2009-02-14

第59回ベルリナーレ 2月13日

いよいよ映画祭も終盤です。
コンペ部門の上映は、今日と明日とで
残り4本(コンペ対象1本、コンペ外3本)となりました。
金熊賞の対象となる作品は、今日の3本目で最後となるので、
明日には賞の発表が行われます。
どれが受賞するでしょうか。
今日のレポートの最後に、私の予想を立ててみたいと思います。

13人の監督が今のドイツを描写した
「Deutschland 09,13Kurze Filme Zer Lage Der Nation」
(コンペ外)

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この映画は、「The International」のトム・ティクヴァや
「グッバイ、レーニン」のヴォルフガング・ベッカーなど、
ドイツを代表する映画監督13人が、ドイツの今を
それぞれの視点で描いたものです。全編140分。
青木さん情報によると、16歳の新人監督も含まれているそうです。
それぞれの監督のドイツへの思いやイメージが、
独創的に表現されています。

会話中心に構成されたものは、よくわからず寝てしまった箇所もありますが、
映像や視点の面白さで、4本ほどが印象に残りました。
例えば、ドイツ人のまじめで、お固い感じの気質をアイロニカルに描いた
1本目の作品。ある薬を飲むと、突然自分の周りが陽気になるというもので
音楽の使い方や、ぶっ飛び加減が暗くなくて楽しめました。
また、ある地方新聞のオーナーが、
一面には写真を載せないというポリシーを持っていて、
それがある日部下によって破られたことで、
とんでもない行動に出る話…。
病院を描いているのかと思いきや、建物は廃墟同然で、
そこで治療する医師も看護士も、もちろん患者も
すべて病んでいる…という作品。
世界を飛び回るビジネスマンを描いたトム・ティクヴァの作品も、
オチるところにオチていて、ニンマリ笑える作品でした。

この映画、日本で公開されるでしょうか?
日本でも誰かが音頭をとって、作ったら面白いのに…。
まあ、13人は多すぎるので、8人くらいでどうでしょうか。

コンペ外なのでパスした
「ピンクパンサー2」

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コンペティション部門では、今後の公開の宣伝的な意味を込めて、
ハリウッドなどの大作映画をコンペ外として上映しています。
今回も、そういう映画が8本あって、
今日まではもれなく見てきたのですが、
「ピンクパンサー」はリメイクだし、しかも、2作目なので、
何もベルリンで見なくてもいいや、とパスしてしまいました。

多分、日本でも公開されると思うので、
あらすじなどは、日本での情報を見てくださいね。
監督は、「ジュエルに気をつけろ!」のハロルド・ズワルト(写真下右)。
クルーゾ警部役は、スティーブ・マーティン。
そのほか、ジャン・レノ、アンディ・ガルシアが出演します。
ジャン・レノ人気なのか、ハイヤットホテルの裏口では、
出待ちのファンが大勢いました。

コンペ部門を追いかけていると、時間がなくて、
なかなかほかの部門の映画が見れません。
なので、ピンクパンサーの代わりに、この時間は、
ドイツ人の女性監督が撮ったフォーラム部門のドキュメンタリーを
見てきました。明日と15日も、他部門の映画やショートフィルムを
見る予定です。それらの紹介は、後日まとめてしますね。

コンペ対象の最後の作品は
巨匠アンジェイ・ワイダ監督の「Tatarak(Sweet Rush)」

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「地下水道」や「灰とダイヤモンド」などで有名な
ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダ(写真下右)。
御年82歳でなお現役、創作意欲が衰えていないのがスゴい。

この映画のベースになっているのは、
ポーランドでよく知られた作家Jaroslaw Lwaskiewiczの物語。
どこまで忠実に描いているのかわからないのですが、
映画では、1人の女性のモノローグシーンと、
息子を亡くした過去があり、今の暮らしに孤独感を募らせ、
息子のような若い男性の出現に心浮き立たせるマルタのストーリーが
交互に出てきます。
青木さんに聞いたところ、モノローグシーンは、
マルタを演じる女優さんが、自分自身の夫について語っているところで、
その女優さんがマルタという役を演じている設定で、
現実とフィクションが入れ子構造のように構成されているとのことです。

これらは映画が終わった後に聞いたので、
見ている間はチンプンカンプンだったのですが、
巨匠アンジェイ・ワイダのスゴさは感じ取れたと思います。
特にモノローグシーンの長回し。
カメラは一つの部屋を一方向から映し出しているのですが、
位置は変わらず、女性が動く姿を追うこともしません。
女性が画面から見切れたまま、というシーンが何分も続いたりもしました。

どの作品が賞を取るか、私の予想!

今回のコンペティション部門は、女性の視点で描かれたものが
ものすごく多かったなぁという印象を受けました。
特に、30歳以上で、子育て中あるいは子育てを終えた女性を
主人公にしていて、その女性のすごく狭い世界の話なのだけど、
誰もが経験するような感情や経験を扱っていて共感できる部分も
多かったなぁと感じました。
でも、テーマとしては暗かったり、救いがなかったり、
絵空事だったりも多くて、
もっと若い人が主人公のエネルギッシュな作品も見たかったですね。

そんな中で、映画のテーマ、描き方、演技力など
すべてのバランスを考えると、「London River」が一押しです。
それについで、何かの賞は取るのでは?と思っているのが、
「Little Soldier」「Gigante」「The Messenger」「Katalin Varga」。

また、主演男優賞は「In The Electric Mist」のトミー・リー・ジョーンズ。
または、ドイツ映画「Alle Anderen(Everyone Else)」の
Birgit Minichmayrもありかも…。
主演女優賞は、「Little Soldier」のTrine Dyrholmか、
「Katalin Varga」のHilda Peter。
助演男優賞はあるかないかわかりませんが、
「The Messenger」のウディ・ハレルソンか、
個人的には「Forever Enthralled(梅蘭芳)」の
安藤政信くんにあげたいですね。

さあ、果たして当たるでしょうか?
明日の発表をお楽しみに!