前に紹介した「見えない人と一緒に映画を観る方法 その2」を体験して以来、すっかり映画ファンになってしまった美月めぐみさんから、うれしい投稿をいただきました。
以下にご紹介いたします。
新米映画ファンの小さな告白
美月めぐみ
私の趣味は読書と観劇だった。すてきなストーリーとの出会いは、いつでも私を元気づけてくれたり癒してくれたりする。
ただ、映画に関しては、ライブ感に乏しく、人の動きなどが把握しにくかったし、どちらかと言うと洋画の方に興味はあるのに、映画館ではたいてい字幕のみの上映なので、視力0の私には縁遠い趣味だと思っていた。まして、私の場合は先天性の視覚障害者なので、外国人の俳優たちの演技は全く観賞できたためしがなく、「トム・クルーズがどうの」とか「デカプリオがどうの」と言う話にはお手上げ状態だった。
だから、最初稲葉さんに出会ったとき、彼女の熱い想いに感動はしたものの、(どうせ、洋画を見るお手伝いをしてもらっても、私たちが感じとれるのは吹き替えの声優さんたちの演技にすぎないけど、まあ、ストーリーを追っていければ、友達との話の種ぐらいにはなるかな?)程度に思っていた。今から思えば、ほんとうに平謝りするしかないのだけれど。
ところが、昨年の夏、彼女の情熱は、私を見事に代えてしまった!
稲葉さんは、私たち視覚障害者を、何回かに分けて、話題の洋画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を観につれていってくれたのである。しかも、映画館で、リアルタイムにである!
その方法はすごかった。MDに、彼女自身の声で字幕を朗読し、画面を説明する音声ガイドも録音して持ってきて、隣に座って、イヤフォンを片方ずつ耳に入れて、その場で操作しながら観賞させてくれたのだ。もちろん、もう片方の耳は空いているので、スクリーンに映し出されている映像と一緒に出ている、映画館中に溢れている実際の音も聞けるわけだ。
素晴らしかった!自宅のテレビで2カ国語同時に効いているときとは、とんでもなく違っていた。実際の主演女優ビョークの、ときにパワフルに歌い、ときにせつなくかすれ、ときに激しく訴えてくる演技が、そして微かな息づかいまでが、ひしひしと伝わってきたのだ。
憤懣やる方ないストーリーにも心を動かされていたし、ビョークの素晴らしい演技にも心打たれていたけれども、エンディングの歌が流れてきたとき私の瞼を潤ませていたのは、初めて「映画を観にきて良かった」と思えたことと、そしてそう思わせてくれた稲葉さんの想いをやっと本心で受けとめることができたことへの、ものすごい感動だった!
そして私は、今新しい趣味を持つことができた。すなわち、私の現在の趣味は、「読書」「観劇」そして「映画観賞」なのである。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を観た日から一月ほど経った頃、邦画ではあったけれど、私は生まれて初めて「一人でフラリと」映画館に入ると言う経験もしてしまった。作品は「ウォーターボーイズ」で、画面の説明がなくて70パーセントぐらいしか理解できなかったけれど、なんだかとてもうれしかった。
まだまだ初心者ファンなのだが、これからも多くの素晴らしい作品に出会えるに違いないと思うと、とてもワクワクしてしまう、そんな今日この頃なのである。
彼女が今一番観たい映画は「スパイ・キッズ」だとか。
みんなが私より映画情報に詳しくなっていくので、びっくりです。
そして、彼女はまたとんでもないチャレンジをしてしまいました!
「おまえの野望は、果てしないなぁ…」
それはね…
こうご期待!
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