったかもしれませんが、いずれにしても、こちらが電話をした際に、ついでに言ってきただけのものであって、その時間もたった1分程度ですから、篠田氏が自分で書いているような理路整然としたものではあり得ません。
 篠田氏は、「松沢呉一さんとの件について2」でこんなことを書いています。

[次回はインタビューでいくという変更案が担当者に伝えられており、それが編集長である私に伝わっていなかっただけのことだったのです]

 「だけのこと」って……。担当編集者は、書き手にとっては編集部を代表する存在であり、担当編集者に通告すれば、編集部に伝えたに等しいわけです。それが編集長に伝わっておらず、電話で原稿の内容変更を求めるのに担当者に確認もしていないこと自体、相当恥ずかしい話じゃないですか。どうなってんだ、この編集部は。担当編集者にいくら言っても話が伝わらないのなら、何のための担当編集者かって話です。編集部に対する信頼を無にしかねないことをやっておきながら、「だけのこと」としてしまうのですから、呆れたものです。
 しかも篠田氏はこんなウソも書いてます。

[松沢さんから事前に伝えられていたメッセージがその電話の直後にでも私に伝えられれば、あれは誤解に基づく発言だったとすぐに本人にお詫びし、恐らくそれですんだのでしょうが、それがわかったのがだいぶたってからで、話がこじれてしまったわけです]

 はっきり違います。上に書いたように、私は電話で、担当編集者にリニューアルについて伝えていたことを説明しています。なのに、この時点では、そのことを知らなかったとは認めず、謝ることもしてません。篠田さん、どうしてこういうウソを書くのですか?(○)
 このことは、とても「だけのこと」で済ませられるようなものではありませんが、私は済ませました。杜撰なくせに権威主義のかたまりみたい人なのだということはとっくにわかってましたから。
            *
 この数日後、その次の号の原稿を担当編集の久保田氏にFAXした際に、私は篠田氏の発言を書き添えます。なにしろ情報が伝わらないことを「だけのこと」で済ませる編集部です。担当編集者に言ったことは編集長に伝わらない、編集長に言ったことは担当編集者に伝わらないことを前提に彼らと対応するしかなく、篠田氏との電話のやりとりを担当編集者に伝えた上で、予定通りインタビューを数回出させて欲しい、そののちに予定通り、本格的リニューアルをすると再度の確認をしておいたのです。というのも、インタビューは「ああ、ああいうのか」と篠田氏は興味がなさそうでしたから、本格的リニューアルまでの短期間のことだと言っておかないと、あとで何を言われるかわかりません。
 これに対して、篠田氏は、7月12日、弁明の文書をFAXしてきました。簡単に言えば私が誤解をしているというもので、「長文の原稿で丁寧に説明するのならともかく、短いコラムで売買春問題を取り上げても、単なるオヤジの居直りで言っているだけととられる」「これ以上、売買春否定派を批判するのは気が進まない」「実態を歪めている風俗誌のインタビューのようなものは望んでいない」といった内容でありました(今のところまだ引用ができないので、「」内は原文に限りなく近い要約です)
 ここで私はいよいよワケがわからなくなるのです。売防法が何たるかもわかっていない読者が大多数である中、読者が容易に理解できることを書いているとは私自身思っていません。私という書き手の役割は、多数の読者が「そうだよなあ」なんて納得して気楽に読むものでなく、一部の読者が支持するにせよ反発するにせよ熱心に読んでくれるものだと自認しており、「創」においても、その役割は果たせていると自負していました。
 しかし、篠田氏は、そういう私の役割を認めているのでなく、より広い読者が浅い理解で楽しめるものを期待しているのだということがわかり、だとすると、なるほど私の原稿は欠陥商品でしかありません。延々ここまでやってきていたのに今更何言ってやがるという話ではあり、納得しがたい気持ちがかなりあったのですが、現にそういうことなのだと編集長が要求してきた以上、私は雇い主が望む商品作りをするしかない。
 この意味で、電話における「込み入った内容になると、読者がわかりにくい」という言葉はある程度納得できるところもあったのですが、送られてきたFAXで混乱してしまいます。このFAXでは、そのような私の理解を覆す話が書かれていたのです。私が納得できない方向性を提示してきたところで雇い主のいうことですから、私は受け入れるか、連載を降りるまでですが、何を言いたいのかわからず、どう篠田氏の意向に従えばいいのかもわからないのです。
 たしかに篠田氏は売買春について語ることを否定はしていません。しかし、込み入った内容じゃなくても、短いコラムで売買春問題を取り上げること自体を否定しているとしか読めないのですから、私の連載は続行不能じゃないですか。
 篠田氏は「松沢呉一さんとの件について1」でこう書いてます。

[最初の電話とその後もFAXで説明したのは、当時、フェミニストなどを理論的に各個撃破していくスタイルが連載で続いたことに対して、1回4ページの読み切りコラムには話がちょっと難しくなりすぎていないだろうか、通して読んでいる人でないとわかりにくいのではないか、とそんなことを申し上げたのです]

 たしかに篠田氏は電話で「込み入った内容になると、読者がわかりにくい」という趣旨のことを言ってますし、のちにはこのことを強調し始めますが、7月12日のFAXではそうは書いていません。そこで私はその翌日に、以下の文章から始まるFAXを送り、説明を求めます。

[話が複雑になって、雑誌の連載として、読者が理解できないようなものになってしまっては困るというのなら理解できます。電話ではそういった趣意のことを篠田さんは言っていたので、この部分は理解したつもりでしたが、今回のFAXにはそういったことは書かれておらず、全然納得できなくなりました]

 つまり、[話が複雑になって、雑誌の連載として、読者が理解できないようなものになってしまっては困る]という言葉を最初に文章にしたのは私です。篠田氏は、私の説明を言い換えて、あたかも最初からこのことだけを一貫して私に言っていたかのようなことを書いてますが、事実とまるで違っていて、このFAXでは、こんなことを書いてないのです。
 電話での発言については、半ば無理矢理納得するようにしていたわけで、あんなFAXさえ送ってこなければ、私は予定通りにリニューアルしただけです。そのリニューアルの方向さえも否定する内容だったからこそ、真意を問いたださなければならなくなったことをどうして忘れるのでしょうか。
 次回説明するように、答えは簡単、篠田氏は過去のやりとりの確認をせずに、曖昧極まりない記憶のみで、これまでずっと私への回答をし、今回のような批判をしやがっているのです。もし、そうではないというのなら、どうか、7月12日付のFAXのどこでこんなことを説明しているのか、教えてくださいよ(○)。
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 「ガロ」の連載に書いたように、私はメモ魔でありまして、電話しながらもつらつらとメモする癖があります。最近はサボり気味ですが、マメに日記もつけていて、篠田氏との電話についても、すぐに日記に書き込んでおります。ですから、このように日付まで確認できるわけです。その私と、自分が書いたこともよく把握できていない篠田氏と、どっちの書くことが正しいのか、だいたい想像がつきましょう。
 それを理解していただいた上で、改めて説明しますと、細かい言葉遣いまでははっきりしませんが、「売買春はもういい」といった言葉を篠田氏が電話で言ったと私は記憶してまして、「売買春はもういいよ」「売買春はもういいんじゃないの」といったように、これに限りなく近い言葉を発したことについて私は疑問を抱いておりません。
 篠田氏はこの発言自体をしていないとも言ってくるのですが、状況からして私の記憶の方が正しそうだと理解してか、これ以降、もっぱら篠田氏は、私がこの言葉の意味を誤解していると釈明してきました。つまり、篠田氏は、あくまで私の受け取り方に誤解があるという意味での弁明をしているのであって、「売買春はもういい」と言ったこと自体を否定していたわけではない。
 5月4日付の文書でも、[私はあなたが言っているような意味でそんなことは言ってません]とあり、これを素直に読むなら、私が言っているような意味ではなく「売買春はもういい」という発言をしたと読めます。したがって、その言葉についての私の解釈をつけないまま、「売買春はもういい」と篠田氏が言ったとすることには問題がないかとこれまで思ってきました。この範囲からはみ出ないように私はこの言葉を書いてきたつもりで、なにを指して、篠田氏が[「売買春について考える」という連載テーマそのものを否定したのだというのです]とするのかわかりません。
 [思い込みが、あたかも事実であるかのように書かれている]と私を非難する篠田氏ですから、まさか思い込みで文章を書くはずがなく、私がこの通りのことをどこかで書いたらしいのですが、こんな文章を書いた記憶はありません(上に書いたように、篠田氏のFAXを読むなら、私の連載で売買春を取り上げることを否定するものであったとは言い得るのですが)。私の文章のどこを指しているのか具体的に示してください(○)。
            *
 篠田氏は、担当編集者との間の意思疎通がうまくいっていなかったことに原因があった点については認めてますが、私の原稿を否定した事実は、そのこととは全く別の問題です。
 篠田氏は、こういう筋道に沿った発想が不得意のようで、大本の発言が「創」編集部内の杜撰さにあることを認め、謝罪したところで、私に言ってきた言葉が消えうせるわけではありません。
 篠田氏はこんなことを「松沢呉一さんとの件について1」で書いてます。

[売買春について考えるというテーマを私が否定したと、あなたが思い込んでいるとしたら、あなたの仕事を評価しているという私はどう思っているのでしょうか。心にもないことを儀礼的に書いたと受け取ったのでしょうか]

 書き手にとって非常に不都合なタイミングで連載を打ち切っておきながら、こんなことを言う矛盾にどうして気づかないのかな。評価しているなら、あんなことできないって。また、いくら私を本当に評価していたとしても、「ああ、そうですか、それはありがとうございます。ところで、『これ以上、売買春否定派を批判するのは気が進まない』ってどういう意味?」と質すしかないってことがどうしてわからないのかなあ。あとになって評価しているなどと百万遍言ったところで、過去の発言がなかったことにはならないのですよ。
 篠田氏の論理で言うなら、私が心にもないのに今になって「私は篠田氏の仕事ぶりを心から評価してます」と書けば、「その私が篠田氏を貶めるような事実誤認やアンフェアなことを書くはずがありましょうか」と言ってしまえます。篠田氏の言うことって、この程度のことです。
 わかりやすい例を出しましょう。ライターが原稿を既に担当編集者に渡しているにもかかわらず、部内での情報伝達能力が低い編集部だったために、編集長がそのことを知らなかったとします。ライターがたまたま別件で電話をしたところ、編集長が「原稿はどうなっているんだよ。ただでさえ、おまえの原稿なんて間違いだらけなのに」と言います。「間違いだらけとはどういう意味か」とライターが問うたところ、「すまんすまん、原稿がもう届いていたことを知らなかったんだよ」と謝罪します。しかし、「間違いだらけ」と言ったことの真意をライターは問うているのであって、情報が伝わっていなかったことについての謝罪をされたところで、納得できるはずがありません。
 これと同じで、私がかつて繰り返し説明を求めていたのは、「売買春はもういい」という発言そのものなのでなく、その言葉がどういう意味だったかについて篠田氏が説明した文書についてであり、篠田氏が[余計なこと]と表現していることに私はこだわっているのです。言わなくていい余計なことだったと言われても、また、いくら私の仕事を評価していると言われても、やっぱりその発言の意味を私は問うだけです。
 このことは何度も篠田氏に書いていて、「お部屋87」でもはっきり書いているのに、今もなお、篠田氏は、私が「売買春はもういい」という発言自体を納得していないかのように書き、担当編集者と編集長の杜撰な意志疎通の問題でしかないかのように見せかけています。
 では、ここで、改めて篠田氏が回答してくれていない(としか私には思えない)例を取り上げて、その説明を再度求めることにします。
 篠田氏が[真意が伝わらない][単なるオヤジの居直りで言っているだけととられる]とするのは(ここは原文ママですが、著作物に至らない文章ですので、無断転載したところで問題はないでしょう)、文字数が少なく十全に説明ができないためだそうで、これはこの頃やっていた売買春否定論者を名指しで批判するものに限らない話として語られています。
 数多くの読者を獲得できる質の書き手ではないことは認めますが、私は、こちらの真意を受け取ってくれている読者の投稿を挙げ、また、一方でページ数の多い座談会に対してレベルの低い投稿をしてきた人がいたことを挙げて、単純に文字数が多ければ理解されるというものではないと指摘しました。分量を費やしたところで、私の主張を理解しない人は理解しませんて。
 もともと「風俗バンザイ」路線だった連載を、性労働をより直接肯定する内容にスライドしたのは、まさに[オヤジの居直り]ととられないための措置でした。篠田氏は覚えていないでしょうが、このことは連載原稿の中でも触れています。篠田氏の考えからするなら、最初の路線こそが否定されるべきであったのに、これについては何ひとつ言わず、また、路線変更した段階でも何ひとつ言わず、この路線になって1年半もたってから急に[オヤジの居直り]などと言ってくる事情がまったくわからないのです。だって、文字数はずっと同じなのですよ。
 篠田氏の言葉をそのままとらえるなら、4ページの連載で性風俗・性労働について肯定的な原稿を書くことは常に[オヤジの居直り]ととられかねないものであるはずですから、篠田氏は、実質、私の連載テーマをやっぱり否定しているのです。篠田氏の論理で言うなら、これを打開しようにも、ページ数を増やしてもらえない限り、どうにもならんのです。私の連載テーマを否定していないというのなら、一体どうやれば、4ページの連載で性労働・性風俗を取り上げればいいのかを説明すべきかと思いますが、それを要求しても、何ら具体的な回答はしてくれませんでした。既に説明したというなら、どこで説明しているのか、該当箇所を文書の日付とともに教えてください(○)。
 5月4日付の文書で、[売買春についてのテーマそのものを否定するということがあり得ると思うのですか]と書きますが、文字数や反論がないことをもって内容の変更を求めてきたことは、実質、テーマを否定するものでしかないと私は受け取っています。そんな意図があるわけがないというのなら、どういう意図で言ったのか私は説明を求めるだけであり、事実、それをやってきたのです。
 私は、いずれ街娼のインタビューを「創」でやろうと思っていたのですが、篠田氏の主張からするとこれも否定されるはずなのに、篠田氏はそのテーマに異議はないと矛盾だらけのことを言い出して、「この人、頭使って物を言っているのか? 思いつきでいばってみただけでは? それを撤回できずに、次から次と思いつきでごまかそうとしているだけでは?」と、私はすっかりやる気をなくしていったわけです(なぜこのようなことを言い出したのかについては私なりの推測をしていて、いずれ詳しく述べます)
 しかし、連載を失うのは惜しく、私は納得できないままに、また、やる気をなくしたままに、「この人とやり合っても無駄だ」と半ばサジを投げて、勝手にリニューアルの計画を進めることになります。
 これに対し篠田氏はこう書きます。

[松沢さんはいや確かにそう言った、あるいはそうとらざるをえない言い方をしたのは確かだから、過去の発言を全部さかのぼって問題にする、と言っているわけです]

 どこで?(○) ホントにイヤになっちゃいますよ、原文を確認もしないでこういうことを次々書く杜撰さには。裁判官なら裁判官らしく原文に目を通してくださいな。
 一旦はサジを投げながら、なぜ今もなお私がこの言葉にこだわるかについて説明しておきましょう。私がこれについてこれ以上、追及することを放棄したのは、あまりに篠田氏の言うことに論理性がなく、これ以上続けることが単純にバカバカしくなったことと、連載を失いたくなかったからです。しかし、連載が打ち切られたことによって、理由のひとつはなくなりましたし、やりとりを公開する選択をしたことによって、バカバカしさをも第三者に理解させることの意義が出てきました。原稿を削除されたことにも直接かかわるため、触れざるを得ないということでもありますし、腹立たしさのために、書き手の事情を考えずに気ままなことを言ってくる篠田氏の困った編集長ぶりを明らかにしたいという思いもあります。
 いずれにしても、これらのことは、篠田氏と私の文書のやりとりを全文公開すれば一目瞭然ですから、全文公開したあとで、より詳しく見ていくことにします。

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