ベルリン映画祭現地レポート スタジオ・ポット

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[2003-2-14(金)]

外国人に相当ウケていた小津の「彼岸花」
青木淑子
ambient@kt.rim.or.jp

 

 

 

 

 

 

 

ドラマは佳境になりました! テディ賞も決まったはずだけれども、これを書いている時にはまだ私たちの手元に情報がない。ごめんなさい。明日の更新で全てが決定しているはずです。お楽しみに!

五賀さんも書いているけれども、ポット出版社の佐藤さんには大変お世話になっています。毎日更新するのは、書いている私たちもハードだが、サイトの更新をする佐藤さんも、さぞかし大変なことでしょう。私も友人とサイトを持っているけれども、原稿をアップしてもなかなか更新されない。でも、佐藤さんはお忙しい中、できるだけ早くサイト更新してくださっています。お会いしたことがないけれども、本当にありがとうございます!あと数日、どうぞよろしくお願いします!

観ました! 小津監督作品の「彼岸花」。これは1958年のカラー作品。
昨日の「早春」は1956年で白黒。どちらも味があって、本当に素晴らしい作品! この「彼岸花」、会場の外国人に相当ウケていた。話は、娘の結婚相手を自分で決めたい父と、自分の幸せは自分でつかみたい娘の話。小津の18番と言ってもいい父娘のお話シリーズです。有馬稲子、久我美子、田中絹代(は、母親役)・・・。
いやはや、皆うっとりするほど美しい! そしてそれぞれの父親の、娘に対する愛情と切なさ。21世紀の今観ても、なんら古く感じない展開。普遍的な作品はアートだ。小津ワールドの輝きは、生誕100年の今も変わらない。そういえば、小津のレトロスペクティブの初日を飾った「東京物語」は、メイン会場のベルリナーレパラストで上映されたが、私たちはそれを観るとコンペの2作品を観ることができなくなるので、泣く泣く没にしたのだが、(とはいっても、私はこの作品を15回以上も観ているので、まぁ観なくても問題はないんだけれども、でも、やっぱり初日で外国人の反応も見たかったしね・・・)知人の映画評論家ご夫妻のお話によると、大盛況で、しかも上映後に山田監督が登場し、小津作品の魅力について語ったのだそう。うーん、やっぱり観たかったなぁ。


ところで、全てのコンペ作品が上映されたわけだけれども、ターゲス・シュピーゲル紙で展開されている、ドイツ人ジャーナリストによる評価のリストを見ると、最終日の更新1日前なのでラスト2本は点数がわからないが、トップはスパイク・リー監督の「25時間」だ。

もうひとつ、「スクリーン」という、ベルリナーレ開催中に毎日もらえる映画祭情報誌には、イタリア、エストニアやイギリス、スペイン、ドイツなどのジャーナリストがコンペ作品に点数をつけて発表している。それによると、接戦だけれども、ニッコール・キットマン主演の「ハワーズ」がトップ。最終日の2作品もなかなか面白かったけれども、やはりトップ争いは「25時間」と「アワーズ」になりそうな感じ。でも、この評価リスト、シュピーゲルは毎年出ているけれど、実は当たったためしがないのです。

意外な映画が金熊賞をゲットするかもしれない。五賀さんは1本、私は4本コンペ作品を見逃しているが、さて、どうでしょう? 観た作品が賞をとってくれたら、コメントできるんだけれども・・・・。 山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」の点も悪くなかった。もしも山田監督が受賞したら、15日の夕方6時から記者会見があります! そうしたら五賀さんにまた頑張ってもらおう!! 今度は私も出席して、しっかりカメラで晴れ舞台を撮らないと!

[2003-2-14(金)]

●DER ALTE AFFE ANGST
●ALEXANDRA’S PROJECT
●彼岸花
五賀雅子
ambient@kt.rim.or.jp

 

 

 

 

 

 

 

早いもので、映画祭9日目。最初の頃の緊張感がやわらぎ、肩の力も抜けてきて、ここ2、3日はゆったりした気分で映画祭を楽しんでいる。そういえば、毎日書くことばかりに夢中で、紹介するのがすごーく遅くなってしまったのだけど…。このサイトの更新を、東京からやってくださっているのは、スタジオポットの佐藤智砂さんです。編集業で毎日忙しいのに、本当に感謝、感謝です。この画面の下のほうに、スタジオポットのメニューがあるので、ぜひぜひのぞいて見てください。

さて、今日までずっと観てきたコンペティション部門のエントリー作品も、いよいよ今日上映の2本を残すのみ。どういう観点で上映作品の順番を決めたのかわからないが、今年は前半に注目度の高いハリウッド作品が集中し、後半は普段はあまり観る機会の少ない映画が並んでるなーという印象を受けた。だからといっちゃ何だが、実は今日の作品もあまり期待してなかったのだ。つまらなかったら寝よう!なんて失礼なことを思っていたのだが、2本とも、寝るどころじゃないほどスリリングな内容だった。

1本目はドイツのOskar Roehler監督の『DER ALTE AFFE ANGST(ANGST)』。
若い夫婦のエキセントリックな愛情物語なのだが、冒頭からしてスゴイ。ベッドの中で不能におちいった夫に対し、赤ちゃんが欲しいのにどうするの!という感じで妻が激しく攻め立てる。夫はカウンセリングを受けていて、当初はセックスレス夫婦の話を社会的に描くのかと思って観ていた。ところが、視点はあくまでもふたりにしかない。お互いの愛情はすごく深いのに、普通の生活を築けないふたりの関係が濃密に描かれる。どうやら夫は不能というより、アブノーマルな性癖なのか、妻ではない風俗の女性とはできるみたいで、そのことが妻にバレて、またもすごいけんかになったりする。何とか夫婦関係が持てたたった1回で妻が妊娠したりもして、言葉にすると陳腐な話と思うだろうが、何ともいえない耽美的な世界が広がっている。夫の職業が前衛(?)演劇の演出家みたいなんだけど、途中、途中で挿入される練習シーンがまたスゴイ。何人もの人々が全裸で立ち、前を見据えたままセリフを言う。もちろん、全身がうつっているのでモザイクなしの全裸がえんえん映しだされる。そういえば、この映画祭の報告でずっと私は裸のことを書いているような気がしてきた。最初のほうでジョージ・クルーニーのホントにわずかな全裸シーン(しかも後姿のみ)を興奮して書いたが、それ以後、コンペ出品作の中で本当にたくさんの全裸、しかも前向きの全裸を見た。そうする中で、ハリウッドや日本とヨーロッパ諸国とでは、俳優が肉体をさらすことの意味、ひいては演技へのアプローチの仕方が違うなぁと、改めて感じ入った。

それにしても、ドイツ映画は面白い。コンペには、3本のドイツ映画が出品されたが、どれもみな違ったタイプで、どれもみな魅力的だった。

2本目はオーストラリア映画『ALEXANDRA’S PROJECT』。妻から夫への復讐が、思いもよらない方法で行われる緊張感あふれるミステリーだった。ALEXANDRAというのは妻の名前。その彼女が考えた復讐計画ということで、こんなタイトルがついたのだろう。冒頭のシーンでは、絵に描いたような幸せな家族が登場する。その日誕生日の夫に、子どもたちがプレゼントを渡し、夜にはびっくりパーティーをするからね、という朝のシーン。ところが夜夫が帰宅すると、家にはだれもいない。しかも電球がはずされ、電話も通じない。夫はパーティーの計画だと思い、テーブルにあったビデオをセッティングする。それは妻と子どもたちの誕生日を祝うメッセージで、思いがけない計画に喜ぶ夫。ところが、その後、妻だけの告白シーンとなり、しあわせそうだった夫婦の内実があばかれていく。妻はずーっとテレビ画面の中での登場だが、これが私にとっては観たこともない手法で、次がどうなるのかまったく予想がつかず、最後まで目を離せなかった。個人的には妻のとった行動はいくら夫への憎しみからとはいえ、ひどいことだと思った。でも、映画的にはすごく面白い展開で、ぜひとも日本公開してほしい。


さて、今日は私も映画祭では初めて小津監督作品を観ることができた。もちろん、青木さんも一緒だ。映画は昭和33年に製作された、佐分利信、田中絹代主演の『彼岸花』。人間の暗部を描いた2本のあとに観ると、本当に心が洗われるようだ。客席も満席で、階段に座る人もいたほど。ほとんどが外国人の中で観る経験というのも楽しかった。小津作品に出てくる女優さんは本当にきれい。実物がきれいなのもあるのだろうけど、撮り方も上手なのだと思う。

いよいよ明日は受賞作の発表だ。セレモニーへの参加は限られたプレスしかできないので、私は記者会見や資料で情報を収集するつもり。前に書いたテディ賞の発表は今日行われたが、あると思っていたテレビ放映が今年はなかったみたい。チャンネルをいくら回しても見つからなかったので、こちらも、明日合わせて報告します。楽しみにしていた方、ごめんなさい。
(今日までの鑑賞本数27本) 

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