ついに無料の水を逃さずゲットする方法を発見! たかが水で大げさだけど、まあ聞いて! まず、朝9時からのベルリナーレ・パラストでの第1回目上映を鑑賞。その後、記者会見場には向かわずに、すぐに地下1階にあるプレス専用の資料部屋に向う。ここには昨日書いたターゲス・シュピーゲルなどの有料新聞もタダで置いてある(もちろん情報源は青木さん。昨日のジャーナリスト評価の話もそうだよ)。
まずはこの新聞を取って、それから同じフロアにある水の冷蔵庫へ向うのだ。まあ、みんな考えることは同じらしく、新聞の前にはすごい列ができる(水より数が少ないので競争率が激しい)。後ろから押される圧力たるや満員電車なみで、あっという間になくなっていく。別に駅の売店とかでも売ってるんだからそんなに押さなくても…と思うけど、やっぱタダの魅力に勝てないのはいずこも同じなのね。水のほうは列ができることはないけど、地下に降りて15分もすると冷蔵庫はカラになる。次の補充はいつかわからないから、タイミングが悪いと、こないだみたいに1日中水にありつけないわけです。
さて、今日の1本目は、パトリス・シェロー監督の『SON FRERE(HIS BROTHER)』。エイズを発症し、死期がせまった兄を見守るゲイの弟…という話なんだけど、いやー、すごい生々しい映画だったわ。この監督は何年か前に「インティマシー/親密」という映画でベルリン映画祭の最高賞(金熊賞)をとっているんだけど、これがまた不倫男女のベッドシーン(この言葉って古すぎ?)が多くて話題になった。昨年日本でも公開され、R指定につられておっさん連中がかなり行ったと思うのね。でも、実際観てみると、全裸シーンは多いけどリアルすぎてエロスがないという感じ。今回テーマはまったく違うけど、手法は同じ。例えば、病院のシーンでは、なぜかわからないけど、看護婦さんが兄のわき毛、胸毛、へその下のほーうの毛をそるシーンをかなり長く描写してる。一応、アソコは看護婦さんがタオルで隠してるけど、俳優さんにとってはかなり厳しいシーンのはず。もうこれは、ジョージ・クルーニーのお尻が出る出ないの次元じゃなくて、もうとにかくリアルで痛々しくて、目をそむけたくなるほどなの。知らない俳優さんがやってるせいもあるかもしれないけど、本当に病気で死にそうに見える。どっちがいいかは別にして、ハリウッドのエンターテイメントとは対極にあると思う。私自身は嫌いな手法じゃないけど、今回は生々しすぎて、かなりツラかった。
2本目はドイツ映画『LICHTER(DISTANT LIGHTS)』。おとといの『GOOD BYE,LENIN!』とはうって変わってシリアスなタッチの映画だった。ポーランドとの国境に近いドイツの町とポーランドの町を舞台に、5組の人々のつらい現実が並行して描かれる。とくに印象に残ったのが、ウクライナからポーランドを通ってドイツへ国境越えをしようとする人々の話。ある人はポーランドでつかまったり、ある人は車のトランクに隠れて検問所(?パスポート見せて通るところ)を通過したり、赤ちゃんがいるのに川を渡って行こうとしたり。私にとっては国境越えというと北朝鮮から中国へということしか思い浮かばなかったけど、「ああー、ドイツにもこういう現実があるのねぇー」と悲しくなった。とくに娘が晴れの日に着るドレスを手に入れようと(貧しくて買えない)、下心から国境越えに手を貸すポーランドの父親があわれ。監督はHans-Christian Schmid。
そして3本目。事前の資料を見て、前から期待していた『JA ZUSTER,NEE ZUSTER(YES NURSE,NO NURSE)』。とてもレトロチックなオランダのミュージカル映画なんだけど、いやー始まって中ごろまで、次々と席を立つ人が多いのに驚いた。私は、あまりにもバカバカしい話と昔のハリウッドのミュージカル映画のような雰囲気(パロディがちょっと入ってるかも)を大いに楽しんだ。主役がナースのかっこうしたいい年のおばちゃん。だけど病院が舞台じゃなくて、自分の家だかなんだかしらないけど、そこで下宿人の世話をしてるみたいなんだよね。つねに不機嫌で文句ばっかり言ってるハゲ頭のおじんが隣に住んでて、ナースとおじんの対決が中心の話。まあ、内容なんてほとんどないわけです。多くの人にとってはシリアスな2本を観たあとだったので、くだらなさが耐えられなかったのでしょう。でも、私にとっては頭をからっぽにして観れたのでグー! 正統派おバカ映画と言っていいんじゃないかな。(銀座シネパトスあたりで公開してほしい)
今日は元気もあったので、4本目に挑戦! 日本からフォーラム部門に出品された『ボーダーライン』を観た。うー、映画祭初めての日本語でうれしかったー。日本ではまだ公開されていない作品で、ぴあのPFFスカラシップ作品として撮られたみたい。監督は在日韓国人の李相日。だからといって、在日の人々にスポットを当ててるわけじゃなくて、親子関係の亀裂や援助交際、いじめ、やくざなど、日本のいやーな部分を鋭く描いてる。フォーラムやパノラマ部門では一般の人と一緒に観れるようになってて、上映後には監督とかも出てきてトークが始まる。李監督は、ミスチルの桜井くんにちょっと似たさわやか系。何年か前、岡山で母親を殺した少年が山形まで自転車で逃げたという事件を題材に作ったと話してました。
映画では父親を殺した少年という設定で、その少年にかかわるやくざやタクシー運転手、援助交際してる女子高生などが登場。「ハッシュ!」でもいい味だしてた光石研がここでもいい味出してるし、マイホームを守るためにだんだん壊れていく麻生祐実もイケてる。ドイツ人から在日韓国人であるということは映画に関係しているかの質問が出たが、それには「日本にいながら日本社会のことを距離を置いて見れる環境で育った。だから、そういうことを映画にしたいという気持ちはある」と答えていた。上映中は日本の恥部がいっぱい出て来るので、なんか恥ずかしい気持ちになっていたが、なるほど、と妙に感心。テーマはズバリ、親子の捨て切れない絆の崩壊と再生と言っていた。
4本目の映画は私ひとりで鑑賞。終わったのは夜の9時40分。駅へと走る足取りもだいぶ慣れてきた。まるで、会社帰りのOLみたいな気分。って、1週間も通っていれば当たり前か!?
(今日までの鑑賞本数18本) |