スタジオ・ポット
ポットのサイト内を検索 [検索方法]

芝居編 10090807060504030201
映画編 10090807060504030201

映画編01●はじめに

●書き手
稲葉千穂子さん
City Lights

「目の見えない人にも映画の感動を伝えたい!」
そう思ってCity Lights というボランティア団体を立ち上げたのが2001年4月。
何人かの知り合いに手伝ってもらいながら、ほとんど1人ではじめたこの団体も、
今では100名以上の人々から支援される団体へと成長しました。

「目の見えない人に映画なんてわかるわけがない。」
ほとんどの人がそう思うでしょう。
しかし、当事者たちはそんな風に思ってはいません。
会って話を聞くと、映画に興味を持っている人は意外にもたくさんいました。

視覚障碍者が映画を鑑賞する場合。
洋画は字幕が読めないので、ほとんど劇場で鑑賞することができない。
では、字幕を朗読しよう! 
しかし、それだけでは40%ぐらいしか理解できない。
場所や人物の動きを説明する音声ガイド(副音声)も必要だ。
では、音声ガイドも作ろう!
それにしても100%は理解できない。

それははじめからわかっていることです。

しかし「60%でも70%でも、0よりはいい。大体でもわかればいい。だから、たくさんの映画を選んで観る事ができる環境をつくって欲しい。」そう切望している人が何人もいました。

City Lights の活動趣旨は、「目の不自由な人々にも劇場で映画を鑑賞し、楽しむことのできる環境づくりを考え、提案していくこと。

活動内容はざっとこんな感じです。

1つは、視覚障碍者が映画を鑑賞する機会をつくるため、音声ガイド付きの字幕朗読上映会を行ったり、それを上映サイドに提案していく運動。

もう1つは、映画情報収集のサポート。
実際、洋画は映画館で鑑賞することはできませんが、邦画を観にいく人はいます。
ビデオやDVDで日本語吹き替え版を観る人もいて、吹き替えのテレビ映画を楽しみにしている人もいます。
しかし、興味はあるのに情報収集が困難で、趣味としてなかなか広がっていかないのだそうです。

City Lights はこの情報サポートをメーリングリストで展開しています。

そして、もう1つは「音声ガイド(副音声)」の研究。
日本語吹き替えなどでセリフはわかっても、場面展開や背景、人物の動きが把握できないと、途中から何がなんだかわからなくなってしまいます。
だから「音声ガイド」は、視覚障碍者が映画を理解する上で要となるのです。
私たちは、視覚障碍者の意見を参考にしながら、一緒に音声ガイドの研究を行い、映画を伝える術も学んでいます。

「しかし、なぜこの活動をはじめようと思ったんですか?」
ほとんどの人が私にこう質問します。

答えは単純。
「映画を観たいと思っている視覚障害者がたくさんいることを知ったから。」
しかし、突きつめればもっと単純。
「わたし自身、映画が好きだから。」

スクリーンを前に映画の世界にどっぷりつかる2時間。
観客と共に心動かされ、生きている自分を実感する喜びは、
わたしにとっては、かけがいのないものです。

映画には人の憧れや、願い、そして人生が集約されています。
映像だけでなく、それはストーリーにもセリフにも音楽にも感じ取れること。
それを1人きりでなく、観客と共に観るということも、素晴らしい共有体験だと思います。

だから、目が見えないということだけで、映画や映画館から排除されてしまうなんて、そんな不憫なことはない!そう思ってしまいました。
この想いは止められない。止めようがない。
映画を愛する人、映画に何か特別な想いをもっている人ならわかってもらえると思います。私はこの活動をいわゆる「ボランティア」とか「社会福祉活動」とか、あまり思ったことがありません。なぜか心が尽き動かされて、やらずにいられなくなっているこの活動を、なんと表現したらいいのでしょう。
強いて言うなら視覚障碍者への映画配給、宣伝活動でしょうか?

だから、たくさんの映画ファンにたくさんの視覚障碍者の声を伝えたいと思いました。
映画を愛する人なら、同じ様な気持ちをわかってもらえると思ったから。

そして、City Lights の活動を多くの人々に伝えることで、どの映画館にも音声ガイドと日本語のセリフを聴く設備が整い、目の不自由な人々が、いつでも観たい時に観たい作品を観ることができるという夢が、必ず実現すると信じて、この原稿を書いています。

たくさんの人々の映画への愛が、それを可能にしてくれることを信じて……。

   
page top

ポット出版ず・ぼん全文記事石田豊が使い倒すARENAメール術・補遺ちんまん単語DB
デジタル時代の出版メディア・考書店員・高倉美恵パレード写真「伝説のオカマ」は差別か
黒子の部屋真実・篠田博之の部屋篠田博之のコーナー風俗嬢意識調査ゲル自慢S-MAP
ポットの気文ポットの日誌バリアフリーな芝居と映画MOJもじくみ仮名

▲home▲


このサイトはどなたでも自由にリンクしていただいてかまいません。
このサイトに掲載されている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
ポットメンバーのもの、上記以外のものの著作権は株式会社スタジオ・ポットにあります。
お問い合せ→top@pot.co.jp/本の注文→books@pot.co.jp