2011-10-07
石ノ森章太郎「ジュン」シリーズ復刻で思い知ったこと
2011年9月より、石ノ森章太郎の代表作の一つである「ジュン」シリーズを完全復刻を開始しました。2011年11月まで『ジュン0』〜『ジュン4』の計5冊を発行します。
『ジュン0 石ノ森章太郎とジュン』は、「COM」連載終了後以降に複数の雑誌で発表された「ジュン」の短編マンガ、イラストをほぼすべて収集した「ジュン小品集」と、「ジュン」の作品解説、および石ノ森章太郎自身による「ジュン」解説マンガ、また自伝マンガ、そして石ノ森章太郎へのインタビュー記事などから、石ノ森章太郎にとって「ジュン」とは何だったのかを窺い知る関連作品を収集した「ジュンを知る」の二部で構成されています。
シリーズの主人公であるマンガ家を志すナイーブな少年、ジュンは石ノ森章太郎にとって自己を投影するキャラクターであり続けました。
1967年に「COM」で発表されたジュンは、30年後、短編「ファンタジー・ワールド ジュン 雪の女は愛で死ぬ」(1997年発表)まで続きました。
『ジュン1 章太郎のファンタジーワールド ジュン』は1967年〜1971年に「COM」(虫プロ商事)にて連載され、前衛的なマンガ表現の方法から高い評価を受け、第13回(1967年)小学館漫画賞を受賞した作品です。「ぼくはこの作品で“詩”をかきたい」と石ノ森章太郎は「COM」誌上で発言したことは当時のマンガ少年たちの間で広く話題となりました。石ノ森の代表作品の一つとして名前が上がる作品です。
『ジュン2 魔法世界のジュン〔アパッチ版〕』は、大人向け総合誌「アパッチ」(講談社)に、1977年6月号〜1978年1月号まで、『ジュン3 魔法世界のジュン〔リリカ版〕』は、少女向け雑誌「月刊リリカ」(サンリオ)に、1978年5月号〜1979年1月号まで連載された作品です。
どちらの作品も、継母とその姉に邪魔者扱いされ、孤独な現実世界を生きるジュンが、想像の世界「魔法世界」へと旅立ち、仲間とともに闘う姿が描かれており、少年の心を持ち続けたと言われる石ノ森章太郎の、想像力ゆたかな世界観を存分に堪能できます。
イヌの「チビ」、アヒルの娘「ルー」、ロボット「ガランドウ」、竜の「ドラコン」、妖精の「ドリーン」とともにお伽話の世界を旅する本作品は、石ノ森章太郎版「オズの魔法世界」と評価されています。ちなみに『ジュン3』は、今回が初のフルカラー単行本化です。
現在は『ジュン4 石ノ森章太郎のFANTASY JUN』(アニメ情報誌「マイアニメ」(秋田書店)に、1981年4月号〜1984年9月号まで連載)の編集作業中です。
いやはや。
それにしてもそれにしても!「原本」に立ち返る重要さを思い知りました。せっかくの「完全復刻」です。連載当時の発表誌や、過去に刊行された「ジュン」の単行本を探しに国会図書館に数回通ったのですが、!!!!!!!!!な体験が何度もありました。過去の資料を確認する際、意識は「確認」だったのですが、いざ現物に当たってみると「発見」の方が全然多かったです。また、現物の関連書籍から「こんなのあったのか!」的な情報がずるっと出てきたり。(瞬間、「あっ」と情けない声が漏れました。)ごにょごにょ想像して検索するより、やっぱ体動かさなくちゃいけないなぁなんて当たり前のことを身をもって体験中です。