2009-02-12

第59回ベルリナーレ 2月11日

ドイツにいながらも、W杯予選のオーストラリア戦が
気になっていました。家族に録画を頼んだのですが、
やっぱり気になっちゃって、ネットニュースで見てしまいました。
引き分けって、どーなんでしょうか?
帰ってから、「よくやった!」の引き分けなのか、
「ああもう勝てたのに!」の引き分けなのか、録画で確かめることにします。

さて、サッカーではなく、映画祭に戻りますね。
今日も青木さんに、新聞評を読んでもらいました。
前回、プレススペースにはドイツの新聞2紙が置いてあると言いましたが、
あとでよく聞いてみると、5紙ぐらい置いてあるそうです。
その中から、長年ドイツに住んでいる青木さんが、
これ!とチョイスした「ベルリン新聞」と「ターゲスシュピーゲル」の2紙を
毎朝手に入れて、そこからの情報を解説してくれるのです。

それぞれの星取り表(5、6人の評価)によると、今のところ
「ベルリン新聞」ではイギリスの爆破事件を描いた「London River」が
トップだそうです。一方、「ターゲスシュピーゲル」では、
ドイツのラブストーリー「Alle Anderen(Everyone Else)」がトップで、
「London River」は評価が低いのだとか。
これには、共感できず、思わず首をひねってしまいましたね。

さて、今日見た3本と、昨日のヴィム・ヴェンダースのパーティについて
紹介します。

恐ろしいほど救いがなくて
残酷な物語「Katalin Varga」

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いい悪いは抜きにして、今日までのコンペ作品の中で、
一番残酷で過激な内容であり、監督の個性が際立っている作品でした。
ただ、映像や手法はどこかで見たような…という感じが
しないでもないです。
何となく、ラース・フォントリアーを思い出したのですが、
救いのなさにおいては、彼の映画を上回っているかもしれません。

主人公のKatalinは、夫と11歳の息子と幸せに暮らしていたのですが、
ある日、息子が夫の子どもではないことが
明るみに出てしまいます。それによって、彼女と息子は
家を出ざるを得なくなります。
息子には、病気のおばあちゃんの見舞いに行くとうそをつき、
家を後にして、息子の父親を探す旅に出ます。

ルーマニア、イギリス、ハンガリーの合作なのですが、
舞台はルーマニアの田舎のようです。
広大な草原や野山が広がり、村々では羊の放牧や
農業で生活している人々の生活が映し出されていきます。
しかも、Katalinと息子は馬に荷車を引かせて旅をしているのです。
いつの時代?と思ったのですが、
途中で携帯電話を村の男が使うシーンが出てくるので、
映画の時代設定は現代なのだと分かります。

Katalinの真の目的が分からないまま、何か恐ろしいことが起こりそうな
効果音と映像が続きます。途中で、彼女の目的が判明するのですが、
その後も救いのない、かつ予想外の展開が続き、
ついに、まったく希望のない、残酷なラストシーンを迎えます。

監督は、Peter Strickland(写真下右)。
プログラムによると、ミュージシャンでもあるそうです。
ロンドンとブダペストに住み、「the Sonic Catering Band」の
創設者で、この映画は長編第一作目。

妖怪チックなエレン・バーキンはじめ
俳優陣のコラボが楽しめる「Happy Tears」

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何ともご都合主義的なエンディングでしたが、
映画としては楽しみどころがいっぱいで、
私は好きなテイストです。

父親が24時間の介護を必要とするようになり、
家族を置いて実家へ帰るローラとジェーンの姉妹。
母はすでに亡くなり、家には、父親の愛人が居座っていました。

あらすじだけ読むと、深刻なテーマを社会的メッセージを込めて
描くのかと思いきや、妹ジェーンの視点で、
終始ユーモア&シニカルなテイストで描いていました。
冒頭で、妹のジェーンが2800ドルもするブーツを
衝動買いするのですが、姉に「新しいのね。いくら?」と
聞かれ、「500ドルくらい」と答えてしまったり、
父の愛人がすご〜く、挙動不審で奇妙な女だったり…。
この愛人をエレン・バーキンが演じているのだけど、
これが妖怪チックでスゴいです。
かつては独特の雰囲気が魅力のセクシーな女優さんでしたが、
雰囲気はそのままに、彼女ならでは変な女を演じているので、
面白かったです。
そのほか、姉をデミ・ムーア、妹をパーカー・ポージー、
父親をメン・イン・ブラックシリーズのリップ・トーンが
演じていて、俳優陣もコラボも楽しめます。

監督は、「ウェディング・バンケット」などで
俳優としても活躍しているミッシェル・リヒテンシュタイン。
この映画は、彼の2作目の作品とのことです。

24歳で凶弾に倒れた
伝説のラッパーを描いた「Notorious」
(コンペ外)

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24歳で凶弾に倒れたクリストファー・ウォレスの伝記映画。
ブルクックリンに生まれ、ドラッグの売人として逮捕される青年時代から、
The Notorious B.I.Gとして一時代を築き、
24歳で殺されるまでを描いています。

ヒップホップやラップは好きだけど、
名前と顔が一致するのはエミネムくらいで、
この業界についてはよく知らないので、批評は控えます。
でも、私が女だからか、彼を巡る女たちに興味を引かれました。
特に、母親ですね。アンジェラ・バセットが演じたのですが、
女手一つで育てながらも、溺愛して甘やかすのではなく、
常に一定の距離をとりながら、それでも彼を深く愛してる様子が
心に染みました。

アメリカでは1月に公開されたようですが、
ネットで検索しても日本での公開についての情報は
見つけられませんでした。
彼を殺したのが誰なのか、今なお見つかっていないようです。

監督は、アメリカ出身のGeorge Tillman.Jr(写真下右)。
主人公を演じたのは、ニューヨークのラッパー、Jamal Woolard。

ヴィム・ヴェンダース監督と
握手ができて感激!

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昨日は、ヴィム・ヴェンダース監督がDJをするという、
ミッテにあるVerve Clubのパーティーに行ってきました。
入り口には何の看板もなく、知っている人しか入れない
秘密のお店という雰囲気でした。
10時過ぎに着くと、店内はすでに大混雑で、
おしゃれなドイツ人でにぎわっていました。
すでにヴィム・ヴェンダース監督は、DJブースにいました。
青木さんが、ヴィム・ヴェンダース夫妻と知り合いで、
一緒に仕事をしたこともあるので、
なんと、こんな私も紹介してもらって、握手してもらっちゃいました。
キアヌのときといい、ただのミーハーですね。
でも、監督の手は大きくて暖かかったです。
近々、村上龍の「イン・ザ・ミソスープ」を映画化するという話が
あるそうで、楽しみですね。
上の写真は、店内の様子と、クラブがあるフリードリッヒシュトラーゼ駅。
ここは昔、旧西から旧東に入るための検問所があったところだそうです。
それから、下の写真は快く写真撮影に応じてくれた、
気さくなヴィム・ヴェンダース夫人の
ドナータさんです。彼女は写真家で、夫妻の写真展が
表参道ヒルズで開催されたこともあります。
暗い店内で撮ったので、何回か失敗したにもかかわらず、
何回もカメラに向かってくれた、とてもいい人です。

下の写真は、このパーティーに来ていた
デザイナーのアニータ・ケックアイスさん。
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この方も、青木さんの懇意にしている人で、
ケックス(Kex)というブランドで独創的な首周りのアクセサリーを
作っています。
映画祭が終わったら、私も自分のお土産にぜひ、彼女のお店に
連れて行ってもらおうと思っています。
日本では、表参道にある「モディリアニ・ヌカ
で彼女の作品を購入できるそうなので、ぜひのぞいて見てくださいね。
ロンドンの有名な美術館、テイト・モダン(Tate Modern)でも、
ここでしか購入できない特別なコレクションを販売中とのことです。