2009-10-25

お部屋1966/廃棄本・里親探しの実情

「多摩図書館の廃棄本問題」はもういいかと思っていたのですが、これに関する話題をつらつらと見ているうちに、他にもいろいろいと気になることが出てきてしまいました。

ふだんだったら、「マツワル」に書くところですが、「黒子の部屋」で公開してしまったので、続いてこちらに書いておきます。

多摩図書館の廃棄本問題は、NPO法人「共同保存図書館・多摩」の事務局長の話から始まったようです。

多摩地区の図書館では年間60万冊の本が廃棄されているのをなんとかしたいというのがこの団体の設立趣意です。気持ちはわかりますが、意味のあることをやっているとはどうしても思えないです。

その実績はこちらの記事に出ています。

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図書館関係者でつくるNPO法人「共同保存図書館・多摩(多摩デポ)」(座間直壯(なおよし)理事長、調布市)が、廃棄される蔵書の「里親探し」を始め、注目を集めている。蔵書を維持できない図書館と蔵書が足りない図書館を橋渡しする事業で、民間団体による取り組みは全国でも例がない。これまでに148冊の仲介に成功したという。【山本将克】

事業は、多摩地域の図書館の協力を得て昨年7月から実施している。廃棄予定の蔵書や受け入れたい図書を募り、横断検索機能などを駆使して館同士を結ぶ。

 買い替えなどで不要になった「現代日本文学大系」や「志賀直哉全集」などが別の図書館に引き取られたという。

(略)

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約10ヶ月で、数十万冊のうちの148冊。そんなもんでしょ。税金を使っているわけではないのでしょうから、「頑張ってくれ」という話ではありますが、こんなことを他にやる地域がなかったのは当然です。無駄ですもん。

「志賀直哉全集」は今まで何度か出ていますが、おそらく岩波書店が1983年から翌年にかけて出した全15巻のものでしょう。筑摩の「現代日本文学大系」は全97巻。欠落がないとすると、このふたつの全集で112册。

つまり、148冊のうちの大半がこの2種の全集だったらしい。そりゃ、そうです。送料だってかかるのですから、少部数を引き取ってもしょうがない。

「現代日本文学大系」は巻によって人気が違いますが、刊行されてから30年も40年も経っていて、イヤでも経年疲労しますから、全巻、相当傷んでいたのではないでしょうか。「志賀直哉全集」もそこそこは利用されていたはずです。

「志賀直哉全集」を「日本の古本屋」で見ると、箱つきの揃いが4千円で何セットか売りに出ています。1冊260円くらい。個人が所有していたものは、図書館で利用されたものよりずっときれいですから、古本屋から買った方がいいんじゃないですかね。

利用頻度が高い本は傷みが激しく、図書館員が1時間かけて補修するくらいだったら、買った方が安い。利用されなかった本はきれいですが、利用されない本はどこの図書館もいらない。発展途上国ならともかく、今の日本で、「どんな本でもいいから欲しい」なんて公立図書館は存在しません。

本を保存する意義については重々わかっているつもりですが、どちらの全集も、古本屋に行けばいくらでも見ることができるものであり、裸本だったら1冊100円で売られているようなありふれた本ですから、わざわざ手間をかけて「里親探し」をしなければならない理由が私にはわかりません。捨てていいものです。

多摩図書館の廃棄本について、通達から廃棄までの猶予が短すぎるという批判が出たために、来年1月まで延期したそうですが、なんつう無駄なことをやっているのでしょう。期間が短いのは、どうせ引き取り手がいないことが想像できるからでしょうに。引き取られる本が50冊から100冊になるくらいのことはあるにしても、その間、管理するにも金がかかるのです。図書館員はボランティアじゃないんですから。あー、税金の無駄遣い。

さらに続きます。

このエントリへの反応

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