朝、なかなか起きることができず、ぐずぐずしながら青汁を作って出発。今日は息子が友達の家に泊まるので、安心してベルリナーレ漬けになれます。新聞を読みましたが、エリック・ロメール監督はやはり評判が良くなくて、ちょっとパワーダウンな感じでした。けれども、ケン・ローチ監督作品については、絶賛していて、「この作品に金熊賞を与えて欲しい、そうすればベルリナーレも救われる」というようなことが書かれていて、ジャーナリストはストレートなハッピーエンドを欲しがっているのだな、という気がしました。時代は、もういい加減過去の戦争の呪縛から解放され、もっと前向きな創造を求めているということなのでしょう。
さて、今日は各賞の決定の日。発表は14時ですが、私は9時からの最後のコンペ作品を見ました。「25 Degres en hiver」(Stephane
Vuillet監督)で、ベルギー、フランス、スペインの合作映画。これ、なかなか面白かったです。
ちょっとした掘り出し物を見つけたような感覚で楽しめました。女の子がとても可愛く、切なくて、何だかじ〜んときてしまう作品でした。
ベルギーの首都。男は7歳の娘と暮らしていて、娘の母親はNYにいます。
ウクライナ出身の亡命者、ソニアがひょんなことから男に救いを求めたことから、ストーリィはどんどんまわりの人々を巻き込み、好奇心から車で男、ソニア、娘、娘の祖母が、ソニアの消息を絶った夫の住む場所まで行くのですが・・・。内容的にはかなり暗いはずなのに、娘はウェットではなく、とても聡明なキャラクターなので、あまり暗くならなかったし、何より全体に流れるユーモアがとても自然で、すんなり映画の中に入ることができました。みんなどこかいい加減なところがあって、そこが魅力になっているような・・・。コンペ最後の作品は、それほど悪くないなぁ、と思わせる力作でした。
ということで、私はベルリンに来てからずっと、このベルリナーレに関わってきていますが、正式にパスを取得して参加したのが97年ですから、かれこれ7年も見てきているのですね。でも、1度も全コンペ作品を見るということがありませんでした。今回、この映画祭レポートを書くにあたり、どうしても見る必要があり、頑張って制覇しましたけれども、全てを見てみると、いろいろ考えることがあります。
やはり、コンペの傾向というものがあるんですね。戦争、家族愛、精神性の高いものが好まれます。そうでなければ崇高じゃないとばかりに、これでもか、これでもかと戦争映画が続くことがあるのです。でも、その表現方法は、年によって違います。今年は、家族というのが、かなりテーマになっていたように思います。それと、私は個人的にはアンゲロプロス監督が素晴らしいと思いますが、やはり全体を見てみると、彼などはもう古典の部類なのでしょうね。浮いてしまっているというのか、別格というのか、あるいは場違いだったというのか・・・。かえって、ベルリナーレ・スペシャルあたりで、グリーナウェイ監督と同列で上映した方が良かったのかな、と思います。つまり、コンペに合わない作品なのかもしれないです。素晴らしすぎて、コンペの主旨とは全く違う方向に行ってしまっているような・・・。他の作品とはあまりにも違いすぎます。賞を与えるべきでないなら、賞を与えないべきでもない、そう、特別賞などがあれば、その賞を受賞して欲しいくらいでした。ベルリナーレらしい映画、というのもあります。人種問題、戦争や政治などを、直接描くのではなく、新しい、強い創造力でもって表現できる作品。そういうものを、私達はいつも求めています。
さて、受賞作品の発表までにまだ時間があったので、私はショート・フィルムを見に行って来ました。全部で9本!これ、ズルして全てカウントすると、今日は10本見た計算になりますねぇ。すごい!! コラム担当の日高さんが大変になってしまかもしれませんが、9本全てご紹介します!
*The Scree ( Paul McDermott) 15'オーストラリア作品
5人の仲間がボートに乗って、知らない不思議な島に行きます。そこにある植物を食べたり、いろんなことがあるのですが、次々に仲間は死んでいくのです・・・。
*Little Man (Martin Brieley) 11'イギリス・南アフリカ合作
南アフリカの貧しい状況下で育った13歳の少年。彼の唯一の楽しみは、一人で森を散歩することでした。ある日、その森の中で、19歳の少女に出会います。彼の世界は彼女の出現によって変化するのですが・・・。
*True (Tom Tykwer) 12'ドイツ作品
「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督作品。主演がナタリー・ポートマンという、贅沢なショートフィルム。著名監督でなければできない豪華さで、圧倒的な完成度があったものの、何故にショートフィルムに?という感じでちょっと白けた作品。以前、ウォン・カーウェイ監督もショート・フィルムに登場したことがありますが、その時はさりげなく、とっても素敵な作品だったのを覚えています。
ティクヴァ監督のこの作品は、盲目の青年と、その彼女であるナタリーを描いています。ナタリーが、彼のもとから去るのですが、彼は彼女と出会った時のことを回想し、さまざまなシーンで小さな失敗があったことに気づくのです・・・。
「True」より
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*De Regels van het Vliegen (Eugenie Jansen) 10'オランダ作品
体操の練習に励む11歳の少女エリン。彼女は運動中に、いくつもの人生の法則を考えます。それが事実であれ、事実でないのであれ、彼女にとっては、法則を考えれば、それが真実なのです。そして最後には、自分は飛べると思うのです・・・。
「De Regels van het Vliegen」より
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*The Soul Hunter (Christine Rebet) 3'ドイツ作品
アニメーションです。けっこう面白かったです。ちょっと怖かったけれども・・・。
ある家族が、メキシコ料理の店に入り、テキサス・トーストを注文するのですが、店内には、「魂の狩人」が一人座っていました・・・。アニメの動きが新鮮な作品。
「The Soul Hunter」より
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*Bubachki (Igor Ivanov) 15'マケドニア作品
ペーターという少年にとって、外の世界は何の魅力もありません。内なる世界に引きこもるペーター。でも、ある時事件が起こるのです・・・。
「Bubachki」より
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*Ola's Box of vlovers (Genevieve Anderson) 10'アメリカ作品
マリオネットで表現する、あるおばあさんの世界。おばあさんが亡くなってから、孫がおばあさんの夢やさまざまなドラマを思う作品・・・。
「Ola's Box of vlovers」より
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*Vet! (Karin Junger, Brigit Hillenius) 11'オランダ作品
3人の黒人の少女達。一人は15歳ですでに妊婦。16歳の少女も今まで何人もの少年を知り尽くしていました。もう一人の15歳の少女ジルもセックスが大好き。
そうしてある少年と、全く愛のひとかけらもないセックスをします。そして仲間の少女達のところに戻ってきたジルは、一言:「最高だったわ!」
「Vet!」より
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*Russell Tribunalen (Staffan Lamm) 10'スウェーデン作品
1967年、Russel法廷のドキュメンタリーを、初公開で発表。アメリカが仕掛けた戦争によって、ベトナム人がいかに虐げられ、心身の傷を深く負ったのかを検証する法廷に、作家のサルトルも出席しました。その貴重映像でした。
以上、と〜〜っても沢山の作品を見て、さあそれでは発表!とばかり、2時ではなく3時に記者会見近くのカウンターに、受賞リストをもらいに行ったら、あらら!
もうないとのこと! たった1時間で資料がなくなるなんて、そんなのコピーが少なすぎ!! それで、別の場所に行こうと歩いていましたら、今回の映画祭で知り合った韓国の女性のジャーナリストにばったり会いました。彼女はすぐさま私に質問しました。「ねえ、コンペの最優秀監督賞を、韓国のキム・キ・ドク監督が受賞したの。どう思う?」あら!そうなんだ! そこで私は答えたのですけれども、まずは主だった各賞をご紹介したいと思います!
*金熊賞
「Gegen die Wand」(Fatih Akin監督)ドイツ作品
日本語では、「壁に向かって」と訳されているようです。ドイツで暮らすトルコ人のストーリィです。前に書いた内容を参考にしてください。この作品、前にも書きましたが、とても興味深かったです。先日大久保さんと森山さんにご馳走になった時、夜中に電車で帰宅途中に、前に座っているトルコ人の青年二人に話しかけられました。19歳くらいでしょうか。学校を卒業して少したっているくらい? ものすごくトルコ語の訛りのあるドイツ語で、いろいろ質問されたのですが、何故そんなことになったのかというと、私は映画祭のパスをジャケットにつけたままだったので、彼らが好奇心を持ったようなのです。逆に聞いてみたのですが、彼らは仕事をしたくてもベルリンではなかなか良い仕事ができず、いつもドイツ人に職をとられてしまうので、どこか別の街に引っ越したい、と言っていました。彼らはドイツで育って、でもルーツはトルコ。両親とはトルコ語を話すけれども、外ではドイツ語。生まれたものドイツ。そういう状況の中、決してパーフェクトではないドイツ語で、ドイツで仕事を見つけるのは容易なことではないでしょう。彼らの崖っぷちにいるような危機感や疲労感、虚無感・・・。その中にも、何か希望を見出したい気持ち・・・。今、彼らは本当に悩んでいるのだと思いました。最後に私は「この壁に向かってっていう作品、とっても良かったからぜひ見に行ってね。」と言ったのでした。今頃彼らはびっくりしていることでしょう。金熊賞を受賞したんですものね。でも、私から見たら、この作品は金熊賞をとるほどの作品だったとは思えないのです。もちろんとても面白かった。でも金熊?ドイツには、多くのトルコ人が暮らしています。決して侮れない人数です。映画の宣伝効果のこともあるし、映画祭がドイツで開催されている、ということも考慮されているのではないでしょうか? 少々ポリティカルな匂いのする決定かしらん、と思うのは私だけでしょうか?
*銀熊賞 作品賞 審査員グランプリ
El Abrazo Partido Daniel Burman監督 「失われた抱擁」
これも面白かったですね。受賞は許せます。良かったと思います。
でも、Before sunsetも受賞して欲しかった〜〜〜!!
*銀熊賞 最優秀監督賞
Samaria Kim ki-Dok監督
とりましたか〜〜!! 賛否両論だったこの監督、さきほども少し触れましたが、韓国のジャーナリストの女性から、彼が受賞したことをどう思うか、と聞かれました。
「私は、彼が韓国人だから、日本人じゃないから、受賞がいやだなどとはもちろん全く思わず、同じアジアの人間として、とても嬉しいことだし、素直におめでとうと言いたいし、韓国の映画の力をとても評価しています。けれども、そういうこととは別に、この監督は確かに才能溢れる。力のある強い監督だと思うけれども、どうしていつもものすごい厳しいテーマを選ぶのか、それがあまりに激しすぎて、私にはちょっとついて行けない部分があります。この監督を思う時、いつも心が痛むのです。」
と言いました。何かつらいんですねぇ、この監督の凄さって。そして怖い・・・。
少々うざった見方をするならば、今回の作品は、タイトルを「サマリア」にしたことで、すでに8割がた成功しているのではないでしょうか。ヨーロッパで作品を紹介する時、タイトルは重要です。そしてこのタイトルはまさしく聖書からとっているのです。誰もがイエス・キリストとの関連性を考えないわけにはいきません。そういう意味で、このミステリアスなタイトルは、彼の作品の重要な表現になっているように思えるのです。
*銀熊賞 最優秀女優賞 は、2人いて、
Catalina Sandino Moreno "Maria,llena eres de gracia"「慈悲深きマリア」麻薬密輸のお嬢さんですね。キュートな感じで、これからが楽しみな女優さんです。
それともう一人は
Charlize Theron "Monster"
あの、グロテスクでいてピュアな売春婦を演じた個性派です。
ものすごい迫力の演技で、圧倒されました。怖かったし・・・。
*銀熊賞 最優秀男優賞
Daniel Hendler "El abrazo partido"
ユーモアのある、奥深い作品で、その中でひときわ目立った演技をして観客を魅了していました。荒牧さんが南仏から電話をしてきて、この報告をしたらすごく喜んで、「わ〜最高!素晴らしい!」って叫んでいました。彼女は彼のインタビューをしたそうで、彼は絶対に取るって確信していたそうです。すごい!!
*銀熊賞 芸術貢献賞 (俳優のアンサンブルとして)
"Om jag vaender mig om" Bjoern Runge監督作品「夜明け」
これも映画はとても面白かったです。ただ、俳優のアンサンブルとしてだったら、私はサンセットの方にあげたかったけれども・・・・。でも、この作品でもいいですが。
*銀熊賞 最優秀音楽賞
"Primo Amore" Matteo Garrone監督「初恋」
え〜〜!! こ、この作品。彼女の体重59キロを40キロにしようとする話・・・。彫金で、ジャコメッティみたいな作品を創っていて、なるほど細身がお好きなのかもしれないが、変な映画だったけれども、音楽がそんなに良かったでしょうか??? 私が印象に残っているのは、「The
finalcut」と「壁に向かって」なのです。これはしばらく脳内ループ音になっていましたもの・・・。
*「嘆きの天使」Agicoa-Preis Der Blaue Engel 賞
これはヨーロッパの最優秀映画賞なのですが、25000ユーロという賞金があります!
これも、Om jag vaender mig omでした! デンマークの女性監督!!
良かったですね〜〜! 大久保さんも喜んでいらっしゃることでしょう。
*Alfred-Bauer-Preis この賞は、特に新しい感性で作られた作品に贈られる
のですが、
Maria, llena eres de gracia あの、麻薬密売のお話です! へ〜すごい!!
その他、いろいろあるのですが、今日はこのくらいにして、最後にちょっとだけ!
「バーバー吉野」(荻上直子監督)なのですが、先日土屋さんという実行委員会の方からメールをいただきましたが、「おめでとうございます!!」なんと、子供向けの映画部門で、推薦作(2本)の1本に選ばれました!!
最優秀賞は逃しましたけれども、大健闘ですよね!! 今回はコンペに日本の作品がエントリーされなかったし、ちょっと寂しい感じだったのですが、この「バーバー吉野」はとても高い評価を得たようです。この結果の出る前に、私はすでに15日のチケットを入手しましたので、明日の上映がとっても楽しみです!!14時からなので、じっくり見て来ようと思っています! きっと超満員でしょうねぇ。
私の資料には、このように書かれています:
「若いカップルが、小さな村の保守的な慣習を覆そうとするシンプルなストーリィ。武器もなく、憎しみの言葉もない。ただ、想像力の豊かさとユーモアがあるだけだ。」
う〜ん、素敵ですね! とっても楽しみにしています!
PS:皆さん! もうだめかと思ったつよ子のレポートですが、遅れましたがたった今到着! なので、急遽ご紹介します! つよ子の冴えたレポートをお楽しみに!
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