デジタル/シゴト/技術

スタジオ・ポット
ポットのサイト内を検索 [検索方法]
▲ゴト技top| 第9章 1234567891011121314151617181920
[第9章●午前3時の小ワザ]
13… なぜか年金の話題
[2004.05.25登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

年金よか粘菌のほうがずっと関心がある小生ですが、聞こえてくる話があまりにも無茶なのが多いので、書くことにする。この場所に書くような内容でもないし、自分自身、このようなテーマについて書くのはニンでないのだが、ま、カンベンしてやってください。

辞書の話については、通常通り、こんどの木曜日にアップします。

国会議員の年金未払いに関して、問題の所在は「年金を支払っている/いない」にあるわけじゃない。年金を支払っていない期間がある人なんて、考えるまでもなく、いっぱいいるのはあきらかだ。かく言うぼくにも未払い期間がある。

学校を卒業後、新卒採用でしっかりとした企業に就職して、そのまま停年までつとめるなら、未払い期間が生じることはないが、途中入社したり、転職したり、独立したりなんかすると、どっかで未払いの期間があるのはごく自然だ。

会社をやめて、求職活動をし、次の会社に採用される。その失業期間中は国民年金に加入する義務があるけど、その期間にちゃんと国民年金に加入している人なんて、どれだけいるのだろう。だいたい、そんな期間に年金のことまで頭がまわらないでしょ。

ぼくが未納閣僚、それにつづく菅直人の未納(未加入でもなんでもいいけど)のニュースを知って、驚き、かつ、イカったのは、年金を払っていないということじゃない。「当事者意識が低すぎるじゃないか」ということだ。

シゴトを遂行するための意識とか能力があまりにもなさすぎる、ということだ。

特に菅直人のケースにそれは顕著であった。

国会議員にとって、目下のところ年金はシゴト上の最大のマターである。

新製品の開発であろうと、単行本の企画であろうと、なんであれシゴト上の課題が生じた場合、まず最初に考えることは「自分なら、どうか」である。本の企画だったら、自分は読みたいか、新製品なら自分でカネを出してかうか、ということから思考は始まる。

もちろん、自分では買わないからやめよう、となるとは限っていない。個人的なことを言えば、ぼくの場合は、自分が熱烈に読みたいテーマの本は、作ってもロクに売れないという「ジンクス」がある。だから企画の段階では「自分にとっての読みたさ度」をどう下げていくかを考えなきゃならない。

しかし、そうであっても、何事においても、まず自分はどうなのか、自分ならどうなのか、自分はどうだろうか、というところにしか、考えの出発点はありえない。デカルトじゃないけど、それ以外は、どうしても不確かな部分がぬぐえないからである。

そりゃ、中には、そうした思考回路をまったく欠いた人もいる。「今の時代はこうだ」とか「こーゆーの流行っているらしーすよ」なんて感じ。

ぼくはこの手の人を信頼することはない。いや、それはなにもぼくだけに限ったことではなかろう。

未納議員がぞろぞろ出てきた時、不審に思ったのは、未払い期間があるということよりも、「あらためて調べ直してみると」なんてことを彼らが口々に言ったことだった。うっそーって感じだ。シゴト上の大きな課題として年金に焦点があたってきたとき、彼らは、まず自分自身の体験やら実態やらをチェックすらもしなかったのか。不思議だ。

通常事態であれば、そういうことも、もしかしたらあるかもしれない。しかし、江角マキ子の問題が先行して生じていた。あのとき、菅さんは、国会に呼べと声高に主張していた。

何かを批判するとき、まずオノレは大丈夫かどうかをチェックするってのは、基本中の基本行動でしょ。

ふつー、そうするでしょ。そうしないとコワくて手が出せない。菅さんはそのチェックをしなかった。これが一番の驚きだ。

たとえば取引先に「支払いは期日を守れ」と申し入れる際には、こちらからその取引先への支払い(がもしあれば)はちゃんと期日に支払っているかをあらかじめ確認しておく。そのチェックは倫理的道徳的に必要であるばかりではなく、戦略的にも必須不可欠だ。

「なに言ってんですか。おたくからの支払いはいつもふたつきも遅れてるじゃないですか」

逆ねじを喰らわされて、あえなく沈没。

ぼくがいわゆるところの「未納問題」でひっかかるのは、終始、唯一この2点であったし、いまでもそうだ。ウラもかためないで、天にツバするような攻撃を行う人に、政治をまかせておいていいのか、ましてや次期総理であっていいのか、というところ。

で、この思いは多数意見だ、と思っていた。なんも特別な視点なんかじゃないし、「みんな、ちゅーか、せけんの人はそー思てるやろ」と。テレビやら新聞やらは、だれそれがミノー、何人ミノーなんてことばかり言いつのっている。それは、マスコミの生理のようなもんだから、仕方がないが、ニュースの受け取り手は、「みんな」そう考えていると思っていた。

でも、違うようなんですね。「年金を払っている/払っていない」が問題であると考えている人がかなり多いということを最近になって知った。また、「未納期間があったかなかったかなんてことは些事であるから、問題にすること自体がおかしい」と考えている人がかなり多そうだということも最近になって知った。いかにぼく自身が世間狭く暮らしているかということなんだけど。

これは驚きでした。

江角マキコ問題の時は、「なんでキャスティングにちょいちょいとチェックしておかなかったか」という社会保険庁に対するシゴトの技術の不備に対する不信感。

菅直人未納三兄弟発言については、上に述べた(1)自分のシゴトの中心的なマターについて、自分の中の回路を通す思考も踏んでいないのか、(2)批判の前にウシロを固めておくというようなシゴトの技術のなさ。どちらもシゴトの技術に関する不信感。

神崎さんについても同じ。こっちはそのうえ「ごまかし」までが入ってきているので、なおいっそうタチが悪い。

ぼくはそのように考える。

概して、われわれの社会は政治家の倫理逸脱を厳しく批判するようだ。もちろん倫理はダイジだ。しかし、もっとダイジなのはちゃんとシゴトを遂行するための技術を持っているということなのではなかろうか。プロとしての技術の欠落をこそ、ぼくらは批判していかねばならないはずだ。

この記事は
面白かったですか?

お読みになっての印象を5段階評価のボタンを選び「投票」ボタンをクリックしてください。

つまらなかった           おもしろかった    

投票の集計

投票[ 9 ]人、平均面白度[ 4.7 ]

※「投票」は24時間以内に反映されます※

ご意見をお聞かせください

  
メールアドレスはWeb上では公開されません





  

デジタル/シゴト/技術topへもどる page top
▲ゴト技top| 第9章 1234567891011121314151617181920

ポット出版ず・ぼん全文記事石田豊が使い倒すARENAメール術・補遺ちんまん単語DB
デジタル時代の出版メディア・考書店員・高倉美恵パレード写真「伝説のオカマ」は差別か
黒子の部屋真実・篠田博之の部屋篠田博之のコーナー風俗嬢意識調査ゲル自慢S-MAP
ポットの気文ポットの日誌バリアフリーな芝居と映画MOJもじくみ仮名

▲home▲


このサイトはどなたでも自由にリンクしていただいてかまいません。
このサイトに掲載されている文章・写真・イラストの著作権は、それぞれの著作者にあります。
ポットメンバーのもの、上記以外のものの著作権は株式会社スタジオ・ポットにあります。
お問い合せはこちら