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[第9章●午前3時の小ワザ] 6… 配電系統図 |
[2003.11.20登録][2003.11.26更新] |
石田豊 |
とある小さな事務所での光景。 ひとりのスタッフがコピー機の前に立って、みんなの席の方に振り返って叫ぶ。「コピー取りま〜す」。すると、みんなはそそくさとファイルの保存作業などを行う。その隙にコピー機の前の彼はリモコンでエアコンをオフにする。その後、やおらコピーのスタートボタンを押すのだ。 もちろんこれは「起こるかもしれないブレーカー落ち」への防衛行動である。 火災事故を未然に防ぐなどの理由で、あらかじめ定められた以上の電流を使うと、配電盤に設置してある「ブレーカー」が強制的に電流の流れを遮断する。 いきなり電気が来なくなると、とうぜん、コンピュータなどの電気製品は止まってしまう。保存していないデータは雲散霧消してしまう。もし運が悪ければ、機器の故障も引き起こす可能性もある。 それはこまるので、その事務所ではコピー機を作動したり、電子レンジを使ったりする前には、かならずあらかじめ告知すべしとのハウスルールを採用しているのである。 ほほ笑ましいとは思うが、これじゃ生産性も悪いし、だいいち、めんどうでしょ。なんとかしたいとは思わないのか。 こうしたブレーカー落ちへの対策としてよく言われるのは「契約容量の変更」である。 事務所であれ一般家庭であれ、電気を使っているトコ(電気の需要家)は電力会社との間で電気容量の契約を取り交わしている。同時に最大ココまで使ってもいいですよ、という契約である。これは単位としてはアンペア(A)を使い、30Aだとか40Aだとか、はたまた100Aなどという感じで表現される。電気料金の明細書にも明記してあるのはご存知の通り。 たとえば契約が40Aであるばあい、ほら、例の公式ですよ。 W=V×A Vは(一般的には)100であるから、このかけ算を行うと同時に使える電気は4000Wとなる。コピー機や電子レンジ、エアコンなどは使用電力が大きく、1.5kW(1500W)なんてのも珍しくないため、この3者を同時使用すると、契約のアンペア数を超えてしまうから、ブレーカーが落ちる。 だったら契約を大きくしようというのが「契約容量の変更」である。 契約容量を変更するのは、古いマンションなどで難しいことがまれにはあるが、たいていは電力会社に申し込めば簡単に実現できる。 しかし、これは実は、問題の解決につながらないことが多い。つまりやってもムダである場合がかなり多いのだ。いや、もうちょっと正確に言うなら、やる・やらないは地域によって事情が変わってくる、というべきであろうか。契約容量を変更する前に、少しだけ問題を整理しておくほうがいい。 東京、北海道、東北、北陸、中部、九州の各電力会社管内においては、電気料金の中の基本料金は契約アンペア数によって変化する。つまり、これらの地域では、契約容量を大きくすると、電気の使用量にかかわらず、電気代が高くなる。 これらの地域でブレーカー落ち対策として契約容量を変えると、電気代が高くつく。これでブレーカー落ちから開放されるなら、それはそのコストとして納得もできようが、後述のように解決しないことも多いのだから、解決しなかったらまったくのむだ遣いってことになる。 どれくらいの金額か。 東京電力の場合、現在の契約が20A以上であれば、1段階(つまり10A)アップするごとに月々260円の基本料金増加になる。しれているといえばしれているが、なにもムダな金をあえてつかうこともない。 ゆえにこれらの地域にお住まいの場合は、契約容量の変更に先立って、よーく考えておく必要があるのだ。 いっぽう、関西、中国、四国、沖縄の各電力会社管内においては、契約アンペア数による料金の違いはない。この地域でも契約アンペア数を大きくすることがブレーカー落ち対策に直結することはないのだが、支払いには直接影響しないので、比較的、何も考えないで電力会社にアップを要求しても、少なくともソンはしない。 さて、契約アンペア数の増加がブレーカー落ち対策に直結しないということについて、だ。 ブレーカーが落ちたら、配電盤をあけてブレーカースイッチの位置を元へ戻しているでしょ。その配電盤の中をちょっと観察してみていただきたい。 はしっこに大きなブレーカー(元ブレーカー)があり、その横に小さなブレーカーがいくつか並んでいる。ブレーカー落ちの事故の時、どのブレーカーが落ちているか。 いつも大きなブレーカーが落ちている場合。これは契約をアップするか、同時に使用する電気製品を制限するかしか手がない。つまり、このケースの場合は基本料金の増加を受け入れても、契約をアップするというのは正しい対策であると言える。 しかし、多くの事故は違う。たいていはどれかの小ブレーカーが落ちているのである。この場合は契約アンペアをあげても、事故はいままで通りに起こり続ける。 電気は建物内でいくつかの系統にわけて配電される。その系統ごとのブレーカーが小ブレーカーで、これは全体の契約アンペア数にかかわりなく、10Aないし20Aである。つまり、その系統内で10(あるいは20)Aの電気を一度に流してしまったという事故であるのだ。 契約が40Aあっても、ある系統(20A)に1kWを超える機器がふたつつながっていて、それを同時に動作させれば、そこで小ブレーカーは落ちてしまう。全体としてはまだ20Aの余裕があっても、そうなってしまう。 だから、ブレーカー落ちの対策は「契約アップ」なんてことに短絡しないで、まずは各系統への電気製品の適正なわりふり、ということを考えた方がいいのだ。電子レンジとコピー機を違う系統のコンセントにつないでおけば、両方を同時に作動させてもブレーカーは落ちなくなる。 そこで問題は、建物内の配電の系統を知ることになる。そんなの、知らないでしょ。だから実験を行う。 まず、建物内のコンセントおよび電灯の位置を記した図面を作る。感じで言えば、住宅販売のチラシに掲載されているような間取り図に、コンセントおよび電燈の位置を記したものである。 つぎに、ありとあらゆる電灯を点灯する。そして、できるだけたくさん(できればすべて)のコンセントに電気スタンドやラジオといった、いきなり電気を落としても壊れない種類の電気製品をつなぎ、スイッチを入れる。 こういう状態にしておいて、小ブレーカースイッチのひとつを切る。すると当然、いくつかの電気製品が止まり、電灯のいくつかが消灯する。ここで消えたコンセントや電灯がこの系列のメンバーであるということがわかる。そこでその旨を図面に記入する。 この作業を小ブレーカースイッチの数だけ繰り返す。もしくはすべてのコンセント/電燈の「所属」が判明するまで繰り返す。 図面を見返して、すべてのコンセント/電灯がどれかの系統に分類されていれば、調査は完了だ。 こうして作成したのが、建物内の配電系統図になる。この配電系統図を見れば、なぜブレーカー落ち事故が発生したのか、そして、どうすれば今後の事故が防げるかが、明瞭に理解できる。 で、この調査を実施されると、おそらく面白い(というか面妖な)ことに気がつかれるに違いない。多くの場合、なんでなの、という配電系統になっているからだ。たとえば、コンセント全部が同じ系統なのに、便所と洗面所の電灯だけが1系統を占有している、など。 つまり兵力の適正な配置がなされていないわけだ。仮想敵の正面にはろくろく兵力を配置せず、便所を1方面軍が全力で防衛しているってことだ。これじゃあマケますわなあ。 配電系統図を見ても、どうしても電気製品の適切な配置ができない場合は、電気工事店に依頼して、余力のある系統にコンセントを新設する工事をおこなうとよい。経験的には1、2万円でできる。たとえば便所の系統にコンセントを新設して、そこにコピー機などの電力喰いをつなぐようにする。あるいはサーバなど、事故が起こっては困る機器をつなぐようにする。 たいていの場合は、そこまで行わないでも、「レーザープリンタはこっちのコンセントにつなごうぜ」などという具合の対策だけで、いままであれだけ頻発していたブレーカー落ち事故から開放されるはずだ。 配電系統図の作成は、ひとりじゃできない。ブレーカーを落とす係と結果を観察する係の、少なくとも2人がかりの作業になる。時間だってあるていどかかってしまう。その間は事実上、シゴトはできない。しかし、やるとやらないでは大違いなのである。 それは小事務所でも家庭でも同じだ。 |
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沢辺さんより [2003.11.26] |
工事屋さんがやっていくべきだ [技術] 全然やってないけど、コンセントに「A」「B」などと、小アンペア別にマジックインクで書こうかと思ってます。いつも。 でもできない。 [意見] これまで、事務所を2回引っ越ししました。そのたびにコンセントや照明などの増設工事をしてます。そして引越前に、この配電図づくりをしようと思っていたのですが、2度とも出来ませんでした。でも考えてみれば、コンセントへの記入と、配電図づくりは電気工事屋さんにやってもらえば良かったと、後悔してます。 で、工事屋さん、なにも言われなくてもやっていくべきだと、最近は思ってます。 ____ 図にするのではなく、機器に直接書き込むわけですね。うーむ。沢辺さんらしい。(石田) |
*匿名*さんより [2005-04-25] |
*無題* |
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