2008-12-01

「人とつながる 社会とつながる」「長期療養 生活のヒント」

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●「人とつながる 社会とつながる」「長期療養 生活のヒント」
ぷれいす東京
JNP +

★★★★ みんなに読んでほしい一冊

今回紹介する冊子は、HIVに感染している人たちの生活をサポートするためのガイドブックである。アンケートや調査分析によって、セックスライフ、マネーライフ、メンタルヘルス、医療機関との関係…と当事者が抱える様々な問題が見えてくる内容となっている。

これが官製発行の印刷物だったなら、(HIVにかぎらないが)つまらないものになっていたはずだろう。けれど、この二冊は面白い。面白いというと語弊があるが、建前ではない、患者・感染者の本音が生の言葉で語られているからだ。そして、それを伝える表現において、これまでの現場の知恵が凝縮されていて説得力がある。

例えば、当事者の気持としてこんなことが語られている。「人は誰でもSEXをします。ポジとか関係なく…! 感染後かなり気をつけています。でも完璧にセーファーかといえば違うと思います。掘る掘らないの時はゴムするが、くわえるときはゴムは出来ないなど…本当に難しいと思います」。

カミングアウトの問題とも関わっているのだが、オーラルセックスの場合にはコンドームの使用をいちいち相手に求めることはまだ難しい。どうしても雰囲気で粘膜に直接触れてしまうことになりがちだ。膣や肛門での性交に比べて感染の可能性が低い行為であるとはいえ、セックスにおける繊細で、グレーゾーンにある問題であることは間違いない。

あるいは、抗HIV薬の副作用によって外見が変化してしまうことを悩んでいる感染者もいる。「私の場合、一番悩んでいるのはやっぱりリポジストロフィーなんですね。(中略)外見が一番つらいんですね。死にたいくらいつらいんです。なので、本当いえば整形したりとか、極端に言いますと、それをとにかく治したいのに『いや、全然気にしなくていいんじゃないですか』とかって。先生の立ち場から見ればそうなんでしょうけど、比較問題が違うという。」。

HIV/AIDSが死に至る病から慢性疾患へ移行したと言われて久しいが、当事者はいまだ薬の副作用によって生活に支障が生じたり、恋愛や性生活への不安が拭えない。投薬による顔の変化など、ある人にとっては死にも等しい悩みになるはずだ。読み手は、その切実な訴えに、自分ならどうするだろう?という思いを抱き、切なさとともに彼らの生に向い合うことになる。

そう、切なさを共有することができるという点で、この二つの冊子は成功している。それは、ここにある言葉が、客観的な数字を羅列されるよりもよほどリアリティを読み手に喚起するからだろう。リアリティは誰もが自分のことにつなげられるレセプターであり、他者の心をつかむ力になる。

そしてそうした表現が紡がれるのを可能にしたのは、この病に関わってきた人たちが長年にわたって、現場でスキルを蓄積し、病と向い合う思想を鍛えてきたからだろう。

それを一部にのみ流通させておくのはもったいない。ぜひとも性教育の現場で、メディアで、みんなが自分の問題としてHIV/AIDSを考えるための素材として使用してもらいたいものだ。これほど考えさせられる教材はないだろう。

*初出/現代性教育研究月報