2009-06-27
いただいたご本『裁判員の教科書』
『欲望問題』までの伏見の仕事は、「無知ゆえに言えることもある」というスタンスで著わしたものだったが、さすがに四十代も半ばになると、そういうのって処女でもないのに処女ぶっているみたいで情けない。それで一念発起、四十の手習いで橋爪大三郎先生に弟子入りして、社会学や学術論文の書き方を学びはじめた。おかげで勉強って面白いじゃん!!というのを中年も深まってやっと体感できた伏見である。
それはまさに橋爪大三郎という知性に接することができたからなのだけれど、学問が面白いのか橋爪先生が面白いのかわからないくらい(笑)ゼミなどでは師匠の口をついて出てくる知の結晶に魅了されてしまう。この本『裁判員の教科書』もその知性の一端を味わえるものになっていて、法学部を卒業しているのに法律に関してまったく理解していなかった伏見は、またしても自分が恥ずかしくなった。橋爪先生に身近に接するのはもはや羞恥プレイ?(笑)
「刑事裁判で裁かれるのは、検察官である」「〈刑法〉は、裁判官にあてた命令です」「憲法は、日本国民から、国(広い意味での政府)にあてたもの」「民法には、罰則規定がない」……ほう、そうなんですーーーか!?と目からウロコが落ちるとはこのこと。平易な文章で物事の本質を言い当てるのは、橋爪先生の真骨頂だ。一般人が読んでも法とは何かということがよく理解でき、なおかつ、法によって統治されている社会、国とは何か?という問題が読み手のなかでぐわんと浮き上がってくる。
● 橋爪大三郎『裁判員の教科書』(ミネルヴァ書房)1800円+税