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[第13章●本の買い方読み方しまい方]
8… いつも何かを読んでいる
[2004.06.22登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

ここの勧進元であるスタジオ・ポットの社長である沢辺さん。彼のインタビューはまとめにくい。同年代ということもあり、つきあいが長いということもあるのだろうが、彼が他の人(業界の人とか)と話していることにくらべると、ぼくには非常に不透明な話し方をするように思う。同じことはぼくから彼への会話にも見られるだろう。「まだちゃんとまとまっていない」ことを話しているんでしょうね。つまりスパーリング相手とみなしている。ま、それはそれで光栄だし、逆にぼくにとっても得難い「トレーニングパートナー」であるんだけど。

こうやってまとめようとすると、なかなか難しい。ニュアンスがうまく出てないのだが、やむを得まい。なお、下のプロフィールは、わざわざ本人が赤いれしてくれたものをそのまま載せている。

■沢辺均さん……48歳、男性、既婚(バツイチ)、2名で暮らす(別居の娘一人あり)、出版社・編集制作会社経営

年頭から10年ぶりくらいに読書メモを付け始めた。読み通した本のみをリストしている。だから今年、何冊の本を読んだのかがずばりわかる(完読したもののみ)のだが、そのリストによるとちょうど5ヶ月で21冊。月4冊平均である。

最近読んだ本は「下山事件」(森達也・新潮社)とか「博士の愛した数式」(小川洋子・新潮社)とか「「正しい戦争」は本当にあるのか」(藤原帰一・ロッキング・オン)とか「憲法対論」(奥平康弘、宮台真司・平凡社新書)など。

「それに、恥ずかしいところで言うと「サラリーマンでも「大家さん」になれる46の秘訣」(藤山勇司・実業之日本社)とか「60年代が僕たちをつくった」(小野 民樹・洋泉社)なんかね」

これはあくまで完読したものだけで、買ったものはもっとある。

ネット書店とリアル書店の割合は7対3。ネット書店はほぼAmazon」。これはアフリエイトがあるから。

アフリエイトを考えなければ、今、注目しているのはイーエスブックス

古書の購入はネット古書店の出現により増えた。昨年は10冊程度購入している。リアルの古本やさんは、めったに利用しない。10代の頃は下北沢の幻游社とか、渋谷古書センターとかに行ったけど、それは読む本のジャンルが決まっていたからで、今は読む本がバラバラだから、リアルの古書店は効率が悪い。ここ1、2年で出た本を読む傾向が強いからということもある。だから、現在のリアル古本屋利用は偶然以外にはない。

だからネット古書店の利用は、人から勧められたけどもう品切れになっているものとか、仕事の関係で見ておかなければならない本だけということになる。

ネット古書店は日本の古本屋を使うことが多い。

「それは最初にここを知ったから。ここで見つからないとスーパー源氏なんかでも検索することもあるけど、どっちにも掲載されているとこが多いようだね。日本の古本屋になければ源氏にもないとか」

リアルの書店は、大型店より、棚の位置とかがじぶんでちゃんと把握できるような規模の書店が好みだ。具体的に言うならリブロ外苑前(実は青山店というのが正式だそうだ→web Libro)やあゆみBooks代々木店(店内の様子はINAX出版 営業日誌でよくわかる)を好んでいる。

図書館の利用は、現在、ほぼない。なぜか?

「めんどっちい。なぜめんどっちいのか? うーん。なんで面倒なんなんだろう?」

本の購入については躊躇しないように心がけている。

「職業柄、本を買うことだけは我慢しないでおこうと思っている。これだけは自分に許そう、と。それでもまだ『この本はいいだろう』とか思ってしまう。だから自分を鼓舞しているという側面もあるかも。資料なんかもあるし、この本はやはり買っておかなければ、というような本もあるし、一応買っておいて、斜め読みするか、最悪、この本は持っているということだけを覚えておくのでもいいかと思って」

本を読む時間と場所。

多いのは寝る前、寝床やソファにねころんで。しかしトイレにも持って行くし、ひとりでメシを食うときにはその前に読むものを探す。とにかく時間があればいつでもどこでもというところか。

風呂のなかでも4回にいちどは持って入って読む。長風呂はしないから、ほんの数分という感じではあるが。

「風呂の中でも本を読みたい、というより、その逆で、のんびりしたい、のんびり風呂に入りたいと思う時に、その『小道具』として本を使っているという感じなんじゃないかなあ」

新聞>雑誌>本、という優先順位がある。これは中身での優先順位ではない。内容で言えば本が一番上なんだが、新聞はその日のうちに処理しておかねばならない。

「溜めると面倒だしね。新聞なんかバーっと片づけて、早く本に行こうと」

再読はけっこうする。冒頭にあげた21冊のうち2冊がそう。昨年から竹田青嗣にハマっているので、そういうのを読み返したり。

完読するかどうか、完読についてどう考えるか。

「うーん。もうやめようやめようとは思うのだが、どうも『完読主義』から抜け出せない自分がいる。本はちゃんと最後まで読む、なんてことにどこかでとらわれているのだろうね。強迫観念? 本がいちばん好きなわけ。なんていうのかな。権威?価値が高い? 本の権威なんて、もう信じちゃいないんだけど、うーん、まだ持っているのかもしれないし……。完読するってことに達成感もあるし」

「読む本は人文系というのかな、そういうのが多い。竹田青嗣とか橋爪大三郎とか。インテリ好き?」
「なんで『好き』ってわざわざつけないでも『インテリ』って言えばいいじゃない」
「うーん。中身がちゃんとわかってないのに読んでいるトコもあるしなあ」
「わからないものをムリして読み続けることはできないよ。人は五十も近くなると」

若い頃はエンターテイメント系の本は読まなかったし、買わなかった。北方謙三とかをはじめて買ったのは25くらいの時。それまではもっとコチコチに「読むべき本はなにか」というようなことを考えていた。ストイック。で、それから以降はそのような権威主義的な考え方から自由になったつもりでいるが、それでもやはりどこか引きずっているトコが残っている。

読んだ本でも、先ほどあげた「サラリーマンのための……」なんかは、以前なら人に読んだともいえなかったけど、今は言える。それでも「恥ずかし系では……」なんて言い訳をかぶせてたりする。

20代の半ばくらいでショーロホフにハマった時はうれしかったなあ。なんだか、お、オレも文学読みになったか、なんてね。

大沢在昌も好きだな。その手の本が読みたいときに買って読む。

※※※※

うーん。やはりうまくまとめられない。「本には権威がある」「本をよむことはエラいことだ」「本は価値が高い」「小説やエロ本より哲学書・思想書がエラい」「読む本と人の中身は連動している」……

そのようないわば古くさく、どっかミョーなテーゼを、とうぜん頭では否定しているのだろうが、反語的に使ってみたりする。自分の中に残っているストイックさをのぞき込むように。ぼく(石田)にはそう思えた。

違うかな>沢辺さん。

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