2008-02-14
ベルリナーレ 2月13日
今日は、私はコンペ枠作品を見ました。
ぺトラが頑張って復帰いたしましたので、彼女にパノラマ部門のマドンナ初監督作品を見に行ってもらいました。
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1本目は、コンペ枠の作品「母べえ」です。山田洋次監督で、監督はもちろん、主演の吉永小百合さんも共演の浅野忠信さんも、記者会見に正装して出席されました。
私は記者会見には行きませんでしたが、メイン会場前に設置された画面で、シューティングタイムのところを見ていました。
吉永さんは、とってもきれいなお着物でいらっしゃいました。
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ストーリィの方は、現在日本でロードショー中大ヒットと聞いていますので、ここでは触れないでおきますね。
ジャーナリストの反応を書きたいと思います。
山田洋次監督作品は、今までも何度かコンペにノミネートされていますので、世界のジャーナリストはよく知っています。
過去の作品は、時代劇だったのですが、今回は違います。
時代劇作品の時は、ぺトラに限らず、まわりにいたいろいろな国のジャーナリストの反応が今ひとつだったのですが、今回はベルリナーレでもよく題材として取り上げられる、戦前から戦後にかけてのストーリィでしたので、皆さん興味深く見入っていたように思います。
拍手はまばらでしたが、途中で出る人も少なく、反応はまぁまぁだったのではないでしょうか。
山田監督にとってちょっと残念だったのは、プレススクリーンでマドンナ映画と時間が若干かぶっていたためなのか(母べえは9時から、マドンナは10時15分から)、どちらかを選択しなければならなかったジャーナリストが多かったのではないかと思います。
通常は満杯になる上映会場には、かなりの空席が目立ちました。
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ジャーナリスト用に配布された資料には、吉永さんのプロフィールが詳しく載っています。
特に印象深いのは、吉永さんがライフワークのひとつとして、1986年より広島と長崎の原爆に関する詩の朗読会をしているということ。
世界のジャーナリスト達は、こうした内容に敏感に反応します。
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それにしても・・・吉永小百合さんの美しさは、もう尋常じゃないですね。
年齢を知っている者としては驚きです。
考えられない驚愕の若さと美貌!!
吉永さんよりずっと若い私の方が、顔のしわが多いです・・汗+涙。
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2本目にご紹介するのは、マドンナ監督作品「Filth & Wisdom」です。
ぺトラが、がんばって見に行ってきてくれました。
記者会見もありましたが、入場はかなり大変だったと思います・・汗。ぺトラはパスしたそうです。
実は映画祭サイドから、私たちに前もってお知らせがあったのですが、マドンナの時の記者会見では、カメラマンの人数が制限されて、事前に申し込みをしなければNGという厳しい条件がありました。
皆さん、とても苦労されたようです。
それでは以下、ぺトラの感想です:
映画の感想の前に、ひとつどうしても言いたいことがある。
それは、通常上映30分前に並ぶことはあっても、それ以上のことはよほどのことがない限りありえない。
なのに、マドンナ初監督作品というだけで、1時間以上も前から長蛇の列ができているのは、どうしたことだろう!
そのことに、一体どれだけの意味があるというのだろう?
私にとって、この作品ははっきり言ってつまらないものだった。
ひとりのバンドリーダーのストーリィ。
Eugene Huetz という人物で、ジプシー・パンクグループのメンバー。
彼はウクライナからアメリカにやって来た移民で、若い2人の女性と一緒に共同生活をしている。
生活環境は頽廃的で、安っぽいナイトクラブが頻繁に出てくる。
セックスに満ちた世界・・・大なり小なり、堕落した世界とも言える。
全てのこうした瑣末な出来事が、主人公の過剰なまでの自己満足な哲学的コメントで語られる。
それはそれで、可笑しくて退屈はしないのかもしれない。
でも一体どれだけの観客が、そんな彼の話を興味深いと思うのだろうか?
マドンナは、この監督という試みに関して言えば、自分を過大評価していると私は思う。
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とまぁ、かなり辛口であります!
新聞にも、1ページで大きな写真入りで紹介されていましたけれども、やはりどこもビッグな扱いですね。
映画監督としては新人であっても、マドンナが作ったとなれば、どうしても話題先行になります。
でも、新聞によれば、マドンナはこの主人公の音楽性を、会う前から気に入っていたようです。
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プライベート・ジェット機でベルリンのテンペルホーフ飛行場に降り立ち、記者会見+レッドカーペットの後にはロンドンに戻るとのこと。
ベルリナーレのゲストの中でも、ひときわ目立っています!
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3本目なのですが、これはぺトラが見ることになっていて、実際に見に行ったそうなのですが、1時間しないうちに咳のウェイブが襲ってきて、途中で出なければならなったとのこと。
なので、最後まで見られず、ごめんなさい、と言っていました。
一応ご紹介しますと、コンペ枠の作品で、
「Quiet Chaos」で、 Antonello Grimaldi監督。イタリア映画です。
主人公の男性ピエトロは、丁度家にいなかった。
その時、彼の妻が自宅で突然死亡した。
彼女が亡くなった同じ時間に、彼は別の女性を助けていた・・・。
娘との関係、妻の死から立ち直れない様子。
孤独と悲しみをぬぐえない男の再生を描いています。
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そして今回は、ぺトラも私も見ていないものの、新聞などの評で人気があるコンペ枠の作品をひとつご紹介させていただきます。
Mike Leigh監督作品です。
ニュー・ブリティッシュ・シネマの中心の一人として、評価の高い監督。
これは、ポッピィというイギリス北部出身の教師が、はちゃめちゃな毎日を過ごす様子を描いたものだとか。
もともとこの監督は、ドキュメンタリータッチで実際にあるように見える手法がお好きなのだそう。
そして、観客を不安にさせ、答えを出すような内容にはしないとのこと。
「自分も答えがわからないから」と以前のインタビューで言っているようです。
ポッピィが、どんな風にはじけていたのか、見てみたかったです!
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これは、ドイツの監督作品「花見」の中で、唯一主人公がコンタクトをとる日本人女性。
ホームレスの舞踏家を演じた方です。
友達のライター&アーティストのH子さんが、彼女について調べてくれました。
入月絢(いりづきあや)さんという、舞踏ダンサーだそうです。
1983年生まれということなので、25歳ですか。
芸大の先端芸術の卒業生だそうです。
先端芸術というコースがあるんですね!
何だかこれ、すごい写真なのですけれども・・汗。
コンペ枠を中心として、映画祭に出席した監督や俳優さんは、会場用の個々の写真撮影があり、メイン会場内の各階の壁に一度は飾られます。
上演順に貼られるので、最初の方のスターや監督の写真はどんどん剥がされていくのですが、「花見」は一昨日の上映だったので、まだ残っていました。
入月さんは、日本ではあまり知られていない方だと思うのですが、どうなのでしょうか?
それに、今回のベルリナーレは、日本の事前の報道が「母べえ」一色だったように見えますし、その後も他の日本作品や、日本人が出演した作品については、ほとんど紹介されていないような気がします。
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入月さんは、ある意味すごいんですけれどもね・・。
ドイツの著名な映画監督の作品の、とても重要な役に大抜擢されたのですから・・・。
でも、報道はほとんど「なし」。
どこかの事務所に所属していないからなのでしょうか???
日本映画じゃないから?
舞踏だから?? (ってことはないでしょうけれども・・・???)
よくわかりません・・・。
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ということで、今日はこの辺で・・・。
青木淑子様、始めまして、ユリアナと申します。
もう少しで、ベルリン国際映画祭の「コンペティション」部門の結果、出ますよね?
ところで、青木様のレポートの中に。吉永小百合さんが、1986年
から「原爆に関する詩の朗読」を続けていて、欧米に記者たちはそういった活動を見逃さないという記事を読みました。欧米の記者達は、俳優たちのやっているチャリティー活動とか、政治活動に関する俳優への質問を遠慮しませんよね。そういうインタビューとか、新聞・雑誌に書いてある記事を読むと、その俳優に敬意すら感じるようになるのです。
しかし、来日する俳優へのインタビューを見ていると、日本の民放は何をやっているのかと思います。何か、政治問題とか、チャリティー活動へのインタビューはしてくれないのです。例えば、レオ様に「ECO」に関する質問はさせないし、クルーニーには「ダルフール」問題についての質問、絶対にしないのです。本当に能天気だと思います。
来日する俳優たちにも、政治問題を暑く語らせて欲しいですね。今年の2008米大領選に関する質問も俳優たちに語らせて見るのも面白いと思います。
ユリアナさま
コメントをありがとうございます。
残念ながら、コンペ部門では日本の作品は賞を逃しましたけれども、別の部門で健闘いたしましたね!
とても嬉しいです!
さて、吉永さんのお話ですが、記者会見に行っていないのでわからないのですが、ベルリナーレの記者会見では、そこそこ社会的な質問が出ます。
やはり行かなかったのですが、ダニエル・デイ・ルイスが出席した会見では、いくつかの退屈な質問にあまりちゃんと答えなかったルイスが、自分の方から「言いたいことがある」と切り出して、先日亡くなったヒース・レジャーの冥福を祈り、もうこれ以上遺族を傷つけるような報道はしないで欲しいと記者達に訴えたそうです。
ルイス自身は、レジャーとは面識がなかったそうなのですが、いろいろな報道を見ていたたまれなかったようです。
そういう話も、新聞には載っていました。(政治問題ではないですけれども・・・)
ということで、最後までよろしくお願いいたします!
19日に総括を読んでいただけると思います!
青木俊子様、
昨日ミュンヘンの街中の映画館でベルリナーレで見られなかった「花見」をみました。館内は満員とはいえなかったけど、かなりつまっていました。ミュンヘン在住の俳優が2人主人公で出演しているので、人が集まったんでしょうが、3人目の主役の入月絢さんにもかなりの人が注目したように思います。東京のどこかの公園で女の子が母親の死を悼んで舞踏を踊っているのに主人公が行き当たる。亡くなった妻が若いころ日本に行って舞踏を習うことを夢見ていたので、主人公のルーディは思わず足を止めるわけですが、入月さんの舞踏はルーディの気持ちに添っていくような自然さがあって、監督の舞踏に対する素直な理解が伝わってくるようでした。周りの人たちが暗闇の中でグシュグシュ鼻をかんでいましたっけ。
デリー監督は以前にも日本の永平寺を舞台にした喜劇風の映画を作っていて、彼女なりの日本観があることを知らされたと思います。そうした監督だから入月さんに出会えたのかな、と想像しています。
ドルホップフ知子