2008-12-02

河口和也『クィア・スタディーズ』


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● 河口和也『クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)』(岩波書店)

★★★ 理論から導かれる現状分析にリアリティがない

本書は、同性愛者など性的少数者が、近代社会の中でいかに排除され、そこから主体性を取り戻そうとしてきたのかを、理論に焦点を当ててたどる試みだ。さらに、セクシュアリティを近代や資本主義というパースペクティブにおいて相対化し、社会と少数者との関係を再定義しようとする議論を展開している。

著者の分析は興味深い。

昨今、有名人夫妻が代理出産で子供をもうけたことが話題になったが、これは婚姻や出生をめぐる海外の動向と、国内の法との齟齬が浮き彫りになる事例だ。同様に、今後、同性間の婚姻という問題も浮上してくると考えられる。

社会学者である著者は、「海外のいくつかの国々や地域で認められつつある『同性婚』の関係が、日本国内における『同性婚』の可能性をはからずも導き出してしまう」として、同性愛のグローバル化がもたらす社会の変動を予測している。

一方著者は、日本のゲイ・コミュニティについてこう見る。90年代以降、メディアに新しい同性愛の情報が流通したことが、当事者の「アイデンティティやコミュニティの形成にも一定程度寄与したのではないかと思われる」。また、ゲイバーが集まる新宿二丁目も、ただの繁華街からコミュニティに変わりつつあるし、ゲイ・マーケットを意識する企業なども現れた。

しかし、そうした表層の変化が、かえって不可視の差別を温存させることになるかもしれない。「大きな資本の論理に順応することなく……自らの欲望を開放/解放しつつ異性愛規範に抵抗していくことができるのだろうか」。

著者の懸念が具体的に何を指しているのかよくわからない。が、その目標が資本主義や、既存の家族制度に組み込まれることのない何か、新しい世界を目指していることは伝わってくる。

*初出/共同配信→岐阜新聞(2004.2.1)ほか