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[第13章●本の買い方読み方しまい方]
11… 本が読めない心理的理由
[2004.06.25登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

中年期以降の本読みにとって、テキのひとつは「目の衰え」でありましょう。先日来、目がたいへん痛むので、なんだか悪い病気かと思い、眼科医にいったところ「ドライアイ」との診断でした。

ドライアイとは乾き目のことだと思い、ぼくはその症状がないから、まさかそいつだとは気が付きませんでした。だいたい多汁質で、くだらないドラマでもすぐ泣くので、涙の量が少ないはずはないとも思ってました。

でもぼくの場合、量は足りているのですが「質」が悪いんだそうです。

眼科医で処方された目薬2種を頻繁にさしている(そうせよとの指示)毎日ですが、心なしか、目の疲れはずいぶん違う。

なんだか、もっと早く医者に行ってればよかった。

さて

■岩井浩之さん……35歳男性、既婚、乳児1人と3人暮らし、出版社勤務/雑誌編集者

最近は月1、2冊程度の読書量。3年前の独身時代は5〜10冊だったので、激減といえる。

「やはり結婚、そしてぼくの場合、すぐに子どもが生まれましたから、そのせいもあるでしょう。もう本なんか読んでいる状況じゃない、と」

読む本のジャンルはノンフィクションが多い。資料的な写真集なんかもよく買う。

最近読んだのは「世にも奇妙な職業案内」とか「VOW王国 ニッポンの誤植」。

「……、何か、お恥ずかしいラインナップで」

いや、その発想はめちゃくちゃ古い。読んだ本を聞いてその人のあれこれがわかるなんてバカなことを言ってるやつは、ちょっとおかしい。知っている「この人」と、その彼(女)が言及した「この本」との衝突というか交点というかをどう捕らえるのという楽しみのためだけに「ねえ、最近おもしろかった本ってある?」と聞くのだよ。本は踏み絵なんかじゃない。君が面白いと思った本をぼくが知りたいのは、君を値踏むためなんかではなく、こっちが面白いことを探しているからだけなんだ。

「いま、『イラクの中心でバカと叫ぶ』を、ちょっと読みたいかな、と」

本の入手はほぼ全量が書店店頭で、ネット書店の利用はいままでに数えるほどしかない。古書店の利用はゼロに近い。その理由は「古本屋を利用する習慣がない」。

「仕事の関係で資料になる本を探しに行ったついでに、ということが多いですね。会社から三省堂の本店が近いのですが、仕事で必要な本のあるフロアに行くにしても、どうしても1階は通らざるをえない。そこには話題の新刊とかが平積みされていますから、そこで目に付いたものを買います」

本を読む量が減ったからでもあるのだが、彼の場合、本を購入したことが、その本を読み始める動機になっているようだ。読むために買いに行くのではなくて、買ったから読み始める。

本を読むのは通勤時と寝る前。奥さん+赤ちゃんは別室で寝ているので、そういう意味では寝床で本を読んでいても、なんの問題はない。一緒の部屋だとタイヘンだよね。

「夜泣きとかけっこうすごいんです」

でもそういう「物理的な障害」より心理的なそれのほうが大きい。乳児をかかえる母親というのは、四六時中が戦争のようなものだ。片一方が戦争状態にあるとき、べつにそれを手伝わないことはあるし、そういう時には時間もあるわけだが、「心理的な壁」があって、本をのんびり読むわけにはいかないという気になってしまう。

読み終わった本は本箱に入れるのだが、これがあふれちゃって、今はその前に積んである。おもしろかった本は人にすすめて貸すこともあるのだけど、これはほぼ帰ってこない。それがストック増加の防止策にもなっているかも。

どうしてもスペースを空けたいので、本を捨てることを考えている。売ることは考えていない。捨てることに抵抗はないと思う。というより、捨てなきゃだめじゃないか、と思う。

さて。

この一連のインタビューを思い立ったその日に、なんの不思議か、ずいぶん久しぶりに、彼から仕事の打診があった。そのオファーの電話の中で、逆襲的にサーベイしたのが上記だ、

でも、どう考えても岩井さんはヘンだと思う。だってさ。久しぶりに原稿依頼する相手に、自分の嫁さんとアカンボの写真を添付で付けてくるんだもん。

どっちも非常にかわいかったですけどね。過ぎにし日々のあれこれにジーンとしちゃったりしましたけどね。

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