ベルリン映画祭現地レポート スタジオ・ポット

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[2004-02-15(日)]

ベルリナーレ(ベルリン国際映画祭)11日目


text: 青木淑子
aoki@pot.co.jp

会場の担当者

バーバー吉野」の荻上直子監督。ステージ挨拶風景

質問する子ども

あっという間にベルリン国際映画祭も最終日になりました。
10日間なんて、本当にすぐなんですね。最初は毎日見た映画について書くなんて、あらすじ書くだけでも大変そうで、とても自分にはできないと思っていましたが、もちろんいつもライターとして雑誌に書いている時に比べたら、10%もまともに書かれていない、と反省しているのですけれど、それでも最後までやり通せたという達成感はちょっとだけあります。これも、読者の皆様が熱心に読んでくださっているからこそです。何とかゴールまで走り続けることができました。
本当にありがとうございました!
そして、担当の日高さんにもお礼申し上げます。他のお仕事もあって、さぞかし大変だったことでしょう。書く私達もハードですが、それを毎日アップする編集者さんもものすごくハードだったと思います。毎日のサポートを、本当にどうもありがとうございました!!

最後はかなりばたばたしてしまいました。先週のように、土曜日に買い物ができなくて困らないように、昨日はポツダム広場のアルカーデ内にあるスーパーマーケット、カイザースで買い物をして帰ろうと思い、閉店時間をチェックに行ったら、なんと夜の8時まで開いているとのこと! ベルリンではこの長さは本当にありがたいことです! 私の暮らすツェーレンドルフ地区で、土曜日の8時まで開いている店などありません。これなら大丈夫、とほっと胸をなでおろし、映画を見てから私はドジってしまいました!すっかり買い物のことを忘れて電車に乗ってしまったのです!!
「あら! どうしよう・・・。」気がつけば、もうヴィッテンベルク広場。
とにかく降りて、マーケットが近辺で開いているか見てみました。
ヴィッテンベルク広場は、老舗のデパートKaDeWeがあったり、道路がそのまま旧西の目抜き通りであるクーダムに続くため、とても旅行者の多い中心地です。なので、やっぱりマーケットが開いていました! 良かった〜〜! 急いで入って、野菜をカゴに入れました。パセリ、有機栽培の人参、レタス、きゅうり、チコリ。それで、レジに行ったら、「21、5ユーロ」と言われたんですね。
最初はふ〜ん、と納得し、ぼけぼけのまま財布からお札を取り出しましたが、待てよ! 野菜少しでそんなに高い??? それって円にしたら、2500円以上じゃないの??? それで、「ちょっと高いんじゃないですか?」とレジのおばさんに聞いてみましたら、彼女は無言。し、失礼な!! すると後ろにいたお客のおじさんがすかさず、「そうだそうだ!それは高すぎる、もう一度計算してくれ!」と言うではありませんか!
ひぇ〜〜! 私のために、他のお客さんが抗議してくださるなんて! 感動して待つこと数十秒。今度は12,5ユーロと出ました。ドジな私はまだわからず、「そう、ではそれを信じるわ」とか言って、お財布からお金を出そうとすると、そのおじさんが再び、「いや! まだ高い! そんなことはありえない!」と食い下がるではありませんか!! え〜〜!
でもでも時間もかかってしまうし、みなさんを待たせるのは申し訳ないし、再度チェックして間違うはずなんてないし、それにこのマーケットって大きなチェーン店で、レジの人もちゃんと研修を受けているはずだし・・・。と思ってうろたえていたら、おじさん、さっさと私のかごから全ての野菜を取り出し、もう一度計算しろ、とレジのおばさんに抗議しているのです!
ありがたいやら申し訳ないやらで、ドキドキしていたら、あらら本当!
最終的なお値段は4,95ユーロだったんです・・・・。これっていったい・・・。
??? それに、最後まで無言で謝ろうともしない失礼なレジのおばさん。その脇で、まるで自分のことのように喜んでいるおじさん・・・。なんとまぁ好対照なこと! とにかく私はおじさんに心からのお礼を言って出ました。こんなことってあるんですねー!!! 映画みたい!?

さ、それはともかく・・・サイモン・ラトルはもう諦めました・・・。すっかりパワーを失い、会場まで行く気力もありませんでした。ごめんなさい・・・。
まぁ行っても、チケットはなかったかもしれないですしねぇ・・・。弱気。

それから、本日朝11時から、14Plus Kinderfilmfestという、子供向け映画新しい枠の作品「Jargo」を見ようと思って、昨日チケットセンターに並んだのですが、もう完売と言われてがっかり・・。
この作品の内容は知らないのですが、音楽を担当したのが、私達の友人でこのサイトに何度も登場してくれたかよちゃんの旦那様!なので、ちょっと見てみたかった(聞いてみたかった)のでした。
チケットをゲットできずに残念だったと、かよちゃんにメールしたところ、かよちゃんは彼の舞台挨拶を撮影するため、上映場所には行くとのこと。後でいろいろ聞いてみようと思います。(今日、ちょっとだけ会ったのですが、聞いている時間がありませんでした。)

タレント・キャンパスの畑中さんも、ハンブルクに戻ってからメールをくださるそうで、もっといろんな情報を掲載できると思います。これもどうぞお楽しみに!

「バーバー吉野」より

さて、14時からの「バーバー吉野」に行って参りました! 少し早く映画館に到着したので、かよちゃんからいただいた「私はヒトラーの秘書だった」の本を読みながらお茶を飲んでいましたら、会場の担当女史が私のところにやってきました。(写真の美女です)それで、唐突に、「お誕生日おめでとうって、日本語でどう言うの?」と聞かれました。そうだったんです! 今日15日は、「バーバー吉野」の荻上直子監督のお誕生日!!! まぁそれはめでたい! と言って、担当さんに教えてあげました。ちゃんと「お誕生日おめでとうございます」までステージで言っていました。監督も嬉しそうでしたよ。
とにかくものすごい人で、入場できないほど。かよちゃんも当日券を狙ったのですが、残念ながら完売状態でした・・・。
舞台は、ある村。昔からの慣習で、男の子達は皆、いわゆる「まことちゃんカット」(短いマッシュルーム・カットですね)を強いられているのですが、そこに、東京から転校生がやって来ます。茶髪のかっこいいヘアスタイルに動揺する男の子達。特に「バーバー吉野」の息子は、いろんなことを考えます。でも、まだ心の中はどうするのが自分に正直なのかわかりません。
友情、家族、ほのかな憧れ・・ユーモアと叙情たっぷりのストーリィは、ドイツ人の子供達にもおおいに受け入れられていました! 最も盛り上がるシーンでは、盛大な拍手が沸き起こり、笑いも多かったです!!
ステージで挨拶する監督は、とても嬉しそうでした。子供達の可愛い質問に一つ一つ丁寧に答えていた監督。とても優しい目をしていらっしゃいました。
土屋さんがおっしゃっていたように、お会いして少しお話を伺ってもよかったのですけれども、沢山の子供や大人に囲まれていらしたので、遠慮させていただきました。もたいまさこさんの演技がすごく良く、そして子供達もとっても頑張っていました。
素敵な作品をありがとうございました!!
写真は、質問をするために手を上げている、ドイツ人の女の子。本当に沢山の子供達が質問していました。会場はあたたかい雰囲気に包まれたまま、終了しました。

そういえば、今日日曜日は私が定期購読しているベルリン新聞の休刊日。
なので、キオスクでターゲスシュピーゲル紙の日曜版を購入しました。
この新聞の映画欄で、最も著名な映画ジャーナリストで編集者のオラヤ氏が、今回の金熊賞について書いていて、とても興味深かったです。
このオラヤ氏に、私は何度かお会いしたことがあります。ターゲスシュピーゲルに、私の原稿(映画の「幻の光」について)が掲載された時にいろいろお話をさせていただいたのです。彼の視点はすごくシャープで、他の人とは違う切り口で映画を語るのが特徴。なので、他が絶賛していても、彼だけ辛口の点数をつけることもしばしば。今回は、彼の最高点は「モンスター」と、テオ・アンゲロプロス監督の作品でした。当然今回の金熊賞には言いたいことあり! ということで、かなりの字数を割いて彼の意見が書かれていました。
そもそも、ドイツ映画が金熊賞を受賞することはかなり珍しく、振り返れば1986年のラインハルト・ハイム監督「Stammheim」、1982年のライナー・ファスビンダー監督「Die Sehnsucht der Veronika Voss」で、つまりほぼ20年間なかったということです。オラヤ氏は、意表を突いた作品の受賞で、「これはほとんどギフトだ」とすら言っています。実際、このドイツ生まれのトルコ人、アキン監督は、いろいろ映画祭に参加する際、トラブル+悩みがあり、カンヌに出そうかどうしようかと思ったらしいです。でも、ぎりぎりでベルリナーレのコンペに参加。それがこの受賞につながったのですから、とてもラッキーといえるでしょう。監督にとっては、受賞の喜び以上に、彼の両親がこの作品を気に入ってくれたことが嬉しいとか。最高の親孝行をしたということでしょうか。

ということで、今日はこの辺で! つよ子もいろいろ見ているので、ご報告があります! 最終日は1本+テディ賞のご報告! さぁどうぞ!

 

 

text: つよこ・フォン・ブランデンブルク

●A Letter to True / Bruce Weber

「A Letter to True」より

最終日を締めくくるにふさわしい作品だわ〜。

男の子のモノクロ写真やセレブのポートレート作品で有名なスター写真家ブルース・ウエバーのドキュメンタリー作品。出演者の名前はみんな犬。動物好きで最近猫の写真集も発売したウエバーの犬へのオマージュ。とにかく、癒される映画。恣意の入った人間の演技や行動よりも、青い海に目をむける犬の視線をみていると自然と心がカラになってくるから不思議。これはウエバーのいわゆる映像ダイアリーというもので、ダーク・ボガードやエリザベス・テーラー論ともいうべきイメージ画像、ベトナム戦争の懐古、犬、自然への愛が、手書きの手紙とノスタルジックなジャズ音楽を背景に綴られていく。
世界でも有数のエステティックな写真を撮る写真家だけあって、映像の視点やアングル、色彩が(モノクロの時の光も)限り無く美しい。ドキュメンタリーというより映像美にすぐれたアーティステックな作品。マリアンヌ・フェースフルのハスキーなボイスにナレーションとして出会えたのにも感激。嫌いな人もいると思うけど、ブルースの写真のファンはわかってくれるはず。DVDでたまに部屋に流したくなるようなタイプの作品。

ゲイ&レズビアン映画祭の受賞作品が発表されました。ジャジャ〜ン!
●大賞
WILD SIDE / Se´bastien Lifshitz フランス
●ドキュメンタリー映画
THE NOMI SONG /Andrew Horn ドイツ
●ゲイのフリーペーパー「ジーゲスゾイレ」賞
D.E.B.S. /Angela Robinson
アメリカ大賞は、ちょうど過労でダウンしていた時に上映されたものでごめんなさ〜い見逃した。トランスセクシャルの売春婦の話でかなりハードな内容であったことは確か。ううう、「ノミ・ソング」が入選したのは本当に嬉しいニュース!これでノミへの回帰熱がやっていて、DVDや秘蔵版が出たりするともっと嬉しい。
D.E.B.Sかぁ。これは、あたしゃどうでもいいわ。そういえば、観客賞がまだ発表されてないわね。淑子さんとの総評の時にはお知らせできると思う。

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