「自炊の森」はだめでしょう+自炊について+書協ガンバレ
2010-12-29 沢辺 均
自炊の森という店が秋葉原にプレオープンしたそうだ。
●akiba PC hotline【 2010年12月28日号 】
店内の漫画を「自炊」するレンタルスペースが仮オープン、
裁断済み書籍を提供、ネット上は懸念の声多数
断裁済みの本とかマンガ、業務用スキャナをおいて、自炊させるサービスだそうだ。
●自炊の森 Twitterアカウント http://twitter.com/jisuinomori
こりゃダメでしょう。
ツイッターでは
──────────────────────────────
当店のサービスの要点は、利用者ご自身が自分の体を使って自炊(スキャン)する、という点です。著作権法で定められている私的複製の要件として、これが求められるからです。
http://twitter.com/#!/jisuinomori/status/19075483773706240
──────────────────────────────
とか書いているけど、著作権法では完全にアウトだとおもう。
その最大のポイントは、断裁済みの本を貸し出すところだ。
この店に並べられている本やマンガを出版している版元は、
法的手段を、出来るだけ早くとるのがいいと思う。
自炊が盛り上がっている(らしいってこと)のは、当然だと思う。
本として残しておくほどではないにせよ、一応資料としてとっておきたいな、という本があることはとってもワカル。
デジタルデータがあるのなら、あるいは、デジタルでアクセスが可能なら、
捨ててしまってそのスペースを空かせたいのはオイラも同じだ。
(昨日大掃除したばかりだしね)
この前、あるIT系の大企業の人から、会社の引っ越しのついでで、紙の本を「自炊」してしまいたいのだが、
出版界に相談する窓口も見つからなかったので、結局、それを保管するスペースを、家賃をはらって
確保する以外に無かった、きちんと対価を払うので、対応してもらいたかった、という話を聞いた、。
これも同じ話。
オレ自身の著作権法解釈は、福井健策弁護士の見解とほとんど同じだ。
出版業界のムードとしては、福井さんほど、ラディカル、ではないだろうけどね。
●書籍の電子化、「自炊」「スキャン代行」は法的にOK?〜福井弁護士に聞く著作権Q&A
ところで、
「自炊の森」は論外としても、大手出版社が、自炊代行サービスにも対策をとろうとしてるって話がある。
気持ちはなんか解らんでもないけど、アプローチが逆だと思う。
福井さんも
──────────────────────────────
Q8:自炊の代行サービスは適法?
A8:権利者から複製の許可を取らない限りは、違法でしょう。
解説:私的複製の範囲を規定する著作権法第30条1項を見ると、「『使用する者が』複製することができる」と書かれています。こうしたことから、自炊に限らず複製の代行サービスは、私的複製として許容されないというのが通説として定着しています(表【2】参照)。
これまでも新しいメディアが生まれるたびに複製代行サービスが登場しましたが、ビデオのダビングサービスをはじめ、権利者の許可のない複製の代行サービスは基本的に押さえ込まれてきた経緯があります。 自炊代行サービスに関する判例はまだありませんが、現行法を解釈すれば、おそらく複製権侵害に該当すると考えられます。
とはいえ、私も自著で利用してみたことがありますが、こうした自炊代行サービスは電子書籍のラインナップが揃わない現在、利便性がありユーザーの需要が高いことは間違いありません。許諾の確認できない書籍のスキャン代行は当面停止し、前述の複写権団体などを通じて作家・出版社と包括契約を模索するなど、各業者は適法化に向けて努力すべきでしょう。無論、作家・出版社側の電子書籍充実に向けた努力も望まれます。
──────────────────────────────
と書いているし、先のIT系大企業のような要望に、出版界が応えられていないということへの対応こそ、
先にやるべきことなんじゃないだろうか?
そうしないと、理解を得られない。妥当な費用負担をして、便利になりたい、という要望に応えることが先決で、
その対案を出さずに、自炊代行サービスタタキをするのは、妥当性を欠くやり方だと思う。
提供しているサービスの不足をたなに上げて、その不足を埋める第三者の行為を「だけ」をたたくだけだから。
さてさて、
書協という、ナンバーワン出版業界団体の行動には、まったく関与できないし、してもいないし、
これまでも特に態度を明らかにしたこともない、と思うんだけど、
この「自炊の森」に書協なり、の業界団体が反撃するなら、断固支持するつもりだ。
もちろん、自炊要望に応える対応策も必要だけどね。
ポット出版でも、ささやかに「ず・ぼん」のバックナンバーをネットで公開してるけど、
ポット出版で「ず・ぼん」シリーズを「自炊」して、紙の本を買ってくれた人には無料で、
紙の本を買ってくれていない人には有料で、PDF化して公開しようと計画中だ。
DRMは(ほとんど)かけないで、ね。
2011年の電子書籍議論は、DRMのことがいよいよメインテーマになる予感?
いや、オレの「希望」だけかもしんないけどね。