ベルリン映画祭現地レポート スタジオ・ポット

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[2004-02-09(月)]

ベルリナーレ(ベルリン国際映画祭)5日目


text: 青木淑子
aoki@pot.co.jp

昨日、全く連絡がなかったつよ子。忙しいのだろうと思ったものの、少し気になりました。丁度1本目と2本目の間が少し時間的に余裕があったので、携帯SMSで連絡をとったところ、なんと! つよ子ちゃんは過労でばったりと倒れてしまっていたのでした!! 心配になって、慌てて私は2本目を見た後にすぐさまつよ子の住まいに直行。(ポツダム広場からは地下鉄で1本なので、20分とかからないのです)あらら〜〜!! かわいそうに、本当につよ子はぐったりして床に伏せっておりました。日本の雑誌の仕事の他、いろいろかけ持ちで仕事があり、連日3時間睡眠でがんばっていたようなのですが、ついに8日にダウン。ストレス+過労+睡眠不足のために、めまいがしているとのことで、疲労困憊の様子。とにかくしばらくはこのレポートはお休みさせていただきます。楽しみにしていらした読者の皆様、本当にごめんなさい! でも、元気になりましたら、すぐに登場してくれるそうです。どうかお大事にね、つよ子ちゃん!! そしてパワーが戻ったら、ぜひまた辛口+毒舌トークを展開してね〜!! 待っています!!

ということで、私ひとりで今日もレポートさせていただきます。あ、その前に書き忘れていたこと。それは、ダイアン・キートンが出演した作品ですが、それはコンペ外のものです。(そういうコンペ外の作品を、コンペの枠で上映することは多々あるのです。まぎらわしいですが、注目度が高いコンペ内で、多くのジャーナリストが鑑賞するのは、とても宣伝になるようです。)

まず最初に、セレブ情報:
8日の午後、ピーター・フォンダがやってきたそうです。レトロスペクティブでの上映のため、顔を出してくれたと、新聞は喜んで伝えていました。ライザ・ミネリも別枠での登場となりました。その他、「コールド・マウンテン」もレニ・ゼルヴィガーが、オープニングに来られなかったことを随分彼女自身が悔やんでいたとのことで、遅くなったものの、ベルリナーレに出席しました。ディレクターのコスリック氏が、大喜びでツーショットを披露しているのが印象的でした。(新聞で、ですけれど)それから、やはり「コールド・マウンテン」のジュード・ロウが、オープニングに出席しなかったことを少々反省(?)したとのことで、11日の水曜日に遅ればせながらやって来るそうです。セレブの方、けっこう皆さん律儀ですね。

「First Love」より

さて、コンペの1本目は、「Lost embrace」(Daniel Burman監督)。アルゼンチン、フランス、イタリア、スペインの合作です。ブエノスアイレスの小さな地区で暮らすアリエル。彼の母は店を持ち、仕事をしているのですが、父親のことを何も知らないアリエルが、彼のルーツを探り始めるのことになります。祖母から聞き知った真実。アリエルの祖父母が、ポーランドのホロコーストから逃走し、アルゼンチンに逃げて来たこと。父親がイスラエルのために戦ったこと・・・。いろいろな真実が見え隠れし、アリエルを中心に、さまざまな人間の心のひだが明るみになってきます。そしてついに、アリエルは父親と再会するのですが・・・・。なかなかハードな内容ながら、それをかなりのユーモアをミックスして、巧みな話術で魅せていく作品。面白かったです。拍手もけっこうありました。こういう、切り口が戦争を直接描くのではなく、創造的な手法と表現力で作られた作品に出会うと、ベルリン国際映画祭にふさわしいなぁ、と嬉しくなります。大作ではないけれども、けっこうやるなぁ、と思わせる作品でした。

 

 

 

 

「First Love」より

2本目は、「First Love」(Matteo Garrone監督)で、イタリアの作品です。
ヴィットーリオは、女性に完璧を求める彫金師。けれども彼の理想の女性は、なかなか現実には現れません。空しい気持ちを抱いたまま、創作に打ち込むヴィットーリオ。
しかしある時、彼の理想に近い女性、ソニアに出会ったのでした。彼の理想・・・・
チャーミングで、知的で、ユーモアを解し、肉体関係も素晴らしく・・。本当にそんな女性がいるのでしょうか? ソニアもヴィットーリオを愛するのですが、彼は、ソニアが59キロの体重であることが気に入りません。自分の理想に完璧でありたい彼は、ソニアに40キロになることを強要するのです。それを、どうしても避けることができないソニア。レストランに行っても、ソニアは小食を強いられます。耐えられなくなったシニアが、暴食に走ります。そして、そのことで怒りを抑えることができなくなったヴィットーリオは、家に戻ってソニアを激しく非難するのですが・・・。う! こういうのって辛いです! 男性は、自分の好きな女性が理想的なスタイルでいて欲しいと願うもののようですね。このストーリーほどではないにしても・・・・。
でも、この話に流れる異様さを、映像や脚本が甘いために完全には表現できていなかったように思います。もっと尋常じゃない雰囲気を、それなりに言葉や映像で見せて欲しかったなぁ、と残念です。まばらな拍手がありましたけれども、あまり受け容れられなかったように思います。

「Your next life」より

3本目は、「Your next life」(Manuel Gutierrez Aragon監督)。スペインの作品です。
ある山で、牛飼いをして暮らす父親と娘2人。長女のヴァルは、母親代わりに全てのことをまかなっているのですが、隣人と諍いがあり、父親を巻き込んだトラブルに発展、それが不幸な事件につながり、隣人は死亡してしまうのです。亡くなった隣人の息子で、町で床屋を営んでいるライが、お葬式にやって来ます。徐々に愛し合うようになるライとヴァル。けれどもそこには、ライにとっての父親の死、そしてヴァルにとっての彼女の父と彼女が関係した殺人という問題が立ちはだかっていたのです・・・・。
と、これ以上説明してしまうと、面白くもなんともなくなってしまうので、この辺でやめておきますけれども、う〜ん、私的には、ちょっと厳しい作品でしたね。1977年に、ベルリナーレで銀熊賞を受賞している監督は、もうかなりのベテランと言っていいのでしょうけれども、私には監督が何を言いたかったのか、あまりよく理解できませんでしたね。内容はわかった、でも、その先にある何か得体の知れないもの・・・・。それが、あまり素敵には表現されていなかったように感じます。2本目も3本目も、かなり多くのジャーナリストが途中で会場から出て行ってしまいました。しかも、この3本目の作品に至っては、まばらな拍手もあったものの、ブーイングもあり、その批判を聞いて、10%くらいのジャーナリストは、げらげら笑っていました。コンペで今回初めてのブーイングでした。でも、全く拍手もなく無視される作品に比べれば、ブーイングがある方がずっと注目度が高いのですから、良いのかな、とも思いますが・・・。

昨日までの映画について、新聞はどんなことを書いているのかしらと、私が定期購読している「ベルリン新聞」をチェックしてみました。(というか、毎日見てはいるのですが)
いろいろ面白い記事がありましたが、特に今日注目したのは、アフガニスタンから3人の映画に関係している女性がベルリナーレにやって来たということです。カブール生まれのある一人の女性は、大学にもつい最近まで女性は行くことができなかったことや、その他さまざまな習慣を説明していたようですが、記事の最後には、その19歳の女性が、前よりはずっと良くなっている、という言葉を発し、その言葉に微妙に反応した書き手が、一体どこまでわかっているのだろうか、と疑問を投げかけているのが印象的な記事でした。他の新聞もチェックしてみようと思い、1本目が終了してから、急いで下のプレス会場に走り、新聞をゲット。そうでもしないと、もう大変な混雑で、毎日とてもじゃないですが、新聞も手に入りません。幸いにして私は、定期購読している新聞が1紙あるから、ベルリナーレに向かう電車の中でゆっくり目を通すことができますけれど、会場に行ってから無料のそれらの新聞をもらおうとすると、必死になって毎日争奪戦に加わらなければならないのです。それをするには私はちょっと体力不足・・・。去年は、五賀さんが随分頑張って新聞をゲットしてくれたなぁ、としみじみ・・・。(ありがとうね〜〜、五賀さん!!)今回は私だけだし・・・面倒だなぁ。それに、今日手に入れたターゲスシュピーゲル紙の内容は、今日だけなのかもしれませんが、今イチでした・・・・。なので、あまり無理をせず、このまま私のベルリン新聞のみしっかりとチェックすることにしました!! 悪しからずご了承くださいね!!(ここで私も倒れてしまいますと、もう誰もこのコラムを更新することができなくなってしまいますので!!)

「Le Sacre du Printemps」より

今後のハイライトですが、最終日の15日に、ベルリナーレ・スペシャルのカテゴリー内で、18時より、会場をフィルハーモニーに移し、「Le Sacre du Printemps」(OliverHerrnabb監督)を、現フィルハーモニー常任指揮者であるサイモン・ラトル氏が指揮をして、ライブを行うというもの。これはかなりの目玉ですが、私達もチケットを購入しなければ入場できず、ということは、一般の人と同じように、チケットセンターで列を作って待たなければならず、なかなかゲットできそうもない感じ・・・。(並ぶ時間が単純にないのです・・・)聴きたい+見たい!ですけれどもね・・・・。それから、前評判がすごく良い、明日の朝1番目の韓国の作品「サマリア」や、前にも書きました、テオ・アンゲロプロス監督、エリック・ロメール監督などの作品が注目です。

最近、かよちゃんにも大久保さんや森山さんにも会いません。広い会場ですから、会わない時は全く会わないんですよね。でも、ばったり会うと、その日は何度も偶然が重なって会ってばかりいたりとか・・・。明日は誰かに会えるでしょうか? つよ子には会えないことはわかっております・・・。・・・と、ここでつよ子ちゃんより電話が!! みなさま! ご心配をおかけしました! つよ子は不死鳥のように蘇ったそうです!! 良かった〜〜! でも、まだまだ仕事が重なっているので、復帰できるかどうかは微妙です。もう少しお時間をくださいね。

ということで、また明日・・・・。青汁飲んで頑張ります! (朝の7時半に、まだ準備中の八百屋さんに駆け込み、大量の野菜を買い込みました。これでしばらくパワーはキープできそうです)

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