ベルリン映画祭現地レポート スタジオ・ポット

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[2003-2-7(金)]

映画祭ディレクター、ディーター・コスリックの手腕

青子淑子
ambient@kt.rim.or.jp

ビンにベルリナーレのシンボルマークの熊が印刷されているミネラルウォータ。フェスラウアー社が提供

 

 

 

 

 

ベルリナーレ開催時は、ポツダム広場が別の顔になる。ベルリン市の主役の顔だ。では、普段はどうかというと、実はベルリン子には人気がない。観光客で賑わうけれども、高層ビル、未来的建築・・・。そもそもベルリンには高層ビルはあまりない。人間味のある、古き良きアルトバウ(旧建築構造で、アパートメントも世帯を少なく、低く建てられている住宅が多く、また部屋の天井は高く、装飾がほどこされていたりする。)を好むのである。そういう私も、映画を見るという理由がなければあまり足を運ぶ場所ではない。

そう、このベルリナーレの期間だけ、私はせっせとポツダム広場に通うのだ。毎回困るのは食事。いろんなレストラン、カフェがあるが、他のベルリンのエリアに比べたら、美味しいものが私にとっては少ない。しかも映画を毎日何本も見るから、移動ばかりでまとまった時間が取れないし、くつろげない。仕方がないので、サンドイッチなどを作って持ってゆく。

飲み物は、ベルリナーレのスポンサーだったエビアンが、ジャーナリストのために常にミニ・ペットボトルのエビアン水を用意してくれていた。これは非常にありがたかった! けれども今回はエビアンは撤退したらしい。代わってフェスラウアー社の飲料水が登場した。この会社は日本では知られていないそうだが、ヨーロッパでは名の通ったオーストリアの会社だ。

ミネラルウォーターには、ドイツの場合はほとんど炭酸が入っている。ドイツ人に言わせると、炭酸抜きの水はつまらないそうだが、刺激的な舌触りは、慣れてくると快感に変わる(こともある・・・)。今回提供されている水は、何種類かあるようだ。私が見ただけでも、炭酸水、バランスボディ(グレープ・フルーツとレモングラスの味、ハーブの味、ローズとアップルの味の3種)があった。他にもあるらしいが、なんだかものすごい勢いでなくなってゆくので、おちおちウォッチングもできない。とっても可愛いのは、ビンにベルリナーレのシンボルマークの熊が印刷されていること。なかなかレアなドリンクです♪

さて、映画の方だが、100本ほど減っておよそ300本が上映されるベルリナーレ。それでも雰囲気は活気に溢れていてる。2年目のディレクターを務めるドイツ人のディーター・コスリックの手腕だろう。例えば今までは、コンペ作品はほとんどメイン会場でプレス用上映を行い、その際にショート・フィルムのコンペ作品も長編の前に上映する、というシステムだった。それはそれで、予期せぬ拾い物をした気分になる時もあり、なかなか楽しいこともあるが、やはり雰囲気が違うし、おまけで見るという気分は否めなかった。けれども今年からは、コンペもメイン会場以外でプレス上映する場合もあり、ショート・フィルムに至っては一度に10本ほどを集めて一挙に上映するシステムになった。これはナイスなアイデアだと思う! なので、私たちは一度、ショート・フィルム上映に行ってみるつもりです!

[2003-2-7(金)]

フィルムが途中で切れて20分も中断!

五賀雅子
ambient@kt.rim.or.jp

ヴェンダース(記者会見で)


『THREE DAYS OF RAIN』のピーター・フォーク

『THE LIFE OF DAVID GALE』

ヴェンダースの妻、ドナータ

朝から晩まで映画づけの日々がいよいよ始まった。

今日の1本目は、スペシャル上映の『THREE DAYS OF RAIN』。「ベルリン・天使の詩」で日本にファンも多い、ヴィム・ヴェンダースがかかわっているというので観に行ったのだが、これが結構面白かった。3日間降り続く雨とけだるいジャズを背景に、ニューヨークに住む6組の人々の日常がオムニバス形式で描かれる。ホームレスにお金を恵んであげるかどうかでけんかする夫婦や雨漏りのする仕事場で苦労するレンガ職人、ダンディなスーツでキメたアル中おやじ(かなりくたびれたピーター・フォークがいい味わい)などが登場し、さあ盛り上がってきた!と思ったら、なんとフィルムが途切れた。すぐ再開するだろうと思ったら、延々20分もの中断。「なんてことだ!」と憤慨したが、青木さんによると「まあ、よくあること」だそう。普通、こんなことがあると中座してしまう記者が多いそうだが、映画が魅力的だったせいか、みんな辛抱強く待っていた。しかし、悲しいかな私たちは、次の映画に間に合わなくなるので終わりまで観ることができなかった。そう、ギリギリのスケジュールを組んでいるのでパプニングがあるとつらいのだ。あー残念。

2本目は、アラン・パーカー監督、ケヴィン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット主演の『THE LIFE OF DAVID GALE』。テキサスを舞台に、死刑制度に反対していた大学教授が廃止運動のパートナー殺しでつかまり、死刑の判決を受けるという話だ。死刑執行まであと何日というときに、ケイト扮するジャーナリストが取材でかかわり、事件の裏に隠された真実に近づいていく。何とも言えない緊迫感と凝ったつくりに圧倒された。会場の雰囲気も物語の行く末を固唾を飲んで見守るという感じで、たぶん日本でも公開されるだろうから、ぜひともおすすめの作品だ。私も細かい言葉のやり取りがまったくわからなかったので、ぜひ日本語字幕でもう一度観たい!

そして今日の最後、3本目に観たのは「初恋のきた道」で多くの人が泣かされた、あのチャン・イーモウ監督の『HERO』。戦国時代に平和を願って戦った戦士たちが描かれているが、彼にとっては初のマーシャル・アーツ・ムービーとあってか、戦士が浮いたり、空中を飛んだりしながら剣でチャンチャンバラバラするシーンがしつこいほど繰り返される。ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイーなどそうそうたるメンバーが顔をそろえているので、ある種の人々には納得の作品と言えるかもしれないが、チャン・イーモウ嫌いの私には、相変わらずのあざとくて、過剰な演出の連続に、ただただ辟易するばかりだった。ベルリン映画祭の場合、つまらないとブーイングや途中退場を平気でやるというが、今回そういうことはなかったので大方は好意的に観たようだ。
 
3本観てヘロヘロになりながら電車を待っていたら、なんとヴィム・ヴェンダース氏の妻、ドナータにばったり会った(って、私じゃなくて青木さんがお友だちなんだけど…)。彼女は絵画的な写真を撮るフォトグラファーで、昨年、日本でも作品が公開され、この時に私も会ったことがある。今日はもしかしたら会うかもねーなんて、青木さんと話していたらほんとにばったり会うなんて! 

最後に言い忘れていた映画祭の枠組みについてちょっと説明しておくと…。メインとなるのは、コンペティション部門だ。昨年金熊賞を受賞した『千と千尋の神隠し』がエントリーされたのがこの部門。今年は全部で22本が出品されている。昨日の『シカゴ』は枠組みはコンペ部門だが、賞の対象外として扱われているのであしからず。

そのほかにも、中堅作家やマイノリティ(女性問題・同性愛等)、実験映画などを集めたパノラマ部門、知られざる若手にスポットを当てるフォーラム部門などいろいろあるが、何しろ数が多いので、取材記者はコンペ部門を中心に観ることになる。
(今日までの鑑賞映画数4本)

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