2009-02-08

第59回ベルリナーレ 2月7日

毎朝定時に起きて電車に揺られ、ポツダム広場駅まで。
まるで、会社に出勤するOLのような生活です。
ドイツには満員電車というものはないようで、
7時台の電車でも、ほぼ座って行けます。
ドイツの電車で驚くのは、自転車OK、犬OKなこと。
日本だったらあり得ないことですが、一両に自転車2、3台が
乗っていることもありますし、大型犬、小型犬問わず、
犬も電車内でよくみかけます。

さて今日見た3本の映画を紹介します。

監督が何を描きたかったのかわからなかった
イラン映画「Darbareye Elly(About Elly)」

20097475_1.jpg20097475_2.jpg
20097475_4.jpg20097475_5.jpg

イラン映画というと、日本ではアッバス・キアロスタミが有名で、
子どもが主人公の映画が多いという印象だが、
ここ数年、日本で公開されたイラン映画って、あっただろうか?
ちょっと思い当たらない。

この映画は、イランの男女の関係、結婚事情がちらっと垣間見える作品で、
3組の夫婦と子どもたちが、連れたって泊まりがけのバカンス(?)に
出かけるところから始まります。
そこに、招かれたAhmadとElly。
Ahmadはドイツ人の妻と離婚したばかり。
その彼に紹介したいという意図で、Ellyも招かれていました。

前半は、海の見える小屋で楽しむ家族たちの姿がていねいに描かれ、
少し退屈。でも、イランに住む人々の暮らしをあまり知らない
私にとっては、興味深いシーンも多く、例えば、
夜、子どもも交えてみんなでジェスチャーゲームを楽しんだり、
何か決めるのに、女性も含めたみんなの意見を聞いてみたり…。

前半はそんなこんなでまったりと進んで行くのだけど、
途中で起こる突然の事故でEllyが行方不明になってしまうんです。
それを境に彼女の秘密が明らかになっていくのだけど、
その秘密はEllyのパーソナリティゆえなのか、
イランというお国柄ゆえのものなのか、
それが見終わってもよくわかりませんでした。

Asghar Farhadi監督(写真下右)の描きたいことが、
イラン人の普通の夫婦関係、男女関係のことだったのか、
それともそこに社会性を込めたかったのか。
たぶん、社会性を込めたかったのだろうとは思うのだけど、
それがストレートに見るものに伝わるまでには
描ききれていなかったように思います。

Ellyはこの旅行に鞄を持ってきているのだけど、
それがルイ・ヴィトンのバッグなんです。しかも、村上隆デザインの。
これが色味のあまりない映像の中で、
何かを象徴するように際立っていたんですね。
これって、西洋文明の流入で、
イランの夫婦関係、男女関係が変わりつつあるという
意味がこめられていたのでしょうか。

質の高い社会派映画とはわかるものの
言葉のハンデが大きかった「Storm」

20097120_1.jpg20097120_2.jpg
20097120_5.jpg20097120_7.jpg

ボスニア戦争の戦犯を有罪にするための裁判の証人になっていた男が
自殺してしまう…。その裁判を担当していたハンナは、
その男の妹に証言してもらおうと彼女を説得し、
証言台に立ってもらうのだが、
大きな影の力に阻まれてしまう…。

質の高い社会派映画とはわかるものの、
内容がかなりハードなうえ、イギリス人俳優のしゃべる英語は早くて
まったくわからなかったので、批評は控えます。
ただ、わからないながらも、会話には緊迫感があり、
演じる俳優陣はすばらしかったので、日本で公開されたら、
ぜひ見直してみたいです。

この映画は、ドイツ、デンマーク、オランダの合作で、
監督はHans-Christian Schmidというドイツ人(写真下右)。
メインの言語は英語で、字幕はドイツ語、
時折ほかの国の言葉も出てきたりして、
その場合は、字幕がふたつ。かなり混乱します。
グローバル社会を象徴しているのか、合作映画が多いし、
言語もひとつにしぼらず、いろいろというのが増えているようです。

さて、主役のハンナを演じたケリー・フォックス(写真上左の奥)は
日本ではパトリス・シェロー監督の「インティマシー 親密」が
記憶にあるのではないでしょうか。
この映画、ほぼ全編、全裸のからみあい、というのが話題で、
2001年のベルリン映画祭で3部門を受賞しているそうです。

フランス人監督とトミー・リー・ジョーンズの
コラボが新鮮な「In The Electric Mist」

20096246_1.jpg20096246_2.jpg
20096246_7.jpg

何とも不思議な作品でした。
体裁は、連続殺人鬼を追うトミー・リー・ジョーンズの物語なのですが、
単純な警察もの、というより、横道にそれまくって、
途中で、南北戦争の老人の大将がでてきたり、
それが現実なのか、夢なのか、なんだかわからないまま進んだり。
まあ、私は結構好きなテイストです。

この映画、監督はフランス人のベルトラン・タベルニエ(写真下)。
そして、言語は英語なのに、なぜか字幕も英語でした。
この謎は最後まで溶けませんでした。

今日はこれから、想田監督の「精神」を見に行きます。
この映画の話は、また明日報告しますね。