2006-06-16
うぎゃっ
沢辺社長が日記に書いたことが、一部で話題になっているようだ。自分に関わることながら、もうすっかり忘れていたので、最初、いったい何のことやら他人事のように読んでしまった。そうか、そんなこともあったっけ、って。
腹を立てる出来事は日々あるのだけど、すぐに記憶から消えてしまうのだ。いや、自分が寛容な性格だとか、達観してるとか言いたいんじゃなくて、次々に不愉快な件が起きるので、記憶力が追いついていかないの(笑)。よく仲良しのオカマに、「あんた、あの人のこと、あの時あんなに怒っていたのに、もう覚えてないの!?」って呆れられるのだけど、本当によく覚えていない。ときにフラッシュバックすることもないではないが、目の前にあることに腹を立てるのが精一杯で、過去は水に流して、ではなく、勝手に流れていってしまうのだ。
悪いことばかりでなくて、誰々に誰々を紹介したとか、仕事の便宜を図ったとかいった、場合によっては人に恩を着せることができるネタも、すっかり忘却していることが多い。この前もエスムラルダがバディに、伏見が誰々を紹介してくれて…、みたいな原稿を書いていたのだけど、その事実すら思い出せない。なんかとても損をしてる気分になったわ。いったいどうなってるんだ、この脳みそ。っていうか、そろそろ若年性認知症の不安さえ感じます。

『男子のための恋愛検定』の書店営業に行ってまいりました。新宿、池袋、渋谷と、編集者と営業の女史二人と回り、書店員さんにポップを渡し、サイン本をつくり、現場の声を聴かせていただきました。本というのはあくまでも商品なので、誰がどういう動機で購入しているのか、書店でどんなふうに手に取られているのか、それを知ることは書き手にとっても勉強になることです。独りで書いていると、どうしても作業が自己満足に陥りがちですから、こういう機会は非常に大事だと思っています。
たしかに約二時間、飽きずに楽しめます。ハラハラドキドキは止まらないし、CG映像は大迫力! 入場料の分は十分元を取った気分になれるでしょう。
男から女へのトランスセクシュアルが主人公、というので、もっとマニアックな内容かと思っていたら、全然ポップな映画だった。誰もが楽しめる、笑いあり、涙あり、切なさありの家族のロードムービーだ。脚本が実によく練れている。『ブロークバック・マウンテン』といい『トランスアメリカ』といい、クィアな題材から「名作」が生まれてくる昨今のハリウッド映画。
尾辻かな子さんのブログから。
という笑パブがあることをバディ(写真)の広告で知りました(笑)。「フェラガマ」ではなく「ふぇらがも」でもなく、ましてや「フェラガモ」ではありえず、「ふぇらがま」。その語感の場末っぷりがたまらない。
原作は読んでなかったのですが、映画業界のみならず、出版、テレビ、旅行業界まで巻き込んだ大騒ぎだけに、大いに期待して観に行ったら……。たしかに全世界一斉公開にするしかないでしょ、てな作品だった。あれじゃ、初動で儲けるしかないよねえ。暗殺者くんの、一人マゾ・プレーが面白いくらいで(笑)。
『男子のための恋愛検定』を書いた動機の一つのは、大人が建前を語るのは結構大事なことなのではないか、という問題意識です。やっぱ世の中、建前がなかったら成り立たないわけで、それが他人とのクッションになっている面は無視できない。なんでも本音、つまり欲望そのものをぶつけあっていたら、関係も社会も成り立たなくなってしまう。
今朝も新宿から朝帰り。
昨晩は取材の流れで、どうしたわけかエイズ対策をやっている行政関係の皆さんと二丁目で飲むことになった。そこでこれまで官僚に対して偏見を持っていた自分を深く恥じた。皆さん、優秀なばかりでなく、思考も柔軟で、驚くほど仕事に情熱を持った人たちだった! エイズ問題に関して、本音では半ば諦めかけていた自分を反省した。いまこれだけ行政の人たちがやる気になっていてくれるんだから、ゲイの自分が努力しなくてどうする、と。
というキャンペーンを大阪府議の尾辻かな子さんたちがはじめた。伏見も応援メッセージを寄せさせていただいている。キャンペーンの内容等については以下のブログをご覧ください。
職業柄、いろんな配給会社から毎日、試写状が送られてくるのだが、なかなか会場に伺うことができない。とくに映画ファンじゃないので情熱がないこともあるが、何分、荒川の向こうに住んでいるがゆえ、試写を観ようとすると半日がかりになって、タイミングが難しいのだ。この『セキ★ララ』もお誘いいただいていたにもかかわらず、上映日を逃してしまった。だけど、監督の松江哲明さんのご配慮で、今回特別にビデオを拝見することができた(←偉い映画評論家みたいでいやらしい)。
前にエッセイにも書いたことがあるのだが、伏見が二丁目でいちばん通い詰めているお店は、どのゲイバーでもなく、長崎亭さんになる(写真)。もう四半世紀もこちらのちゃんぽんのお世話になっているのだ。あの美輪明宏さんも故郷の味を求めていらっしゃるようで、伏見も以前お姿をお見かけしたことがある。長崎にももうなくなってしまった伝統の味を引き継いでいる店だ。
日経新聞にLGBTマーケットについての大きな記事が出たのも驚いたが、アゲハのゲイナイトで松田聖子がシークレットライブを催したというニュースにも感慨深いものがあった。ついに日本でもゲイマーケットが意識されはじめてきた? ユーミンナイトに降臨した松任谷由実といい、アゲハの聖子といい、斜陽のディーバが最後の杖に頼む程度には、この国にもゲイマーケットは存在しているのかもしれない。
二日連続でほぼ同い年の高名な表現者にお目にかかった。一人はゲイ&SM漫画の大御所、『嬲(なぶ)り者』『銀の華』などの作品で知られる田亀源五郎さん(ゲイ・エロティック・アーティスト)。もう一人は、『〈民主〉と〈愛国〉』で学会、出版界で大きな成功を収め、先頃パン!セに書き下ろされた『日本という国』もヒット中の小熊英二さん(慶応大学教員)。
小熊さんとは、パン!セ関係の会食でお目にかかった。その席にはデザイナーの祖父江慎さん、冒険家の石川直樹さん、イラストレーターの100% ORANGEさんという超個性的な方々がおられたのだが、小熊さんも彼らに勝るとも劣らない独特の魅力があった。伏見も、これが『〈民主〉と〈愛国〉』かあー!と感動&光栄に浸ってしまった。
前にこの日記でご紹介した『いま生きているという冒険』(理論社/よりみちパン!セ)を上梓された冒険家の石川直樹さんが、伏見の本の感想をサイトで書いてくださった。感動のあまり危うく破水しかける(←尿漏れ?)。