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[第15章●その他よしなしごと]
19… ナナカマドと旅先でのヨロコビ
[2005.09.05登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

取材で旭川に行ってきた。

はじめての北海道。いままで北海道に行く機会は何度もあったけれど、なぜか直前になって具合が悪くなるということが続いていた。それだけに今回はなんだかとても嬉しい。

旭川市内移動中、車窓から赤い実をつけた街路樹が見える。目が悪いもので、細部まで確認できない。なんだろうな、もしかすると、と考えながら視界を流れていくそれらの木々を目で追っていた。

下車したすぐそばにもその木がある。近づいてみると、ビンゴ! やっぱりナナカマドだ。

ナナカマドというのは特徴があるからすぐ見覚えることができるが、ぼくの生息域の中では、そう頻繁に見かけるものではない。前回見たのは、おそらく深大寺植物公園だったんじゃないかな。

本州では自然状態のものは山地、しかもけっこう標高の高いところでしか見られないんではないだろうか。

それが街路樹として市街に植えられている。さすがに北海道だ。なんだか、それを見ただけで、もう十分に北海道を満喫したような気分になった。ただ、惜しむらくは、さすがの北海道であっても、8月の末はまだまだ夏で、紅葉も始まっていないし、実も赤熟していない。もう数ヶ月後なら、息をのむような美しさじゃないかな。

帰宅後、「旭川 ナナカマド」で検索してみたら、やはり旭川の「市の木」だった。同時に、ナナカマドの街路樹は北海道ではごく普通だということも知る。でも、これってあまり有名な話じゃないんじゃないかな。ポプラ並木ってのは話にも聞くし、映像でもなんども見ているけど、こっちのほうは少なくともぼくは知らなかった。あらかじめ知っているモノ(たとえばポプラ並木)を現地で見るということは、なんだか「再確認」しているという具合になりかねない。新鮮な驚きがない。予想していないものにぶつかる。それが旅の醍醐味であるはずだ。しかし、そうかと言って、何も知らないで出かけていくと、見るべきものも見逃してしまう。その兼ね合いが難しい。

兼ね合いといえば、もうひとつ。

今回の取材には同行者がいたのだが、その人にナナカマドですねと言ってみたところ、無反応だった。つまり、その木をご存じなかったのだ。

ナナカマドを見て、ぼくは嬉しくなったんだけれど、植物に無関心の人は、たとえ、その珍しさとか面白さを現地で説明されたとしても、へえ、程度で終わっちゃう。

つまり、旅先で何かを見た場合、そのブツに対する知識があってはじめて面白く感じられるってことだ。しかし、これもまた「兼ね合い」である。ナナカマドの例でいえば、ナナカマドがなんたるかを知らなければ、単に「みょうな街路樹」で終わってしまうだけだけど、逆にもっと知っていたとしたらどうか。北海道ではナナカマドの街路樹が普通であって、旭川の市の木がそれだとまで知っていたら、果たして、実見した時に今回ぼくが感じたような新鮮な驚きやヨロコビが湧き出たかどうか。やっぱりこれも「再確認」って感じで終わってしまったのかもしれない。

知識と「発見のヨロコビ」。それもある種、兼ね合いなんだろう。むつかしいところですよね。

ほんとは、ISBNと書籍JANコードの関係について書くつもりだったんだが、旭川行きの後遺症で、なんだかとってもくたびれており、つい日和ってみました。すんません。

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