2021-08-13
『なかったことにしたくない 〜電子書籍をさがすなら hon.jpの5122日』を読んだ
『なかったことにしたくない 〜電子書籍をさがすなら hon.jpの5122日』
ボイジャーから電子書籍とプリント・オン・デマンド(POD)で発売された『なかったことにしたくない 〜電子書籍をさがすなら hon.jpの5122日』を、浅間の山の小屋で、読んだ。
僕も出てくるんで、発売された当初にPODの本を寄贈してもらっていたけど、これまで読んでなかった、5月に発売されてたのに。
最近は、目が悪くなって電子書籍をiPhoneで文字を大きめにして読むので、紙の本じゃな、というのと、「なかったことにしたくない」
っていう「情緒的」なタイトルにひいたからだと思う。
でも、内容は、hon.jpという電子書籍検索サイト事業の記録なんで、電子書籍で買い直しておいた。
8月は、浅間の山で休暇兼リモートワークをすることにした。ちょうど小説を読み終わって、そろそろ読むかってタイミング。
読み始めたら一気に読んでしまった。
落合さんは(僕と違って)文章うまいな、事業や会社の立ち上げの話や、落合さんと一緒にやったこと、その関わりの時の落合さんの「受け止め」方や、気持ちなども語られていたからだし、そもそも電子書籍の日本における創世記の大切なポジションを担っていたhon.jpの成り立ちや行末が、リアルで面白かったからだと思う。
「〜理詰めで語調を強めていく沢辺に返す言葉をなくしていった。最後には怒鳴るような体になった沢辺を、準備会のメンバーが諌めて〜」なんていう恥ずかしい僕の過去を落合さんに「目撃」されていてしっかり書いてもらってた(笑)。確かにあのときは激昂してしまったのだ、あー恥ずかしい(ってそんなことんばかりだけどね)
電子書籍の書誌情報のデータを、落合さんたちが「三層」にしたこと、その理由とか、もっと議論しておきたかったな。
電子書籍の書誌情報整備に、いまも一番必要なのは、共通の番号だと思っている。
版元ドットコムで電子書籍書誌情報の登録をつい最近やっと実現したんだけど、この共通の番号(とその体系、例えば紙の本と電子書籍の同定をどうするかなどを織り込んだもの)の不在が、相変わらず厄介で、ここは電子書店も含めて共通化しないと将来に問題をのこしてしまう。
そんなことも、改めれおもいだした。
出版や電子書籍に関わりのある人、興味のある人は読んでおくといい本だ。
でも、そういう読者対象は少ないので、ボイジャーの電子書籍版+PODでの発売という方式がなかったら、多分まとめられなかった一冊だと思う。
こうした記録は、出版本来の役割として重要な役割の一つ。電子書籍で、あるいは紙の本が国会図書館などで保存されて、後の検証の材料となるからだ。
落合さんでなければ書けなかったもの、まとめることができなかったもの。そうしたものをまとめた落合さんに、心から拍手。
読んでみようという人は、上のほうのタイトルのリンクからたどって行くと、楽天ブックスやhontoやアマゾンなどにいけるbooks.or.jpの画面になる。
ボイジャーの「理想書店」はこちら
最後に、注文をつけておこう(笑)。
ボイジャー発行のこの本は、版元ドットコムサイトでは検索しても出てこない。版元ドットコムの会員になっているにもかかわらず(笑)。
JPRO(出版情報登録センター)が公開している、books.or.jpには登録されているから、版元ドットコム会員社のボイジャーは、版元ドットコムシステム経由ではなく、JPROに直接登録しているのだろう。版元ドットコムシステムを利用してくれればいいのに(笑)。
おまけに書影はbooks.or.jpには出てこない。
楽天ブックスでは、紙の本も電子書籍も発売されているけど、紙の本には書影がなく、値段も2,200円のはずなのに1,100円で、「注文できない商品」になっちゃってる。
Hontoでも、楽天ブックスと同様。
アマゾンは、電子書籍は発売されている。紙の本は、オンデマンドコーナで販売。
ボイジャーは、自社の電子書籍販売サイトでの販売からはじめて、その他の電子書店からの販売はフォローしているようだけど、紙の本(POD印刷ではあるけど)の流通は良くないな。POD印刷であっても、活版・オフセットのような印刷方式のちがいしかないんだから、PODでもなんでも関係なく紙の本として書店・ネット書店流通を整備するのがいいんじゃないか。
あ~あ、またおせっかい虫がうづいてしまった、よ。