▲ゴト技top| 第9章 1| 2| 3| 4| 5| 6| 7| 8| 9| 10| 11| 12| 13| 14| 15| 16| 17| 18| 19| 20| |
[第9章●午前3時の小ワザ] 14… なぜか年金の話題2 |
[2004.06.03登録] |
石田豊 |
年金はややこしい。 なんだかわからないけど、なんでも今のセーフ案は具合悪そうだ、てんて、なんだか不安になったり、イカってみたりしているわけです。 どうやったら、わかりやすく、自分の問題としてイメージ化するひとつのアイデアとして、沢辺さんが考えたのが、今月支払った分がナンボになるんだ、というアイデアです(「ポットの日誌」2004年5月28日付け)。 全文を引用すると 国民年金の平成15年度(2003年度)の保険料は月額1万3300円です。 現状での国民年金の支給額(年額)は79万7千円×納めた月数/480という計算式です。人によって支払った月数が違いますから、一概にいくらということはできない。そのため、非常にわかりにくくなる。 そこで、沢辺さんは考えたわけですね。今月分の保険料1万3,300円支払うと、将来年額1,660円もらえる、と。もし先月も保険料を支払っていると、受取額は今月分1,660円+先月分1,660円という具合に加算される、と。つまり受け取り総額は今月分+先月分+先々月分+……という具合に積算されているのだ、という考え方ですね。 たしかに、こう考えるとすっきりします。なるほど、今月払った1万3,300円は73歳まで生き延びればトントン、それ以上ならトクということになり、保険料が1万6,900円になると、75歳以上まで生きなければ、トントンにもならない、と。 しかし、この考え方には、重大な問題があります。この考え方が成立するのは保険料が過去からずっと1万3,300円で固定されている場合だけです。 過去の保険料はめちゃくちゃ安かったですね。沢辺モデルでは、安かった時のことが入っていない。もちろん、今の100円と40年前の100円はまったく意味が違うので、そういう「お金の意味」というのをふくみこんだモデルとして、彼は提示したわけでしょうけど。 たとえば、今から40年前(1964年。東京オリンピックの年)の保険料は月額100円(35歳未満の場合)でした。ですから今月60歳になった人(1943年生まれ)にとってはあと5年すると、今月支払った保険料13,300円に対して年額1,660円の保険金を受け取れるのと同時に、昭和39年7月に支払った保険料100円に対し、年額1,660円を受け取れるわけです。 この人の場合、今月支払った年金の「モトを取る」までには8年かかりますが、昭和39年7月に支払った年金のモトは1月で十分取れてしまいます。 沢辺さんの意図は、モデルを単純化することでわかりやすくすることでしょうが、これでは逆に不透明になってしまうのではないでしょうか。 厚生年金は「いつモトがとれるか」というモデルを作るのが確かに難しいのですが、国民年金の場合は比較的単純で、シロートでも簡単にモデル計算ができます。 別府市役所のサイトにあった「保険料額の推移」というページのデータを使って、Excelで表をこしらえてみました。こんなのはごく簡単に作ることができ、自分で確かめてみることができる。 作業用にチャッチャと作ったモノゆえ、人様にお見せするような代物ではないのですがこれがそのExcelファイルです。 この表を使って計算したところによると、この60歳の人が全期間国民年金を支払っていたとすると、総支払額÷支払い月数の「平均保険料月額」は5756円です。いっぽう彼(彼女でも同じだけど)が5年後に受け取れる年金は沢辺式の計算をすると、月当たり138.33円ですから(1660÷12)、この平均月保険料のモトをとるには41ヶ月かかります。つまり3年5ヶ月。 これは全期間完納した場合だけではなく、25年分(300ヶ月)を全期間通して平均に支払っていた場合、つまり毎年約5ヶ月、支払わないような払い方をしていたようなケース、でも同じです。 年金は保険料を25年分以上支払っていれば支給されるわけです。保険料は右肩上がりに上がってきているわけですから、若いウチの25年間保険料を支払い、その後、支払わなかった場合のほうが、若いときにはらわず、35歳から払い始めたケースより、お得であることは、論を待ちません。 さきほどの60歳の人の場合、前倒しモデル(20歳から45歳まで保険料を支払っていた)と後倒しモデル(35歳から60歳まで支払っていた)を計算してみると、前倒しモデルでの平均支払い保険料月額は2,483円、後倒しモデルでは8,865円になります。前倒しの場合17ヶ月でモトが取れ、後倒しでは64ヶ月(5年4ヶ月)でOKです。 この表で、私自身の保険料計算を行うことにします。ただし、私は支払い期間のほとんどが厚生年金でしたので、ま、その基礎年金部分のみということになりますが。 私は1955年5月生まれです。1955年5月生まれの場合、60歳までの全期間均等に支払うと、月平均保険料は10,039円、前倒しモデルで7,457円、後倒しモデルで13,135円になります。それぞれモトとりまで72ヶ月(6年)、53ヶ月(4年5ヶ月)、94ヶ月(7年10ヶ月)となります(この計算は、現在審議中のモデル、つまり2017年まで毎年280円ずつ値上がりするというものでおこなっている)。つまり、いちばん効率の悪い支払い形態を取った場合でも73歳まで生きればモトが取れ、81まで生きれば(生きるんじゃないかな)、支払額の倍の受け取りになります。 もっと若い世代ではどうか。現在24歳の青年では、全期間モデルで月当たり保険料16,401円(モト取り118ヶ月)、前倒しモデル16,101円(同116ヶ月)、後倒しモデル16,956円(122ヶ月)ということになります。ずいぶんワリ食っている感じですが、それでも現在の男性の平均寿命程度まで生き延びれば、ひとまず、お得ということになっている。 もっともこれは、今後の物価上昇率を組み入れていない計算ですから、物価にともなって、保険料、保険金ともに上昇する(でしょ、きっと。資本主義社会というのは、必然的にインフレ傾向を維持するってことになっているので)と、ますますモト取りまでの時間は短縮されるはずです。 こういうふうに見ていくと、国民年金というのは金融商品としても、生活防衛手段としても、けっして悪い提案ではない、と言えるのではないでしょうか。 ま、これも政府が言っていることがホンマであれば、という前提の上のことではあるのですが。 厚生年金のほうは計算が難しいのでよくわかりませんが、ま、これに準ずるのではなかろうかと思います。 ということは、残る問題は、世代間格差と制度間格差。それに、社会保険庁の経費を年金から支出しているのはどうか、とか、無駄遣いをしているんじゃないのか、とかというようなことになる。 でも、これは法案の範疇外のことです。 じゃあ、範疇内で考えればどうなんだ。 そこがよくわからんのですよね。 今回も、与えられたテーマから逸脱してしまいましたが、これもまたひとつのシゴトの技術の実践例として書いてみました。 |
この記事は
|
お読みになっての印象を5段階評価のボタンを選び「投票」ボタンをクリックしてください。 |
投票の集計 |
投票[ 4 ]人、平均面白度[ 4.3 ] ※「投票」は24時間以内に反映されます※ |
ご意見をお聞かせください |
|
←デジタル/シゴト/技術topへもどる | page top ↑ |
▲ゴト技top| 第9章 1| 2| 3| 4| 5| 6| 7| 8| 9| 10| 11| 12| 13| 14| 15| 16| 17| 18| 19| 20| |
|ポット出版
|ず・ぼん全文記事|石田豊が使い倒すARENAメール術・補遺|ちんまん単語DB| |
|
|