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[第13章●本の買い方読み方しまい方]
12… 和書は図書館、洋書は買う
[2004.06.27登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

私事ですが、わがやに新しい猫が来ました。それやこれやでもうタイヘン。ニンゲン関係ならぬ猫間関係の調整にもうくたくた。詳しくは「また来た、なぜだ」(小生の個人サイト)を。

高校生向けの数学の教材の原稿を書くという仕事もしているのですが、今回の問題はぼくには若干難しかったので(関係がヤヤこしくて、つかみにくい)、これにも難儀しました。難しい問題を解いていると、かならず便意を催すのは、なぜでしょう。

年齢は、ちょうど昨日が誕生日だった由

■宇田川信生さん……50歳、男性、ハイティーンの男の子と3人で暮らす、会社員

彼は海外生活が長く、また、現在でも時々海外出張にも出かけている。そのためもあるのだろうが、読む本の半数は洋書(英語の本)となる。和洋の比は1対1程度。

読書量は最近ずいぶん減って月2、3冊。以前は5、6冊読んでいた。理由は文字を読むのが億劫になったから。

仕事上で読まなければならない資料がやたら多く、帰ってきてまでもう活字は見たくないって感じになる。

和書は図書館、洋書は買う。

図書館は近くの区立図書館。徒歩で10分くらい。貸出期間が2週間なので、そのインターバルで週末に出かける。だいたい2冊を借りる。ただ、読みたい本の在庫がないケースが多く、他の図書館から取り寄せてもらうことが多い。

洋書は買う。これは図書館にないからという理由が大きい。海外出張の際などにまとめて購入したりする。

図書館利用をするのは、本が増えるのがいやだから。


「毎年年に一度、大晦日とかに大掃除をする。本も本棚から全部抜いてほこりを払う。そんな時にいらない本を捨てる。こんなくだらない本を読んだのか、ってがっかりしたりする。傍線を引いたりするので、売るにも売れず、けっきょく捨ててしまう」

捨てることには抵抗がある。いっぽうで本を捨てるのがいやだという気がする。ひとつは本を粗末に扱ってはいけないという「教え」のせいだろうし、もうひとつは、この傍線を入れるという性癖もあるからかもしれない。

「自分をさらしてしまうようで、なんか恥ずかしい」
「えっ、だって捨てちゃうんなら、誰にも見られやしないじゃない」
「そーなんだけど、やっぱヤだな」

本を置くスペースは決まっているので、そこからあふれた本は捨てなきゃならない。イギリス(在住)から帰ってきた時に、住宅事情の関係で大量に捨てた。この経験で吹っ切れたのかもしれない。やっぱり本は捨てなきゃ、と。

「だから図書館で借りる。借りてこれはまた読み返すだろうな、と思う本は買う。この場合はできれば文庫本だな」
「それはやはりスペースのせいですか」
「いや、やっぱり電車の中で読むにしても、ベッドで読むにしても、大きい本はかさばるじゃない」

現在、塩野七生の「ローマ人の物語」が文庫化されているので、これを買って読み直している。どんどんでるので、タイヘンだ。最初は論考が少々粗いような気がしたが、やはり面白い。

フィクションが多いというよりも、フィクション、ノンフィクションを通じて歴史を取り扱ったものをよく読む。

「洋書? どちらかというと、古典というか……、あまりにも最近に出た本は読まないですね。最近読んだのは『百年の孤独』(マルケス)。あと、カズオイシグロのが好きでよく読むね」

英米の書店と日本の書店の雰囲気の違いを訊いてみる。

「ぼくの乏しい経験では、なんかアメリカとかイギリスの本屋って感じが違うんだけど、どうなんでしょう」
「そーかな。うーんあまり違いはないように思うのだけど」
「なんかしーんとしているような……」
「うん、そうかもしれないね。英米の書店は書籍が主体で、雑誌の割合が小さい。出入口付近の雑誌コーナーに群がる立ち読み客がいないのですっきりしている。雑誌は取次業者も別だしね」
「新聞や雑誌はスタンドで売ってますね」
「雑誌はニューススタンドとか、葉巻・タバコ・菓子類を併売する新聞・雑誌専門店で売るのが普通だね。イギリスの場合これらの店はインド人経営のものが多い」
「なるほど」
「そういえば、営業時間中に書店員が棚整理をしている姿をあまり見ない。店員が割と静かに目立たないようにしているので、周りでばたばた動き回る人がいないぶん、静かに本を見て回れるように思う」
「いつ整理をしているんでしょうかね」
「それに、出入口付近に雑誌コーナーを設けなくても良いぶん、そのスペースを使って新刊書籍の装飾的な展示に工夫を凝らし、カラフルで華やかな空間演出をする書店が少なくない」

本を読む場所は1位が交通機関の中。通勤の電車。それに出張の際の飛行機の中。飛行機の中は読書空間としては非常に優れている。

ただし、往路は向こうでの仕事のための資料をうんとこさ読まなければならないので、読書時間がとれない。帰りは向こうで買ってきた本を読む。

あとはベッドの中。遅読なので時間がかかる。

「山口瞳か誰かが『人間の毛の総量は一定である』って言ってたけど、これは他のことでも同じだなあ、と。つまり一日に読む活字の総量ってのは決まっているんじゃないかな」
「え? 活字か。一生に飲む酒の総量が一定だというのかと思った。それならもうそろそろやめなさい、と(笑)」
「いやいや。仕事でたくさんの文字を読むと、もう『総量』を超えちゃって、読めなくなる」

旧知の仲なので、話はインタビューとはほど遠く、どんどん拡散していく。ご子息の読書について。

「ほんと、読まないんだよね。不思議なくらい」
「そんなもんですよ」
「でね。あまりにも読解力が低い。テストの答案とかを見ると、問題文が読み取れてないんだ。それはもう本を読んでないからだと思ってね。で、読書感想文と小遣いを引き替えにした」
「え? 読書感想文を書かないと、お小遣いもらえないの」
「そう」
「ええーっ。そんなことしたら、本なんかぜったい読まなくなるよ。ぼくだって感想文なんか義務づけられていたら、今でもいっさいよまないと思うよ」
「ふーん。イシダは読書ノートとかつけなかったの?」
「なんどか挑戦したことはあるけど、いつも長続きしなかったな」
「そうかなあ」
「本なんて、読んで、あー面白かった、ポイ、ってのがいいと思うんだけどなあ」

話はなおも拡散して、目の衰えについてや、電子出版などに。

「ソニーのリブリエにはずいぶん期待している」
「あんな独自形式のより、一般的な形式の扱えるPDAのほうがいいんじゃない?」
「いや、どれもバックライトでしょ。バックライトで長時間読むのはできないよ(ちなみにリブリエはバックライトがない)」
「紙の書籍よりああいうのがいい?」
「場所もとらないし、それに、その場で辞書が引けるのがいいね」
「なるほど」
「でも今のリブリエはなんか陶器みたいでツルンとして魅力がないんだよね。もっとぐにょぐにょした質感のものにすればよかったのに。ソニーだったらできるだろうに」

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