2008-12-07

NHK『日本人の性行動・性意識』


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● NHK『データブック NHK日本人の性行動・性意識 (データブック)』(NHK出版)

★★★★ 量的調査の有効性と無効性

本書『NHK 日本人の性行動・性意識』は、全国民から無作為抽出法で実施された、日本初の科学的かつ大規模な性の調査である。これが、今後、日本人の性を考えていく上で欠かせない資料となることは、間違いない。

このような客観的なデータの持つ説得力は、圧倒的だ。私自身、本書を一覧して、自分の考えが単なる思い込みであったことに、はっとさせられたりもした。

例えば、若年層のセックスの経験というのは、なんとなく都会の方が活発だというイメージがあったのだが、これはまったく逆の実態であった。以前から宮台真司氏などが指摘していたことではあるが、男女とも地方在住者の方が、性行動が活発で、なおかつ女性においてはよりはっきりとした差が見出されたのである。若者は都会の持つ自由な空気や、過度な情報によってセックスに走る、のではなく、「やることがないと、やっぱりセックスしちゃう」(宮台氏)ということらしい。

また予想していたほどには、近年で人々の性意識が激変しているわけではなくて、全体的には性に対して保守的で、代わり映えのしない結果となっているのも印象的であった。メディアの流す情報の変化ほどには、人々の意識は変わっていないし、時代を象徴するかのように思われた現象—性的主導権を男の子から奪還したコギャルの登場や、援助交際のブームなど—も、さほど数字には影響を与えていないようだ。

しかし、データそのものをどう読み解くかというのも簡単ではない。本書でも指摘されているように、「性というのは標準というものがなくて、二極分解、三極分解という場合も多い」(宮台氏)、つまり、平均値には反映されない現実が、数字に隠されていることもあるのだ。仮に、過激な行動を取るグループが一部で現われたとしても、マジョリティである保守的なグループと数字を掛け合わせると、それほど顕著な数値としては現われないことがある。

さて、一方で、この調査が明らかにしたものは、相変わらずの、性における男女の非対称性であり、ダブルスタンダードであった。特に女性の中高年層における性への消極性、不自由さは、他の層と比較して、明らかに特異なものとして浮き彫りになっている。改めてフェミニズムの議論を検討する必要を感じた。

そういう点、『ジェンダーがわかる。』(アエラムック)は、差別的な男女の役割分担がどのように生じているのか、どういった社会・文化構造の中から私たちの性の欲望が生みだされているのかを、実にわかりやすく教えてくれる一冊である。現在の研究を網羅的に紹介しているので、これほど便利な本もないだろう。

その成果と限界の中から、先のNHKのデータに現われた状況をどう考えるべきなのかを探ってみるのも、意義のあることかもしれない。

*初出/現代性教育研究月報(2002.6)