ベルリン映画祭現地レポート スタジオ・ポット

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[2004-02-14(土)]

各賞決定!
ベルリナーレ(ベルリン国際映画祭)10日目


text: 青木淑子
aoki@pot.co.jp

朝、なかなか起きることができず、ぐずぐずしながら青汁を作って出発。今日は息子が友達の家に泊まるので、安心してベルリナーレ漬けになれます。新聞を読みましたが、エリック・ロメール監督はやはり評判が良くなくて、ちょっとパワーダウンな感じでした。けれども、ケン・ローチ監督作品については、絶賛していて、「この作品に金熊賞を与えて欲しい、そうすればベルリナーレも救われる」というようなことが書かれていて、ジャーナリストはストレートなハッピーエンドを欲しがっているのだな、という気がしました。時代は、もういい加減過去の戦争の呪縛から解放され、もっと前向きな創造を求めているということなのでしょう。

「25 Degres en hiver」より

さて、今日は各賞の決定の日。発表は14時ですが、私は9時からの最後のコンペ作品を見ました。「25 Degres en hiver」(Stephane Vuillet監督)で、ベルギー、フランス、スペインの合作映画。これ、なかなか面白かったです。
ちょっとした掘り出し物を見つけたような感覚で楽しめました。女の子がとても可愛く、切なくて、何だかじ〜んときてしまう作品でした。
ベルギーの首都。男は7歳の娘と暮らしていて、娘の母親はNYにいます。
ウクライナ出身の亡命者、ソニアがひょんなことから男に救いを求めたことから、ストーリィはどんどんまわりの人々を巻き込み、好奇心から車で男、ソニア、娘、娘の祖母が、ソニアの消息を絶った夫の住む場所まで行くのですが・・・。内容的にはかなり暗いはずなのに、娘はウェットではなく、とても聡明なキャラクターなので、あまり暗くならなかったし、何より全体に流れるユーモアがとても自然で、すんなり映画の中に入ることができました。みんなどこかいい加減なところがあって、そこが魅力になっているような・・・。コンペ最後の作品は、それほど悪くないなぁ、と思わせる力作でした。

ということで、私はベルリンに来てからずっと、このベルリナーレに関わってきていますが、正式にパスを取得して参加したのが97年ですから、かれこれ7年も見てきているのですね。でも、1度も全コンペ作品を見るということがありませんでした。今回、この映画祭レポートを書くにあたり、どうしても見る必要があり、頑張って制覇しましたけれども、全てを見てみると、いろいろ考えることがあります。
やはり、コンペの傾向というものがあるんですね。戦争、家族愛、精神性の高いものが好まれます。そうでなければ崇高じゃないとばかりに、これでもか、これでもかと戦争映画が続くことがあるのです。でも、その表現方法は、年によって違います。今年は、家族というのが、かなりテーマになっていたように思います。それと、私は個人的にはアンゲロプロス監督が素晴らしいと思いますが、やはり全体を見てみると、彼などはもう古典の部類なのでしょうね。浮いてしまっているというのか、別格というのか、あるいは場違いだったというのか・・・。かえって、ベルリナーレ・スペシャルあたりで、グリーナウェイ監督と同列で上映した方が良かったのかな、と思います。つまり、コンペに合わない作品なのかもしれないです。素晴らしすぎて、コンペの主旨とは全く違う方向に行ってしまっているような・・・。他の作品とはあまりにも違いすぎます。賞を与えるべきでないなら、賞を与えないべきでもない、そう、特別賞などがあれば、その賞を受賞して欲しいくらいでした。ベルリナーレらしい映画、というのもあります。人種問題、戦争や政治などを、直接描くのではなく、新しい、強い創造力でもって表現できる作品。そういうものを、私達はいつも求めています。

さて、受賞作品の発表までにまだ時間があったので、私はショート・フィルムを見に行って来ました。全部で9本!これ、ズルして全てカウントすると、今日は10本見た計算になりますねぇ。すごい!! コラム担当の日高さんが大変になってしまかもしれませんが、9本全てご紹介します!

*The Scree ( Paul McDermott) 15'オーストラリア作品
5人の仲間がボートに乗って、知らない不思議な島に行きます。そこにある植物を食べたり、いろんなことがあるのですが、次々に仲間は死んでいくのです・・・。

「The Scree」より

*Little Man (Martin Brieley) 11'イギリス・南アフリカ合作
南アフリカの貧しい状況下で育った13歳の少年。彼の唯一の楽しみは、一人で森を散歩することでした。ある日、その森の中で、19歳の少女に出会います。彼の世界は彼女の出現によって変化するのですが・・・。

「Little Man」より

*True (Tom Tykwer) 12'ドイツ作品
「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督作品。主演がナタリー・ポートマンという、贅沢なショートフィルム。著名監督でなければできない豪華さで、圧倒的な完成度があったものの、何故にショートフィルムに?という感じでちょっと白けた作品。以前、ウォン・カーウェイ監督もショート・フィルムに登場したことがありますが、その時はさりげなく、とっても素敵な作品だったのを覚えています。
ティクヴァ監督のこの作品は、盲目の青年と、その彼女であるナタリーを描いています。ナタリーが、彼のもとから去るのですが、彼は彼女と出会った時のことを回想し、さまざまなシーンで小さな失敗があったことに気づくのです・・・。

「True」より

*De Regels van het Vliegen (Eugenie Jansen) 10'オランダ作品
体操の練習に励む11歳の少女エリン。彼女は運動中に、いくつもの人生の法則を考えます。それが事実であれ、事実でないのであれ、彼女にとっては、法則を考えれば、それが真実なのです。そして最後には、自分は飛べると思うのです・・・。

「De Regels van het Vliegen」より

*The Soul Hunter (Christine Rebet) 3'ドイツ作品
アニメーションです。けっこう面白かったです。ちょっと怖かったけれども・・・。
ある家族が、メキシコ料理の店に入り、テキサス・トーストを注文するのですが、店内には、「魂の狩人」が一人座っていました・・・。アニメの動きが新鮮な作品。

「The Soul Hunter」より

*Bubachki (Igor Ivanov) 15'マケドニア作品
ペーターという少年にとって、外の世界は何の魅力もありません。内なる世界に引きこもるペーター。でも、ある時事件が起こるのです・・・。

「Bubachki」より

*Ola's Box of vlovers (Genevieve Anderson) 10'アメリカ作品
マリオネットで表現する、あるおばあさんの世界。おばあさんが亡くなってから、孫がおばあさんの夢やさまざまなドラマを思う作品・・・。

「Ola's Box of vlovers」より

*Vet! (Karin Junger, Brigit Hillenius) 11'オランダ作品
3人の黒人の少女達。一人は15歳ですでに妊婦。16歳の少女も今まで何人もの少年を知り尽くしていました。もう一人の15歳の少女ジルもセックスが大好き。
そうしてある少年と、全く愛のひとかけらもないセックスをします。そして仲間の少女達のところに戻ってきたジルは、一言:「最高だったわ!」

「Vet!」より

*Russell Tribunalen (Staffan Lamm) 10'スウェーデン作品
1967年、Russel法廷のドキュメンタリーを、初公開で発表。アメリカが仕掛けた戦争によって、ベトナム人がいかに虐げられ、心身の傷を深く負ったのかを検証する法廷に、作家のサルトルも出席しました。その貴重映像でした。

「Russell Tribunalen」より

以上、と〜〜っても沢山の作品を見て、さあそれでは発表!とばかり、2時ではなく3時に記者会見近くのカウンターに、受賞リストをもらいに行ったら、あらら!
もうないとのこと! たった1時間で資料がなくなるなんて、そんなのコピーが少なすぎ!! それで、別の場所に行こうと歩いていましたら、今回の映画祭で知り合った韓国の女性のジャーナリストにばったり会いました。彼女はすぐさま私に質問しました。「ねえ、コンペの最優秀監督賞を、韓国のキム・キ・ドク監督が受賞したの。どう思う?」あら!そうなんだ! そこで私は答えたのですけれども、まずは主だった各賞をご紹介したいと思います!

*金熊賞
「Gegen die Wand」(Fatih Akin監督)ドイツ作品
日本語では、「壁に向かって」と訳されているようです。ドイツで暮らすトルコ人のストーリィです。前に書いた内容を参考にしてください。この作品、前にも書きましたが、とても興味深かったです。先日大久保さんと森山さんにご馳走になった時、夜中に電車で帰宅途中に、前に座っているトルコ人の青年二人に話しかけられました。19歳くらいでしょうか。学校を卒業して少したっているくらい? ものすごくトルコ語の訛りのあるドイツ語で、いろいろ質問されたのですが、何故そんなことになったのかというと、私は映画祭のパスをジャケットにつけたままだったので、彼らが好奇心を持ったようなのです。逆に聞いてみたのですが、彼らは仕事をしたくてもベルリンではなかなか良い仕事ができず、いつもドイツ人に職をとられてしまうので、どこか別の街に引っ越したい、と言っていました。彼らはドイツで育って、でもルーツはトルコ。両親とはトルコ語を話すけれども、外ではドイツ語。生まれたものドイツ。そういう状況の中、決してパーフェクトではないドイツ語で、ドイツで仕事を見つけるのは容易なことではないでしょう。彼らの崖っぷちにいるような危機感や疲労感、虚無感・・・。その中にも、何か希望を見出したい気持ち・・・。今、彼らは本当に悩んでいるのだと思いました。最後に私は「この壁に向かってっていう作品、とっても良かったからぜひ見に行ってね。」と言ったのでした。今頃彼らはびっくりしていることでしょう。金熊賞を受賞したんですものね。でも、私から見たら、この作品は金熊賞をとるほどの作品だったとは思えないのです。もちろんとても面白かった。でも金熊?ドイツには、多くのトルコ人が暮らしています。決して侮れない人数です。映画の宣伝効果のこともあるし、映画祭がドイツで開催されている、ということも考慮されているのではないでしょうか? 少々ポリティカルな匂いのする決定かしらん、と思うのは私だけでしょうか?

*銀熊賞 作品賞 審査員グランプリ
El Abrazo Partido Daniel Burman監督 「失われた抱擁」
これも面白かったですね。受賞は許せます。良かったと思います。
でも、Before sunsetも受賞して欲しかった〜〜〜!!

*銀熊賞 最優秀監督賞
Samaria Kim ki-Dok監督
とりましたか〜〜!! 賛否両論だったこの監督、さきほども少し触れましたが、韓国のジャーナリストの女性から、彼が受賞したことをどう思うか、と聞かれました。
「私は、彼が韓国人だから、日本人じゃないから、受賞がいやだなどとはもちろん全く思わず、同じアジアの人間として、とても嬉しいことだし、素直におめでとうと言いたいし、韓国の映画の力をとても評価しています。けれども、そういうこととは別に、この監督は確かに才能溢れる。力のある強い監督だと思うけれども、どうしていつもものすごい厳しいテーマを選ぶのか、それがあまりに激しすぎて、私にはちょっとついて行けない部分があります。この監督を思う時、いつも心が痛むのです。」
と言いました。何かつらいんですねぇ、この監督の凄さって。そして怖い・・・。
少々うざった見方をするならば、今回の作品は、タイトルを「サマリア」にしたことで、すでに8割がた成功しているのではないでしょうか。ヨーロッパで作品を紹介する時、タイトルは重要です。そしてこのタイトルはまさしく聖書からとっているのです。誰もがイエス・キリストとの関連性を考えないわけにはいきません。そういう意味で、このミステリアスなタイトルは、彼の作品の重要な表現になっているように思えるのです。

*銀熊賞 最優秀女優賞 は、2人いて、
Catalina Sandino Moreno "Maria,llena eres de gracia"「慈悲深きマリア」麻薬密輸のお嬢さんですね。キュートな感じで、これからが楽しみな女優さんです。
それともう一人は
Charlize Theron "Monster"
あの、グロテスクでいてピュアな売春婦を演じた個性派です。
ものすごい迫力の演技で、圧倒されました。怖かったし・・・。

*銀熊賞 最優秀男優賞
Daniel Hendler "El abrazo partido"
ユーモアのある、奥深い作品で、その中でひときわ目立った演技をして観客を魅了していました。荒牧さんが南仏から電話をしてきて、この報告をしたらすごく喜んで、「わ〜最高!素晴らしい!」って叫んでいました。彼女は彼のインタビューをしたそうで、彼は絶対に取るって確信していたそうです。すごい!!

*銀熊賞 芸術貢献賞 (俳優のアンサンブルとして)
"Om jag vaender mig om" Bjoern Runge監督作品「夜明け」
これも映画はとても面白かったです。ただ、俳優のアンサンブルとしてだったら、私はサンセットの方にあげたかったけれども・・・・。でも、この作品でもいいですが。

*銀熊賞 最優秀音楽賞
"Primo Amore" Matteo Garrone監督「初恋」
え〜〜!! こ、この作品。彼女の体重59キロを40キロにしようとする話・・・。彫金で、ジャコメッティみたいな作品を創っていて、なるほど細身がお好きなのかもしれないが、変な映画だったけれども、音楽がそんなに良かったでしょうか??? 私が印象に残っているのは、「The finalcut」と「壁に向かって」なのです。これはしばらく脳内ループ音になっていましたもの・・・。

*「嘆きの天使」Agicoa-Preis Der Blaue Engel 賞
これはヨーロッパの最優秀映画賞なのですが、25000ユーロという賞金があります!
これも、Om jag vaender mig omでした! デンマークの女性監督!!
良かったですね〜〜! 大久保さんも喜んでいらっしゃることでしょう。

*Alfred-Bauer-Preis この賞は、特に新しい感性で作られた作品に贈られる
のですが、
Maria, llena eres de gracia あの、麻薬密売のお話です! へ〜すごい!!

その他、いろいろあるのですが、今日はこのくらいにして、最後にちょっとだけ!
「バーバー吉野」(荻上直子監督)なのですが、先日土屋さんという実行委員会の方からメールをいただきましたが、「おめでとうございます!!」なんと、子供向けの映画部門で、推薦作(2本)の1本に選ばれました!! 
最優秀賞は逃しましたけれども、大健闘ですよね!! 今回はコンペに日本の作品がエントリーされなかったし、ちょっと寂しい感じだったのですが、この「バーバー吉野」はとても高い評価を得たようです。この結果の出る前に、私はすでに15日のチケットを入手しましたので、明日の上映がとっても楽しみです!!14時からなので、じっくり見て来ようと思っています! きっと超満員でしょうねぇ。
私の資料には、このように書かれています:
「若いカップルが、小さな村の保守的な慣習を覆そうとするシンプルなストーリィ。武器もなく、憎しみの言葉もない。ただ、想像力の豊かさとユーモアがあるだけだ。」
う〜ん、素敵ですね! とっても楽しみにしています!

PS:皆さん! もうだめかと思ったつよ子のレポートですが、遅れましたがたった今到着! なので、急遽ご紹介します! つよ子の冴えたレポートをお楽しみに!

 

text: つよこ・フォン・ブランデンブルク
「Cachorro」より
●Cachorro (Bear Club) / Miguel Albaladejo

「ベア系」という言葉をみなさん御存じぃ〜?
ゲイの間で使われる表現で、ヒゲ、ぽっちゃり体型の熊さんタイプのこと。ゲイって好きなタイプがなぜかやたら細分化(専門化?)されているようなの。例えば、若い子が好きな人は「若専」、デブが好きな人は「デブ専」、他にも「フケ専」「外専」(外国人のことよ!)とかなんとか。あたしもあまり詳しくないんだけど。

正直いってこういう嗜好分けはちょっち古いというか閉鎖的なのであんまし好きくないのよね。(東京の事情はあまり良くしらないけど)少なくとも、同性間の結婚が可能で、ほぼ市民権を得たドイツの21世紀のゲイ姿は、あ〜たそんな80〜90年代の差別の時代の排他的コンセプトで固まってないで、もっとオープンであってもいいんじゃないの!とひとり声を大にしているわたしは啓蒙系?

前書きが長くなったけど、このスペイン映画ベア系のゲイの物語りなのよね〜。マドリッドで独身貴族を楽しむペドロに、姉が11歳の子供を託しにくる。インド旅行の間14日間っていう約束なんだけど、この姉がインドで麻薬関係に関わって投獄されてしまい、結局ペドロは甥との長期的共同生活を余儀無くされるという話。熊系のペドロは特定のパートナーを欲していなくて、いろんな男が出入りするんだけど、関係を持つ男がみごとにヒゲ、ぽっちゃり(というかほとんどデブ)のベアばっかり!ベッドシーンもかなりディテールまで描かれているんだけど、濃いわ〜!タイプとしては嫌いじゃないけど、ここまでベアのオンパレードでこられると、チョコレートとホイップクリームをてんこもりにしたアイスパフェの後にモンブランとザッヒャートルテ食べて、最後にココアでしめる、みたいな感じ?考えただけで、胸がつかえる。ヘテロセクシャルの観客はきっとベア系のラブシーンをはじめてみたと思うんだけど、やっぱりむくつけき男同士のからみはユーモラスなのかしら?ふふふ系の(ちょっと困った)含み笑いが出ていた。

物語の要は、やっぱりペドロと甥のバーチャルファミリー。二人がこの突然の状況下でお互いに助け合いい関係を作っていく。ペドロのベア友達と甥のフランクでオープンなやり取りはユーモアがたっぷりで、観客には大うけ。アドモヴァールの映画でお馴染みの、ほにゃらほにゃらとしか聞こえないスペイン語の抑揚やソープオペラっぽいセンスもなかなかいいと思う。
レズビアンやゲイのカップルはヨーロッパでは、結婚はできても、まだ養子はとることができない。同性愛者は子孫繁栄に結びつかない性関係を行うが(ってなんか変は表現)、彼らの多くが子供好きで養子を欲しているというのは周知の事実。スト−リー自体はそんなに新鮮ではないけど、面白かったのが、関係性を欲しないペドロが、恋人が出ていった後に甥にむかって「やっとぼくたちだけになれたね」というセリフ。
これは、性関係のない他人との共同生活というものが一番ベストでここち良い関係であることをほのめかしている。

笑いも社会性も適度にふりまいた、まぁ観客賞なんか取るかなって感じのスマシュヒット的な作品。

PS 映画祭のカタログみたら、監督の写真が出てて「あらら」。本人もベアそのもの。つまり、自分の世界の映画つくったのね。これで、その後シュークリーム屋をはしごした気分。

「kaldaljos」より

●kaldaljos (Cold Light) / Hilmar Oddsson

アイスランドの映画。ジャック・ニコルソンの「シャイニング」に出て来る男の子は霊的な子で予知をキャッチしてしまうのよね。あの子のアイスランド版みたいな感じ。
彼の場合、絵として出て来てそれをスケッチするという。静か〜なタイプの情感に溢れた映像で、アイスランドの荘厳で美しい自然に上手く物語らせているのがすばらしい。素朴とか人間味っていうとチープだけど、通常の都市で起こる人間関係とは違った、人と人、人と自然の関係性が、スピリチュアルな視点で描かれたかなり感覚的な映画だと思う。成人してアーティストになったその子(物語りは現代と子供時代がシンクロして進行する)が、裸体モデルのスケッチクラスを受けていて、みんながモデルをそのままスケッチしているのに、主人公はいきなりピカソみたいな不思議な絵を描き出す。先生が「ふざけているの?」と聞くと「いえ、ぼくの目に写るものを書いているだけなんです」と答える主人公。おお〜!つよこのポートレートも書いて〜!あなた、ベルリン来たら『シャイニング・ストリート・アーティスト』としてがっぽり稼げるわよ。あたしがマネージングをしてもいいわ。(絶対来ないと思うけど…。)

アイスランドやフィンランドとか、ヨーロッパの中心部から離れたマージナル(周辺の民)の文化やアート、考え方って面白い。
アイスランドってホント変ったところなのよ〜。友達のアーティストが催した「アイスランド妖精ツア−」っていうのに参加して1週間ほど訪れたことがあるんだけど、人が自然の威風を知って強調していきているというような感じがした。また、ケルト文化が残っていて妖精の話とか日常レベルでするらしいのよ。「あの石の中に妖精が入っていて夜中に話しだすだ」みたいな。それから、名前が大事で、電話帳とか名字じゃなくて名前で表記されているの。人口が少ないからできることなんだろうけど。
そういえば、レイキャビック唯一のトランスセクシャルにも会ったわ。ちょっと太ってたけど。なぜか、彼女(名前は忘れた)に気に入られちゃってボディータッチを異様にされたんだけど、彼女がいうには、アイスランドにはもう1人田舎の街にトランスセクシャルが住んでいて、2人でアイランド・トランスセクシャル協会みたなのを作っているとか。とっても可愛かったわ〜。

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