2009-03-22
いただいたご本『人間の未来』
どんだけ仕事すれば気が済むの?と言いたくなるほど多作な竹田青嗣氏の新刊。副題に「ヘーゲル哲学と現代資本主義」とあるように、近代哲学の完成者として現代思想の標的となったヘーゲルを再評価することで、資本主義と国家を再定義しようとする野心的な論考である。竹田氏の主張は一貫していて、現代思想の価値相対主義からはなんら新しい社会構想は生まれず、ポストモダンの批判を経て、新たに近代哲学を鍛え直すことでしかこの世界に展望はない、というもの。
伏見は本作を読んでいてマジ感動してしまった。行間に情熱がほとばしっていて、とても熱いのだ。この人のこういう熱量はいったいどこから生まれるのだろうか、とほとほと感心してしまったのである。みんなが相対化の言説を振りかざして相手を無化することにばかり専心している状況で、ちゃんと土俵を作ろうという構えの大きさも、(ポストモダンの人からすれば滑稽なのかもしれないが)やはり人間として魅力的だ。そしてもちろん言説としても生産的だ。こういう強靭で志のある先人がいることは幸福なことだと思う。
竹田氏のように質的にも量的にもすごい仕事をしている人を前にすると、忙しさにかまけてちっとも仕事をしないのは情けないことだと痛感する。本当のところ忙しさは口実で、それは自分と向き合いたくないための言い訳にすぎないのだ。書くべきものを持っている人はどんな状況のなかでも書かざるを得ない。それがない人は、結局、「書けない」のである。