2009-07-03

パーティは大成功だった、みたい(苦笑)

hana昨晩はエフメゾの1周年パーティでした。おかげさまで店内は立錐の余地もない状態で、大成功だった、ようです。「ようです」というのは、いらしたお客様はおわかりのことと思いますが、伏見ママはゲストの宮台真司さんとのトークを終えると同時に貧血で倒れてしまい(苦笑)、9時半以降、夜中の3時くらいまで店の外の踊り場でひたすら横たわっておりました。なので、主催者なのにパーティの様子をいまひとつ知らない(笑)。もういらしたみなさんにはお詫びのしようがありません。申し訳ありませんでしたー!

自ら主催するイベントで自分が倒れるなんぞ生まれてはじめてのことで、自分でも情けなくなります。これまではどんなに体調が悪くても、少なくてもイベントのあいだは気力でちゃんと保たせてきたのですが、今回は起き上がることさえままならない状態で……。途中、気が遠くなってマジ救急車を呼ぼうかと思った瞬間があったのですが、お客様のなかにお医者さんもいたので、脈を取って見守ってもらうことに……。

そんな状況にも関わらず、お客様たちのご理解とご協力、そしてチーママのやす子さんはじめスタッフの働きで、なんとか終了まで盛況にたどり着くことができました。瀕死の状態で唸っていつつも、店のなかからもれてくるにぎやかな様子に、ある種、多幸感に浸っていました。こんな我がままなママを許してくれるお客様に囲まれて、自分って実は愛されていたんだなあ、と。常連さんが贈ってくれた大きな花輪の下で、このまま葬式になってもけっこう幸せな人生だと納得できる、と思ったくらい(笑)。

しかしデブのババアが倒れている姿ってみっともないですねえ。別の店のお客さんからは「飲みつぶれてしまったんですか」と声をかけられ(いや、まったくアルコールは口にしてないんですが…)、心配で様子を見に来てくれたお客様からは「ラマーズ法で出産しているみたい」とか「ガンダーラ美術の妊婦の像みたい」とか「ジュゴンが横たわっているみたい」とか言われ、ほとんど見せ物状態。あぁ、醜態を晒す、とはこのこと! 結局明け方、どうにか片付けを終え、トイレで無理やり胃液をはいて、友だちの車で搬送されて無事、さいたままで送り届けられました。これからは少しは痩せて、体調管理に努めます。ひとに迷惑をかけないように生きますー。

ちなみに宮台先生のトークはさすがに面白く、大好評でした! エフメゾが最近はじめた、「ゲイが男女の出会いを応援するプロジェクト」も褒めてもらいました。←これ、ゲイができる少子化対策なの(笑) 

2009-06-30

パーティにパンツ隊登場!

pantsu.jpgエフメゾの1周年パーティもいよいよ間近に迫ってまいりました。あきっぽい伏見ママが1年も続けられたんだから、お祝いに来てね〜〜!!

ゲストも登場の予定ですが(ちゃんと来てくれるよねー?)、男好きのみなさんに目で楽しんでもらえるように、男子3人のパンツ隊もご用意いたしました。股間もくっきりのセクシー姿で、接客担当男子たちが店内をまめまめしく行き来しているはずです。

ちなみに伏見ママは普段着ですが(お色気担当ではないので 笑)、チーママのやす子さんは以前ご好評だった柔道着姿でご接待する予定です。はだけた胴着の胸元からにおいたつやす子さんのフェロモンを堪能してください。やす子ファンは必見だよ!

ちなみに、上の写真はお末の某君のイメージ画像です。w

●「エフメゾ1周年パーティ」

日時:7月1日(水) 19:00−24:00(以降は通常営業になります)

**いつものカフェタイムはありません!

場所:メゾフォルテ http://www.g-token.com/bars/mf/main.html
料金:フリードリンク、フリーフードで3千円!
(大家の福島光生さんが美味しいお料理を用意してくださるので、
おなかを減らしてご来店ください)
スペシャルゲストとのミニトークライブもあり!!

2009-06-27

いただいたご本『裁判員の教科書』


『欲望問題』までの伏見の仕事は、「無知ゆえに言えることもある」というスタンスで著わしたものだったが、さすがに四十代も半ばになると、そういうのって処女でもないのに処女ぶっているみたいで情けない。それで一念発起、四十の手習いで橋爪大三郎先生に弟子入りして、社会学や学術論文の書き方を学びはじめた。おかげで勉強って面白いじゃん!!というのを中年も深まってやっと体感できた伏見である。

それはまさに橋爪大三郎という知性に接することができたからなのだけれど、学問が面白いのか橋爪先生が面白いのかわからないくらい(笑)ゼミなどでは師匠の口をついて出てくる知の結晶に魅了されてしまう。この本『裁判員の教科書』もその知性の一端を味わえるものになっていて、法学部を卒業しているのに法律に関してまったく理解していなかった伏見は、またしても自分が恥ずかしくなった。橋爪先生に身近に接するのはもはや羞恥プレイ?(笑)

「刑事裁判で裁かれるのは、検察官である」「〈刑法〉は、裁判官にあてた命令です」「憲法は、日本国民から、国(広い意味での政府)にあてたもの」「民法には、罰則規定がない」……ほう、そうなんですーーーか!?と目からウロコが落ちるとはこのこと。平易な文章で物事の本質を言い当てるのは、橋爪先生の真骨頂だ。一般人が読んでも法とは何かということがよく理解でき、なおかつ、法によって統治されている社会、国とは何か?という問題が読み手のなかでぐわんと浮き上がってくる。

● 橋爪大三郎『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房)1800円+税

2009-06-14

いただいたご本『僕は運動おんち』

onchi.jpg最近、よくエフメゾにおみえになる枡野浩一さんから新刊をいただいた。お店では「サイコ」「ストーカー」あつかいされている枡野先生であるが(笑)、これはとてもさわやかな青春小説。主人公は運動も勉強もできない男子高校生で(でもチンコはでかい)、彼の友情や恋をちょっと笑えてちょっと切なく描いている。

60年代生まれの思春期が舞台になっているので、伏見にはなつかしい風景だった。「ノストラダムス」とか「ガラスの仮面」といった時代のアイテムも登場して、現在のアラフォー世代には?たまらない。「虚無への供物」などという小説まで導入されていて、伏見的にはニヤリ。男子高校生のたちの性欲と友情のあいだにある情感が、恋愛やセックスよりもよほど切なかった。やはり言葉に定義されない微妙な感情ほど美しいものはない。それが青春だー! 装丁画もとてもいい。

● 枡野浩一『僕は運動おんち』(集英社文庫) 514円+税

2009-06-08

二丁目の釜飯!

kamameshi.jpgエフメゾの弱点といえば食べ物! ちょっと前からカレーをはじめてご好評を得ているものの、あとはかわきものしか出せないのが実状であった。お腹をすかせている人、お酒のつまみに柿ピー以外のものがほしい人には、物足りないバー営業であったことを反省している。とくに、ふだんのメゾフォルテの営業でみっちゃんの美味しい料理に慣れている人にしたら、割高感は否めなかったと思う。そこで、エフメゾ1周年に向け、今月は「食べ物強化月間」とすることにした!

そのメイン企画として、「二丁目の釜飯」という一品(写真)を6/10(水)から用意することにします。バータイムにお越しの、小腹のすいているお客様に(釜で炊いてないけど)釜飯を一杯、300円でご提供! ←お安いでしょ? カレーではちょっと重すぎるという方にお勧め。これはほとんど儲けを考えていないご奉仕商品。チャージ+1ドリンク+「二丁目の釜飯」=1800円で、ゲイバーを満喫(キツマン)できます。

その他にもちょっとしたおつまみをご用意します。

・ぶっといフランクフルト3P(500円)←口さびしい方にお勧め
・ユルマン冷や奴(300円) ←やっぱり豆腐は感触が命
・日替わり(スワッピング)メニュー

・「男ができるカレー」(500円)←ママの念入り

また、常連さんはよくご存知のように、エフメゾのボトルは免罪符にもなっております。淫乱、泥棒猫、陰口、リスキーセックス、親不孝、約束不履行……などなど貴方の罪をママが神様(どんな神だよ)にかわって免罪しています(笑)。に加え、今月から、ボトルを入れていただいた方には司の3分肩もみマッサージ(枕営業)をオプションでつけさせていただきます!

7/1(水)にはエフメゾ1周年パーティを催しますが(詳細は後日)、それに向けてますます積極的に接客させていただこうと、スタッフ一同お待ち申し上げております。

6/10(水)もカフェタイム(17:00−19:00)からです。バータイムは19:00−04:00ですが、深夜はお客様がいなくなった時点で、看板を消してしまいます。

2009-06-05

いただいたご本『きみが選んだ死刑のスイッチ』

「ホームルーム、裁判員制度、死刑。この三つに共通する、最大の注意点はなんでしょう? 答えは、この本のなかにあります。「思考停止」を乗り越え、手遅れになる前にじっくりと考えるための、入魂の一冊。」

裁判員制度がはじまるにあたって、この本は、日本国民なら誰しも読んでおくべき一冊かもしれない。議論を法とか民主主義の成り立ちから掘り起こしていて、私たちの社会の根幹を振り返るのにとても有意義。伏見は死刑制度に関しては、「やっぱあったほうがいいんじゃない?」というくらいの情緒的な立場なのだが(要するにあまりちゃんと考えていない)、本書を読んでうーむと考え込んでしまった。というのも、死刑囚がどのように殺されるのかが詳細に記述されていて、その臨場感を共有することで、それまでふたをしてきたものを開けられたような気がしたのだ。

だけど、「あんたは人を殺せるの? 殺していいの?」と畳み掛けられるようで(意図してそうした書き方にしているのだろうけど)、その倫理主義的な物言いが逆に説得力を失わせてしまうような気もした。あと、小泉の新自由主義が諸悪の根源!みたいな断定は、どんなものかなあと……。ともかく、本書がとても良いテキストであることは間違いなく、死刑について考えたことがない人は一度手に取ってみるのがいい。

よりみちパン!セシリーズの『阿修羅のジュエリー (よりみちパン!セ シリーズ44)』はまだ読めずにいる。面白そうな気もするのだが、伏見にとってジュエリーは「豚に真珠」なので、興味がわかずごめんなさい。……「国宝「阿修羅像」は、キラキラでエキゾティックなジュエリーをまとった、天平のファッションリーダーだった! そしてあまりにも有名なこの少年顔の鬼神の装飾には、現代のアクセサリーや携帯ストラップの持つ秘密が隠されていたのです。」

2009-06-01

エフメゾは敷居が低いと思います(笑)

DSCN0250.JPG初めてエフメゾにご来店いただいたお客さんによく言われることがあります。「伏見さんって意外と話しやすいんですね」

もうこれまで何人に同じことを言われたことでしょう(笑)。エフメゾでなくても初対面の方にしばしば「もっと感じ悪い方かと思いました」と言われるのですが、そんなに強面なイメージが流通しているのでしょうか。なんで? てか、伏見ほどゲイたちのことを褒め讃え、応援してきた人間もいないと自負していて(笑)、褒め:けなしの割合で言うと、それは 9:1くらいになると思うのだけど、それでもけなしのほうが印象づけられてしまうのかしら。うーん。

でもみなさん「意外と」と言ってくださるということは、本人はとてもやさしいということなので(←それは言い過ぎ)、安心してご来店ください。最近はお席に余裕がございますので(笑)比較的ゆっくり話すことができると思いますよ! それにエフメゾのいいところは、お客様にフレンドリーな方が多く、知らない人でも、初めての人でも、孤立することはまずありません。伏見もゲイバーでひとり放置プレイになってしまうことの居づらさはよくわかっておりますので、そうならないようにスタッフともども気を配っています。おひとり様でも怖がらずに来てくださいな。

6/3(水)もカフェタイム 17:00−19:00(1000円/1ドリンク)から営業をしています。通常営業は 19:00−04:00 ですが、深夜はお客様がいなくなった時点で看板は消してしまいます。カレーを作って毎週待っております!

2009-05-25

いただいたご本『MODE アグリー・ベティ オフィシャルブック』

全国のアグリー・ベティファンの皆様、お待たせしました! 「MODE」を模したオフィシャルブックの登場です!←『MILK 写真でみるハーヴィー・ミルクの生涯』のAC BOOKS 様が版元よ←実にヘンな本を出してくれる出版社ですね!

それにしてもベティ、どブスですね。まあ、だからアグリーなわけですが。ドラマで見慣れた感は出てきたものの、大版の表紙でどアップになるとかなりインパクトあります。すごいよ、この歯の矯正の輝き。うーん、やっぱこの装丁であえて購入するのはオカマのみなさま以外考えられないでしょう。あるいは、オカマの心を持った女子か(笑)。

しかしベティって不思議な女子ですよね。ふつうあれくらいのブスになると、妙に屈折していたり、他人におもねる性格になっていたりするものですが、なんつーか、とてもナチュラル。ナチュラルブスというジャンルがあるのかわからないけど、ああいう自意識に変異の見られないブスって貴重だと。伏見のどブスの女友だちはみんな、善かれ悪しかれ強烈だからね。

デザインも内容もとってもMODEな一冊なので、ぜひ手にとってみてください!

2009-05-19

20日のエフメゾ

61adL_g7soL._SL500_AA240_.jpg30代以上のオカマというのは面白い性質があって、ピンクレディーやウインクがかかると思わず振りを着けずにはいられないし、もっと年季の入ったオカマなら、ちあきなおみの「喝采」では知らず知らずのうちに左手が幕を開けてしまう(笑)。で、先週発見したのだが、オカマ種族は、サラ・ブライトマンの「Time to say goodbye」に対しては、どうにも高音部を裏声でなぞらなければ気が済まないらしい!?

それはともかく、先週はiPODのなかに試しにクラシック系の音楽も忍ばせてみたら意外と受けていた。ポップスのあいまにチャイコフスキーやラフマニノフがかかると面白がってくれるお客様も少なくない。さすが教養主義のお姐さんたち! ということで、今週はちょっとクラシックなBGMにしようとセレクトしてみた。伏見ママの好みの交響曲とかピアノ曲ほか。でも完全にクラシックばかりになるとなんなので、エンヤあたりも織り交ぜながら、落ち着いた雰囲気での一夜を楽しんでいただこうと。

営業時間は19:00-04:00。深夜はお客様がいなくなった時点で灯を消してしまうので、終了はまちまちですが、そこのところよろしく。スタッフ一同、お客様のお越しを楽しみにしております。

2009-05-11

宮台真司『日本の難点』


相対主義の否定が不可能だと知りつつ相対主義を「あえて」否定するしかないーー「普遍主義の不可能性と不可避性」とはそうしたことです。

ーーさすが宮台真司先生! いつまでも相対主義の物差しで物事の根拠のなさを指摘して溜飲を下げているばかりでは仕方ない、ということですね。ジェンダー/セクシュアリティというローカルな分野でも、こういう議論を展開してくれる人が出てくればいいのに……。

「普遍主義の理論的不可能性と実践的不可避性」
「恣意性に敏感であれ!」という段階から「恣意性を自覚した上でコミットせよ!」という段階への変化です。

ーーとても刺激的で、共感するところ多の一冊であった。

もちろん星は ★★★★★!

2009-05-09

対談「中年オカマと淫乱女の友情」

DSCN0215.JPG対談「中年オカマと女の友情ーー四十路はいろんなことがありますの巻き」
伏見憲明 × R子

R子プロフィール/昼はキャリアウーマン、夜はど淫乱女として「世界を股に入れて活躍」。性のジャパニーズ・テクノロジーと各国で絶賛される。最近まで中国大陸、パラオなどで働く。現在、シングル生活を謳歌しつつ、子育て中。
ノリ江ママの本では、木村薫子の名前で対談に登場し、自らのブス人生を赤裸々に語っている。←『性という饗宴』に収録

この対談は久しぶりに再会した中年二人組の近況報告。オカマと女の友情はそこそこ毒づきながら続いているのであった。ただし、あまり内容はないのでご了承のほど(笑)。 続きを読む…

2009-05-01

スピーチ「先人たちの思いに寄せて」

● 尾辻かな子事務所クロージングセレモニー「希望のバトン〜『ミルク』で語るこれから」でのライブ音源と、スピーチ音源(2009.4.29)

これは、尾辻かな子さんが新宿二丁目に構えていた事務所を閉じるにあたって催されたイベントでの、伏見のスピーチのライブ音源と、スピーチ原稿です。 続きを読む…

2009-04-19

いただいたご本『「死刑」か「無期」かをあなたが決める』


● 小浜逸郎『死刑」か「無期」かをあなたが決める』(大和書房)

伏見はアッパラパーなので、「裁判員制度ってアメリカの裁判みたいでかっこよくない?」「選ばれちゃったら面白い人間模様が見れるかも!」みたいな幼稚な意識しかもっていなかったのだが、民主主義と近代国家の擁護者、小浜先生が今度はこの新しい制度についてたいそう怒っている(ヤバ、ごめんなさい)。「裁判員制度は、いくつもの憲法違反を犯している。このような制度は即刻廃止すべきであるし、国民は、たとえ「赤紙」が届いたとしても、これに応じる必要はない……」

読んでみると、たしかにこの制度は「近代民主主義」や「国民主権」といった近代国家の根本に抵触するところがないとは言えないようだ。小浜先生は近代の原理に照らし合わせて裁判員制度を否定する。原理から思考することが苦手な日本人は、こういう批判を向けられると言葉をなくしてしまうか、スルーしてしまうかになりがちだが、やはりここで踏ん張って考えることが必要なのだろう。「近代民主主義という法的・政治的なフィクションをどのようなものとして扱えばいいか」伏見もロックやホッブスでも読んで勉強しないとなあ。

2009-04-10

書評『女装と日本人』

● 三橋順子『女装と日本人 (講談社現代新書)』(2008)
初出/現代性教育研究月報

ここ数年、性に関する書籍で心底面白いと思うものには出会ったことがない。もうだいたいがパターン化されていて、「はいはい、フーコーを使って分析したいんですね」とか、「はいはい、性の多様性の焼き直しですね」とか、扱う素材がちょっと違うくらいで、最初から答えがわかっているものばかりだからだ。その点、この『女装と日本人』は繰るページごとに新しい発見があり、久しぶりに性の問題を考える楽しさを味わった。

本書も流行りの近代主義批判がベースになっていて、現代の性的抑圧の源泉を近代の性科学の輸入に求め、前近代のあいまいで複雑なセクシュアリティ/ジェンダーのありようをロマンティックに理想とするあたりは、別の思潮から批判されるかもしれない。しかしそうした点は別にしても、この本には読み手に訴える力が満ちている。それは歴史に埋もれていた事実を丹念に掘り起こすことで、言葉を奪われてきた者たちの声を掬おうという志を持っているからだろう。また、研究者が都合のよい資料を集めてきて言説分析をやりました、という類の安直さを拒否し、女装者である著者が自身の実存を繰り込み、足を使ってテーマに迫っている姿勢が、行間に心地よい緊張と深い悦楽を与えている。 続きを読む…

2009-04-06

笑うゲイリブ

1237339026786.jpg映画『MILK』を観てからというもの感覚が昔に戻ってしまい、やたらテンションの高い伏見である。若い者がぬるいことを言ってたりすると、「てめ、古いゲイリブなめんなよッ!」「こちとら自分の人生も、親も、みんな売り飛ばしてリブはじめてんだよッ!」と殴りたくなる。ワハハハハ!

といっても、なにもいまどきハーヴィー・ミルクと同じような解放運動を展開しようとも思わない。運動とは目的があり効果を求めるものだから、やはり時代に合わないやり方をしても意味がない。見せかけの過激さはラディカルでもなんでもなく、ただの愚鈍と言う。よく運動を=抗議行動(あるいは反体制運動)とイメージしている人がいるが、それは偏見というもので、そもそも社会運動とは、対象の心を動かす創造的な営みなのだ。←ゴルバチョフみたい(笑) 続きを読む…

2009-03-27

書評『セックス格差社会』


『世界の下半身経済が儲かる理由』で性と経済の問題を斬新に論じた著者であるが、今回は性と格差社会を数値から分析しようと挑んでいる。「もしかすると、近年の所得格差の拡大と恋愛経験の有無には、なんらかの因果関係があるのではないか?」

実際、著者の調査によると、「年収別にみた交際女性のいない独身男性の割合」では、年収が少ない男性ほど彼女がいないことが現れている。年収200万未満だと73.9%が彼女がおらず、年収が上がるごとに「彼女いない率」は減少していく。これは18〜34歳の独身男性のアンケート調査であるが、「年収別にみた性風俗に行ったことのない独身男性の割合」でも、「年収別にみた1月あたりのセックス回数がゼロの独身男性の割合」でも、年収が低くなればなるほど性愛も貧困になる。 続きを読む…

2009-03-26

いただいたご本『童貞の教室』


著者の松江哲明さんとは何度かお仕事をしたことがある。とても感性豊かで、実直な青年という印象で、また会ってみたい人の上位にランクしている方なのだが(←偉そう)、本書はうーん……。いただいたご本で文句をつけることはしない主義なのだけれど、どうにもこうにもヌルくてヌルくて、ユルマン温泉で無理やり筆下ろしをしているような気分……。

そりゃ伏見が最近耳にした初体験話が、「掲示板で知り合った人のアパートへ行ったら、もう一人いて3Pでした」とか、「実の祖父にフェラチオされたのが、初めての性交渉でした」とか、「40歳になるまでモンモンと過ごしていて、やっと念願叶いました」とか、「アナルは使っても膣は使わずに三十六歳」とか……けっこう強烈なネタばかりで、ふつうの男子の告白じゃあ読み物として満足できない、つまり感性がガバガバになっていることも事実だろう。しかし「童貞の教室」と題するなら、もう少し性愛の部分を突っ込んで、広い視野での分析もほしかった。そしてここで「あんにょんキムチ」ネタはしつこい。

やっぱ一度、松江を掘らないといけない気がしてきた。松江、ケツの穴おっぴろげて来ーい!

とも思うのだが、まあ、中学生や高校生の生な青少年にしたら、このあたりのヌルーい感じがいちばんリアリティがあるのだろう。そういう意味では、思春期男子との接続は上手くいっているのかもしれない。だけど、松江は一回掘らないと駄目だな(しつこい)。

2009-03-25

本日(3/25)も通常営業

zairyou.jpgあぁ、一週間が経つのが早い! エフメゾをはじめてからあっという間に次の水曜日が来てしまうので、どうも落ちつかない。今日も午前中からカレーの仕込みやら、銀行回りやらでバタバタ。来週はエフメゾ明けで台湾へ行くので、航空チケットの払い込みと釣り銭の用意等があって、チャリで行ったり来たり。でも、まあ、ちょっと大きめな仕事が終わったところなので、気持ちはらくな感じかな。

ともかく今晩もどんな新しい出会いがあるのやら、とても楽しみ!

営業時間:19:00-04:00(深夜お客様がいなくなり次第、看板を消します)

2009-03-22

いただいたご本『人間の未来』


どんだけ仕事すれば気が済むの?と言いたくなるほど多作な竹田青嗣氏の新刊。副題に「ヘーゲル哲学と現代資本主義」とあるように、近代哲学の完成者として現代思想の標的となったヘーゲルを再評価することで、資本主義と国家を再定義しようとする野心的な論考である。竹田氏の主張は一貫していて、現代思想の価値相対主義からはなんら新しい社会構想は生まれず、ポストモダンの批判を経て、新たに近代哲学を鍛え直すことでしかこの世界に展望はない、というもの。

伏見は本作を読んでいてマジ感動してしまった。行間に情熱がほとばしっていて、とても熱いのだ。この人のこういう熱量はいったいどこから生まれるのだろうか、とほとほと感心してしまったのである。みんなが相対化の言説を振りかざして相手を無化することにばかり専心している状況で、ちゃんと土俵を作ろうという構えの大きさも、(ポストモダンの人からすれば滑稽なのかもしれないが)やはり人間として魅力的だ。そしてもちろん言説としても生産的だ。こういう強靭で志のある先人がいることは幸福なことだと思う。

竹田氏のように質的にも量的にもすごい仕事をしている人を前にすると、忙しさにかまけてちっとも仕事をしないのは情けないことだと痛感する。本当のところ忙しさは口実で、それは自分と向き合いたくないための言い訳にすぎないのだ。書くべきものを持っている人はどんな状況のなかでも書かざるを得ない。それがない人は、結局、「書けない」のである。

2009-03-21

いただいた未読本(すみません) 


いただいたご本でもどうしても読めないものがある(ごめんなさい!)。建築関係の書籍がそれで、その理由は、「そんな金ねぇんだよ!」の一言に尽きる。なので、文字を追う気になれないのは貧乏な自分のせいでしかない。この『建築バカボンド (よりみちパン!セ)』もパン!セが仕掛けてくるのだからよほど面白い内容に決まっている。でも、「そんな金ねぇんだよ!」ともう一人の自分が耳元で怒鳴るので、まだ読めないでいる。「感想ほしけりゃ金をくれ!」と安達祐実っぽく言いたい。

苦手な分野に「酒」というのもある。バーのママをやって半年以上経つのに、先週も「スコッチで」と言われて「スコッチって何?」と聞き返してしまった情けないママなのだが、それにも理由がある。小さい頃に父が酒乱気味だったので、お酒というとどうしても身構えてしまって、好奇心の対象にならないのだ。数週間前も、ちょっと泥酔気味のお客さんが入ってきたときに、「もう閉店なので」と断ってしまった。楽しい酔っぱらいならいいのだが、目が血走っている人を見ると恐怖感が先にたってしまう。なので、この『こどものためのお酒入門 (よりみちパン!セ)』も読めずにいる。でも、これはママという職業柄、教養本として読まないとならないよなあ。

同性パートナー生活読本―同居・税金・保険から介護・死別・相続まで (プロブレムQ&A)』もまだ未読なのだが、周囲での評判もよく、具体的な問題に対処する内容になっているようなので、当事者にはもってこいの一冊だろう。『挑発するセクシュアリティ―法・社会・思想へのアプローチ』は小倉康嗣氏の論文だけ読ませてもらっていて、こういうフーコーの使い方なら前向きでいいなあと。ゲイ・アイデンティティやゲイ共同性をいまさらいくら懐疑したって、こんなユルユルな時代にどんな意味があるのかわからないからね。まあ、そのくらいしかモチーフがなければ仕方ないけど。