2007-02-21

これが本当の今年最後!


今年最後のアップ!

皆様、すでに今回の総括は書きましたけれども、忘れていたことがあります!

先ず、昨日アップした、パノラマの映画「Blindsight」は、パノラマ観客賞を受賞しています。(って書きませんでしたよね?ごめんなさい!)

それから、ドイツ・オーストリア合作映画「The counterfeiters」についてです。ナチの時代、戦争が終結する直前のKZ(強制収容所)での紙幣偽造の話です。このストーリィは、事実をベースにしたものですが、アウグスト・ディール演じるアドルフ・ブルガー氏は、数少ない生還者で、現在89歳、チェコのプラハで暮らしていらっしゃいます。(生まれはグロースロムニッツ)私は、このブルガー氏の新聞記事を読んで、映画以上に心が揺さぶられました。映画の中で語られる「本当にあった話」というものは、意外に淡々としているものです。悪くはなかったのですけれども、ドキュメンタリーでブルガー氏にお話を伺った方がもっと内容が深くなったかもしれないと思います。

強制収容所ザクセンハウゼンで、ナチのために偽造紙幣の製造を強いられていたユダヤ人収容者の印刷職人達。その中に、熱い心を持った青年アドルフ・ブルガ氏ーもいました。

ブルガー氏の記憶の中にある事実、真実をそのまま映画にできる監督などいない・・・。彼はずっとそう思っていたそうです。

戦争終結直前、ブルガー氏は142ユダヤ人グループに属していて、ザクセンハウゼンでSSの極秘任務として、海外為替(ドルやポンド)を偽造させられていました。SSの狙いは、国際金融システムを混乱させることだったのです。

ブルガー氏や仲間の職人達にとって、史上全く例のない異様な状況に陥ったわけですが、彼らの家族がガス室で殺されている時に、彼らはナチに守られていたのです・・・。つまり、彼らの仕事(ナチのための偽造)が、彼らの命を救っているという状況。ブルガー氏達は、十分に食事が与えられ、縞の囚人服ではなく、普通の服を着ることを許され、髪もそのまま刈らずにいて良かったのだそうです。

白いシーツが敷かれた2段ベッドで眠ることができ、構内には卓球台まであったとのこと!!!

「私達は、ユダヤ人として、そこでSSの将校たちと卓球をしていたんだよ。狂っているよね・・・。」とブルガー氏・・・・。恐ろしい話だと思いました。

この記事(2月10、11日版)を書いたベルリン新聞のジャーナリスト、フランク・ユンゲヘーネル氏は、ブルガー氏にこう聞いています。
「誰が勝ったんですか?」
恐ろしい質問です。読んでいて思わず寒気がしました。

ブルガー氏はでも、こう答えています。

「SSのヴェルナーは、全然(卓球が)できなかったんだ。私は若い頃運動は得意だったんでね、だから勝つことを許されていたんですよ。」

・・・

ブラティスラバで印刷業をしていたブルガー氏は、「当時、女友達のひとりが、共産党のために仕事をしないか、と誘ってきて」、ほとんど迷わずアンダーグラウンドの道に進みました。「彼女はすごく美しかったんだ。」

ユダヤ人として追放されないように、カトリックの信者であると証明するために、ブルガー氏は地下組織の中で、洗礼証明書を偽造していたのです。そこで後に奥さんになるギゼラと知り合いました。

そして25歳になる直前、彼らは捕まってしまったのです。
「ご覧になりますか?ここ・・」そう言って、ブルガー氏はジャーナリストに前腕の裏側にある青いインクの数字を見せました。彼は自分が生き証人となって、起こった悲劇を伝えていくという強い意志を持っているのです。だからこのインクも、消さずに故意に残しているのでした。

64401

1942年9月19日に刻まれた数字・・・。その日彼はアウシュビッツに収容され、その日を最後にギゼラは消えました。当時22歳、彼女はガス室で殺されたのです。

でもブルガー氏は1年半地獄のような場所で過ごし、35キロになってやせ細り、信じられない状況の中で、それでも生き延びました・・・・。

1944年、彼はアウシュビッツを離れ、ベルリンに移送されたのですが、そこで彼は番号ではなく、「Herr Burger」(ブルガー氏)と突然呼ばれたのだそうです。しかし、彼の名前はアドルフ。そう、ヒトラーと同じ名前なのです! ユダヤ人がヒトラーと同名であることに腹を立てたナチの番人が、銃の台尻でブルガー氏の前歯4本を折ったのだそうです。

・・・
ブルガー氏の身に起こったこと、ナチのこと、強制収容所のことなど
・・・彼は死ぬまで伝えていきたいと強く思っています。

「そのために生きているんです。」とブルガー氏。

だからこそ彼は当時のことを書き、いろいろな行動を起こし、そして今回の映画も承諾したのでした。

・・・
ザクセンハウゼンの収容所の中、バラックでカバレット(寄席芸)が収容者であるブルガー氏達とSS将校とで行われたそうです。仮装し、歌い、踊る・・・・悪魔とのダンス!!

「良いSS将校などいなかった。」

・・・・新聞には、1ページでぎっしりとブルガー氏の記事が掲載されていましたが、そのまま全てを翻訳してお伝えすることは許されないので、抜粋してご紹介いたしました。

それでは、これで本当に本当の最後のアップです!

では皆様、お元気でお過ごしくださいませ。最後まで読んでくださり、心からお礼申し上げます!

青木淑子