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[第15章●その他よしなしごと] 27… 桜はこちらをむいて咲く |
[2006.04.03登録] |
石田豊 |
東京では今日は強風で、満開の桜がもはや散りそめている。なんだか駆け足で桜の季節が通り過ぎていく。今年はどうやら花見の宴は持てそうにない。 昔より開花の時期が早くなったような気がしないか、という人は多い。たしかにそのような気もする。しかし、いっぽうでは、昔より桜の木が多くなったような気もする。桜は大木になるし、剪定に弱いし、虫もつくので、昔は小さな庭には植えられることが少なかったように思う。我が家の近所では小さな庭に大きな桜の木があり、路地の上に枝を張り出して豪奢に咲き誇っているのをよく見かける。川沿いや児童公園などにも桜の木が以前より多く植えられているようにも思う。 近所を散歩するだけで、いろいろな桜をたくさん楽しめるようになってきた。 いわゆる「お花見」より、点在する桜を巡って歩くこの散歩式の花見のほうが風流感が大きい。 年々歳々、桜の美しさが心に染むようになってきた。年くったせいであるかもしれない。桜は美しい。ちょっと反則じみて美しい。花単体の美しさに加えて、葉のないところに花だけが一時に咲く豪華さ、幹が太く力強く、そして色が黒く濃いところも、花の可憐さを額縁のような効果で引き立てている。 「桜ってさあ、みんな下を向いて咲くんだよね」 そう言うと驚く人が多い。 「あ、ホントだ。みんなこっちを向いている!」 桜は大きな木だから、花の位置は人間の背丈より高いところにあるのが普通だ。桜の花は見上げて見るものである。桜の花は、もこもこと密集して咲いている枝は別にして、たいていが見上げる人のほうに花弁をむけて咲き誇っている。この咲き方が桜の美しさをなお一層大きくしているように思える。 桜は花柄が細く長い。花柄とは花と枝をつなぐ部分のことである。サクランボの柄が花柄にあたる。サクランボの場合は柄は長くて柔らかいが、他の果物を思い浮かべていただくと、必ずしもそうなってはいないことに気づく。たとえばウメやカキは実は枝に「いきなり」つながっている。つまり花柄は非常に短い。だからそれらの花は花芽の方向のまま開花するが、花柄の長い桜は、花柄が花の重さで垂れて、花弁が下を向くことが多くなる。 「なんだか、ワタシを見て! ワタシは美しいでしょ! と言っているみたいね」 確かに。ぼくも若い頃にはそういうふうな振る舞いをニガニガしく思っていたように思う。でも、美しいものが自分の美しさを自覚するのは、ごく当然のことである。自分の美しさとそれが相手にもたらす効果も的確に計算できる。人でも花でも、そういうのがいいと思えるようになった。 ま、桜本人がそのように思っているとは、考えにくいのであるが……。 |
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