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[第13章●本の買い方読み方しまい方] 5… 速読はソンである |
[2004.06.19登録] |
石田豊 |
はじめて会ったのは友達の個展会場だった。閉館時間ぎりぎりに小走りにはいってきた法被と地下足袋姿の植木職人。風貌はまるでロシアのデカブリストみたい。これが伏黒さんとのファーストコンタクトだった。 非常に物静かで思索的な人。ぼくが軽躁浮薄な人間だから、こういう人に惹かれるのかもしれない。 伏黒朱一さん……47歳、男性、既婚、5名で暮らす、植木職 読む本の量は時期によって大きく変わる。読まないときは何ヶ月も完全に読まない。読む時は月20冊くらいは読む。これは子どもの頃からずっとそうだったように思う。 長期的な傾向としては、昔の方が本はよく読んでいた。それはもっぱらインターネットのせいかもしれない。資料的なものは本からWebになったので、そうした本を買ったり読んだりすることが少なくなった。 図書館利用もそうで、以前は調べもののためによく行ったが、いまはほとんどWebで済ませてしまう。もし行くとするなら、せいぜい「ウラとり」くらいか。 本を選ぶのはほとんどが店頭で見て。最寄り駅のそばのちょっと大きめの書店で、ほぼ済ませている。仕事上で必要なものは神保町へ行って建築関係のところで探したりするが、それ以外の楽しみのための本は、ほとんど駅前。 これくらいの規模の書店だと、ひととおりのものは揃っていて、店内を一巡することで、ほしい本を見つけることができる。本屋の店頭で現物をみることで、読む本がきまってくる。 メーリングリストなどでも「この人がすすめたものは」って感じで信頼している人が何人かあって、そういう本は探して読む場合もある。 ただ、ネット書店の利用経験はない。 「クレジットカードとかでの買い物って、なにか不安というところがあったので、今まではネットの買い物はしていませんでした。でも本以外のものは少しずつはじめています。本もそろそろ買ってみようかな、と思っているところ。最近はクレジットカード以外の決済方法も増えてきましたでしょ」 古本屋の利用もほぼない。 「昨年、亡父の蔵書を大量に処分したのですが、古本屋とのつきあいはそれくらいで、買うことはまずないですね。あるとしたら古本市が開かれている時に偶然通り合わせたときなんかに、選んで買うくらい」 読むのは歴史関係のものが多い。ほとんど日本史。フィクションもノンフィクションも。これが半数くらい。あとは職関係のエッセイとか、いろいろ。 「カミさんが読んでいる本を読むというのも多いですね。自分なら絶対選ばない本が多く、読んでみると意外に面白いってことがあります。今読んでいるのもそうで、カミさんが全部そろえて読んでいるのを借用。『十二国記 月の影 影の海』。これはなかなか面白い」 本を読むのは寝床が多い。腰や首が悪いので、他の姿勢はどうもムリ。 「寝ながら読んでもキビしい時がありますからねえ」 「いや、逆に、寝ころんで読む方が、腰や首への負担は大きいんじゃないですか」 「ふうむ。正座して読むのがいいんでしょうか」 「正座とまではいいませんが、座って読む方がカラダへの負担はマシらしいっすよ。ぼくも寝ころんで読んでますが」 「ベッドに取り付ける書見台みたいなの、あるでしょ、あれのいいのってあるんですか?」 「どーなんですかね。こんど調べてみますね」 「よろしくお願いします」 (とんだ宿題を背負い込んでしまった) 完読主義。読み始めると最後まで読み通したくなってしまう。 「あした仕事なんだかなあと思いながらも、ついつい最後まで読んじゃいます。誘惑に弱いんです」 それに併読もできない。 「これはずっと不思議でした。どうしてみんなそんな器用なことができるんだろうか、と。私はまったくできませんね。ひとつの本を読んでる間は他の本には手を出せない。会社づとめで通勤があったら、もしかしたら通勤用の本を作るかもしれませんが。やったことないけど。それに速読術というのも不思議です。なんだかダレがそれを必要としているのだろうかなあ。だいたい速く読み切っちゃうとソンですよね」 ただ、電車で1時間程度以上移動する場合は必ず本を持って出る。この場合は本棚から前に読んだものの中で軽めのストーリー性のないようなものを選ぶ。これは電車に乗っている間だけに読むもので、その間に読み切れなかったとしても構わない。帰ってきてから続きを読むということはまずない。 電車の中で読む場合、カバーを付けるか。 「わたしはカバーなしで平気なんです。別に手の内隠さなきゃならないことでもないし。しかしカミさんがそれをいやがる。カバーしなさいっていうんで、その言うことをきいています。文庫本の場合はもともとのカバーを裏返しにして付けています」 読み終わった本のなかで、資料性の高いものはPCのそばに並べているが、それ以外は積み上げてある。机の下にもあるし。ただ、段ボール箱に入れちゃうと、もうだめなわけで、そのへんが難しいところ。 以前読んだ本の再読はあまりしない。小説系はほとんどしない。だから小説の文庫本などはとっておいてもしょうがないのだが、売ると悲しくなるくらい安いということを知っているので、前には学校図書館に寄贈したこともある。 子どもの頃、最初に住んでいたのは四畳半のアパートだった。小学生になるころ、それではあまりに狭いということで、もう一部屋借りることになり、そちらが自分の部屋ということになったのだが、その部屋の大部分は父親の蔵書が積み重なっていた。 そういう中で過ごしたので、本の匂い嗅いでないと、どこか不安な気がするように育ってしまった。 しかし、その反面、本って、うっとうしいと思う。スペースも取るし、ほこりもたまる。掃除もしにくいし、第一、虫がでちゃったりもする。 こういうものはなんとかならんか、と思う。ひとつの解決が電子化であるのだろう。電子化されれば、少なくとも虫はでてこない。 そう思う自分がいるいっぽうで、本の匂いがなくっちゃ困る自分もいる。 比率は半々。どちらにも決められずにいる。 |
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