2008-02-14
六本木の青山ブックセンターには夜しか行ったことがないかもしれない。
原宿とかの近くで、ってわけでもなくて、高田馬場とか意外に離れたトコでもいいんだけど、まあ夜の耽る時間までダラダラ呑んだりしていた後に、何というか、太っ腹な気分にることがある。
そんな時に向かうのが、六本木の青山ブックセンターだ。
日付も変わろうという時間帯。その太っ腹っぷりを発揮にしようにも、普通、開いている店はコンビニとかラーメン屋とかばっか。
せっかく太っ腹になったってのに、コンビニで太っ腹になってどうすんだってハナシなのだ。お菓子?甘いのからしょっぱいの。DVD付エロ本?ギャルから熟女。身の回りのちょっとした小物?ノートから洗濯ばさみ。
だから俺は太っ腹になったって言ってるんだよ。何かもうサイフの紐を締めたい気分になるじゃないか。
太っ腹な気分でラーメン屋に行ったところで事態の改善は期待できない。トッピング全部するとか、ビールにライスもつけたりとか。…。トッピング全部するとか。ビールにライスもつけたりとか。…。トッピング全部するとか。ビールにライスもつけたりとか。
…あれだよ、「これじゃあ気持ちが太っ腹じゃなくて、お腹がホントに太っ腹になっちゃうよ~」的なオチに文章が向かっていくのを必死に防ごうと思って色々考えてみたんだけども、何にも浮かばない。それで同じことを繰り返してしまったんだけど、3回も繰り返してしまったんだけど。うーん。やっぱどうにもなんねえな。これは。
そんな背中合わせのメタボに怯える30代でした。
と、自虐で逃げてみましたよ。
ま、とにかく
深夜ってのは、呑んで気持ちよくなって太っ腹になってみたところで、俺の太っ腹さに納まるものを見つけ辛い時間なのだ。
そうゆうときに、行ってしまうのだ。六本木の青山ブックセンターに。
平日の夜中に、酒を呑んでポヤヤンとした頭で、新刊書とか美術書なんかをポヤヤンと眺めながら店内を回るのは、何ともクセになる感覚。
それに洋雑誌や向こうの写真集なんかも、こうゆう機会じゃなきゃ目を通すことも余りないし。
俺にとって海の向こうのグラビアは、深夜の六本木、酔っている自分、てのがセットになってイメージされている。
あるとき。例によって酒を呑んで深夜0時過ぎに青山ブックセンター行ってグダグダして帰ってきた。そんな翌朝。つうかもう昼ごろ。昨晩買った本をチェックしていたら、そこからケイト・モスの伝記本が出てきたことがある。特に欲しくもなかったのに。なぜかケイト・モスの伝記本。まあ、そうゆう気分だったんだろう。どうゆう気分だ。
そういえば青山ブックセンターをABCと略する言い方があるらしいんだけど、最初耳にしたときはこれが青山ブックセンターの略だとは気づかなかった。
青山ブックセンター。確かにA・B・Cだ。でも、そんなんいきなり言われても分からない。
友達との会話の中で、当時は暴力温泉芸者の、現在だとやっぱ作家ということになるんだろうか、中原昌也が「ABCでバイトしていた」てなハナシが出てきて、それを聞いた時にABCはABCでも靴屋のABCマートだと思い込んでしまった俺は、中原昌也がスニーカー抱えて店内を駆け回っている姿を想像して、それがちょっとおかしかった。
中原昌也がお客さんの足元に腰を落とし、靴紐スルスル…なんてな。
でもその友達は、どうして中原昌也のバイト歴なんぞを知っていたのだろう。
真夜中の六本木っていうと、どうも「ああ、あそこね」的な反応があると思う。「違う」場所みたいな。自分の日常とは乖離した感覚っていうか。
上とか下とかじゃなくて、「違う」。そんな人たちが生きてるみたいな。
六本木に限ったハナシじゃなくて、平均的な日常から乖離した場所やコミュニティーってあるでしょ。
最先端のヒトが集う店だとか、マイナーだけどヤバいメンツが出るパーティーだとか。ネクスト・レベルの揃ったクルーとか。
ああゆう平均的な日常から離れて生きているぽい人たちって、日常から乖離したところでコミュニティーのつながりを深めているようだけど、そんなことはなくて、本当はそうゆうのを保つのに疲れて息を抜く、その抜きどころで感覚を共有して繋がりを深めているんじゃないだろうか。
だからワナビーの人とかが、自分もそうゆう非日常なイケてるコミュニティーに行きたいみたくなって、乖離!乖離!て感じで無理に色んなモノを積み重ねていこうとするのは、ズレてるんじゃないのかな。やっぱり。
息の抜きどころを見つけられない人は、かなり辛い。
ずっとツンツンしている人って、ハタから見れば調子良さそうに見えるけど、本人的には結構疲れているのだ。で、いつの間にか「その場」からフェイド・アウトしていたりする。
夜中もやっている本屋。確かにちょっとお洒落なイメージある。だけどその反面、お洒落とかそうゆうので張り詰まった空気を、ふっと抜いてくれる効果もあったりする。
人の、あと街の、息抜き場。
ケイト・モスの伝記本は、本棚に収まったまま。まだ読んでいない。