2018-05-10
『電子書籍の制作と販売』、質問に答える
『電子書籍の制作と販売――出版社はどう作り、どう売るのがいいか』というのを書いたら、
出版社の人から、質問をもらった。
その返事を書いておきます。参考になればいいな、と。
●索引や注とのリンクなどは、
専門書の電子化には必要と思っていますが、コストがかかります。
どこまでの品質を保つべきとお考えですか。
【返事】
索引は、索引の一覧を作るだけで良いと思ってます。
リフローなら、索引項目があれば検索できますから。
編集者が、同じ索引項目でも、採用する箇所、採用に値しない箇所、と
分けることにも従来意味があったのだと思いますが、
電書では、検索などで読者の手に委ねる、ほうがいいと判断。
注リンクは、そのたびに注の箇所に飛んでもどったり、
むしろ鬱陶しいので、リンク不要と考えいます。
むしろ段落直後や章の最後にまとめて掲載が親切だという見方もできるので、
コストをかけて、リンクする必要はない、と思ってます。
また、今後の技術の発展によって、
そうした人間の手作業の意味が減っていくとおもってます。
●図書館(とくに公共図書館)への提供については、
1点購入されたら、広く無料で読まれてしまうではないか、
という懸念が出版側にはまだあります。沢辺さんのご意見は?
【返事】
・図書館への販売で、出版社の一番の抵抗感は
「一度売ったら、未来永劫保存され、貸し出され続ける」ことだと思います
電子は、スペースいらず/本が壊れることがない、のに、
未来永劫、、というは抵抗感あり、は当然だと思ってます。
でも、逆に、うちの本でも、正直未来永劫保存貸出されても、ないよりいいな
あるいは、壊れたあとに買い直してくれる本じゃないよね、というは、
まあいいかということもあります。
で、現実論として、
JDLSが2年52回貸出権利で紙の価格の2倍程度をうろうモデルを
つくったことにより
TRC-DLでも、この方式の選択が可能になりましたよね。
それでも、図書館は、このJDLSモデルへの抵抗がつよいようです。
これもあと、5年~10年で、出版/図書館お互いの抵抗感が、
一定のところにおさまって、安定した商習慣ができると思ってます。
なので、いまいまは、
よく貸し出される本だからJDLSモデル
2年で52回も貸し出されないよな、という本は、
図書館の抵抗のない未来永劫モデル
というふうに分けて販売しています。