2005-02-15

「隠し剣 鬼の爪」ほか4本

どんどん疲れがたまってきています。
でも、それでも私達は朝9時からの映画をちゃんと見て、最後の枠の3本目まで頑張りました。

ペトラ(以下P):「隠し剣 鬼の爪」。じゃじゃ〜〜ん、日本映画!
  

Kakushi Ken - Oni no Tsume
「隠し剣 鬼の爪 Kakushi Ken – Oni no Tsume」
監督 山田洋次 Yoji Yamada

武士のしがらみと、お手伝いの田舎の娘との愛、そして友情ってところかな? そうやって書いてしまうと陳腐だけど。山田洋次監督作品ね。彼は、数年前にも「たそがれ清兵」でコンペに参加しているのよね。淑子は見た?

淑子(以下Y):見たよ。そんなにヒットしているのかって感じで。内容は悪くなかったけれども、女性の描き方に私は問題ありって思う。宮沢りえさんが演じた女性像には、ちょっと矛盾があると思うの。だから感情移入もできないし、女性をちゃんと描いていないって思ったの。今回の作品は、悪くないけれども、別にそんなに心に響く映画じゃなかった。評判もそれほどじゃなかったしね。

P:サムライ映画って、よくあるにはあるし、私達外国人が見ると、は〜って感じてワクワクすることもあれば、あまりに残酷って感じることもある。本当に異国の全く違った文化に触れるのは、悪くはないけれども、どうもそれだけって気がして。映画祭でどうしても上映しなければならないテーマなのか?と言いたい。

Y:武士がその地位を捨てて、もう殺し合いはたくさんだ、そういうのはやめよう、という今の戦争批判にもつながってはいると思う。けれども、その表現はこれでいいのかって思う。ベルリンの記者たちには不評だったみたいね。新聞評も良くなかった。興味なしって感じでね。

P:これ以上言うことはないわ、悪いけれどもね・・・。今さら、女性が蔑視されていた時代をもう一度見てもねぇ。

Y:それもそうだけれども、ほとんどの国のコンペ作品には、ちゃんと記者会見で主演俳優が挨拶している、つまりベルリンに来て世界の皆さんに映画を見てもらおうという意気込みがある。でも、日本の役者さんは誰も来なかった。そういうのって映画祭に対して、やっぱり失礼なんじゃないかしら。そう思ったわ。

P:そうそう、なぜかあの映画の記者会見には誰も俳優が来ていなかったね。他の国はちゃんと礼儀を持って来ていたのにね。そういうのはどうかと私も思うよ。

Gespenster
「Gespenster」
監督Christian Petzold

Y:次は、「Gespenster」Christan Petzolt。
若手監督でドイツでも有名だけれど、どう?

P:主演の女の子はとても上手に演技したと思うけれども、今日の、都会で暮らす孤独な人間の心の問題というか、そういうのを、ちょっと過激なタッチで描いたものではあるけれども、はっきり言えば、ち〜〜とも面白くない!! これって、新聞評などでは絶賛していたけれども、私はドイツ人として言いたいけれど、本当につまらなかった! それに、ナンなのかな? あの、会場で、必要以上に拍手が起こるのって。

Y:あれはね、毎回なんだけれども、オリンピックみたいに、ドイツ人のジャーナリストがドイツ映画に頑張って欲しいから、拍手が多くなるみたい。毎回なのでなれてしまったけれど。

P:やりすぎよ。大げさでばかみたい!

Y:まぁ、気持ちはわかるけれどもね。映画は・・私にはつまらなかった。面白い部分がなくて、しんどくなってきたわ。

P:ドイツ人としても言うけれども、新聞で絶大な評価をしてはいるけれど、それほどの映画じゃないと思う。ちょっと勘違いしているんじゃないかしら!

Y:私達二人ともつまらなかったっていうことだよね。それで、結局のところ・・・。

P:途中で出てしまった〜〜!(笑)

Y:映画祭て、時々見る映画に疲れるってことあるものね。

P:それに、この回から持ち物検査されるようんなって。みんなクロークに荷物を預けないとならなくなってね、もううんざり!

Y:そう、あまりにひどいので、抗議に言ったのよね。このままではストレスも大きくなるって。でも、私だけだったら行かなかったな。だってその分休めるし(笑)。

P:淑子、ああいうナンセンスなことには、断固戦わないとだめよ!! 結局いろいろたらいまわしにされて、時間も随分かかってしまったけれども、つまりは誰かおばかなジャーナリストが、映画上映中にビデオを撮ったみたいね。

Y:それって、よく中国などで売っている海賊版っていうのを作るための原盤?

P:どうなのかわらからいけれど、そういうバカなことをしているジャーナリストがいたわけ。でも、もしかしたらジャーナリストを装って入っていきたような輩かもね。とにかく発覚したと。それで急遽同じことが起こらないようにチェックして、クロークに預けることになったそうよね。これには参ったわ!

Y:でも、ペトラの抗議がうまく作用したのかナンなのか、翌日からはなくなったよね。ただし、入り口でのチェックはないけれども、席に向かう途中のドアでは厳重なチェックがあって。もっとも、いつも座っている側ではそういうことはもう、私達は「顔」だったからなかったけれど、一度ペトラが知り合った、エジプトのドキュメンタリーの監督の女性、ミーナと隣同士の席に座ろうと思って、ずっと上の階に行ったら、小さなハンドバッグの中身も調べられて・・・。それで、ソニーのサイバーショットUまでとられそうになってね!

P:あんな小さいもので、そんな海賊版なんて作れるはずないじゃないのよね!! もう、本当に失礼だわよ!!

Y:まぁ、とにかく翌日から少しゆるくなったから良かったけれど。

P:そして今日最後の映画は、コンペ外作品で、「Heights」。Chiriss Terrino。
これはキャンセルになって、でもコンペ外だからあまり問題もなく、ハンガリーの作品を見たのよね。「Fateless」。

Fateless

Fateless
「Fateless」
監督Lájos Koltai

Y:ああ! あの、悲惨なアウシュビッツの強制収容所の話ね。少年。14歳くらいで、もう送られるんだけれど、そこでは17歳以下はすぐにガス室で殺されてしまうので、17歳と偽る。収容所での、希望のないストーリィ。あまりに悲惨で悲しくて、どうしても最後まで見ることができなかったよね。前は、こういう、ベルリンでナチを批判する絶好のチャンスとばかり、似たりよったりの強制収容所の話がたくさんあったものだわ。今はもうほとんどそういうのがなくなって、やっと戦争のつらい呪縛から逃れられたのかと思ったら、また!ってすごく暗くなった。

P:アクチュエルではない、とは言わないわよ。私達ドイツ人がひどいことしたことは事実。でも、同じことを何度もくり返し、これでもかって見せ付けるのはどうかと思うわ。そうじゃなくて、もっと建設的な希望のある表現はできないものかって思う。あまりに見ていられないひどい映画だった。悪いけど、そう思ったわ。

P:その後、淑子は帰って、私だけパノラマスペシャルの映画を見たのよね。「The ballad of Jack & Rose」。監督はRebecca Mueller。丁度なくなったヘンリー・ミュラーの娘よ。

The Ballad Of Jack And Rose
「The Ballad Of Jack And Rose」
監督Rebecca Miller

The Ballad Of Jack And Rose

The Ballad Of Jack And Rose
Rebecca Miller監督

Y:どうだった?前評判はなかなかのものだったけれども。

P:1980年代の、父と娘の葛藤というか、関係の映画ね。他人も入って、話が複雑になって。結婚問題とか、いろいろあったんだけれども・・・あまり面白くないので、途中で出てしまったわ!! それに、カメラが悪かった。ものすごくわざとぶれがあって、めまいがしそうでね。ハンドカメラは私にとってはほとんど意味をなさないわ。

Y:効果的な使い方も、映画によってはあるんじゃないの?

P:絶対にない!! だって、だた揺れてぶれているだけよ。見ている側が気持ち悪くなるだけ。そんなの映画じゃないわ。とにかくつまんなかったので出てしまったし、帰ってゆっくりしたのよ。でもね、確かベルリナーレ・カメラ賞を受賞したんだよね。
ああ、全く1日に4本なんて、見るもんじゃないわよ。