2009-11-14

お部屋1983/中の著作権・外の著作権

やっと12月発売予定『クズは世界を豊かにする』の初稿チェックを終わりました。

インターネットとは直接関係のない考察の方が私としては面白いような気がします。「FreeHugsがYouTubeを通して、どうしてああも世界に広がったのか」とか「欧米と日本で、どうしてああもコマーシャルのありようが違うのか」とか。時間と文字数たっぷりかけて「マツワル」でやってきたことの結果をさまざま詰め込んでいるので、面白くなければ困るってことだったりもしますが。

まだあとがきができておらず、表紙も決まってません。表紙は出版社の仕事ですが、しゃあないので、こっちからアイデアを出しています。宣伝から表紙まで、ポットは著者に負担をかけすぎだと思うぞ。

ともあれ一段落したので、更新しておきます。
 
 
「ベランダウンコ事件」から1年ですか。ベランダのウンコも解決できない無能右翼に、それ以上の問題が解決できるはずがない。

ベランダのウンコも解決できないのに、またまた探偵気分でウンコ事件同様の推理を展開して笑いをとる瀬戸弘幸ですが、「内部告発」とやらはどうなったんだよ。ガセをつかまされたことを認めて、そこから出直せ。ついでに、中学くらいから勉強をし直せ。

たまにはそっち方面のことにも触れつつ、前回の続きです。

「なぜ書評で本の表紙を出すことは引用にならないのか」について、間違いを含みつつ、以下は私が見た中で、もっとも正しい説明のひとつです。

http://ameblo.jp/tyosaku/entry-10361993354.html
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まず、本の著作権者と本の表紙の著作権者は別々であるということを前提に考えなければなりません。
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2009-11-12

お部屋1982/「書評で本の表紙を出すことができない」問題

図書館問題の余韻が私の中ではまだくすぶっていたりします。正確には、うっかり観てしまったNHKの「爆笑問題のニッポンの教養」の映像が頭から離れません。観なきゃよかった。これ以上続けるとキリがないので、「1981/図書館の中では見えないこと 10・国会図書館がカバーや箱を捨てている事情」にいっぱい追記しておきました。

図書館の話を書いたところで、敵が増えるばかり、アクセスは減るばかり。新規の読者が入ってくると、本が少しは動いたりするものですが、図書館のシリーズをやっている間、アマゾンで『エロスの原風景』は1冊しか売れていなくて、どんどん順位が落ちてます。図書館に興味がある人たちは本を買わないのです。そんなことはないとしても、図書館に興味のある人たちはエロ嫌いの率が高いかも。

沢辺さんは、図書館シリーズを面白がって、どこか公開で話をする場をセッティングしたいとも言っていますが、私としては書いたこと以上に話すことがないです。「公には話しにくいこんな話ならあるけど」と話した内容を聞いた沢辺さんは「そういう話をしてよ」と言います。

少人数しか聞かない場だったら、話してもいいかなとも思うのですが、図書館をテーマにしてしまうと人が来そうにないです。「エロライターが語る図書館の話」って、最悪の組み合わせでしょう。「国会図書館の長尾館長が語るエロ話」だったらまだいいとして、私が語る図書館の話は「貧乏人が語る利殖法」みたいなもんです。ちょっと違うか。客が少ない方がやりやすいし、ゼニをくれればなんでも話しますけどね。
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2009-11-10

お部屋1981/図書館の中では見えないこと 10・国会図書館がカバーや箱を捨てている事情【追記ありあり】

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1・図書館はコンビニである
1970/図書館の中では見えないこと 2・こんな図書館があったら
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3・図書館の本はC級品
1973/図書館の中では見えないこと 4・図書館と税金
1974/情報を訂正するためのツール
1975/図書館の中では見えないこと 5・断裁の現在
1976/図書館の中では見えないこと 6・私設図書館とコレクター
1977/図書館の中では見えないこと 7・本は商品である
1979/図書館の中では見えないこと 8・デジタルとアナログ
1980/図書館の中では見えないこと 9・国会図書館は保存に徹すべし
 
 
今回で終わりです。どうせ私ごときが言ったところで、「本を廃棄するな」という人たちは引き続き主張し続けるのでしょうから、これ以上言い続ける意味はないです。最初から意味はなかったんですが、言っておかないとスッキリしないものですから。

どうせ何を言っても無駄と諦めていたテーマであって、成り行きでこうも長くなっただけのこと。このあと当面は図書館については触れないでしょう。デジタル化の問題があるので、それだけは取りあげるかもしれませんが、その辺の話は「マツワル」でやっているので、「黒子の部屋」ではたぶんやらないと思います。

そういえば今月は「マツワル」の募集月間です。そのうち思いつきで始めますので、規約でも見ておいてください。
 
  
最初に言っておきますが、今回は長いです。とっとと終わらせたいものですから、一度に出します。
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2009-11-09

お部屋1980/図書館の中では見えないこと 9・国会図書館は保存に徹すべし

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1・図書館はコンビニである
1970/図書館の中では見えないこと 2・こんな図書館があったら
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3・図書館の本はC級品
1973/図書館の中では見えないこと 4・図書館と税金
1974/情報を訂正するためのツール
1975/図書館の中では見えないこと 5・断裁の現実
1976/図書館の中では見えないこと 6・私設図書館とコレクター
1977/図書館の中では見えないこと 7・本は商品である
1979/図書館の中では見えないこと 8・デジタルとアナログ
  
 
『図書館界』という雑誌に「国立国会図書館におけるポルノグラフィの納本状況」という論文が発表されたらしい。

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 本稿では,Amazon.co.jpが扱う図書がNDL-OPACでヒットするかを調べる形で国立国会図書館における納本状況を調査し,ポルノグラフィのほとんどが納本されていない現状を明らかにする。
 また,ポルノグラフィを刊行している出版社の納本状況を調査し,一般出版物は納本しているにもかかわらずポルノグラフィだけは納本していないといった結果も提示する。
 さらに国立国会図書館,取次,出版社に聞き取り調査を行い,日本の現行納本制度の運用上における諸問題を考察する。

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「エロでもなんでも保存しろ」という立場ながら、今現在のものについては微妙な点がいくつかあるので、ここはおおっぴらに踏み込まないで欲しいと思ったりもして。全部納本させた上で、あえて未整理のままにして、検索にひっかからないようにするのが理想です。その事情にも私は踏み込まず、とっとと本題。

私が国会図書館を信用できないのは、東京国際ブックフェアで語ったように、国会図書館は保存に徹しておらず、なおかつ完本を保存する発想がないことです。
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2009-11-08

お部屋1979/図書館の中では見えないこと 8・デジタルとアナログ【追記あり】

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1・図書館はコンビニである
1970/図書館の中では見えないこと 2・こんな図書館があったら
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3・図書館の本はC級品
1973/図書館の中では見えないこと 4・図書館と税金
1974/情報を訂正するためのツール
1975/図書館の中では見えないこと 5・断裁の現実
1976/図書館の中では見えないこと 6・私設図書館とコレクター
1977/図書館の中では見えないこと 7・本は商品である
 
 
やっとまとめ終わりました。

出版の話は図書館の話の中で出すより、出版の話として出した方が興味を抱く人が多いでしょうから、このあと、新刊宣伝用のシリーズをやるとしたら、そちらで出すかもしれませんが、こちらでは出版業界の話を簡単に済ませ、今回を入れて、あと3回で終わらせます。説明部分をすっとばしているので、なんでそうなるのかよくわからん人もいるでしょうが、あとは各自考えるように。
 
 
都議会の議事録で経緯を確認してみました。今回廃棄される地域資料に限った答弁は見当たらなかったのですが、都立図書館の体制変更に伴う廃棄問題については、以下で取りあげられています。

2001.12.11 : 平成13年_第4回定例会(第16号)
2002.02.19 : 平成14年文教委員会
2002.02.20 : 平成14年_第1回定例会(第1号)
2002.03.04 : 平成14年文教委員会
2002.03.07 : 平成14年_第1回定例会(第5号)
2005.09.30 : 平成17年文教委員会
2006.12.01 : 平成18年_第4回定例会(第15号)
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2009-11-07

お部屋1978/断裁と裁断は違う

「図書館がどうなるのか」を説明するため、「出版界はどうなるのか」という話を書いていたのですが、あまりに長くなってしまいました。「出版界を筆頭とした既存メディアの現実と未来」というテーマについては、「マツワル」で今も書き続けていて、すで連載は140回を超えています。これをコンパクトにまとめることはなかなか難しい。

たぶん私の読みは当たるだろうとは思うのですが、そうなる根拠として他業種のことまで持ち出す必要があって、丁寧に説明すればするほど読む人が減る上に、読んだところで理解できない人も増えるので、大幅に端折ろうと思うのですが、その作業が終わっていないです。

なので、今回は図書館の話はお休みをして、「訂正・お詫び・宣伝・言い訳」をやっておきます。

まずは他人の訂正。「1975/図書館の中では見えないこと 5」に断裁について書きました。ネットではこれを「裁断」としている人たちがけっこういることに気づきました。

この場合は「断裁」とするのが正しい。通じればいいってもんではありますが、「断裁」と「裁断」は意味がちょっと違って、出版界において、廃棄の意味で「裁断」を使用することはないと思います。詳しくは、当該エントリーに追記しておきましたので、そちらを参照のこと。エロライターが書くことでもちょっとはタメになりましょう。
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2009-11-05

お部屋1977/図書館の中では見えないこと 7・本は商品である

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1・図書館はコンビニである
1970/図書館の中では見えないこと 2・こんな図書館があったら
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3・図書館の本はC級品
1973/図書館の中では見えないこと 4・図書館と税金
1974/情報を訂正するためのツール
1975/図書館の中では見えないこと 5・断裁の現実
1976/図書館の中では見えないこと 6・私設図書館とコレクター

※「図書館の中では見えないこと」シリーズが長くなってきたので、それぞれにタイトルをつけました。
 
 
以前、ポットの沢辺さんがgoogleブック検索について書いた時に、googleが営利企業であることをもって批判する書き込みがありました。

googleブック検索をめぐっては、著作権の問題よりも、電子書籍マーケットをめぐる思惑で面倒なことになってきているように見えて、ここは営利だからこそと言えますが、営利がいけないなら、ほとんどの出版社は否定されなければなりません。

その運営において、公立図書館は営利ではないだけのことで、図書館にある本だって、大半は営利事業の産物、つまり商品だったものですから、営利事業の否定は、図書館の否定にもなってしまいます。書き手だって原稿料や印税をもらっていますから、仕事です。

潔癖な考えを持つのは自由ですが、そういう人は本について語るべきではないでしょう。
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2009-11-04

お部屋1976/図書館の中では見えないこと 6・私設図書館とコレクター

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1
1970/図書館の中では見えないこと 2
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3
1973/図書館の中では見えないこと 4
1974/情報を訂正するためのツール
1975/図書館の中では見えないこと 5  
 
  
ポット出版の沢辺さんが教えてくれたのですが、特定非営利活動法人「共同保存図書館・多摩」が見解がこちらで読めます。

一通り目を通しましたが、「うーん」と唸るしかないです。

そりゃ、古本屋で100円で売っているような本まで里親探しをするのですから、今回の処分を「絶対に容認することはできません」とするのは当然でしょうが、そのうち、出版社に対しても「本を断裁するな」とか言い出しそうで怖いです、この団体。

ここで私も提案です。最初から言っていることですが、そうも大事な資料で、そうも保存する意義があるというなら、そう思う人たちが100人くらい集まって、年間1万円ずつ出して、倉庫を借りればいいんじゃないでしょうか。

とっくにそう書いているのに、誰も相手にしてくれないのが悲しいですが、冗談や当てつけで言っているのでなく、本気ですからね。
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2009-11-03

お部屋1975/図書館の中では見えないこと 5・断裁の現実【追記あり】

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1
1970/図書館の中では見えないこと 2
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3
1973/図書館の中では見えないこと 4
1974/情報を訂正するためのツール
 
 
沢辺さんがポットの日誌に書いているところによると、単行本の平均初刷部数は3700部くらいだとのこと。

へえ。って感心するような数字ではなく、「均せばそんなもんか」と納得できる数字なのですが、一般的に本はもっと刷られていると思われていますから、こういう数字は積極的に出していった方がいいかと思います。それを出そうとするのは沢辺さんらしいなと、そのことに感心しました。

「modernfreaks」のインタビューでも語りましたが、インターネットでも、初刷5千、6千といった数字を前提にして話が進んでいることがあって、「大手はそうかもしれないけど、中小も一緒だと思うなよ」とムッとすることがあります。前提になる情報が間違っているので、そこから展開する話自体に意味がない。

印税もそうで、刷部数の10%を疑いない数字として議論が進んでいることがあります。
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2009-11-02

お部屋1974/情報を訂正するためのツール

他に論じるべきことがいっぱいあって、図書館のことなんてどうでもいいと思っている私ですから、こんなはずじゃなかったのですが、長くなってしまったので、ここまでをまとめておきます。

1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示
1966/廃棄本・里親探しの実情
1967/改めて地域資料を調べてみる
1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?
1969/図書館の中では見えないこと 1
1970/図書館の中では見えないこと 2
1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報
1972/図書館の中では見えないこと 3
1973/図書館の中では見えないこと 4

 
「図書館の中では見えないこと 5」の前に、ちょっと気になったことがあるので、それについて書いておきます。

ひつじ書房の社長さんが今回の一件について、ブログ「茗荷バレーで働く編集長兼社長からの手紙」の 「文学者、石原都政が文化の破壊をする。都立多摩図書館の廃棄」と題したエントリーのコメント欄で、【特定非営利活動法人共同保存図書館・多摩が、公式的なコメントをすべきでしょう】と書いています。
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2009-11-01

お部屋1973/図書館の中では見えないこと 4・図書館と税金

前回のコメント欄に寄せられた情報によると、今回の廃棄本は古本屋が引き取るらしい。詳しくは、またも図書館学徒未満 に出ています。ブログ主のaliliputさんは地に足がついてます。

私もこのことは都立中央図書館に電話した時に聞こうと思ってうっかりしてました。すいません。

もしかすっと、都の廃棄基準はこの段階で改正されたのか、あるいは、それ以前から、有償譲渡が許されていたのでしょうが、やれることは全部やっていたってわけです。騒ぐんだったら、その段階で騒ぐべきでした。

この調子だと、一括で手渡すのではなく、買い取れるものだけ古本屋が引き取って、残りは利用者に放出ってことかな。貴重な資料を捨ててはいけないという方々は、もらいに行くといいでしょう。

最初っから正しい情報が流れていればよかったって話なのですが、都議会で話し合われていたようですから、その段階でいくらでも情報にアクセスすることは可能だったはず。都立図書館としては、その決定を粛々と実行するだけです。情報を得るべき人たちは得ていたはずなのですから、ネットでこういう盛り上がりを見せるとは予想しておらず、公表しなかったことは責められないかと思います。実際のところ、話題になっているのはネット上だけだとも言ってました。「なんでいまさら」って思いでしょう。
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2009-10-31

お部屋1972/図書館の中では見えないこと 3・図書館の本はC級品

「都立多摩図書館の廃棄本をせめて古本屋に売れないか」という意見があります。例えばこのブログ

やってみる価値がゼロとは言わないですが、東京都がその提案を蹴ったとしても、批判はできない。長くなりますが、その理由を説明しておくとします。

これも都立図書館に要求する前に、まずは古本屋に聞いてみた方がいいと思います。

「多摩図書館が中央図書館と重複している本を廃棄することになった。地域資料7万册のうちの数千册は他の図書館や学校が引き取ることになっていて、その残りは買ってもらえるだろうか」と。

予想できる古本屋の反応は二種。

まずひとつめ。

「廃棄本は買わない」

ふたつめ。

「見てみないとなんとも言えない」

続けて、こうも言うでしょう。
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2009-10-30

お部屋1971/【必読】多摩図書館廃棄本についての正確な情報

昨日、都立中央図書館に電話で問い合わせてみました。「まっ、そんなことだろう」と思っていた通りの結果が得られました。

何を聞きたかったのかと言えば、「この件についての問い合わせがあったのか」ということです。

私がずっと気になっていたのは、当初から情報があやふやだったことです。多くの方々がブログやTwitterで、この件に触れているのですが、コピーばっかりで情報に具体性がなく、ことによると、誰も都立図書館に確認をとっていないのではないか。

私が見た範囲で、唯一の例外は酒井大史都議会議員に問い合わせをした方です。素晴らしい。

それまでは複本、つまり都立中央図書館と重複している本かどうかさえ調べる人がおらず、情報が暴走。この「図書館学徒未満」の10月20日のエントリーによって、やっとすべてが複本であることが判明し、これで終わればよかったわけですが、なおも納得しない方々がいて、そこでもなおあやふやな情報を元に話を進めようとしています。
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2009-10-29

お部屋1970/図書館の中では見えないこと 2・こんな図書館があったら

前回具体的に見たように、マイクロフィルムや復刻を除けば、『エロスの原風景』に出ているものの、おそらく9割は、国会図書館にもない。でもなあ、『きぬふるい』は、名古屋市立図書館に6冊もあるのかあ。悔しいなあ。

そのマイクロフィルムの元になったカストリ雑誌の現物はアメリカにあるわけで、いかに日本の図書館が貧困かよくわかります。ブツがないこと自体も貧困ですが、これを「おかしい」と気づけない頭が貧困なのです。その貧困さこそが、今回の多摩図書館の廃棄本を無理矢理保存しようとする動きにつながってます。

「こういうものをしっかり保存しなければいけないのではないか」という意見は一向に盛り上がらず、そのくせ、どこの図書館にもゴロゴロとあって、なおかつたいして利用されていない地域資料については大騒ぎをする。騒ぐところが間違ってます。

何度も繰り返しておくと、もちろん、地域資料は重要なのですよ。図書館では、ほとんどそれしか私は利用していないくらいで、私にとっても重要。

しかし、おそらく地域資料なんてほとんど利用したことのないような人たちが今回過剰に騒いでいるのではないか。棚を想像できず、「その資料がどの程度の意味でどう重要か」が理解できていないから騒ぐ。

過剰に騒ぐのでなく、「廃棄する本の全タイトルを出して欲しい」「改めて、都内の図書館の所蔵品と、どの程度重複しているのかを調べて欲しい」と要求するくらいはいいとして。そんなことをしても無駄だと思いますが、それで納得するなら、そうすればよい。
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2009-10-28

お部屋1969/図書館の中では見えないこと 1・図書館はコンビニである【訂正・追記あり】

もう図書館の話は飽きました。今回からまとめに入って、もともと論じたかった書影の話に移行します。このまとめがまた長いんですが、都立多摩図書館の廃棄問題に限らず、私は図書館の何を問題だと考えているのかについて書いておくとします。今まで何度も書いていることですが、読んでいない人もいましょう。

本に対する興味はあっても、私は図書館に強い興味があるわけではないです。本当は強い興味があるのですが、現状の図書館には興味を抱きようがないとでも言った方がいいかな。したがって、図書館のことを書くと批判的なトーンにならざるを得ないところがあります。

だからといって、図書館の役割を否定する意図はないですよ。図書館を敵視する一部のバカな出版社や書き手とは違いますので、誤解なきよう。

「図書館のせいで本が売れなくなる」なんて言っている人たちは正気なんですかね。今現在はともあれ、子どもの頃に図書館に世話になったことがないのかな。

ひとつの図書館に何冊も本が入るような人たちは、十分印税を得ているわけで、どこまで金に貪欲なんかと。たぶんこういう人たちと、本のデジタル化に反対する人たち、著作権保護期間の延長をもくろむ人たちとは重なっていそうです。全部、バカみたい。

私の本はどんどん図書館に入れてもらいたい。「1933/エロの排除」で、「マツワル」の購読者が、都内の二カ所の図書館に『エロスの原風景』のリクエストを出したところ、どちらも「お断り」だったとの話を書きました。

早稲田大学の図書館にリクエストした段階ではすでに予定しているとの回答があったとの話もコメントされていましたが、ウンコの写真が出ている本なんざ、その辺の公立図書館には一冊も入らないのだろうと思ってました。

ところが、その購読者がまた教えてくれたところによると、入れてくれた図書館もけっこうあります。
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2009-10-27

お部屋1968/除籍予定本の大半は多摩の資料ではないのでは?【追記あり】

前回書いたことを踏まえて、地域資料についてもう少し書いておきます。

「市販されたものに比べて入手が難しい」という側面があるのは事実でしょう。図書館で地域資料の書架を眺めればわかるように、市販されているものも多いですから、あくまで「入手が難しいものもある」ってだけですが、一部を除いて、行政資料は販売されないですし、増刷されることもまずない。市史の類いは古本市場にナンボでも出ますが、会計報告書は売りに出ない。欲しがる人がおらず、値段がつかないためです。

同時に、行政の発行物は、黙っていても図書館に配布されるという側面もあります。『武蔵野市史』が、三市町の図書館を除いて、東京の全市立・町立・区立の図書館に収蔵されているのも、「購入するかどうか」の判断をするまでもなく配布されるからでしょう。これが地域資料が広く収蔵されている理由の第一点です。羽村市立図書館にないのは、その当時はまだ羽村町だったためでしょうか。

続いて、「地域資料は貴重」という意識が図書館側にあることが第二点目です。そのため、廃棄されない。40年近く前に出た『武蔵野市史』が今も残っているのはこのためです。

これが成文化されている自治体もあります。例えば厚木市図書館資料除籍基準志木市立図書館除籍基準など。どちらも郷土資料と行政資料に限って廃棄できないということなので、地域資料のすべてを捨ててはいけないというわけではないでしょうが。
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2009-10-26

お部屋1967/改めて地域資料を調べてみる

正直なところ、多摩図書館の廃棄本問題についての皆さんの反応を見ていると、「何を大袈裟な」といった印象を拭えません。たぶん、「地域資料」というところで、とてつもなく重要なものが捨てられるとの想像を膨らませているのでしょう。「どうせおまえらは、エロだったら、なんの反応もしないくせに」と思わないではいられない。

各地域で出された雑誌や報告書の類いが重要ではないと言っているのではないのですよ。私もそういったものを探すのに苦労した経験が幾度もあります。

かつてその地域にあった遊廓について詳しく知っている世代の人が近隣に残っていないことがあって、こういう時は、市史の類いを丹念に調べていくと、ひっそりと出ていたりするものです。あるいは、地元の郷土史家が自費出版していたり。

今回廃棄されるものの中にも、八王子や調布、府中、三鷹の遊廓や赤線、街娼に関する資料があるかもしれない。たぶんほとんどないと思いますけど、あったとしても、どっかの図書館が保存していればいいや。
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2009-10-25

お部屋1966/廃棄本・里親探しの実情

「多摩図書館の廃棄本問題」はもういいかと思っていたのですが、これに関する話題をつらつらと見ているうちに、他にもいろいろいと気になることが出てきてしまいました。

ふだんだったら、「マツワル」に書くところですが、「黒子の部屋」で公開してしまったので、続いてこちらに書いておきます。

多摩図書館の廃棄本問題は、NPO法人「共同保存図書館・多摩」の事務局長の話から始まったようです。

多摩地区の図書館では年間60万冊の本が廃棄されているのをなんとかしたいというのがこの団体の設立趣意です。気持ちはわかりますが、意味のあることをやっているとはどうしても思えないです。

その実績はこちらの記事に出ています。

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図書館関係者でつくるNPO法人「共同保存図書館・多摩(多摩デポ)」(座間直壯(なおよし)理事長、調布市)が、廃棄される蔵書の「里親探し」を始め、注目を集めている。蔵書を維持できない図書館と蔵書が足りない図書館を橋渡しする事業で、民間団体による取り組みは全国でも例がない。これまでに148冊の仲介に成功したという。【山本将克】
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2009-10-24

お部屋1965/メードとメイド

「唐沢俊一検証blog」のエントリー「Syuppan Rush」で、「メード喫茶」という新聞の表記が出てきます。

これは記者個人の問題ではなく、新聞社の基準によるものです。さらに元をたどると、かつての国語審議会の決定によるものです。

新聞でも、「メイド喫茶」については、特例的に「メイド」と表記することもあるのですが、今も「メード」が正しい新聞の表記です。「メイド・イン・ジャパン」も「メード・イン・ジャパン」です。

そのことをコメントしようと思ったのですが、コメントを書いているうちに、他の人に先を越されてしまいました。

では、こっちでは、もう少し詳しい話をしておきましょう。

「メイド」に比して「メード」は幾分間の抜けた印象になりますが、それは我々が今の時代に生きているためです。1970年代あたりまでは、maidもmadeも圧倒的に「メード」だったはずです。
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2009-10-22

お部屋1963/多摩図書館廃棄本問題と「書影使用自由」の表示

ポット出版のサイトで、このところ話題なのが「朝焼けの図書館員」のエントリー「救いたい!」です。アクセス急増中です。

しかし、協力貸し出しができるようになったために、都立図書館の中で重複している本を捨てるってだけのことですから、何が問題なのか私にはさっばりわからないです。なぜそう思うのかについては、東京国際ブックフェアで語った話を参照のこと。

こんなことはよくある話であって、どうして今回これが特別に問題視されるのか、どなたか説明して欲しいです。単純に「もったいない」という気持ちはわからないではないですが、それを保存するための税金の方が私にはもったいない。そんなことでは、オリンピック招致に150億円を使った石原都政を批判できないです。

保存を目的とする国会図書館で、行方不明になったり、破損したりする本があることについては私は怒りに近い感情がありますし、箱やカバーを廃棄していることについても同様です。それを放置していることと、利用者の少ない重複本の破棄に反対することは、根っ子は一緒のようにも感じます。それぞれの図書館の役割をはき違えています。

国会図書館以外の図書館でも保存を考えてもいいですが、限られたスペース、限られた人員、限られた予算の中で保存するのであれば、より多くの種類の本を保存すべきであり、重複しているものは廃棄していいでしょう。

都立図書館はどうなのか知らないですが、廃棄本はもらいうけることができるはずなので、これを批判する人たちは、私財を投げ打って個人で保存すればいいのではなかろうか。税金を使わないでください。
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