2005-12-22

いただいたご本『いわずにおれない』

__________________.jpgいつもお世話になっているフリーライターの細貝さやかさんから、本を送ってもらった。彼女が制作に関わったまど・みちおさんの『いわずにおれない』。まどさんの詩や絵画、インタビューが収録された文庫本だ。

伏見は寡聞にして存じ上げなかったのだが、まど・みちおさんは日本人で初めて国際アンデルセン賞に輝いた詩人。96歳で現役! これまで2000篇を超える詩を発表してきて、日本人なら誰でも知っている歌の詞もそこに含まれている。〈ぞうさん/ぞうさん/おはながながいのね〉とか〈ポケットの なかには/ビスケットが ひとつ〉といった愛唱歌だ。

あぁ、あの詞の作者か!と思ってページをめくっていたら、もう胸がキュンとなるような言葉がいっぱいで、感動がこみ上げてくる。いままで詩集なんていいと思ったことはなかったのだが、この本は言葉の宝石箱だ。インタビューでも、こんなことをお話しされている。

「……『ぞうさん』でしたら、ぞうさん/ぞうさん/おはながながいのね〉と言われた子ゾウは、からかいや悪口と受け取るのが当然ではないかと思うんです。この世の中にはあんなに鼻の長い生きものはほかにいませんから。……われわれ情けない人間だったら、きっと『おまえはヘンだ』と言われたように感じるでしょう。ところが、子ゾウはほめられたつもりで、うれしくてたまらないというふうに〈そうよ/かあさんもながいのよ〉と答える。それは、自分が長い鼻をもったゾウであることを、かねがね誇りに思っていたからなんです」

泣けた。もうやられた。そのようにこの詞を理解はしてなかったけど、あの行間に流れる温かさは、まどさんの深い人間愛を背景にしていたのだ。

●まど・みちお『いわずにおれない』(集英社be文庫)680円