2015-08-11
新しく発行した本の情報がネットに反映される調査をしてみた。
本は存在を知ってもらわなければ、そもそも売れない。
たぶん、一番大きな「陳列」は書店。そのなかでも入り口近いところに平積みされと、とかされるのがいい。
広告ってこともある。新聞によく載ってるでしょ。ポット出版もぼちぼち新聞に広告載せてる。
そのほかここ十数年に存在感を増やしているのがネットだ。
ネットには大きく3種類ある。
・ポット出版や版元ドットコムのサイト →自分で発信できるところ。
この延長に、Twitterやfacebookもあると思う。
・本の存在を「勝手に」広めてくれる媒体や、無数の人たち。→他社が発信してくれるところ。
新聞・雑誌・テレビなんかのメディアで本を取り上げてくれたり、書評してくれたいるする。
あるいは自分のブログで紹介してくれたり、Twitterやfacebookにかいてくれたりする。
・本を売ってくれる書店 →ネット書店が中心だけど、リアル書店がお店への誘導としてネットを利用している
紀伊國屋や丸善・ジュンク堂やアマゾンや楽天や、ヨドバシカメラとか。
で、こうしたネットでいろいろ紹介してくれる、すべての出発点は、その本に関する情報がテキストなどのデータになっていて、ネットに存在していることなわけ。最近は書影も本の情報のデータのひとつとしてゼツヒツ。
ということで、2000年に30数社の出版社としてはじめたのが版元ドットコムで、
・本の情報を、テキストなどのデータで、ネットに存在させる
・その情報を業界各所をはじめ、すべての「本の情報を欲している」ところに提供する
ことをしている。
上記のことで言えば、3つ目の「ネット書店への配信」に取り組み始めたということだ。
というこなんだけで、実際に本の情報を、版元ドットコムに登録して発信すると、ネット書店などにどのように反映していくのかを調査してみた。
テストに使った本は『群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ』というポと出版の本
04/24金 夕方に版元ドットコムの書誌情報DBに登録する
すると版元ドットコムのサーバから、JPOの近刊情報センター(07/01から出版情報登録センターに改組)に、一日二回自動的にデータがONIX形式のxmlで送られる。ネット書店もそのデータを毎日取りに来る。
04/27月 まず、hontoに書誌情報が掲載された。しかし事前予約は取っていない。
04/28火 アマゾンが書誌情報とともに予約を開始する
以降05/11月までに、エルパカbooksとTRCブックポータルでも予約ははじまったが、他のネット書店では予約できない状態がつづく。
05/13水に、ポット出版に印刷屋から見本が100部程とどき、翌日の0514木に日販・トーハン・大阪屋などの取次に「今度こんな本だしますんでよろしく」と見本を出す。
実際に本屋に並べてもらうための本は、05/20水に取次に搬入する。
その間の、05/19火から、23金あたりで、ほとんどのネット書店で書誌情報が掲載されて、予約も始まっている。
だから、05/13水に取次に完成した本を渡したことがスタータになって、情報掲載・予約開始などにうごいたのだろうと思われる。
逆に言えば04/24金に書誌情報のデータ【だけ】を知らせても、実際の情報掲載・予約開始をはじめてくれるネット書店は少数だってわけだ。
05/25月にほぼ一斉にネット書店が注文できるようにした。そのご「在庫あり」になるのにも数日かかっては、いる。
一番右側の「国立国会図書館」のデータがどうなっているのか。
04/28火に仮データとして、書誌情報が公開されている。
これは、JPO近刊情報センターのデータを国会図書館も利用しているので、情報入手してすぐに「仮情報」として公開してるってことだ。
で、仮情報が06/03水になくなっているのだけど、出版社は取次への見本を出すときに同時に国会図書館へも納本しているので、近刊情報センターから得たデータにもとづいた仮情報を一旦取り下げて、国会図書館が独自に書誌情報を作り始めた、ということのようだ。
06/23火に、正式に書誌情報が公開されているので、昔、数ヶ月かかると言われていた国会図書館の書誌情報づくりもそれなりに早くなっているということなんだろう。
この表をみると、「アマゾンはさすがに少しでも多く売るために予約とか熱心だな」と思ってしまうかもしれないけど、アマゾンのこの行動はある種の「思い切」なんだとおもう。出版社が発行するよといっているのだから、どんどん予約活動すればいい、という考えじゃないだろうか?
逆に、他のネット書店は元々リアル書店がはじめたところが多く、数十年の出版業界の「常識」を踏まえた行動なんだろう。
「出版社に注文しても、書店に納品されるかどうかわからない」という「常識」からすれば、現物の確認をしないで予約などとっても、万一納品されなかったらお客に迷惑かけるので、慎重になるということのような気がする。
で、アマゾンの予約活動はそんなことが考えないでやっている風だ。
ポット出版から見ると、予約が(例えば)100冊あっても、アマゾンからの注文が50冊、なんてこともよくある。
残りの50人のお客には配送がおくれることになってるんだろうな、と思えることがあるのだ。
残念ながらアマゾンの担当者と直接連絡をとれるチャンネルは(大手には当然あるのだろうが)ポット出版にはないので、そんな事態をすぐに解決することはむずかしいのだ。
アマゾンの「思い切り」というよりも、先に決めた刊行日にちゃんと告知した本を出すってのは、本社のあるアメリカでは本の企画が通った段階で契約書に盛り込まれる当然のお約束なんです。出せるか出せないかわからないけど、原稿を待ってみるとか、入稿されてからスケジュール決めるとか、現物が届くかどうか確約できないとか、そういう曖昧なビジネス慣習知らないんだから当然のこととしてやっているのでしょう。注文数も、注文しただけの数は当然来ることを前提としています。
大きな関心を持って拝読しました。情報発信から予約(発注)までの「動向」は、経験からの「こうなのではないか」程度のことに留まっていたものを、具体的な書籍が時系列で、流通関係者がどの時点・スパンで関わってくるのかが見えて、面白いと思います。
欲を言えば、レポートとしては60点台(--;。
予約の開始時期など数値的な情報を把握していても、<どうしてその日から予約開始になったのか>、また、<某zon以外のネット書店の情報取り扱い開始が「配本」前後からになったのか>、双方ともに経験的・業界的・状況証拠的な「推測」でしかなく、エビデンス(証拠)としては弱いことです。
某zonさんの、「担当者と直接連絡をとれるチャンネル」は現状でないにせよ、ここまでやったのならその機会を捕まえること(以後の関係も含めて)は、駄目元で接触を試み、成功なら、ばん万歳
!駄目でも某zon「壁」をネタにすることができると考えます。
同様に、リアル書店系の「取り扱いのタイムラグ」も同様で、業界の経験則そのままなのかどうかは、やはり、直接当たって検証することがないと、出版社側からの視点で終わってしまい、意図された「ネット書店などにどのように反映していくのか」の半分以下のレポートになっているのではないでしょうか。
ある意味、無責任な外野からの勝手な、けしかけですが、「検証の過程」として不可欠なことだと考えます。最後は「人の思惑」ということもあり、こうした「売らんかな」だけではない取組みで、関係づくりも試みていただければと思います。
これからだと、盆明けになるかとは思いますが、続報、期待しております。
PS
”テストに使った本は『群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ』というポと出版の本”の部分、自社名は、間違ってはいけませぬ(^^;
大原さん
コメント感謝、承認制にしているので(スパム対策ではじめた)ので遅くなりました。
アメリカの商習慣は聞きかじってます。まあ、出版に関する日本の商習慣ま、そんでいいと思ってます。もちろん改善したいことも山ほどあるけどね。「現物がとどくとかどうか確約できない」なんてのは変えたいよ。
というか、このことに象徴的にばかし合いが横行してる。ただそうなる理由もわかるので、理由をふまえて改善したいなと。
またお会いしたいものです。
Phantom_worksさん
コメントありがとうございます。
もっとしらべろ、ってのはそのとおりですね。
いろんなカタチで取り組んでいきますね。