1-1●日誌--沢辺

出版デジタル機構と図書館のこと(ず・ぼん編集後記)

『ず・ぼん』17号を制作してます。もうすぐ入稿。
でもって、編集後記を書きました。
まだ下書き何だけど、よろしければお読みください。
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●すべての出版物のデジタル化を目指して、出版デジタル機構(仮称)とう会社をつくる計画をはじめた。講談社・小学館・集英社といった出版業界トップ企業から、我がポット出版のような零細までが手を組んで、出版物をデジタル化して電子書籍書店にたくさんの電子書籍を提供しようという試み。ちなみに最大手出版社の書籍の年間発行点数は千数百、ポット出版はまあ20点アタリをうろちょろしてる。点数で1~2%、売上げ金額では多分千倍程度の違いがある出版社群をフォローしようとしているのだ。
去年「電子書籍元年」などと騒がれたものの、いまだに商売としてなりたつほどの市場になっていない。しかし、電子メールがあたりまえのものになっていたり、ほとんどの文書がコンピュータで書かれているように、デジタルとネットワークなしには私たちの「活動」は成り立たなくなっている。デジタル化はますます広がって行くと思って間違えないだろうし、本の世界もデジタル媒体の比率が高まると考えるべきだ。
そうした、まったく新しい状況に臆するのではなく、むしろ積極的に取組むことが、多分正解なんだと思う。
黒船が現れたときに、鎖国を守るために戦うのではなく、よりよい開国に向かったように。
●こうして「ジュンク堂なみの品揃え」を電子書籍で用意して、電子書籍に習熟して、市場にもインパクトを与える、つまり電子書籍書店にタイトルを提供する取組みに「没頭」してる数ヶ月を過ごしている。
さて、図書館。いったい図書館にたいして電子書籍をどのように活用してもらおうか、という課題も検討しているわけだが、大学図書館はともかく、公立図書館での活用のイメージが具体性をもたない。
第一に、一部を除いて、こうしたデジタルとネットワークというあらたな状況を生かそうという図書館や図書館員が見えない。
それなりにコンピュータを使いこなす図書館員に出会うことはマレだ。たとえば、キンドルやiPadで電子書籍を読むサポートができる図書館員はどのくらいいるだろうか?
第二に、電子書籍がそれなりの市場をつくれたとしても、いったい図書館ではそれをどうあつかうのだろうか。相手はデータで、ネットワークで移動可能なのだから、貸出し窓口は必要なくなってしまうかもしれない。今、サイトからの予約ができるようになり、相互貸借サービスがあたりまえになっているなかで、そのための作業の割合が増えているように見える。そうだとしたら、電子書籍の比重が増えたらそうした作業はどんどん減るかもしれない。そのときに図書館員はなにをやっているのだろうか?
第三に、図書館が電子書籍を貸し出すようになったとしたら、「無料原則」は続けられなくなると思う。
たぶん、電子書籍のレンタルもあたりまえになる可能性が高い。DVDレンタルがこれだけ広がったなかで、同じタイトルを「無料」で貸し出せないように、電子書籍レンタルが普及したときに、図書館でおなじタイトルを「無料」で貸し出すことができるのだろうか? 民業との関係なども含めて、バウチャー制のようなものなら「無料」を続けられるかもしれない。そうした構想を生み出していかなければ、図書館の意味を持続させることができないと思おう。
国立国会図書館の長尾館長の構想は、電子書籍の「有料論」だったわけだが、無料論者がどれほどそのことに異議申し立てをしただろうか? 有効なロジックを打ち立てただろうか?
●たぶん日本は「容易に収穫できる果実」を食べ尽したんだと思う。貧しい時代、貧しい思い出が生々しく残っている時代に、ともかく図書館をつくって読書を提供するというのは「容易に収穫できる果実」だったんじゃないか。全国三千館を越える公立図書館ができた今、たんに読書を提供するってことの先の果実を見つけなければ、図書館が人々に求めることは続かないと思うのは、単なる危機煽りに過ぎないのだろうか?
たまに、リクエストベストテンの寄贈を呼びかけるチラシや掲示物を図書館で見ることがあるんだけれど、こんな人気トリを続けてちゃイカンでしょ。
●じゃ、どうする? 貸出し以外に、図書館らしいサービスを生み出さなきゃならない。 記録と編集と提供、じゃないだろうか。そして、それは多分たった一人でも始められることだと思う。たった一人のおこないがたくさん生まれれば、多分図書館は変えられるんだと思う。

デジクリ連載[16]アマゾンで電子書籍を売ってもらうとしたら

■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[16]アマゾンで電子書籍を売ってもらうとしたら/沢辺 均

アマゾンで電子書籍を売ってもらうとしたら、どんな契約をしたいんだろうか、オレ……。

ネットでは、アマゾンの契約内容が明らかにされたりしててにぎわってる。イチバン具体的なのは『「こんなの論外だ!」アマゾンの契約書に激怒する出版社員 国内130社に電子書籍化を迫る』かな?
< http://news.livedoor.com/article/detail/5977004/ >

それについて思うところを何点か書いておくことにする。

「共通の書面で契約を迫っている」って完全に狂ってるでしょう。ここまで予断をもって書くライターの気が知れない(安藤健二〈BLOGOS編集部〉っていう人らしいけどね)。

だって、郵送で、契約書と、契約して下さいって案内文くらいじゃないの? 送られたのは。郵便で送るなんてこと、取次だってするよ。たとえば、東北大地震の書店店頭にあって津波かぶった本の返品を、現物ないけど、マイナスで受け入れてってのも、郵送で来たよ(メール便だったかもしれないけどね)。それをよんでだれも「取次が書面でマイナス返品を迫っている」って書かないものね。

それとも案内状がついてなかったとかなのか?

「10月31日までに返答せよ」ってほんとうにそう書いてあったのかな? せめて「10月31日までに返答してください」くらいにはなってたんじゃないの?

いやもし本当にそう書いてあったのなら、この疑問は撤回するけど。
なんで、こういう話になっちゃうのかな?

契約なんだから、納得できなければ契約しなけりゃいいだけの話じゃない。その程度は、本当に各社の意思を自由に決められるんじゃない? アマゾンの書籍の市場占有率は(ボクの理解では)せいぜい10%前後じゃない?

その程度の占有にアタマを押さえつけられるほど、不自由なのか? 日本の出版社。もし、10%前後でもアタマを押さえ込まれるんなら、日販やトーハンなんかにはすべて言いなりになるしかないじゃん。

で、じゃ我が社(ポット出版)はどういう契約がいいのかなー、って想像してみた。以下は、ほんとうにこれでアマゾンに契約を「迫る」なら、もう一度良く考え直すし、独禁法とかもちゃんと調べねばいかんけど。

まず基本は、アマゾンへの販売金額の考え方。希望小売価格×70%(実は80%がいいけどね)か、○○円という方式のどちらかがいいのかと思う、我が社的には。いずれにしても、販売金額は固定だな。

もし、販売価格をアマゾンが下げたとしても、まあしょうがないか? って思う。そのかわり、あまりに低すぎる販売価格で売るようなら、アマゾンへの販売は中止すればいい。いや、その前に、交渉はしますよ、もちろん。

値引き販売の話でなく、正味=45%という出版社の取り分の話がいいとか悪いとかになってるけど、こりゃ低すぎるだろ、って思う。

第一に、コンテンツそのものをつくるより、ダウンロード販売するほうが全然コスト安いでしょ、って思う。

第二に、これアメリカってのの基準のような気がしてならない。ポット出版の本で日本語の横にすべて英文を対訳にして並べたことがあって、それをアメリカの書店に売ろうとしたときのこと。「定価」の50%位のことを平気で言われた。でもアメリカって「定価」ってないでしょ。希望小売価格しか。

で、そのメーカーの希望小売価格に20%とかなんとかの割引して売るらしいから、50%って言っても書店からいえば、80%で売って、30%くらいの粗利を出したいって話なんだかからしょうがないか? って思ったんだ。日本の書店と取次って30%ちょいってのがその取り分だしね。

「カスタマー対応のために、データを返却しない」って話はちょっとすぐに解決不可能だな。なにせ、今の著者との契約って基本的に期限のある契約なんだ。これを実現させるとしたら、著作権(財産権のほう)を買い取るしか思いつかない。うーん、ただちにそういう契約にするのって、無理じゃないかな?

アマゾンは実際ポット出版に契約書を送ってきてないし、ネットに書かれてることが本当かもわからないけど、万一本当だとしたら、アマゾンが焦りすぎてるのか、日本の市場なんてどうでもいいと思っているのか、これを機会に日本の書籍市場に革命を起こそうとしてるか、くらいにちょっとクビをかしげる契約ではある。

ここ数年のアマゾンって、日本の書籍市場のありように対して、原則(考え方)を保ちつつも折り合えるポイントを探そうって感じに見えてたんだけど、それってオレの勘違いなのかな?

PS 出版デジタル機構(仮称)って株式会社を20社でつくることに合意。
ときどきサイトも見て下さい。
< http://www.shuppan-d.info/ >

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -137[2011.10.31〜2011.11.03]

●2011.10.31月
出版デジタル機構(仮称)の準備室へ。
午後に、翌日からオープンの事務所を見に行く。
それからある人とちょっと議論。いろいろ問題点も見えて来た。
想像してたことに近いかな?と
出版デジタル機構(仮称)事務所

●2011.11.01火
いやー、ちょっと体調不良で、休ませてもらう。
機構の準備室ミーティングも幹事会合同会議もサボる。
んだけど、ここんとこずっとやってなかった整体をうけたら、なんか良くなったような。
いや、これはやっぱり整体サボりだな。

●2011.11.02水
午前中から機構準備室へ。オレは事務所に初出勤。
午後は出版社の人が2人来て、機構の話を説明。
夕方ポットに戻って、ず・ぼん編集会議。
ついでに次号に載せようって、編集委員との鼎談も。
メシはオルガ。

●2011.11.03木祝
整体を受けてから事務所にでて、いろいろ雑用を片付ける。
祝日だというのに、スタッフが何人もでている。すまん、。
翌日の出版デジタル機構(仮称)の説明会の名簿整理とか、週報づくりとか。
・11/04 141人 101社 ほか取材が6名
・11/11 311人 244社 そろそろ締めきりかな?

ポット出版社長・沢辺均の日記 -136[2011.10.24〜2011.10.30]

●2011.10.24月
午前中は出版デジタル機構(仮称)準備室勤め。
夜はいろいろお世話になっている人とワインとフランス料理(っても4人でなんと1万ちょっとだけどね)。
戻ってきてデジクリの原稿を書く。
デジクリ連載[15]日経のアマゾン報道はなんだったんだろうか?

●2011.10.25火
午前中、出版デジタル機構(仮称)の準備室勤め。
電子書籍を考える出版社の会」のシンポジウムへ。
ビジネスセッションとテクニカルセッション。
ビジネスセッションにでていた文化通信編集長・星野さんから、あまりしゃべらないようにといわれたのだけど、
始まったらいろいろ出しゃばってしまう。途中で反省して、おしゃべりをスローダウン。
終わってからパーティーがあって、eBPの人たちに出版デジタル機構(仮称)のことをしゃべったり。
Meetup 2011のまとめ
どうなる? どうする!? 日本の電子出版─「eBP Meetup 2011~電子出版2年目の課題と3年目への展望」レポート
EBPシンポEBPシンポ

●2011.10.26水
午前中、出版デジタル機構(仮称)の準備室へ
終わってから昼飯をロイホで食べながら、アタマとかノートとか整理。
そんでもって、流対協の会長 緑風出版・高須さんのところに、出版デジタル機構(仮称)の説明にいく。
柘植書房新社の上村さんもいる。数十万の電子書籍をつくって市場にインパクトを生んで活性化させよう、
って話。
事務所にもどって、太等さん(「日本語の文字と組版を考える会」時代によく行合ってたな)と打ち合わせ。
なんだか、映画の字幕のことをいろいろ調べてて、奇想天外な調査物語を聞いて笑う。
それらのものを本にできないかって話。
それから版元ドットコムの組合員会議。
飲み会に行って、ちょっと語りすぎた、昔話。

●2011.10.27木
出版デジタル機構(仮称)準備室つとめをサボって、個人的な借金の契約で銀行へ。
この年でよくやるは、。契約成功。
午後は月例版の出版会議。
月例版というのは、営業委託してる木下さんを交える会議。また前月までの月別売上げとかのデータの報告がある会議。
今月のデータ報告はうれしい数字。それに「要約 ケインズ一般理論」の事前注文が好調で600くらい。
それに加えて、紀伊國屋書店では、全国の店でおすすめとして取組みたいという連絡ももらったり。
本店では160冊、梅田100などなど。
本当に店頭で売れてくれるといいんだけど、。
15時から出版クラブで、JPOの電子出版コードの委員会。
このことはもう少し自分のアタマで考えなきゃ。

●2011.10.28金
午前中は出版デジタル機構(仮称)の準備室。
終わって渋谷へいって今度引っ越すマンションの契約へ。
もどってから、はりゅうウッドスタジオの(芳賀沼)整ちゃんと、木造仮設住宅の本の打ち合わせ。

●2011.10.29土
昼間事務所にでて、溜まった回覧を整理したり、雑用いろいろ。
夜は「マロンパーティ」というマロンちゃん(ヌードモデル)の写真展のオープニング。
佐藤、那須、みずきと一緒に。会場には大田、高橋、大原がきてた。
加藤ケンソウさん司会のもと、マロンちゃんと東村アキコさんのトーク。
第二部は山田広野監督の活弁映画「成人映画」と「成人映画パート2」の上映。それぞれ15分くらい。
パート2にはオレと鉄も出演してる。
終わって今時の寿司屋でメシ食って、家で新作映画をappleTVでダウンロードして見る。
マロンパーティ

●オマケ
すず鉄

●2011.10.30日
朝起きたら、目眩。一日中眠った。
そんでもって20時ころ目が覚めた。いろいろやりたかった出版デジタル機構(仮称)の仕事とか、
すこし深夜にやり始める。何時にねむれっかな?

デジクリ連載[15]日経のアマゾン報道はなんだったんだろうか?

ということで毎度のデジクリ連載の転載です。
デジクリサイトはコチラ

■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[15]日経のアマゾン報道はなんだったんだろうか?/沢辺 均

10月20日(木)の日経新聞の1面に「アマゾン、日本で電子書籍 年内にも 市場拡大に弾み」という記事がでた。

年内にも日本語の電子書籍購入サイトを開設。小学館、集英社など出版大手と価格設定などで詰めの交渉に入っており、講談社、新潮社などとも交渉。PHPとは合意、PHPは約1000点の書籍を電子化して提供。だいたいこんなところが記事のポイントだった。

これはあくまでボク個人の想像だけど、アマゾンが出版社に「まわりの出版社は着々と契約しているのだから、早くしないと乗り遅れますよ」というメッセージを発したものに見えてしょうがない。

そう思うのは(自分でも参加してるのだからちょっと自意識過剰かもしれないけど)新会社=出版デジタル機構(仮称)が動き出したからだ。

出版デジタル機構(仮称)は、大手はもとより、小零細出版社の電子書籍制作をサポートして、短期間で数10万のタイトルを読者に提供しよう、というのが目的。これによって、電子書籍市場にインパクトを与えて、拡大させようって考えているのだ。

で、その電子化したタイトルは、それぞれの出版社の意思にもとづいて、電子書籍書店に提供する。出版社の多くは、アマゾンをふくめた電子書籍書店すべてに提供することになると思う。

これまでの紙の本の販売に際して出版社は、特定の書店本屋に商品提供しないなどという習慣はなかった。売ってくれる書店ならば、どこにでも提供するのだ(もちろん返品が予想される過剰な注文への警戒はあった)。この状態をみれば、○○書店にだけに提供しようとか、○○書店には提供しないとかもありえない。

一方、アマゾンの狙いは、国内で(ダントツ)トップの品揃えでスタートしたいと考えるているんじゃないだろうか、というのがボクの想像。ならば、たんにさまざまな電子書籍書店と同様の品揃えではダメ。

電子書籍書店のどこにでも提供する出版デジタル機構(仮称)が、多くの出版社との契約をすませるまえに、トップの位置を確保したいとおもっているのじゃないだろうか? と思うのだ。

では実際のところはどうなんだろうか? ボクが業界の友人たちに聞いたうわさ話や、情報を総合すると、出版社との契約はあんまりうまく進んでいないんじゃないかと思える。

日経新聞にしても、合意したと名前が出せたのはPHPだけだ。まあ、ポット出版の名前じゃ日経もそもそも記事にはしないだろう(笑)。ボクが記者なら、正直もうすこしインパクトのある出版社名が欲しいと思う。「詰めの交渉に入っている」ってのも、うーん、ボクの聞いたうわさ話とは隔たりが大きい。

ポット出版は「ぜひ提供してね」みたいなことを、たまたま行き会わせたときに一言言われただけで、本気で営業されたことはない(笑)。けども、交渉内容の機密保持契約を求められるという噂だし、もっとも安い価格を求められたりと、アマゾンとの契約はキビシイといううわさだ。業界の友人の四方山話では、アマゾンへの警戒感が強いように思う。

ビットウエイやモバイルブックジェイピーなどとの契約とは、緊張感が違うのだ。ポット出版だって、ビットウエイやモバイルブックジェイピーとは契約してるんたけど、今、アマゾンが本気で交渉してきたら(ってそもそも相手にされてないって)今すぐ契約する気にはならないと思うな。

いや、アマゾンがキライなんじゃないんです、よ。余談だけど、そもそもアマゾンが上陸した2000年。周りの出版社が「黒船が来た」扱いしてるときに、いや「白い猫も黒い猫も本を売る猫はいい猫だ」(笑)、って言って回ってたはず。アマゾンが求めていた、在庫情報のデータでの提供にも熱心にとりくんだしね。

で、今は、アマゾンの電子書籍書店に受動的に出品する体制をつくるより、その手前の電子書籍の市場を拡大することに主体的に取組むことが、結果的にアマゾン電子書籍書店の活性化にもつながるんだと思ってる。

多くのタイトルを電子化すること、そのためには講談社や小学館の最大手はもちろん、中堅から小零細までのタイトルが必要なんだ。だから出版デジタル機構(仮称)が飛び立つための活動に時間を裂いている。

ボランティアのつもりは全然ないですよ。だってそうした活動の過程で仕入れる情報は膨大で、ポット出版自身のためにとっても役に立つんですよ。

注1:出版デジタル機構(仮称)の目的はすこしボクの言葉に変えてある。責任はボクにある。あとで機構のメンバーに叱られたら素直に謝るし、デジクリにもお詫びを書きます。

注2:アマゾン電子書籍書店がほんとうに年内に出発して、ダントツの品揃えを実現していたら、この話はいい笑いモノだね。

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -135[2011.10.20〜2011.10.23]

●2011.10.20木
出版デジタル機構の準備室へ。
ところで、この準備室は、毎朝10:30に集合してミーティングをしている。
ミーティングはだいぶ具体的な議論になり始めた。でその具体性に、回答をだすようなレポートまでは手が回らず。
午後から機構幹事会。15時近くに終わって、慶應大学図書館へ。植村くんと、Kさんと三人でタクシーで移動。
入江さんのほか、田村館長も来ていた。東大出版会の橋元さんとかもね。
国立・公立・私立の図書館の協議体?と、和書の電子図書館システムをつくれないかって話。
いろいろ勉強になった。機構の課題だしね。

●2011.10.21金
ポット会議は佐藤/那須などにまかせて、機構準備室。
終わってからN紙の記者に取材。アマゾンの日経の記事についてや、機構の意味などを話す。
そんでもって、いろんなところの情報を総合すると、講談社・小学館・新潮社・光文社のアマゾン取引合意は、まだ先が長そうだ。
PHPが1000タイトルを提供ってのも、データは渡したけど、販売合意はまだできてないというPHPの人が言っている
って話も出て来る。PHPのひとがメディアの問合せに、アレはデタラメだって話してるって情報もあり。
まあ、すくなくとも、あそこにPHPの名前がのるのは、逆に言えば、PHPくらいしか合意のメドがたってないってことじゃないかな?
あるいはほかの出版社が名前をだすのを嫌がったか?
だけど「年内にもオープン」なら、いまどき名前をだすのをいやがるのだろうか?
あと1ヶ月半でわかっちゃんうんだから?
アマゾンがメディアに流して、オープン→出版社はすでにイッパイタイトルを提供するってムードをつくって、
迷ったりしてる出版社を煽ろうとしたんじゃないのかな?
日経の記者はアマゾンからの情報っての否定してたけどね。
山形浩生・翻訳+要約『ケインズ 一般理論』の入稿直前作業とか、JUN-4の色校正戻しとかバタバタしてて、
行くつもりだった21:15からのギター教室をサボってしまう。気がついたのが22:00ちょいまえで無断欠席。
あせって連絡したけど、先生、ゴメン。

●2011.10.22土
夕方から目黒雅叙園での義理の弟の結婚記念パーティーへ。
親族顔合わせに大遅刻。iPhoneも忘れて、ドタバタ。

●2011.10.23日
事務所で雑用。この日誌も書く。
後やっておきたいこととかもあり、。
と思ったら昨日の日経・文化欄にもアマゾンやら出版デジタル機構の記事があった。
赤塚記者って、ロフトプラスワンのときに取材にきて挨拶してくれた記者だな?
電子書籍の販売サイトが複雑でどこで変えるかわからない、って話だけど、
いや、タイトルがアット的に不足してるってのがオイラの認識。オイラとはズレてるゼ、赤塚記者。
まあ、規格の乱立が電子書籍市場の確立を妨げるってのよりは、まだ当たってる面があるけどね。
規格の乱立って、.book (ドットブック)とXMDF(エックス・エム・ディー・エフ)くらいしかないじゃん。
あとはせいぜいPDF。乱立なんてしてないよ。
よくきく「ガラパゴス」批判って分かりやす物語りにノッカてる底の浅い認識だろう。

出版デジタル機構(仮称)の説明会・版元ドットコムMLに送ったメール

出版デジタル機構(仮称)の説明会をひらくことになった。

版元ドットコム会員社にも積極的に参加してもらおうと、MLにメールを書いた。
そのメールを掲載しておきますね。
オイラがなぜ、これに参加しているのかってことも書いたんです。

ココから────────────────────
版元ドットコム会員社のみなさん

版元ドットコムも積極的に参加した出版デジタル機構(仮称・株式会社を準備中)の説明会を開きます。
出版社対象ですので、出版社の方はぜひご参加ください。

沢辺が考えている機構の「意味」は
・電子書籍市場を活性化させるために、ジュンク堂なみの品揃え=数十万タイトルを電子書籍化して起爆材とする。
・そのためには、機構で資金をかき集めて、電子化費用の出版社負担なし(売れたときには回収させてもらうけど)で制作する体制をつくる
 機構(株)は制作費を回収するためにも、必死に販売活動をし、売り先もみつける
・数十万タイトルを早急に用意するために、既刊本をまとめて電子化
・コストを抑えるためにも当面スキャン画像PDF+OCR付きからはじめる。
 千円代を目標としているけど、30万タイトルを電子化するためには3億円もかかります。

今回の説明会では、具体的な数字(販売金額の想定や、総費用のメドなど)までは示せませんが、
プレスリリースの方向性を説明させてもらう計画です。

ジュンク堂の多様性を実現するためには、中小零細出版社の多様な出版物も必要です。
また、中小零細出版社の電子書籍のためのインフラづくりのためでもあると考えています。
出版業が机と電話ひとつで創業できると言われるのは、全国の1万数千店の書店、そこに輸送して代金を回収などをになう取次、
印刷所の製作体制などのインフラが存在するからだと思います。
電子書籍におけるこうしたインフラをつくることが、この機構(仮称)の目的でもあります。
さらに、こうした取組みが、ほんとうに中小零細出版社に役に立つものにするために、版元ドットコム組合員は設立に参加することにしました。

版元ドットコムの会員出版社のみなさまもぜひこの機構(仮称)に合流していただきたいと思います。
まずは、説明会へのご参加をお願いします。

申込→ https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dHI5aGl2YllRWmF4N3F4YUwwemFYZEE6MQ
機構のウエブサイト要項→ http://www.shuppan-d.info/2011/10/00154.html
機構のウエブサイト→ http://www.shuppan-d.info/

メディアの方は参加いただけます。同様に申込フォームからお願いします。

↓に案内文を貼っておきます。

ココから案内文────────────────────
出版デジタル機構(仮称)説明会のご案内

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 出版デジタル機構設立の発表に際しまして、多大なるご関心と応援のお言葉を頂戴し、心より御礼申し上げます。

さて、本機構の設立趣旨、今後の設立計画、出資募集、利活用の方法など、現在確定している事柄や私たちが乗り越えていくテーマについて、更にご理解ご支援賜りたく、下記説明会を開催致したくご案内申し上げます。

 本機構の目的および目標

・国内における電子出版ビジネスの公共的インフラを整備することで、市場拡大する。
・日本の電子出版物の国際競争力を強化する。
・研究・教育・教養分野における電子出版物利用環境を整備する。
・現在または将来の利益逸失を防ぎ、出版界全体の成長に貢献する。
・国内で出版されたあらゆる出版物の全文検索を可能にする。
・本機構は各出版社等からの出資を受け、収益化を目指す。
基本業務内容等は、10月7日にオープンした本機構サイトに掲出しておりますが、皆さま方のご理解がより深まりますよう、詳細のご説明を致します。電子事業統轄責任者様のご出席を頂きたく、宜しくお願い申し上げます。会場の都合で1社2名様までとさせて頂きます。

敬具

●第1回
日時:11月4日(金) 15:00~16:30
場所:日本出版会館4F 
   〒162-0828 東京都新宿区袋町6番地 日本出版会館
   TEL 03-3268-1302
   地図

●第2回
日時:11月11日(金) 15:00~16:30
場所:一ツ橋センタービル12F (小学館本社ビル裏)
   〒101-8001 東京都千代田区一ツ橋2-3-1
   TEL03‐3230‐9173
   地図

● お申し込み こちらのフォームから
https://docs.google.com/spreadsheet/viewform?formkey=dHI5aGl2YllRWmF4N3F4YUwwemFYZEE6MQ

・会場等の都合で、ご希望回の変更など設立準備室からご相談する場合があります。
・第1回と第2回では、説明会場が異なりますのでご注意ください。

◇本機構問い合わせ:11月1日(火)より下記に事務所を開設致しました。
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-5 開拓社ビル8F
「出版デジタル機構(仮称)」設立準備室

ポット出版社長・沢辺均の日記 -134[2011.10.11〜2011.10.19]

●2011.10.11火
連休明け、出版デジタル機構の準備室オープン。これから当面朝の10時半に小学館会議室に「出勤」。
その初日。
昼に飯田泰之さんのゲラ引き取りを大田にかわってもらう。ゴメンナサイ、飯田さん。
山形浩生さんの「要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論」の解説を書いてもらって、校正の引き取りだった。
午後は出版デジタル機構の普及促進の会議。
深沢さんと日高に来てもらって、ウエブサイトや、メール体制などの相談。

●2011.10.12水
午前中、準備室。
午後に出版会議。そのご借金のことで銀行がくる(これ、個人の借金ですよ)。
夜は4回目の書誌・書評情報整備利用研究会2011。設定したテーマは、
・国会図書館のラボの計画とか、今後の国会の書誌などをめぐるシステム開発ほ方向性
・ISBNがついてない本、NDLでは発行時についてなかったんだけど、その後販売を続けた出版社がISBNをつけた例と、それがNDLに反映してないこととかってことの話
書評サイト近刊情報βのサイト
・電子書籍IDのJPOの取組み
ほかにも青空文庫の富田さんがいつものとおり、いい突っ込み。で、激論?
終わってから神保町の中華屋で飲み会。

●2011.10.13木
げんきな図書館の受託館の館内整理の日。できるだけこの日は図書館にいこうと思っているんだけど、この日は欠席。
準備室へ。
午後は引き続き出版デジタル機構幹事会。
夕方事務所に戻って、深沢さん、菅原くん(ゼロメガ)、日高と、機構のためのスキャン電子書籍のOCR正答率調査などを頼む。

●2011.10.14金
昼前からビラセレーナ祭というポットのあるマンションのお祭り。
昼はフリーマーケット、5時から飲み会。「実行委員長」みたいなことやってるんだけど、午前中から準備室。
午後は出版クラブへJPO近刊情報センター管理委員会。
戻ってきて、やっとビラセレーナ祭。炭を起こして七輪の準備したり。
飲み会は、また菊ちゃん(ギターの名手)のうたや伴奏、ミルクさんのうたなどなどで盛り上がった。
2011ビラセレーナ祭2011ビラセレーナ祭

●2011.10.15土
義理の弟(笑)夫婦が新婚旅行のお土産を持ってきたので、一緒に夕飯。
それが終わって、ベラミライブ(セッションで遊ぶ)。人数少なし、もそれもまた良し。
ビラセレーナ祭で見つけたビートルズフリークの住人を誘い込む。
ベラミナイトベラミナイト

●2011.10.16日
いろいろ溜まった雑用や、考えを整理したり。

●2011.10.17月
午前中、準備室。昼飯を準備室メンバーと一緒して、hon.jp落合さんに、電子書籍の書誌情報のことを教えてもらいにいく。
事務所で仕事したり打ち合わせしたりして、20時水道橋で、版元ドットコムのプレトークイベント<石橋毅史『「本屋」は死なない』(新潮社刊)への想い>へ。
帰りの石橋さんたちと飲み屋へ。プレジデント社の石井さんも一緒。
石井さんは95年あたりにはじめてMacを買ったときの師匠。システムの再インストールの仕方を電話中継でおしえてもらったりしたのだ。C社の編集者からは、いろいろ仕事のやり方等を聞いてとっても知恵がついた? ぞ。
石橋講演会

●2011.10.18火
午前中、準備室。
もどって、石川輝吉さんと、ポットサイトでの連載→単行本の相談。
それからあるトラブルをめぐって、ちょっとバタバタ。

●2011.10.19水
午前中準備室。スキャン電子書籍OCRのレポートを提出。
ほかいろいろあった。
携帯に電話してって伝言したのだけど、電話なし。どうせオレなんてとすねてみる。

『自費出版年鑑2011』に書いた ■紙の本と電子書籍と出版

以下は10月下旬に発行される『自費出版年鑑2011』に書いたものです。
原稿料をくれるという話だったんだけど、オイラの原稿なぞそうそうカネになるとも思えなかったので、
原稿料はいらんけど自由にネットに公開させて、とたのんでこころよく了解してもらったものです。

余談ですけど、原稿(著作物)の独占利用権は一部の文藝など以外にあまり意味がないんじゃないか?と思うのです、最近。
ってことで公開しますね。

なお、紙の『自費出版年鑑2011』を買ってみようじゃないかという方は↓でお願いします。
出版元のサンライズ出版サイトの紹介ページはコチラ
版元ドットコムサイトの紹介ページはコチラ

■紙の本と電子書籍と出版
沢辺 均〈ポット出版〉

本は電子書籍になるのだろうか?

 2010年の「電子書籍元年」ブームはおさまってしまったようだ。
 しかし、アマゾンが出版社を個別に廻って既刊本の電子書籍での提供を口説いている噂とか、「すべての出版物を電子書籍に」という目標を掲げた出版デジタル機構という株式会社の設立準備会が発表(2011年9月15日)されたりと、電子書籍にどう取り組むかが出版界の今の課題であることに変わりはない。
 ポット出版は、出版デジタル機構に版元ドットコムの仲間と参加しているし、2010年1月から新刊本発行と同時に電子書籍での販売をはじめている。
 まあ、電子書籍に、前向きなのだ。
 なぜ前向きなのかと問われたときには「多くの本は、電子書籍でも利用されるようになるから」だと答えてきた。
 だけど、そう答えること、に少々違和感もある。
 ボクのなかに「それでも紙の本、も、残る」と思っているところが確実にある。「多くの本」と言っているのだけれど、それはすべてではない、という意味を込めているつもりだ。「電子書籍でも利用される」と言うのは、電子書籍も紙の本も両方ある世界が当面つづくという考えがあるからだ。
 出版業界が電子書籍に対して後ろ向きだと思われているフシがあるので、ついつい、電子書籍が増えていくことを強調するくせがある(これはホントにそうも思っている)。
 なので、紙の本か電子書籍かを今一度冷静に書いてみよう。

○紙の本にはまだまだ魅力がある

 野村総研の電子書籍市場予測では、4年後の2015年に2800億円。
 これは、今出ている市場予測のなかでは真ん中くらいの金額だ。
 現在の書籍と雑誌の売上は1兆9000万円程度だから、15%程度。
 これは大きいといえば大きいけれども、まだまだ紙の本の利用が多くをしめるということでもある。
 まあ、10年後、20年後はほとんどの読みものが電子になっている可能性もあるのだけれど、こうした市場予測でも、紙の本はまだまだ残るということなのだと思う。
 ボクは商売ガラもあって時々電子書籍を買う。パソコンは使っているし、iPhoneもiPadも発売当初からの利用者だ。でも、まだ電子書籍で読み通したのは1冊だけ。もっぱら読んでいるのは紙の本だ。
 一方で、最近大きく紙の本から電子にシフトしたのは、アプリのマニュアル。以前は紙の本のマニュアルを買っておいて、調べることが多かったんだけれど、最近はグーグルで検索して、いろんな人が書いた「マニュアル」を見ることの便利さに目覚めてしまった。
 でも、本ということでいえば、圧倒的に紙なのだ。
 自費出版にしたって、本を書きたい人、出したい人は、電子書籍で満足できるのだろうか?
 紙の本でこそ、自費出版の意欲が高まるんじゃないか? 電子書籍なら、ワードファイルを配ればいいわけだけど、それじゃ出版した気にならないんだと思う。
 こんなふうにボクの身の回りの「感じ」から言えば、紙の本にはまだ
まだ魅力があると思うのだ。

○それでも電子書籍に意義がある

 にもかかわらず、ボクは電子書籍に前向きに取り組んでもいる。
 受動的な理由で言えば、やはり電子書籍が広がっていく方向にあるので、それに早く対応するのが良いと考えているからだ。
 電子的な技術は、ボクたちの生活を劇的に変えて来たことは間違いない。
 文章を書くという行為のほとんどが電子で行われているのではないだろうか?
 写真もアナログからデジタルに変わった。
 特に生活を大きくかえたのはネットワーク。
 ボクたちの周りに張り巡らされて、電子でつくった意思表示(文章だとか、映像だとか)なら、ネットワークを通じてほとんど世界中に瞬時に送り届けることができるようになった。
 この便利さを考えれば、電子に置き換えられて、ネットワークで送ることは拡大すると考えるべきだと思うのだ。
 また、出版社の者として、積極的に考えるのは本の物理的な量のことだ。
 本棚にある本が、ネットワーク上に電子で保管されていて、部分的に見るだけなら、いつでも見ることができるようになったら、紙の本をとっておく必要は圧倒的に少なくなる。
 一度買ったことのある本を、少額で電子書籍に交換できれば、本棚の本はどんどん処分されるだろう。そうなるとどの本を「買ったことがあるか」「読んだことがあるか」という記録くらいが手元にあればいい。
 こうして空いた本棚に、また新しい紙の本が買われていくことに可能性を見ているのだ。

○本の新しいセンバツの方法が求められている

 しかし、電子書籍が広がっても残る課題がある。
 本を選ぶための、センバツのシステムがどうしても必要なのだ。
 ボクは、小説を読むのが結構好きだ。
 東野圭吾、宮部みゆき、大沢在昌の新作がでて本屋に並んでいると迷わずに買う。
 これまで読んできてそう外れなかったからだ。でも、本屋に並ぶ、読んだことのない作家の本を自分で読んでみて見つけたわけではない。無駄な時間を使いたくないし、ハズれたら面倒だ。最初は誰かに評判を聞いたとか、書評とか広告がきっかけだったんだろう。
 哲学なら竹田青嗣、社会学なら橋爪大三郎のものは読むことが多い。これももちろん自分で読んでみてファンになったのだけど、最初はやっぱり誰かのススメや書評がキッカケ。
 一年に8万冊も出ている本のなかから、自分で読んでみて良し悪しを決めることなどだれもできはしない。ボクに代わって第一次選考をしてくれる人やシステムが必要。それがセンバツだ。
 以前は新聞の書評欄でもみておけば、読むべき本にたどり着けたのに、今はそれだけじゃたりない。狭い嗜好を満たすために自分にあうセンバツのシステムにたどり着かなければならないけど、なかなか大変だ。
 こうしたセンバツシステムはメディアの権威に裏付けられていた。
 しかし、この権威もどんどん威力が下がっている。◯◯新聞くらい読んでおかなけりゃもないし、テレビの言っていることを真に受けることも減っている。
 これらに替るのは多分「人」だと思うし、ネットワークを活用したものだと思うのだけれども、それがどういう形に落ち着くのか、まだよくわからない。

○だれもが出版できるというなかで

 センバツの役割は、出版社も果たしてきたのだと思う。
 中公新書なら学問的な裏付けがあるはずだ、といった信頼などだ(これが権威だと思う)。
 でもこの権威の威力も下がってきているし、下がり続けるだろう。
 これらの権威の半分は、出版するというシステムに参加することの困難が大きくて、その困難を超えられたことに、信用の理由があったのだと思う。もちろんもう半分は、その信用に応えるものを出してきたという実績も当然あったはずだ。
 ただ、出版するというシステムに参加することは、もうだれもができる方向に向かってる。
 電子書籍の拡大はそれを加速するはずだ。
 だからこそ、電子書籍は、あらためてのその信用の根拠を厳しく問うターニングポイントなのだと思う。
 出版社が、出版が、その根拠を問われている。
 そこに、出版の困難さがあるし、もう一方、変化の可能性という途轍もない面白さもあるのだと感じている。

デジクリ連載[14]情報公開は何より大切なんだ

< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20111011140100.html >

2011年ももう10月だ。デジクリの連載もあとちょっとで1年か?
でも、ネタにつまったぞ。しょうがないので、今二番目に時間をつかってる出版デジタル機構のことでも書いてみることにしよう。でも、まだまだ大きな方向性を出すところまでになってないから、コネタでご勘弁。

まず、出版デジタル機構ってなんだって話。前回も書いたはずだけど、ようは「すべての出版物のデジタル化をめざして」ってことを目標にして、これから作ろうという「株式会社」。そうだ、前回はこの「株式会社」に意味があるって書いたんだ。

で、この株式会社を出資してつくろうってことに合意したのが、インプレスホールディングス・勁草書房・講談社・光文社・集英社・小学館・新潮社・筑摩書房・東京大学出版会・東京電機大学出版局・版元ドットコム(代表:ポット出版・ほか6社)・文藝春秋・平凡社・有斐閣の出版社20社(50音順)。

版元ドットコムの「ほか6社」ってのは、語研、スタイルノート、青弓社、第三書館、太郎次郎社エディタス、トランスビュー。これって版元ドットコムの組合員社(有限責任事業組合なので組合員という表現。株主であったり役員会社でもある)

この出版デジタル機構の連絡会議長の植村八潮さん=東京電機大学出版局も、版元ドットコムの組合員社なので、参加した組合員社は合計8社ってことになる。つまり、システムを担当しているスタジオ・ポットSD(出版社ではないのだ)以外は、全組合員社が参加してることになる。

この出版デジタル機構の会議のなかで印象に残ったエピソード。
9月15日(木)15時に「設立のお知らせ」をメディアに送った。木曜15時にしたのは、平日の新聞に載って欲しいなって理由。その日のうちに取材ができれば翌日の朝刊にまにあうだろうって考えた。

この20社以外にも株式会社設立に参加するってところが何社かあって、でも役員会とかのスケジュールで15日発表には間に合わないよって報告もあり、翌週に延ばそうかって話も出たりした。

そのときに「自炊業者に質問状を送っている。電子書籍への取組みを進めるって意思表示も早くしたい」みたいな意見が出て、15日発表になった。この発言は、質問状を送った7社の1社の人。

このデジクリなんかで「自炊が読者に支持されているのは出版社の電子化への怠慢の結果でもある」みたいなことを書いてきたけど、基本的な認識は質問状を送った出版社も近いんだな、って思ったのだ。

ある種の「怠慢」という自認はある。でも、だけど自炊代行をこのままにしておけない、なのか、だから自炊代行をあれこれする前に電子化を進めようって判断の違い。ズレはホントに紙一重なんだな、って。だって、自炊代行への読者の支持は出版社の怠慢という言い続けているポット出版だって、同じ席に招き入れてるんだから。

さて、この出版デジタル機構はいまどんな進捗状況にあるのか?
先週、最後の連絡会を開いて、発起人会に改組。幹事会(講談社と小学館ね)をおいて、出版社への参加のお願いをすべく、分担して取組みましょうってのを始めることになった。

とはいえ、膨大な準備作業があるので、設立準備室をほぼ常駐体制でつくるところまできている。今週から、設立準備室は仮・仮事務所で毎日集合。11月には神保町に仮事務所をひらく準備も同時並行で進めてる。

あ、そうだ。出版界ってメディアであるくせに(メディアであるから?)情報公開が下手だね。「出版デジタル機構」ってググっても、出てくるのは新聞や、ネットニュースと、ポット出版と版元ドットコムのサイトばっかり。

いや講談社や小学館のサイトをキチッと見ているわけじゃないけど、あの「設立のお知らせ」は掲載されてないんじゃないかな? 出てるとしても、Googleでヒットしないもんね。報道されることには努力してるけど、まず自分で情報公開しなきゃいけないじゃないの? って思わずにはいられない。

これって出版界に限ったことじゃないかもしれないけどね。日本社会では、まだまだ情報公開の重要性が共有されていないじゃないか?

版元ドットコムって、最初は会員30数社で2000年に始めたのだけど、数年は会員社が増えなかった。現在171社だけど、増えたキッカケはアマゾンのおかげだと思っている。

版元ドットコムは書誌情報や本の在庫があるかどうかを、出版社自身で公開していこうって取組み。しかし、その当時、在庫情報を公開する意味って全然共感されなかった。同じ2000年にアマゾンが開業して、在庫があるかどうかわからない(システム化されていない)出版社の本には「在庫ありません」みたいな表示をしたわけ。

そんなふうに表示された出版社は怒った。倉庫に在庫がイッパイあるのに在庫がないと表示するのは何事か! って。ところがアマゾンは、ただ小売店としてウチには在庫がないと書いただけなんだと思う。そりゃヨドバシカメラに行ってMACBOOK Airありますか? って聞いたら、店員さんは「在庫がないんです」って言うでしょう(ホントになけりゃだけど)。アップルストアにはおいてあっても。

でも、ここんとこ誤解した出版社は多かった。そうこうするうちに、なんとか在庫なしって表示を在庫ありってことに直せないか? って思う出版社が増えた。版元ドットコムはもともと、そういう在庫情報とかをできるだけ公開して、書店の店頭で調べられるようにしよう、って目的だったから、当然アマゾンに在庫情報を送る方法を知っていたし、システムもつくってた。

そこで版元ドットコムへの関心が高まって、入会社がどんどん増えたってワケだ(まあ、ほかの理由で入会してくれた出版社もイッパイいるんで、あくまでひとつの要因ですけど)。

アマゾンが、これまでブラックボックスにおかれていた出版社の在庫情報を公開してくれたことが、在庫情報整備への(主に中小の)出版社の認識を変えてくれた。そのなかには著者の果たした役割も大きかった。著者ってアマゾンで順位とか在庫状況を見て、出版社に連絡してくる人も結構いるらしい。「オレの本は売り切れなのか? ならなんで増刷しない」とかね。

こうしたことがあって、情報公開は何より大切なんだってあらためて思い知らされた。ということで、まずは出版デジタル機構のウエブサイトを立ち上げた。つくってくれたはデジクリ読者ならよく知ってるんじゃないか? 深沢英次さん。彼にもこの出版デジタル機構への協力をしてもらってる。

ただし、つくったはつくってけど、情報はスカスカ。なによりも参加出版社の間での情報共有のためのメーリングリストづくりとか、優先してやってるところなんで。
http://www.shuppan-d.info/

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -133[2011.009.28〜2011.10.10]

●2011.09.28水
昼前から出版会議。
夜は月に一度の版元ドットコム組合員会議。
この日、出版デジタル機構への版元ドットコムとしての対処を相談するなど。
終わってからは東洋食堂でイッパイ。
ベランダで仕事

●2011.09.29木
事務所と自宅のあるこのマンションに空き部屋がでた。
売買を担当する不動産屋とひょんなことから連絡がついたので、見学させてもらう。
日当りがいいな。
午後は丸の内へ。山形浩生さんの『要約 ケインズ一般理論』再校をもっていく。
これで山形さんから再校が帰ってきたら一気に入稿へ、というわけだ。
あしかけ何年だっただろう、やっとココまでだ。
山形さん、と解説を書いてもらった飯田泰之さんとのトークショーを計画。
また山形さんのえらんだ「デフレ克服と、経済学を今さらやる直すためのブックフェア」の選書も依頼。
山形さん選書によるフェアをいろんな書店にお願いするつもり。
ある大出版社の権威ある文庫に、山形さんの「全訳 ケインズ一般理論」が企画会議に上がってると。
後日、企画が決定したらしいって連絡をもらう。
ポット出版の「要約」にはウレシイ知らせだ。
トイレから下の階に漏水。原因調査を依頼。便器をはずした。
便器をハズして

●2011.09.30金
昼前からポット会議と掃除大会。
午後、中公の営業の人が来て、販促ツール類のデザインの打ち合わせ。
夜は国会図書館で勉強会の講師兼司会。弁護士の村瀬さんと、福井さんと一緒に、
出版社の「権利」について。
福井さんはチョーマジメなひとなのかな? 初対面だったけど。レジュメを書いてきていた。
あのレジュメ公開してほしいな、いいレジュメだったんだ。
終わってカレー屋へ10数人で。たのしいおしゃべり。

●2011.10.01土
ヌードモデル=マロンちゃんの写真展のイベントでの公開を目指す、
山田広野監督の新作の撮影。山田監督だから当然無声映画。
オレは出ずっぱりの役。
この日に予定してた久しぶりの我がバンドの練習は、メンバー欠席がちょっと多くて中止。
那須の娘=みずき嬢がドイツ語教室の帰りに事務所に来る。
那須と、佐藤と4人で近くのフレンチ(大衆料金ね)でメシをくう。
マスターが気を利かせて、デザートにちょいと細工してくれた。
M嬢と食事M嬢と食事

●2011.10.02日
思い出せないな。イヤ、3日のロフトイベントのレジュメの準備とか、画像の準備とかやってた。

●2011.010.03月
朝イチ、スルガ銀行へ。
夜は「出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構」
というイベントを、版元ドットコムで開催。場所はロフトプラスワン!! 似つかわしくないけど。
有料入場者数101名。スタッフ(出演者含む)の飲み代2万まで無料って言われたんだけど、3万近く飲み食いしてた(笑)。
USTREAMで中継。記録してるので、今でも見れます。
前半 http://bit.ly/qAW3OH
後半 http://bit.ly/oeAjuE

版元ドットコムの勉強会版元ドットコムの勉強会

●2011.10.04火
午後から出版デジタル機構の設立準備室の初会議。
11日(火)から毎日10:30集合ミーティング→分かれて各自仕事、って体制を決める。
ほかに次回連絡準備会の議題の調整とか。
神保町のキッチン南海で、カツカレー玉子入りを食べて、神保町の「本と街の案内所」をノゾイて帰る。
案内所には顔見知りの千代田図書館のコンシェルジュもいた。
もどって、守秘義務の厳しいある書店の人と情報交換。出版デジタル機構のことや、電子書籍のIDのことなんか。
神保町

この週は、毎日のように、本の制作をめぐるトラブルとかが続出。
まあ、この程度のことなら何とかなるのはわかっているのだけど、
ほら、ダムも小さな穴から決壊するっていうでしょう。なので、ついつい、怒鳴って説教とか。

●2011.10.05水
出版会議。
横芝光図書館の元職員と、あの貸出し数などの「水増し」問題のことを聞くために会う約束をしていたのだけど、
ゴメンのメール。
夜はず・ぼん編集会議。相変わらず、ダラダラとおしゃべりなんだけど、まあ、これが大切なのだ。
(ある種の)図書館の気分を自分のカラダに入れるために。

●2011.10.06木
午前中は近刊情報センターの普及促進委員会。
あ、ちょっと会議のすすめ方に「?」。普及の方法を見つけなきゃいけない、難しいところにはあるのだが、、。
終わりかけのところ、出版デジタル機構の連絡会の会議。ざっと40人とか50人とか。
この日で、連絡会は終了。以降、出資する社で「発起人会」、そのなかから当面の役員として機能する「幹事会」、
参加賛同出版社を増やすためのチームと、設立準備室への切替を決める。
そして出版デジタル機構のウエブサイトをとりあえず公開。これからいろいろ体制を整えて、
内容濃くしないと、大々的にお知らせはできないんだけど。
サイト制作は深沢英次さん。ご協力感謝!
http://www.shuppan-d.info/

●2011.10.07金
愛知大学の図書館情報学専攻の時実さんが来て、図書館大会での講演のための取材。
出版デジタル機構のこと。
ポット会議、掃除大会。そのあいだにも、あらたなミニトラブルが。
昼飯は、ベラミのオムライス。
夜21:15から代々木サウンドタワーのギター教室。大河内先生(たぶん30代)。
時間は1時間。ブルースのアドリブのおさらいや、クロスロードのイントロ、ワンダフルトゥナイトのリードの練習とか。帰ってきて、メールをちょこっとチェックして、この日は上がる。

●2011.010.08土
広尾の不動産屋にちょっと用事をすませて。
事務所で雑用とかいろいろ。

●2011.10.09日
ぐたぐたしたり、ヨドバシカメラで無線WiFiを買いにいったりしたぞ。
9月が決算で10月からポットの新年度になるので、請求書システムの更新とか日報システムの更新とか、
そのほかいろんな雑用。

●2011.10.10月祝
午後から事務所にでる。
NPOげんきな図書館のスタッフと話したり、責任者と話したり。
そして今、ためてしまった日記を書いている。
このあと、書誌書評情報研究会のレジュメとか、明日の出版デジタル機構設立準備室で協議することを、
整理したり、なによりデジクリの連載を書かねばならない。ネタはなんにしようか?

10月25日(火)公開シンポジウム「eBP Meetup 2011」(無料!)に出ます

『電子書籍を考える出版社の会』主催のシンポジウムのパネリストで出ます。
よけれ参加ください。

セッションがふたつあって、ビジネスとテクニカル。ボクはビジネスでなく(笑)、テクニカルセッションの「当事者が語る、“専門書・実用書”電子コンテンツ制作の舞台裏」です。

1時間半で、パネリストが6人いるんで、一人10分で20分くらいの討論?ってところかな。
おしゃべりの沢辺のことだから、言い足りなくなるとは思う(笑)。

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公開シンポジウム「eBP Meetup 2011」、10月25日に開催

■eBP初となる、公開イベント
電子書籍・雑誌の開発と普及を目的として研究と情報交換を進める専門書・実用書出版社の団体『電子書籍を考える出版社の会』(略称eBP、代表幹事:株式会社毎日コミュニケーションズ 取締役 出版事業本部長 滝口直樹)は、10月25日(火)に「eBP Meetup 2011~電子出版 2年目の課題と3年目への展望」と題したイベントを開催します。

■eBP Meetup 2011開催背景
2010年に設立した、専門書・実用書出版社を中心とした任意団体「電子書籍を考える出版社の会」(通称:eBP)初となる、オープンなイベントです。
今回のイベントは、”Meetup”という名前のとおり、出版社だけではなく、電子出版に関わるすべての皆様が出会う場になることを目的に開催いたします。
これまで何度もあった電子出版“元年“から、ようやく2年目に踏み出せたのが今年、2011年です。そして、2011年も終わり、本イベント後、1ヶ月あまりで2012年を迎えます。
2012年に、真の電子出版市場を迎えるべく、今回のMeetupでたくさんの方と出会い、話し合い、この先の日本の電子出版の未来を切り拓いていきましょう。

Twitterハッシュタグ:#ebpmeetup

■イベント概要
開催日時:2011年10月25日(火) 12:45~17:30(予定)
参加費 :無料 ※参加は抽選となっております
募集人数:150名
開催場所:コクヨホール(品川(東京),JR品川駅港南口(東口)徒歩5分
   地図:http://www.kokuyo.co.jp/showroom/hall/access/map.html

■お申し込み
http://bit.ly/ebpmeetup2011

■タイムテーブル■
12:45~ 受付開始
12:45~13:30 展示・デモンストレーション(出展企業調整中)
13:30~13:45 オープニングセッション
           /滝口直樹(毎日コミュニケーションズ/電子書籍を考える出版社の会代表幹事)
13:45~15:15 ビジネスセッション「電子出版は本当に儲かるのか ~2年目の真摯な検証~」
   パネリスト: 佐藤陽一(グーグル)
          星野渉(文化通信)
          紀伊國屋書店担当者(調整中)
          高橋考(三和書籍/eBP)
          出町浩一郎(毎日コミュニケーションズ/eBP) ※他調整中
   モデレータ:  滝口直樹(毎日コミュニケーションズ/eBP)
15:15~15:30 休憩
15:30~17:00 テクニカルセッション「当事者が語る、“専門書・実用書”電子コンテンツ制作の舞台裏」
   パネリスト: 吉田健吾(paperboy&co.)
          舘崎実載(暁印刷)
          こもりまさあき(Webデザイナー、テクニカルライター)
          沢辺均(ポット出版)
          丸太敏晴(ビーワークス)
          梅屋文彦(ソフトバンク・クリエイティブ/eBP) ※他調整中
   モデレータ:  馮富久(技術評論社/eBP)
17:00~17:10 クロージング
※敬称略

(報道関係などからのお問い合わせ)
■『電子書籍を考える出版社の会』運営事務局
株式会社技術評論社 (〒162-0846 東京都新宿区市谷左内町21-13)
担当 馮(ふぉん) tomihisa(a)gihyo.co.jp

レジュメ●10月3日(月)出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)

明日のこれのレジュメです。
────────────────────
版元ドットコムpresents
出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構
●日時 2011年10月03日(月)
Open 18:00 / Start 19:00
●場所 ロフトプラスワン
 新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 TEL 03-3205-6864
●出演 沢辺均(ポット出版)
 萩野正昭(予定 ボイジャー)
 鎌田純子(予定 ボイジャー)
 仲俣暁生(文芸評論家・マガジン航編集長・文藝家協会電電子書籍出版検討委員会)
●料金
¥1000(+飲食代)
●申し込み
■一般の方
ロフトプラスワンの以下のお申込みフォームからお願いします。
LOFT/PLUS ONE | 予約フォーム
■版元ドットコム会員・会友とその紹介者の方
以下の申込フォームからお願いします。
短縮URL http://goo.gl/60nXN

ココから進行表とレジュメ────────────────────
★第一部 19:00~20:30
○出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)
 沢辺(40分)
○ブックズインブラウザーズが電子書籍を変える
 ボイジャー 鎌田?清水?萩野?(20分)
○全体質疑 (30分)

★休憩 20:30~20:40(10分)

★第二部 20:40~21:30
○出版デジタル機構は離陸するのか? 
 全員で討議(質疑含めて、20分)
○アプリ・フォーマットの環境はどうなるか?
 (アプリフリー、プラグインフリー ブラウザ基本技術のみ)
 全員で討議(質疑含めて、20分)
○全体質疑(10分)

★終了後はダラダラとその場で二次会

────────────────────
沢辺の第一部のレジュメ

■現在の電子書籍フォーマットにはどういうものがあるのか?

●タグテキストを利用したもの .book XMDF
 リフローする (iPadでVOYAGERBOOKSを見せる)
 テキストデータが必要
 小見出し・本文などの属性にタグで挟んでいく(タグテキストを見せる)

●誌面を画像としてみせるもの
◯画像の裏側にテキスト(透明テキスト)があるもの
 つくり方は2種類
・inDesignなどの組版ソフトからPDF書き出しする inDesignに書かれているテキストそのものが透明テキストとなる(ず・ぼん17で書き出してみる)
・誌面をスキャンして電子的な画像をつくり、それにOCR(光学文字読み取り)をかけることでテキストを作り出す 読み間違えが残る
・透明テキストは主に全文に対する検索の用途。読書そのものは画像を読む。
 マンガなど、検索の必要度の少ないものは透明テキストをつけないものもあるという。

◯画像だけでテキストのないもの
全文検索ができなければ、このスタイルだと思われる

■今後のフォーマットはどうなると思われるか
●EPUB3(まだ規格合意がされていない)が普及する可能性が大きいと思われる。
●もうひとつは、まったくあたらしいフォーマット(想像つかない)
 EPUBはタグテキストの一種
 中間フォーマット(.book/XMDF/EPUBどれかひとつのファイルから、それぞれに変換するために規格)がすすんでいる
 いずれにしても、タグテキストの用意があれば対応は比較的カンタン

■ビュアーから見た課題
●ビュアーを分類してみる←誰がどんな目的で制作したか
・電子書籍書店が開発しているもの .book XMDF Kindle iBook
DRM(コピーなどをさせない)をかけるのが一般的
・フリーウエア i文庫HDなど
DRMのかかったものは基本的には開けない

●ビュアーを分類してみる←データの置き場
・サーバー
Kindleのように専用アプリでサーバーにアクセスしてある程度のデータをダウンロードしながら
ブックインブラウザー ウエブサイトのを見るように電子書籍を見る
・ローカルにダウンロード
アプリと電子書籍がセット
書店の開発したアプリで管理できるもの

●DRMの仕組み
開く時に、そのDRM開発会社(adobe/appleなど)のネットワークのサーバーに「私はちゃんと買っていますよ」と問い合わせさせて、サーバーにの記録と問い合わせ者の記録に合致したら、許可をだす。

●ビュアーの問題
・単独アプリ
・電子書籍書店とむすびついたアプリ
・アップストアの制限
・ウエブアプリ

■出版社にとっての大きな課題
●電子書籍をつくるためのデータを出版社が自由にできる状態にないところが多い
・印刷のためにつくったデジタルデータ
inDesignデータ/組版ソフトからかきだしたPDFデータの所有権
・それぞれの電子書籍書店につくってもらったデータ
google/電子取次
・制作会社がつくったデータなら所有で来ていると思う。

●著作権者との契約
◯既刊本の電子化
・一般的には紙の本の独占販売権とおもわれる
・「電子化します 不同意なら連絡ください」か「電子化の了解をください」
◯今後発行する書籍
・項目を列記して、不同意の項目のみ意思表示してもらう
・基本を、非独占にして特別な場合のみ独占を提案することにできないか
独占の場合は印税率を上げる

●印税支払い
・印税は実売計算になる(レベニューシェア)
・印税率の相場がまだ形成されていない
・支払いの煩雑さをどうするか?

●ビュワーから見たもの
・ウエブビュアー
・アプリとしてのビュワー
 ダウンロードとクラウド
 ネット書店とセットのもの/フリーソフト
・アプリとデータがセット

■今、出版業界、出版社としてやるべきこと
●出版業界としてやるべきこと
・数十万タイトルの既刊本を電子書籍に
・新刊本はタグテキスト型の電子書籍に
・印税支払体制/システム/著作権管理システム

●出版社としてやるべきこと
・既刊本の電子書籍化
スキャン電子書籍制作と販売とデータの管理権
・印刷新刊本のデジタルデータからタグテキスト型の電子書籍
タクテキストがあれば、.book/XMDF/今後出てくるEPUB3にするのに手間がすくなくできる。中間フォーマットができれば、一発で変換。
制作と販売と管理権
・著作権者との契約

沢辺の第二部での問題意識────────────────────

出版デジタル機構の合意を大切に、出版資産を生かした電子書籍市場の活性化へ

●株式会社の意味は大きい

●電子書籍市場に出版社のはたすことの可能性
・ジャパニーズ・ブックダム=今、読者が紙の本で持っている本のデジタルデータを提供することを考えたいと思っている。たとえば、自炊代行業者に宅配便で送るように、出版デジタル機構に送ってもらえればそのデータか閲覧権を提供する。
・著作権集中処理=利用度合いに見合った使用料で著作物の利用を可能にするこができそうだ。

版元ドットコムストアで販売開始することが電子書籍状況への準備になる

■紙の本の新刊本を電子書籍で発売
●制作
・社内で inDesignデータはあるし、タグテキスト型の電子書籍制作が可能→データを版元ドットコムに
・社内にinDesignデータ(印刷するものと完全に同じもの)はある→電子書籍制作会社か版元ドットコム制作サービスへ
・組版も印刷会社に外注→印刷会社でタグテキスト型の電子書籍制作を依頼する/印刷会社にデータ渡しを交渉/組版・データ制作を組版専門会社に依頼/版元ドットコム制作サービスへ

●契約
電子化権も契約

■既刊本の電子書籍での販売
●制作
・社内で inDesignデータ(印刷するものと完全に同じもの)はあるし、 PDF書き出しも可能→データを版元ドットコムに
・組版も印刷会社に外注でデータ引き渡し交渉がうまくできない→スキャンOCRを制作(コストが非常に安く、OCRの調整も精度がたかいので版元ドットコム制作サービスへ

●契約
電子化権も契約 「やります型」か「返事があればやります型」か?
────────────────────

デジクリ連載13 ■すべての出版物をデジタルに向けて出発した「出版デジタル機構」

しょっぱなからお知らせ。来週、10月3日(月)19時から、新宿ロフトプラスワンで「出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構」を開きます。先週発表した、出版デジタル機構の最新情報も報告し、積極的な質疑応答を展開したいと思います。ぜひご参加を。
< http://www.hanmoto.com/news/2011/09/20/digital-loft/ >

さて、ポット出版では2010年年明けから、紙の本の新刊発行と同時に.book形式の電子書籍の販売をボイジャーストアで始めた。だけど、結果はカンバシくない。だいたい二桁の実売だ。まあ予想通りではある。負け惜しみでもある。

なにが足りないのか? 電子書籍のタイトルが少なすぎるということにつきると思う。このデジクリでも何度か書いてきたように、数10万のタイトルが必要だ。ジュンク堂なみの品揃えがあって、はじめて読者たちが電子書籍を一つの本のカタチとして受け入れるのだろうと思う。

だから、まず自社から取組みを開始したし、仲間たちと一緒にやってきた「版元ドットコム」でも取組みはじめた。とはいえ、これだけではジュンク堂なみの品揃えにはならない。出版業界の大手から零細までの既刊本を電子化しなければ、ジュンク堂なみにはならない。

ちなみに、一年間に発行される本は1位が講談社で千と数百、1000位で年間10タイトルくらいの発行。ポット出版が12〜16タイトルってところ。実に多くの出版社が出版活動をしているのだ。

そこで、出版デジタル機構が必要だったのだ。今年の春から、さまざまな出版社が取組んできて、やっとプレスリリースまでこぎ着けた。もう何日かで設立準備室を開いて、日々具体的な準備をはじめる予定。21社(インプレスホールディングス・勁草書房・講談社・光文社・集英社・小学館・新潮社・筑摩書房・東京大学出版会・東京電機大学出版局・版元ドットコム〈代表:ポット出版・ほか6社〉・文藝春秋・平凡社・有斐閣の出版社20社〈五十音順〉)が名を連ねた。
プレスリリースなどはこちら
< http://www.pot.co.jp/news/20110914_232615493925385.html >

●出版デジタル機構は株式会社ということに大きな可能性がある

この出版デジタル機構は「すべての出版物のデジタル化を目指して」を目標にしている。具体的には、出版社の電子書籍化とその販売などのサポート、図書館への販売、著作権者への収益配分の代行、などと同時に「国内で出版されたあらゆる出版物の全文検索を可能にする。」も目的のひとつとした。

出版デジタル機構は、本当にこうした目的を達成できるのだろうか? 困難も山ほどあるけど、ボクは可能性も充分あると思っている。発表後には「いくつ団体をつくれば気がすむのか?」のようなツイートもあった。確かに去年の電子書籍の大流行の際には、いくつもの業界団体ができた。ただ今回決定的に違うのは、株式会社を設立する、ということだと思っている。

業界団体の多くは、会費などを徴収し会費収入で運営されている。専従のスタッフもいるけど、出版社の社員がその出版社の仕事として業界団体の仕事をしていたりもしていて、これらは見えない寄付のように機能している。最大手の講談社や小学館などは、社員をなかば専従のように「派遣」していたりする。業界団体は自立できていないのだ。したがって、意見の食い違うことは実行できないし、どんなことを決めても参加出版社に取組む義務がないことが多い。

こんどの出版デジタル機構を、株式会社として設立することの大きな意味はここにある。株式会社である以上、単独でお金が回っていかなければやがて倒産だ。出版社全社の合意がなくとも事業方針を決定できる。そのかわり、多くの出版社に利用されるように営業に回らなくてはならない。なんとなく合意できることを決める、ではないのだ。後ろは倒産という断崖だ。このことを、少なくともこのプレスリリースに名を連ねた20社は共有したのだ。

●すべての出版物のデジタル化の先に見えるもの

出版デジタル機構は、なにをするのか? もう少し具体的なイメージを紹介しよう。といっても、以下は少々ボクの妄想が混じり込んでいる。全体の合意にまではなっていない。

すべての出版物をデジタル化するのだ。そうすれば、まず第一にジャパニーズ・ブックダム=全文検索一部表示だ。これはすでにリリースでも公表されている。この出版デジタル機構が独自にこのサービスをするのか、国立国会図書館などと共同でおこなうかなどはこれからの課題だけれど、その前進に具体的な一歩を踏み出した。

第二に、これはかなりボクの先走りだけれども、すべてをデジタルにするのだから、今、読者が紙の本で持っている本のデジタルデータを提供することを考えたいと思っている。たとえば、自炊代行業者に宅配便で送るように、出版デジタル機構に送ってもらえればそのデータか閲覧権を提供する。

読者からみれば、持っている本の記録と検索性が高まる。出版社からみれば、読者の本棚に空きが出て、思う存分本を買ってもらうことができるのではないだろうか?

第三に、著作権者のデータベース化が進み、利用度合いに見合った使用料で著作物の利用を可能にするこができそうだ。

これらはボクの妄想の度合いが強い。ほかにもアイデアはどんどん湧いてくると思う。こうした環境が整えば、その環境を利用した新しい商売を生み出す、新しい人たちが出てきてくれる可能性が広がるとも思う。

そこで、デジクリ読者にお願いです。よくお客が店を育てるって言うじゃないですか? ここはイッパツみなさんにぜひ、すべての出版物のデジタル化とその活用を育てていただきたい。どうするって? デジタル化されたすべての出版物を使った新しいサービスのアイデアがあれば、ぜひお知らせ下さい。自分でできることがあれば取組んで欲しい。

それから10月3日(月)に新宿ロフトプラスワンに来て、電子書籍と出版デジタル機構についてのさまざま意見を聞かせて欲しい。
そうです、10月3日に直接お会いしましょう。

◎版元ドットコムpresents
出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)
──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構

出版デジタル機構設立準備連絡会が発足して、出版界が既刊本の電子化に本格的に取組む第一歩が踏み出されました。一方、中小出版社でネットワーク対応を強化するなどの取組みを行ってきた版元ドットコムは、機構に参加しながらも、電子書籍市場の確立に自立して取組んでいこうと思っています。

9月には.bookを開発したボイジャーと共同して、版元ドットコムストアもオープンさせました。しかし現実の電子書籍の制作や流通は過渡期であるために、日々変化しています。最新の状況を共有すると同時に、電子書籍を実際につくるにはどう考えてなにをするのか、実務的にも掘り下げて提起します。

電子書籍のとりくみを本格化させようという中小出版社向けのイベントですが、電子書籍や出版に関心もっていただける方も一緒にオープンな議論をしたいと思います。

(主な内容)
・電子書籍はどうなっていて、どうつくるのか? 
・版元ドットコムストアを突破口に電子書籍に習熟する  
・出版デジタル機構で版元ドットコムはなにをしようとしているのか
日時:2011年10月03日(月)Open 18:00 / Start 19:00
会場:ロフトプラスワン(新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 TEL 03-3205-6864)
出演:沢辺均(ポット出版)
萩野正昭(予定 ボイジャー)
鎌田純子(予定 ボイジャー)
仲俣暁生
料金:1,000円(+飲食代)
申し込み< http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/reservation/reservation.php?show_number=196 >

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -132[2011.009.20〜2011.09.27]

●2011.09.20火
なに新聞に、なんという本が、(だれが書評して)掲載されたかをデータベース化するプロジェクトの打ち合わせ。
すでに版元ドットコムでは、掲載情報メールマガジンを発行しているのだが、これをさらに改良しようとしている。
主力はスタジオポットSDの古井だ。
夕方ボイジャーの清水さんが来て、版元ドットコムストアのことなど。
この日から10月3日(月)の「出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構
というイベント=ロフトプラスワンの宣伝を開始。
あ、それとついにMacBookAirを買ってしまう。ヨドバシカメラで昼前に注文したらよるには到着という素早さ。
macbookair

●2011.09.21水
台風が直撃。
17時半から会議があるんで「やるの?」と聞いたら決行だそうだ。
16時過ぎに事務所をでる。北参道駅をめざすが、途中でタクシーが偶然空いていたんで、載ってしまう。
会議中は電車がとまったりして大変だったけど、計画とおり、会議終了ころには雨もやんでた。
まだ電車はあちこちでトラブっているようなんで、腹もへったんで、ピザ屋。ゴチに。
帰りに表参道のニッポンレンタカーで車を借りて、仕事をかたづけ、午前2時半頃北軽井沢に出発。
残っていた、上野・鈴木・和田を家まで送って関越道へ。
台風の中の会議

●2011.09.22木〜2011.09.26月
休暇。北軽井沢の会長の別荘を借りて、鉄とすずを走らせたり、DVD見たり、本読んだり。
ついでに、原稿も書きました。アタマも整理したつもり。
散歩中に、地元の不動産屋のにいちゃんに行き会ったので、いい物件ないかって聞いて、
2カ所つれてってもらう。600坪で600万くらいで手に入りそう。
建物はあーしてこーしてと、カネのことなんかも考えたりしたんだけど、、、な。
囲いをつくって、ドックランを、というのが狙いではあるんだけども、、、。
201109休暇201109休暇
201109休暇201109休暇
26日は20時くらいに東京に到着する。事務所に顔出してたら、『僕に生きる力をくれた犬 青年刑務所ドッグ・プログラムの3ヵ月 』があっさりと入稿していた。

●2011.09.27火
マンション管理組合の総会。引き続き役員に。
ひとつひとつは細かいんだけどってことを片っ端から片付けた。
それなりに片付けられたとは思う。

10月3日(月)出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構

来週、ロフトプラスワン、などというところで版元ドットコム主催のイベントをします。
よろしければ、ご一緒しましょう。質問意見、大歓迎のイベントです。
終了後もボクは残りますからおしゃべりしましょう。
ヨロシク!

あ、出版デジタル機構のことを今日のデジクリ(日刊デジタルクリエイターズ メールマガジン)に書きました。
■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[13]すべての出版物をデジタルに向けて出発した「出版デジタル機構」/沢辺 均
http://bit.ly/pSxwVS
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版元ドットコムpresents
出版社が電子書籍に取組む方法(実務編)──中小出版社の電子書籍戦略と出版デジタル機構

出版デジタル機構設立準備連絡会が発足して、出版界が既刊本の電子化に本格的に取組む第一歩が踏み出されました。
一方、中小出版社でネットワーク対応を強化するなどの取組みを行ってきた版元ドットコムは、機構に参加しながらも、電子書籍市場の確立に自立して取組んでいこうと思っています。
9月には.bookを開発したボイジャーと共同して版元ドットコムストアもオープンさせました。
しかし現実の電子書籍の制作や流通は過渡期であるために、日々変化しています。最新の状況を共有すると同時に、電子書籍を実際につくるにはどう考えてなにをするのか、実務的にも掘り下げて提起します。
電子書籍のとりくみを本格化させようという中小出版社向けのイベントですが、電子書籍や出版に関心もっていただける方も一緒にオープンな議論をしたいと思います。

【主な内容】
・電子書籍はどうなっていて、どうつくるのか? 
・版元ドットコムストアを突破口に電子書籍に習熟する  
・出版デジタル機構で版元ドットコムはなにをしようとしているのか
●日時 2011年10月03日(月)
Open 18:00 / Start 19:00
●場所 ロフトプラスワン
 新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 TEL 03-3205-6864
●出演 沢辺均(ポット出版)
 萩野正昭(予定 ボイジャー)
 鎌田純子(予定 ボイジャー)
 仲俣暁生(文芸評論家・マガジン航編集長・文藝家協会電電子書籍出版検討委員会)
●料金
¥1000(+飲食代)
●申し込み
■一般の方
ロフトプラスワンの以下のお申込みフォームからお願いします。
LOFT/PLUS ONE | 予約フォーム
■版元ドットコム会員・会友とその紹介者の方
以下の申込フォームからお願いします。
短縮URL http://goo.gl/60nXN

ポット出版社長・沢辺均の日記 -131[2011.009.17〜2011.09.19]

●2011.09.17土
事務所で雑用。
夜はベラミナイト。近所のスナックで楽器持ち寄って合奏だ。
この夜は、参加者も十数人と少なかったけど、まったりと、のんびりと。
このベラミナイトに来て、ベースを始めたという青年を無理矢理引っぱり出して、
Aのスリーコードでブルースっぽく。

●2011.09.18日
この日も事務所で雑用。
横芝光図書館の貸出し冊数のことをツイッターで発見。
『ず・ぼん』で取材したことがあったので、この話も取材せねば。
深夜にご近所裏道徹底散策コースの散歩に鉄とすずと。
二人ともウンコたっぷり。

●2011.09.19月
頼まれた3200字の原稿。なんとか無理矢理方向をひねり出す。
東野圭吾の新作「マスカレード・ホテル」を読んでまったりとも。
休みのウチに進めておいた方が良いことは、だらだらとして進まない。

ポット出版社長・沢辺均の日記 -130[2011.009.04〜2011.09.16]

●2011.09.04日
すでに記憶がない。記録もない。

●2011.09.05月
たんたんとした一日、だったはず。

●2011.09.06火
お茶の水、明大の会議室で「書誌・書評情報研究会」3回目。
もうみんな飽きたかなーと思っていたけど、あいかわらずの参加者、いっぱい。

●2011.09.07水
出版会議。小形さんとマンガの復刻や文字コードの話。
ケインズ一般理論の打ち合わせをしたり、夜はず・ぼんの編集会議。

●2011.09.08木
朝9時に代々木図書館。それから富ヶ谷図書館に回る。
2館とも館内整理のための休館で会議したり、作業したり。
夜は中央公論のGさんMさんとオルガニークで食事とまあ情報交換。
ふむふむ、はー、なるほど、。

●2011.09.09金
ポット会議、整体もうける。
「ジュン」のカバーのデザインと仕様について大説教。
なかなかうまくはいかないんだ。

●2011.09.10土
午後新宿で、情報交換や意見交換。
帰りに大好きなヨドバシカメラによったり。

●2011.09.11日
ふーむ?
取材用のカメラ、会社用に買う。

●2011009.12月
出版デジタル機構の打ち合わせ会議。
よるはちょっととあることで謀議で。
深夜デジクリの原稿にとっかかる。

●2011.09.13火
デジクリの原稿「デジクリ連載12 ■自炊代行業者への質問書騒ぎで思ったこと
ギリギリに送る。
版元ドットコムの電子書籍勉強会の準備やレジュメやらなんやら。

●2011.09.14水
出版会議。そのあとSDと会議。
夜はNPOげんきな図書館の理事会。

●2011.09.15木
大和田図書館へ。館内整理の日で、会議に。
帰ってきて整体を受ける。
午後3時で、出版デジタル機構のプレスリリース配信で、公開していいことになっていたのだけど、
すでに記者にもリリース案のコピーが渡ってたりしたそうで、その前から問合せがあったそうだ。
そこで、2時半にはファックスを開始。こうした事務作業を地道にやってくれたのは講談社広報。ありがたい。
ポット出版ニュースと、版元ドットコムおしらせは、事前に15時公開にセットしてあった。
ウエブ版の新聞、日経は夕刊に掲載。
ツイッターでもいろいろつぶやいてくれた人がいた。
オレもできるだけつぶやこうと思っていろいろ。そしたら小形さんがまとめてくれた。
→「出版デジタル機構」をめぐる @sawabekin 氏の思い
植村くんに取材の様子などを電話できいたり。
オルガニークのケーキ

●2011.09.16金
ポット会議と掃除。
夕方からオルガでデザインチームの会議(食事付き)。山田・和田・大原とオレ。
本音に近い話とかでて面白かった。
夜は21時15分からギター教室1時間。アーなるほど、、ルート音からはじまるチョー短いスケールを教わった。

デジクリ連載12 ■自炊代行業者への質問書騒ぎで思ったこと

■電子書籍に前向きになろうと考える出版社[12]
自炊代行業者への質問書騒ぎで思ったこと

沢辺 均
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110913140100.html >
───────────────────────────────────
講談社、角川書店、集英社、小学館、光文社、新潮社、文藝春秋の大手出版社7社と、東野圭吾氏や浦沢直樹氏など作家・漫画家の122名が自炊代行業者に質問書を送ったそうだ。

質問書の全文はココにあり(ITmedia/eBOOK USER)
< http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1109/06/news064.html >

この動きは、たぶん裁判の訴えのための準備なんだろう。業界のうわさ話でも、「9月に行動開始がきまった」というのを聞いたことがあった。

さて、この自炊問題だけど、過去に、このデジクリや、ポット出版サイトで、こんなことを書いてきた。
[05]書協の自炊代行は違法という注意喚起文に違和感
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110308140100.html >
[03]自炊と国立国会図書館の「全文テキスト化実証実験」
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20110208140100.html >

[05]では自炊とその代行に関して、
弁護士の福井健策さんの説明をひきながら、こう書いた。

 著作権法の理解については、福井健策弁護士が「書籍の電子化、『自炊』
 『スキャン代行』は法的にOK?」と「INTERNET Watch」サイトで明快に書い
 ていて、ボクも賛成。異論もあるようだが、自炊の著作権法理解に賛成だ。
< http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20100917_393769.html >

 福井さんの書いていることは、個人の自炊(自分でスキャン)は適法。家族
 で共有することも適法。自炊の代行サービスは「私的複製の範囲を規定する
 著作権法第30条1項を見ると、「『使用する者が』複製することができる」
 と書かれています。こうしたことから、自炊に限らず複製の代行サービスは、
 私的複製として許容されないというのが通説として定着しています(表【2】
 参照)」と、適法 違法(2011.09.18修正)だと言っている。

 ボクとしては「そのとおりだね」と言う以外にない。

あるいは、ポット出版のサイトの日誌コーナーではこう書いた。
○2010-12-29 「自炊の森」はだめでしょう+自炊について+書協ガンバレ
< http://www.pot.co.jp/diary/20101229_160836493921832.html >

 妥当な費用負担をして、便利になりたい、という要望に応えることが先決で、
 その対案を出さずに、自炊代行サービスタタキをするのは、妥当性を欠くや
 り方だと思う。提供しているサービスの不足をたなに上げて、その不足を埋
 める第三者の行為を「だけ」をたたくだけだから。

●ブックスキャンに取材してみた

『ず・ぼん──図書館とメディアの本』という本を年に一回ほど発行しているんで、その記事としてブックスキャンの取材をした。ボイジャーストアで、PDFダウンロード版を200円で売っているんで、読んでみて下さい。面白いとおもいますよ。
< http://www.pot.co.jp/news/20110901_193447493925250.html >

ブックスキャンの取材でイチバン興味をもったのは、スキャンしたタイトルのデータだ。ブックスキャンは整理して持っているわけではないようだけど、ぜひ見てみたいのだ。

だってこれ、今日の「スキャン電子書籍」の販売予測データであり、ニーズがどんなタイトルにあるのか? というデータだから。宝の山なんじゃないかな?

ボクは今、数10万のスキャンPDF・OCR付きを、出版社がみんなで一気につくって販売しようぜ、と考えているからだ。どのようなタイトルにニーズがあって、それってどのくらい売れそうか(売れなさそうか)予測する絶好のデータでしょ?

今回の出版7社の行動は、こうしたデータをみすみすのがしてしまう行動ではないだろうか?

●出版社が対応すべきこと

出版社は「妥当な費用負担をして、便利になりたい、という要望に応えることが先決」なんだと思う。

こうした取組みの準備も、実は進んでいる。ボクはまだまだ遅い! とか思うんだけど。でも出版業界も一色ではなくて、要望に応えようと取組んでいる人たちもいるのだ。当然、業界内、会社内の熱心ではない人と議論して、説得したりもしている。こうした仕事を増やして、わざわざ自分を忙しくしてしまっている人がいるんだ。

ボクは、もう少しこうした人たちの努力とつきあおうと決めた。「電子書籍への対応をもっと早くやれよ」みたいに、出版社に考えている人たちがいてくれるなら、お願いしたい。もう少しの間、「電子書籍への対応をもっと早くやれよ」と言い続けてくれないだろうか?

できてないことだけに着目するのではなく、「電子書籍への対応をもっと早くやれよ」という方向に、出版社が動くように促してもらえないだろうか? 少なくとも、すでに出版されている「既刊本」という蓄積を、電子で利用できるようにするのに、今のところ一番可能性をもっているのは出版社なのだ。

もちろん、われわれの既得権を守ってくれ! とだけ言っているのだとしたら、大丈夫、そうした出版社は早晩退出せざるえないと思う。今の、あたらしい状況に小手先、口先だけでしか対応できないとしたら、長い目で見て退出せざるえなくなるんじゃないか? だって、読者に見放されるのだから。

既刊本というみんなの財産を有効に活用する作業をする候補者=出版社が、もしこれに取組めなければ、そんときは、ボクももう出版社みんなで取組もうなどと言うことをヤメるよ。

【沢辺 均/ポット出版代表】twitterは @sawabekin
< http://www.pot.co.jp/ >(問合せフォームあります)

ポット出版(出版業)とスタジオ・ポット(デザイン/編集制作請負)をやってます。版元ドットコム(書籍データ発信の出版社団体)の一員。NPOげんきな図書館(公共図書館運営受託)に参加。おやじバンドでギター(年とってから始めた)。日本語書籍の全文検索一部表示のジャパニーズ・ブックダムが当面の目標。

版元ドットコムも参加 出版デジタル機構(仮称)設立準備連絡会設立

すべての出版物のデジタル化を目指して、出版デジタル機構の設立準備連絡会を発足させました。
出版界の大手から中小零細まで、すべての出版社に呼びかけて、電子書籍提供をしようというものです。
ポット出版は版元ドットコムの組合員たちと一緒に、その一員としてこれに合流しました。
(一緒に参加した6社は語研、スタイルノート、青弓社、第三書館、太郎次郎社エディタス、トランスビュー)

なぜ、今ある出版社で「すべての出版物のデジタル化を目指し」ていくのか?
ポット出版は、これまで日本で出版物として多くの人に読まれてきた既刊の本を電子化するには、
その本を出版した出版社が取組むのがイチバンの近道だと思うからです。

既刊の本は、さまざまな書き手たちに著作権があります。これら書き手たちに電子書籍化を働きかけるなら、
やはり、その本を一緒につくって、流通にも責任を負った出版社が働きかけをするのが、早くうまくいくと、
考えています。

日本の出版社は、そうした道に大きく一歩ふみだしました。
海外にも例のない取組みだと自負しています。

ボクはこれまで、たとえば自炊やその代行に多くの人の利用があるのは、出版社の電子書籍化の取組みのおくれが原因で、出版社(業界)の怠慢だと書いてきました。
なので「すべての出版物のデジタル化を目指して」という取組みが必要だと行動してきたつもりですし、
今回、この合意に積極的に参加しました。

また、国立国会図書館と一緒に取組んできた(ものの、うまく進められていない)「ジャパニーズ・ブックダム」
=日本の書籍の全文検索・一部表示を、現実のものにするための一歩だとも考えています。

ただし、これから実現にむかってはまだまだヤマのような仕事が待ち構えています。
たくさんの費用もかかります。途中でうまくできなくなるかもしれません。
あまりの険しさに、少しビビってもいます。

まあ、あまり深刻にならずに、まずは一歩を踏み出せたことに、今日のところは素直に喜ぼうと思います。
できれば、みなさんがちょっとだけ注目してもらえればウレシイ、です。よろしく!

2011年9月15日 ポット出版 沢辺均

↓一部だけ直しがあったので、最終版と差し替えました(2011.09.15 16:10)
出版デジタル機構出版デジタル機構
─(以下テキスト)─────────────────────────────
報道各位

プレスリリース

出版デジタル機構(仮称)設立のお知らせ
——すべての出版物のデジタル化を目指して——

平成23年9月15日
「出版デジタル機構(仮称)」設立準備連絡会

 このたび、インプレスホールディングス・勁草書房・講談社・光文社・集英社・小学館・新潮社・筑摩書房・東京大学出版会・東京電機大学出版局・版元ドットコム(代表:ポット出版・ほか6 社)・文藝春秋・平凡社・有斐閣の出版社20社(五十音順)は、出版社が主体となって作る新会社「出版デジタル機構(仮称)」の設立に合意いたしました。

 「出版デジタル機構」は、日本国内における電子出版ビジネスの市場拡大をサポートするための公共的なインフラとなります。同機構の主要な業務のひとつは、出版物のデジタルデータの保管=ストレージです。また、それだけではなく、すべての出版物のデジタル化の支援に努めます。さらには各電子書店への配信業務のサポート、図書館に対する窓口機能等の業務も進めてまいります。これらのインフラを整えながら、読者にとってのよりよい読書環境を育てていくことを目標といたします。

 現在、国内では数多くの電子書店がすでに稼動しています。一方で、電子出版に関しては、海外に本拠を置くプラットフォーマ一等もさまざまなアプローチを試みている最中です。市場の基盤を固め、日本の電子出版物の国際競争力を確かなものにしていくことが、新会社の目的のひとつです。

 今回、出版社20社が設立合意に達した同機構は、総務省・経産省・文科省を軸としたいわゆる三省デジタル懇談会等において、昨年から議論がつづいてきた課題に対するひとつの回答でもあります。それらの課題とは、「出版物へのアクセスの確保」や「図書館と出版社のあり方」、「出版物の権利処理のしくみ」などに関わる事項です。新たな市場を拡大する上で横たわる課題を解決しながら、出版界の将来を形づくっていくことが同機構の役割です。

 今後は、出資についての詳細な内容を調えながら、この冬にも、新会社としての設立を目指します。著作者のご理解、及び出版関連団体・企業のご協力をいただきながら、さらに国内の出版社の参加を広く募っていく予定です。

 なお、同機構の具体的な目的や、業務内容は下記のとおりです。
 皆様方のご理解、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

I 「出版デジタル機構」の目的および目標

●国内における電子出版ビジネスの公共的インフラを整備することで、市場拡大を図る。
●日本の電子出版物の国際競争力を強化する。
●研究・教育・教養分野における電子出版物利用環境を整備する。
●現在または将来の利益逸失を防ぎ、出版界全体の成長に貢献する。
●国内で出版されたあらゆる出版物の全文検索を可能にする。
●本機構は各出版社等からの出資を受け、収益化を目指す。

Ⅱ 同・基本業務内容

●「出版デジタル機構」(以下、「本機構」)参加各社の出版物デジタルデータの保管業務を
行う。
●対図書館ビジネス(BtoP)を各社に代わって本機構が代行する。
●国立国会図書館が電子化をおこなった雑誌・書籍の民間活用の担い手となる。
●各電子書店・プラットフォーマーに向けての配信業務(BtoB)を支援する。
●各社の希望に応じて出版物の電子化を行う。
●各社の著作権者への収益分配を支援する。
●電子出版物に関する検討事項を討議し、解決する場を提供する。

※本件について当面のお問い合わせは、「出版デジタル機構(仮称)」設立準備連絡会議長・植村
八潮(日本書籍出版協会理事・東京電機大学出版局局長)まで。なお、ご連絡は左記・日本書籍
出版協会事務局03-3268-1303 樋口あてにお願いいたします。