ベルリン映画祭現地レポート スタジオ・ポット

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[2003-2-10(月)]

「タレント・キャンパス」
ヴェンダースとホッパーのトーク
青木淑子
ambient@kt.rim.or.jp

映画上映のあと行われたホッパーとヴェンダースのトーク&質疑応答


 

 

 

 

 

 

2月10日、私はポツダム広場へは行かなかった。
Haus der kulturen der Welt (世界の文化の家)というコングレス・ホールへ行っていたからだ。私はそこで、ヴェンダースの奥様・ドナータと待ち合わせをしていた。ヴィムとドナータと、うきうきするような企画を練っているところなのだ。

さて、実はここでは、5日間に渡る「タレント・キャンパス」が展開されているのだが、これも映画祭関連のイベントである。約3万通のメールが飛び交い、2000人の応募があり、1800人がトライし、1500人が規定をクリア、そのうち500人が世界61ヶ国から選ばれ、そのほとんどがベルリンにやって来ました。若者は、映像作家志望だけでなく、俳優、脚本家、プロデューサー、シネマトグラファーも含まれています。応募要領はさほど難しいわけではないけれども、1分間の映像作品を作成して、その他の申請書と供に提出する。

今日はヴェンダースがホスト役で、昨日はデニス・ホッパーがゲストで登場。ホッパーの自伝的映画作品を上映した後、ヴェンダースとホッパーのトークとなった。

今回痛烈に感じたことは、「英語は、できて当たり前」の現実。世界中の才能ある若者が集まっていたのだが、ジャーナリストはもちろん、そうした若い人々は、皆英語を話す。しかもすばらしくうまい! 当然みんな英語がわかる、というところから話がスタートしているので、ベルリンだけれでも、つまりドイツ語圏なんだけれども、映画に字幕スーパーもなければ、トークに通訳もいない。全て英語だ。

若者は、次から次へ積極的に質問をし、ホッパーもヴェンダースも丁寧に答える。2時から始まったイベント、映画上映が2時間、4時から40分ほどトーク、そしてその後質疑応答で、なんと1時間半近く答えてくれた!! イベント終了は6時。見ているだけでもハードだったのに、さぞかしホッパーもヴェンダースも疲れたことだろう。でも、彼らの心、しっかりキャッチしました!
心に沁みる、あたたかいイベントだった。
ありがとう! ホッパー&ヴェンダース!

[2003-2-10(月)]

●MY LIFE WITHOUT ME
●LA FLEUR DU MAL(THE FLOWER OF EVIL)
●コンフェッション
五賀雅子
ambient@kt.rim.or.jp

 

 

 

 

 

今日で映画祭5日目。16日が最終日なので、ちょうど中間という感じかな。コンペティション部門の出品作22本中、今日で12本が上映される計算になる。連日、異国の言葉で映画を観るというストレスのたまる状況なので、私自身は13日に上映される『たそがれ清兵衛』が超待ち遠しい。もちろん日本でも観たけれど、外国の人の反応がどうなのか興味津々。宮沢りえちゃんも来るらしい。

ところで、ベルリン映画祭のことは地元の新聞でも毎日2〜3ページをさいて紹介している。とくに、ターゲス・シュピーゲル新聞は前日に上映されたコンペ部門の作品について、6人のジャーナリストそれぞれの評価を◆(3つが最高)と◇(2つが最低)で紹介しているので、注目度が高い。ちなみに、昨日までの上映作品では、ニコール・キッドマンの『THE HOURS』が平均して評価が高かった。でも、人それぞれ、ほんと見方は違うので同じ作品で最高と最低が同居してたりして面白い。私的にはブーイングもんだったチャン・イーモウ監督の『HERO』だが、こちらでは高い評価。それが解せないけど、チャン・イーモウ監督はベルリンで結構賞をとっていて、好まれるタイプみたい。

さて、今日の1本目は、『MY LIFE WITHOUT ME』。監督はバルセロナ生まれのIsabel Coixetという女性で、スペインとカナダの合作なんだけど、セリフはすべて英語。どこが舞台かがちょっと?です。主人公はAnn。トレーラーハウスに暮らしながらも、2人の子どもとハンサムでやさしい夫と慎ましやかな生活を送る23歳。…が、ある日突然、あと2か月の命と宣告され、残される大切な人々へと贈るあるプランを思いつく…。静かに淡々と描いているのは好印象だけど、昨日までのきらびやかハリウッド大作のあとに見ると、地味な感じと演技力不足の感じは否めず。内容も深みが足りず、とくに夫を愛していながら、思いを寄せられた男になびくのは納得できないなー。 (日本公開は?)

 

 

 

2本目は巨匠クロード・シャブロル監督の『LA FLEUR DU MAL(THE FLOWER OF EVIL)』。日本で人気の高いナタリー・バイとブノワ・マジメルが義理の親子で登場。中産階級のある家族(妻が娘連れで、夫が息子連れで再婚)が描かれるのだけど、最初は義理というのがよくわからず、頭の中に?が渦巻いてる状態。家族なのになんかよそよそしいし、兄妹と思ってみてたらいちゃつきだしたりで、ようやく半ばで何とか理解。でも、キーパーソンとなる老婦人がどっちの血縁なのか、語学力不足でわからず。家族の中で起こった殺人とその隠蔽が描かれるのだけど、ブノワ・マジメルの美しいキスシーンばかりが目に焼きついたよこしまな私。難解といわれる巨匠の映画なので、もう1回、日本でじっくり観させていただきます。ミーハーなので、ブノワ・マジメル観たさに記者会見へ。しかし、質問はシャブロル監督に集中。ナタリー・バイがかろうじてちょっと話したくらいで、マジメルは一言も発せず残念。(日本公開は?だけど、ありそうな気が…)。

 

 

 
3本目は、ジョージ・クルーニーの初監督作『コンフェッション』。1970年代のアメリカで、高視聴率のバラエティ番組を連発させた実在のテレビマン、チャック・バリスの伝説が描かれる。なぜ伝説かというと、彼はCIAの工作員として殺しにも関与してたから…。こう書くと、重々しい話かと思うが、なにせチャーリー・カウフマン(8日の『アダプテーション』にも登場)の脚本なので凝ったくせのあるつくりになっている。この映画、『ソラリス』のスティーブン・ソダーバーグが製作総指揮を務めてるし、今回の映画祭では2本にかかわってる人が多く、わけわからなくなりそう…(メリル・ストリープもそう)。
主役のチャック・バリスを演じるのは、「グリーンマイル」のいけすかない看守役で強い印象を残したサム・ロックウェル。何か顔からして70年代風だから、良い味出してます。しかし、正統派ではないので、観る側のスタンスによってかなり評価が分かれそう…。途中で席を立つ人も、いつもよりちょっと多かった(たくさんじゃないけど)。70年代の番組を再現しているので、これが結構マニアックで楽しめる。なぜか、ベルリンの壁下に掘られたトンネルを抜けるシーンもあったりして、遊び心も満載だ。(日本では8月下旬公開予定)。
(今日までの鑑賞本数14本)

 

 

 

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