2005-02-13
「U-Carmen eKhayelitsha」ほか3本
朝は、後でお知らせする、金熊賞を受賞した作品に行ったのでした。
ペトラ(以下P):南アフリカの作品「U-Carmen eKhayelitsha」
監督はイギリス人のMark Dornford-May。
カルメンがXhosaというアフリカの言語で初めて歌われたということね。
「U-Carmen eKhayelitsha」
監督Mark Dornford-May
「U-Carmen eKhayelitsha」
監督Mark Dornford-May
淑子(以下Y):この監督は初めて映画を撮って、そして金熊賞もらってしまったのよね。ちょっと違うんじゃないかな。
P:フラメンコの国の情熱的なカルメンをアフリカにロケーションをかえて見せるっていうのは、私達ヨーロッパの人間にとってはとても異質なものというか。でも、監督は記者会見で、オペラのカルメンを、自分にとってはどの国で作ってもいいと思い、スペインではなくたまたまアフリカ、と思っただけって言っていたわね。
Y:設定は貧民街のアフリカで、そこで働く人々の中にカルメンがいて、警察官だのナンだの出てきて、彼女に恋したり・・・。
P:全て映画は初めてのアフリカ人ばかりで、でも彼らは踊りも歌も演技もする集団ではあるのよね。
Y:ユニークで面白いとは思ったけれども・・・。とにかくみんな、めちゃくちゃ太っているよね! 「カルメンは、こんなにあまりに美しい・・・」とナレーションあっても、ええ!ってちょっと驚いてしまったりと・・・。
P:みんな太いので、そういう設定にしたと淑子は思ったみたいだけれども、そうじゃなくて、あの国の人々の体型はみんなああなのよ、それが普通なの。つまらなかっただけでなく、なじみのない感じで感情移入できなかったわ。
Y:本当に素晴らしい監督だと、例えば小津安二郎監督みたいに、どんな状況でも観客は小津家の住人になれるほど移入できるでしょ。ヨーロッパで小津の評価が高いのも、そんなところがあるからね。でも、この映画は確かにかなりの違和感があったよね。でも、設定は面白いって思った。ただし、あまりにヘビーが画面で(みんな太っていて動きも鈍いから)、最後まで見るにはちょっと重たすぎてお腹がいっぱいです〜〜って感じだったなぁ。
P:休憩中に、ショッピングしているカルメンを演じた女性にばったり会ったよね。
Y:そうそう!! やっぱりかなり太っていたね(笑)。
「Sophie Scholl – Die letzten Tage」
監督Marc Rothemund
Y:2本目は「Sohie Scholl-Die letzte Tage」。
ドイツ映画で、Marc Rothenmund監督。結構若い監督だよね。
P:記者会見に行ったら、野球帽をかぶっていたよね。若い感じがした。様相がカジュアルなのに、映画はシリアスな内容だしねー。
Y:新聞には、ナチを敵対するだけでなく、少し柔らかく人間的に描いた初めての作品じゃないかって書かれていたよね。これは何度も映画化されている、ショル兄弟の物語なのだけれども、要するにナチの時代に地下運動していて、仲間と頑張っていたショル兄弟が、ナチ批判のビラをまく時につかまってしまい、ナチに尋問を受けるのだけれども、ゾフィー・ショル、つまり妹は、地下組織の唯一の女性。まだ若いのだし、ナチ側も命だけは救おうと、監視として女性をつけて、何とか解放してあげようとする。でも、仲間や兄を裏切るつもりのないゾフィーは、何時間もの尋問にも耐え、そして最終的には死刑になってしまう。とても勇敢に戦ったというお話ね。
P:これは、監督は旧東DDRに保管され深く眠っていたプロトコール(当時の尋問記録など)を読んで感動し、何とか映画にしたいと思ったとか。新しく出てきたそうした資料をもとに、事実をしっかりと映画化したのよね。主演のJulia Jentschは、若手ドイツ人女優では今一番注目を浴びていて、今回も主演女優賞を受賞したよね。彼女がとって良かったし、賞が当然だと思ったけれども、監督賞までとるのはおかしいわ。
Y:そう、ソクーロフ監督がとるべきだった! あるいはイッセー尾形さんが主演男優賞とか・・・あ、脱線してしまったけれど・・・。
*ソクーロフ氏監督、イッセー尾形氏主演「Solnze(太陽)」のレポートはこちら
P:そう、この作品は良かったけれども、2つも賞をとる必要はないって思えるよね。他の良かった作品にも分けるべきだった。
Y:監督は、記者会見で、ソフィーの勇気をたたえ、最後まで一人の人間としてナチに対峙したことを評価していたわね。また、ナチ側も、彼女を若い女性としてではなく、ちゃんと立派なレディとして扱い、話も緊迫した内容になっていて、面白かったと思う。というか、やっぱり泣いてしまう映画ね。
P:そう、泣いた泣いた!!
「In Good Company」
監督Paul Weitz
Y:今日の最後は、「In good Company」
アメリカ作品で、PaulWeitz監督。
Dennis Quaidの演技がなかなか今のおやじを表現していたよね。日本でもこの傾向があるし、社会現象になっているらしいけれども、中高年の持っている技術を見直そうという動き?
P:テーマはとてもアクチュエル。つまり、解雇されるような中高年が、実はハートも実力もあって、今の若い頭脳の人間にないものがある。それが最後には認められるって感じ? 悪くないし、役者もいいし、感じもいいし、楽しめるけれど、ただそれだけの映画よね。何も映画祭で上映される必要はないんじゃないの。
Y:アメリカ映画は、ちょっとシリアスな話だと、すぐに映画祭で上映したがるっていうか。でも、苦悩の質が他の厳しい国とはあまりにかけ離れているから、かえってこういう社会派の映画祭に来ると、なんで?って首をかしげるようなのが多いよね。もちろん、映画のPRにはうってつけだからなのだけれど・・・。そういうのはもうそろそろやめて、本当に見せるべきものを見せた方が面白いけれど。でもまぁ、ユーモアもあって、ハードな映画祭のブレイクって感じではあったかな。